01-1
体が痛い。
うっすらと戻りだした意識の中で、少女‐エルミア・ノークスはそう感じた。
切傷のような痛みではなく、打撲傷のような痛みが全身から感じるのだ。
「…………っ」
痛みから息がつまる。
打撲は鍛練していればよくする怪我だが、ここまで痛いのは久しぶりだった。
だが、それ以外の痛みは無く、骨折とかも無さそうで、それは運が良かったとエルミアは思った。
意識がしっかりとしてくると、エルミアはゆっくりと目を開けた。
肌に感じる風は、とても優しくて山岳では感じる事がないもので、背中には柔らかい土の感触。
そして視界に入るのは緑が生い茂る木々。
右を見ても左を見ても木や茂みがあり、何処をどう見ても緑豊かな森だ。
「目を覚まして森って、テンプレかっての……」
落ちた瞬間に部下達が巻き込まれないように術を使ったため、特に心配はしていない。
使わなくても日頃エルミアに鍛えられているメンバーなため、巻き込まれはしないだろうが。
だけど、自分が落ちてしまった事に深いため息が出る。
普段から油断するなと言っておきながらと、修業の足り無さを考えさせられる。
歪みが閉じる前に見えた部下達の顔を思い出せば、少しの罪悪感を感じる。
「変に考えないで、陛下に報告しといてほしいなっと……《ヒール》」
原因は不明だがあのような空間の歪みがあるなら、国だけではなく世界レベルで危険がある問題なため、急ぎ報告してほしい。
痛みを我慢しながら起き上がり、打撲ぐらいだからと一番簡単な回復術を自分にかけた。
報告もとい報連相はきっちりと部下に教えてきた。
脳筋集団ではあるけど、馬鹿に育てた覚えはない。
ある意味、バカではあるが。
「よしっ……とりあえず、探るか」
痛みは消え、体力も同時に回復させ。
少し術の効きが悪いが、周囲を探索するには十分。
先ほどまで軍の仕事だったため、装備に心配はない。
この場所でのんびりしていても、ただ時間を消費するだけだ。
獲られる情報があるなら話は別だが、周囲を見渡しても何も無い。
気配を探っても、近くに人間等生き物の気配は全く無い。
つまり、ここに長居する必要は無い。
なら、探索するのみ。
「さて、太陽の位置よし……夜は月じゃなくて星が見たいね」
エルミアは1度太陽の位置を確認してから、そちらに向かって歩きだした。