二話 いせかいのよる
リクエストがあった為書きました。
ネタ要素しかありませんね…
おといれもおわったし、ママもおねえちゃんたちもごはんのようい。
ぼくはそれまでテレビをみていよう、とテレビをさがすけど…テレビはない。
「ママ…テレビは?」
「…は?テレビ?」
…なにいってんだ、こいつ?というようなめでぼくをみるママ。
おかねがなすぎてテレビをうっちゃったのかな…。はやくおとなになってママをおてつだいしなきゃ。
しかたないからおそとであそぶことにする。
あんまりはなれたらおうちがわからなくなっちゃうし、あんまりはなれないようにしないと。
ーー
風呂が終わり、薄手の服に袖を通す。
なんとも頼りない布地だが吸水性に優れたものらしく、少なくとも俺の世界では存在しない布だ。
更にずっと箱から映像が流れていたり声までする。余程の魔力が無いとこのような事は不可能だ。
異世界とはいえ凄まじい限り…と感心しきりに周りを見る。
「ところてん、おばちゃん朝まで帰って来ないからウチ泊まっていくんだろ?」
かすみが俺の前に来た。彼女はニコニコと笑っている。純粋なその瞳に映る俺の顔…それは信じられない程にあどけないものだ。
「いや、そこまで好意に甘えるわけにはいかん。」
顔は心を写す鏡という。
彼女の瞳に映る俺の顔は信じられない程穏やかなものだった。
…あんな数時間、人の好意に甘えただけなのに俺の顔は最早ポメラニアンに等しい程甘ったれの顔となっている…。
全く、我ながらどうしようもないな。
ーー
「おい、あそこだ!」
もりのなかであそんでいたら、てっぽうをかまえたおじちゃんたちがおうちのまわりをかこんでいた。
「人狼共が…!家畜を襲いやがって。目に物見せてやるぜ!」
「おい殺すなよ?あの人狼はメスなんだから殺す前に楽しんでからだ。」
たのしむ?おままごとでもするのかな?
でもいまからだとよるおそくになっちゃうし、ママやおねえちゃんたちもつかれちゃう。
かえってもらわないとダメだよね。
かすみちゃんや、かすみちゃんのママとパパはぼくをよるにめんどうみてくれるけど、おじちゃんたちがママたちとあそんでたらぼくがおねえちゃんたちとあそんでもらえなくなるし。
「ねえ、おじちゃん。」
おじちゃんたちにこえをかけたら、おじちゃんたちは「ば…バーサーカー…」とつぶやいてあおいかおをしていた。
「お、お前も人狼狙ってたのかよ…なぁ取引しようぜ。アンタが一番いい女とやっていいからよ、俺たちはその残りを頂戴する、ってのはどうだ?」
「え?ママもおねえちゃんたちもぼくのかぞくだよ?」
このおじちゃんなにいってるのかちっとも分からない。
「なら死ね!」
どん、とてっぽうをうつおじちゃん。
しんぶんしをまるめたたまをかすみちゃんがぼくにぶつけてくるときがあるけど、あれよりいたくない。
「ば…バケモンが!」
ものすごくゆっくりおじちゃんがけんをふる。
「もう、やめてよ。」
かるくつかむとけんはすぐにおれた。
よくわからないけど、おじちゃんたちママやおねえちゃんとじゃなくてぼくとあそんでくれるのかな?
まえにママといっしょにみた、テレビのヒーローみたいに僕はひとさしゆびをそらにあげて…
「いま……だれかおれをわらったか?」
と、きめせりふをいってみた。
おじちゃんたちはめをまるくしてぼんやりとしてる。
これはきっとぼくがこうげきしていいときなんだよね?
「…………おまえか。」
ーー
人狼の棲家を見つけ、家畜を襲った御礼にあいつらを奴隷にしてやる…
そう思い自警団を作ったわけだが、まさか森に住むバーサーカーと出くわすとは思わなかった。
何故バーサーカーと呼ぶか?
それは全く話が通じないからだ。
時折「おれといっしょにじごくにおちよう」などと訳の分からない言葉を吐き、常識を超えた速さとパワーで次々と自警団を吹き飛ばしていく。
信じられるか?あれでこの男は全く身体能力強化の魔法など使っていないのだ。
皆が蹂躙され尽くし…
バーサーカーは俺の頭を掴みながら言った。
「おまえもおれのことばかにしてんだろ?わらえよ…」
笑いませんし、笑えません。笑うという事は失笑だったり侮蔑の意味合いもある。
こんなライオンとチワワくらい実力差のかけ離れた相手に何を笑えと?!
バーサーカーは「もうおねんねしちゃった。おうちのまえにいてもじゃまだからもりのなかでねてね。」
そして森へ解放された我々だが…
「あのバーサーカーも門番としては役に立つんだな。」
人狼がそこに立ち…冷たい目で我々を見つめていた。
ーー
「…頭の中身がガキって事は…料理もそうしないといけないよな。」
自警団の連中を一人残らず殺したあと、人狼は改めて料理を作る。
「お子様ランチでいいか?あーめんどくさい。」
スパゲティにハンバーグ、ピラフとサラダ。リンゴジュース。
こんなものだろう。何の肉を使ったのかは聞くな。
「いっただっきまーす。」
バーサーカーは匙とフォークでお子様ランチを美味しそうに食べる。
すぐにお腹いっぱいになるらしく、バーサーカーは少し食べては休み、少し食べては休みを繰り返し、やがて完食となる。
…次の問題は風呂か、と人狼は首を振る。
風呂に入れるのは容易い。だが。
そんな中でバーサーカーが正気を取り戻したら。
娘達の前での公開陵辱待った無しとなる。
しかし…娘達がバーサーカーに陵辱を受ける位であれば自分が引き受けるしかあるまい。
人狼は皿を洗いながら…覚悟を決めた。
「ぼうや、お風呂に入ろうか。」
娘達が人狼を向き、十字を切る。
アーメン、じゃねぇよ。こっちはこのバーサーカーに○ーメンぶちまけられるかの不安との戦いなんだよ、クソッタレ。
バーサーカーは満面の笑みで、うん!と言うと…その場でパンツを脱いだ。
「「「Oh…」」」
バーサーカーのバーサーカーがバーサーカーになったらその時が一巻の終わり。
人狼は覚悟を決めてバーサーカーを風呂へと連れて行った。
ーー
バーサーカーの髪…どれだけ洗っていないのかゴワゴワだ。
何回シャンプーしても泡立ちもしない。
身体も同じで垢と泥でぐちゃぐちゃ。お湯をかけて何度もスポンジで擦っても歯が立たず、風呂用のデッキブラシで擦ってやって初めて垢が取れ始めた。
「くすぐったーい。」
キャッキャと笑うバーサーカー…。人狼は汗だくである。
「身体の前面は自分で洗いなさい。」
「えー?やだー。できないー。」
「……」
デッキブラシを使い逞しい胸を擦り、腹を擦る。…次はバーサーカーの所だが…バーサーカーのバーサーカーがバーサーカーになっていなければいいが、と思う人狼だが、まだおねむの時間のようだ。
それはそれで女性としての自分を否定されたようで何か腹立つものもあるが、兎に角好機ではある。
人狼はバーサーカーをしっかりと洗い、ヒゲまで剃り垢ひとつ無くなったバーサーカーは…
「Oh…」
筋骨隆々の身体に相応しい凛々しい顔であり、とてもあの不潔なバーサーカーとは思えない大丈夫である。
「じゃあぼくゆぶねにはいるー」
「100まで数えなさいよ。」
バーサーカーは湯船に入り…人狼は身体を洗う。
「(全く参ったわ…)」
人狼はほとほと疲れてしまい、ゆっくり髪を洗いだした。
ーー
ゆぶねにはいると、しらないおじさんがこっちをみていた。
あれ?と思ってかおをちかづけると、おじさんもかおをちかづけてくる。
「わっ!」
ぼくがおどろくとおじさんもおどろく…
なんなんだろう、これ?
きになってからだをみてみると…
きんにくもりもりまっちょまんのへんたいがいた。
「こ…こんなのぼくじゃない…
どうなってるの?ママ…たすけてママ!」
ぼくはママにだきついた。
「ぐげぇ!」
ママは「シャンプーが無いと即死だった…」といいながらぼくのほうをふりかえる。
「こんなのぼくじゃない…ママ、ぼくどうなっちゃってるの?ママ…」
ーー
…あー、湯船に入って自分の顔見たか。
さっきの垢だらけの髪の毛ボサボサじゃなかっただけまだマシだと思え、と人狼は思いながらも、人狼はバーサーカーの地獄のベアハッグからシャンプーの滑りを利用して脱出に成功する。
「ぼうや、お名前は?」
「しんた…。かすみちゃんからはところてん、ってよばれるけど…」
「ところてん?」
「うん…こころがふといとかくから、それそのまんまよんだらところてんだ、って。」
思わず吹き出す人狼。
「今はこうなっちゃってるけど、すぐに元に戻るわよ。」
根拠はないが、子供には適当に言っておくに限る。
「うん…ぼくこわい…」
身を縮こませるバーサーカー。
「(たすけて、ママ…)」
バーサーカーは悟っていた。ここは自分のいた世界ではない。目の前の女もまた自分の母ではない、と。
ウルウルと目を潤ませるバーサーカー…。
「(いかん!また音響兵器を使われる!)」
慌てた人狼はバーサーカーの顔を胸に埋めた。
「男の子は泣いちゃダメよ?」
よしよし、と頭を撫でる。
…プライド?そんなもの遠に捨てた。
最早これはプライドでどうにかなる問題ではなく、自分の生命が掛かる戦いだ。
そう人狼は割り切り…バーサーカーの頭を撫でる。
「うん…なかない…」
胸にだくだくと涙が流れる感覚がある。
…本当に三歳児位に戻っているのだな、と人狼はバーサーカーを哀れに思った。
そしてーー
バーサーカーは人狼の背中に手を回し、人狼の優しさに感謝しながら人狼を抱きしめた。
めきょっ☆
ぐええ〜…と、人狼の叫びが響き、人狼の娘達は騒然となる。
ついにバーサーカーが本性を出し、母を襲ったのか!と皆爪と牙を剥き出しにし、風呂場へと急行した。
「ママ、大丈夫?!」
長女が風呂場へ乗り込んだ時…。
長女は見た。
全裸でオロオロと人狼の周りを動くバーサーカーと…
背骨を折られたらしく、ピクピクとタイルの上で痙攣する人狼の姿を。
「よくもママを!」
長女は鋭い爪をバーサーカーに向けるも…
「やめ…なさい…」
人狼は必死に立ち上がり、長女を止めた。
「ママ!」
長女はバーサーカーと人狼の間に割って入るも…
「記憶喪失だから…力の加減っていうのが無いのよ…
あんたらじゃ…死ぬだけよ…」
長女たちは人狼ではあるが、人のほうの特性が強い。
人狼のように狼化も出来なければ、異常な再生能力もない。
「ごめんなさい…」
バーサーカーはしょんぼりと下を見る。
人狼は立ち上がり、バーサーカーの頭を撫でた。
「兎に角今日は寝ましょう。」
フラフラと脱衣所へ向かう人狼。バーサーカーもそれに倣う。
バスタオルを腰に巻いただけのバーサーカーの寝巻き。
そして雑魚寝のスペースに横になる皆。
「おやすみなさい。」
バーサーカーは皆から離れ、一人で寝る。
ーー
さびしいよ…ママ…かすみちゃん…おばちゃん…
ぼく、だれもしらないところにとばされちゃった…
ママ…たすけて…ママ…
ーー
チュパチュパと異音がして人狼は目を覚ました。
…見るとバーサーカーは指しゃぶりをしながら眠っている。
「ママ…かすみちゃん…」
バーサーカーの目から涙が流れる。
…そりゃ不安だよな。と人狼はバーサーカーの横に横たわり、バーサーカーの頭を撫でた。
…人狼の習性だろう、と人狼は思う。
人狼には困った者を放っておけない一面がある。
群れからはぐれた他種族の者が稀に人狼に育てられるケースというのも珍しい話ではなく、その者が人ならばそのまま人狼となるケースもある。
人狼は…このバーサーカーを困った者と見做して放っておけない、と本能が訴えていたから保護をした。
そういう事にしておかないと、人狼自身が気が狂いそうになる。
我ながらおかしい事だ、と人狼は思い…寝返りを打ったバーサーカーの下腹部を見て絶句する。
男性の生理現象を目の当たりにし、人狼は驚きと同時に誓った。
「(…一刻も早く記憶を取り戻してもらって、早く退散させないと…!)」
このバーサーカーが暴れたら自分も娘達も危ない。
それを思い…人狼は身体を休めるのであった。
ーー
…結局泊まる事となり、食事となる。
食事は王侯貴族かくやという豪華さだった。
暖かい食事にふんだんに使われた砂糖、塩、胡椒。
新鮮な野菜と肉。
涙が出そうなくらいうまい。
「ところてん、大丈夫か?お前ちょっとおかしいぞ。」
かすみが俺の顔を心配そうに見る。
「俺よりは自分の頭の心配をしろ。」
俺はそう言うと食事を終わらせ、下膳をする。…こんな時は非力な身体が恨めしいものだ。
「そろそろ寝ようぜー、ところてん!」
かすみが部屋へ俺を引く。
…あの御母堂と一緒に寝られるのではないのか、と少し意気消沈してしまうが…
何故そうなるのか、という事はよく理解している。
夫婦の日というものだろう。
こうした気遣いというのも必要なものであり、子供にそれの気遣いは不可能。
かすみが変な行動に出る前に治めなくてはな。
デバガメもよかろう。
久しくそうした空気を味わっていないので、そうした空気を感じるだけでも刺激にはなろうし。
そしてーー
「がー…がー…」
「(どうしてこうなった。)」
俺はかすみに抱きかかえられ、そのまま一夜を過ごす事となった…。
俺を抱き枕かぬいぐるみと間違えていないか、こいつは。
「ところてん〜…おねしょすんなよ〜…」
…この世界の俺はお前が離してくれないから夜尿をするのではないかね?と問い詰めたくもなる。
隣の部屋では既に開戦しており、俺の奮闘虚しくかすみは俺を離さなかった。
…翌日、起きてトイレに駆け込み事なきを得る。
全く困ったものだ。
「やぁ心太くん、おはよう。」
艶った男が俺の頭を撫でる。
…昨日はさぞお楽しみだったのだろう。女の匂いがして羨ましい限りだ。
「おはようございます。昨日はお楽しみでしたね。」
思いつく嫌味を言ってみたが、男はニコニコしながら
「お!心太くんはゲームが好きなのか!」
と言い…今度泊まりに来る時は一緒にやろう、と言い出した。
ガキ相手にとんだ野郎だ、と内心軽蔑してしまうが…楽しみではある。
…そして。
泊まりに行った時、男、かすみ、俺の三人でテレビゲームとやらをする事となり…
再度かすみからぬいぐるみ扱いされ、血涙を流す事となるが、それはまた別の話だ。