01-2
エルミアが歩きだしてから、約2時間が経った。
持参の時計と太陽の位置で見ての時間で、ここの時差が同じかわからないため正確ではない。
まず持参の時計を信用して良いのかすらわからない。
だが、この短時間で獲られる情報はあった。
「異世界決定で良いね、これ」
自身の前にある氷づけの化物を見て、エルミアは確信付けた。
化物と言っても、2mを超える熊のようなものだ。
顔や体型は熊だが、牙と思える物が推定で10cmあり、手から伸びる爪は牙よりも長い。
エルミアがいた世界では、彼女が知る限り見た事が無い。
他国での目撃情報すら無かった。
とりあえず、名称がわからないため熊(仮)とした。
その熊(仮)が茂みから現れて、エルミアに襲い掛かってきたのだが、何かをする前に氷づけになってしまった。
もちろん、氷づけにしたのはエルミアだ。
襲い掛かってきたからと驚く事はしない。
むしろ、森の中にいるのだから、何かが出てくるのは可能性の1つなため、常に警戒はしてある。
氷づけにする準備も万端だ。
その結果、見事な熊(仮)のオブジェが完成した。
術を使っての氷づけなため、解かない限り溶ける事はなく、のんびりと熊(仮)を観察している。
見れば見るほどここが異世界である事を示してくる。
「……次元レベルの転移……出来る気がしない。」
トリップ?
転生?
良く見て知る言葉ですね、面倒事ありがとうございます。
だけど、ラノベの主人公になった記憶はありません、憧れもありません。
一瞬は帰る手段を考えるも、それを発動させる為の力が足りない。
次元を生きたまま移動する術など、現実的に聞いた事が無い。
本日2回目の深いため息が、エルミアの口から漏れた。
「天命待ちにならなきゃいいけど……っと!」
よくあるパターンとしては、何かに呼ばれて、世界を救出したら帰れる帰らないになる。
だが、それは物語の話しだ。
それよりも、天命によって帰れるの方がよっぽど現実的に思える。
異世界とはいえ、父親や兄の年齢は越えたくはないが。
氷付けの熊(仮)に蹴りをいれて、氷ごと中の物まで砕いた。
放置しても良いが、倒したモンスターが自然に無くなるかわからないからだ。
「次はちゃんと相手にしてやるかな」
もし消えないなら、良い食料だよなと砕いてから気付いた。
食えそうなモンスターならの話だが。