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1話 いせかい?てんせい?

某所のノリでやりましたが…


…色々ごめんなさいという所です。

ぼく、しんた。さんさい。


きょうはママとおかいもの。

はぐれないようにてをつないで、いつもにこにこ。

ママはいつもれいとうしょくひんばっかりでおこるとぼくをすぐぶつけれど、とってもやさしいところがある…はず。


「うぜぇぞクソガキ死にたいか?(あらあら心太、どうしたの?)」

「ごめんなさい…ママ。」

「私が悪く見られるだろうが、死ね(何で謝るの?心太くんは何か悪い事でもしたのかなー?)」


きょうもすーぱーのとくばいひんをかって、ママはぼくに

「勝手に肥えて死ね(お利口さんにはおやつをあげるわ)」

と、やさしいえがおでチョコレートをくれる。


ぼくはそんなママがだいすきです。


ーー


俺の名は…もう忘れちまった。

幾多の闘いを経て人里を追われっちまって山に篭っているわけだが、闘いの中でついたあだ名が『地上最強の生物』だ。くだらねぇ。


今日は鹿を捕らえるべく山肌に来ているがどうにも天気がよろしくねぇ。

山ってのは五分後には天気が急変しちまう事も珍しい事じゃねぇし、こんな山肌だと下手すりゃ落雷に撃たれてもおかしくはねぇ。


そんなこんなで自然と調和しながら生きる、ってのも獣らしくていいか、と俺は自分の人生にある種達観…いや、諦めちまっている。


人なんてロクでもねぇゴミだ。


ーー


チョコレートをたべてあるいていると…


ーー


柄にもねぇ考え事をしちまっていると…


ーー


くるまがぼくにむかってきた。


ーー


足を滑らせちまった…


ーー


「し、心太!心太ーーーーッ!しっかりしなさい!」

あー…とおくでままがないてるのかな…


…なんかとってもねむい。


このまますこしねよう…


おきたらきっと、ママのおひざのうえにいるんだ。


ママはきっと「甘えんなクソガキが。」といってぼくのあたまをやさしくなでてくれるんだ。


あー…………


ねむい…………


ーー


滑落死とはしまらねぇ終わり方だが、もうどうしようもねぇ。

全身の骨がバキバキに折れちまってるし、呼吸すらままならねぇ。原型留めてるだけマシか、という有様だが、どうせこの辺りに棲む狼どもの餌食だ。


「ちっ…」


最期に一服したかったな、とポケットを見るが、見たところで手が届くはずもなし。

「あー、我ながら変な未練残しちまった…」

そのまま俺は死へと続く眠りに向かい落ちていった……。


ーー


「……。」

めがさめるとぼくはのはらにいた。

きんいろのわんわんがまわりにいて、ぼくをみてびっくりしたようにあとずさる。

そしてきばをむき、しっぽをふりまわす。

たしかわんわんってうれしいとしっぽをふるんだよね?

このわんわんはぼくとあそんでほしいんだ!


ーー


山に棲む人狼は戸惑っていた。

地上最強の生物が滑落死し、その肉を頂戴しに来たのだが…まさか甦り、何事も無かったかのように立ち上がったのだ。


このままでは殺される…と思い牙を剥き、闘いの興奮から尾が激しく振れる。

いや、生物は死に直面した時は異常に興奮すると聞く。これはきっとそれか。と、妙に納得し、自分の生もここまで。と諦めた時だった。


「わんちゃん、あそぼー!」


…目の前の筋肉ダルマのおっさんは、自分に極上の笑顔を見せながら無警戒に向かってくる。

これなら殺れる…と爪を喉元に一閃させたが…


「きゃいいいん!」


爪は見るも無残に根元から剥げ、鮮血が噴き出す。

ならば牙だ、とおっさんに噛み付くも…


「あまがみっていうのかな?かわいいねー」


おっさんは自分を抱く…


…いや抱擁など生易しいものではない。鉄の万力か何かで首を絞めつけられているようなものだ。


「きゃいいいん!きゃいいいん!」


人狼になって初めて上げる命乞いの悲鳴…。それすら目の前の男には犬が遊んで欲しくて鳴いているように聞こえるのだろう…。


「ぎゅー。」


ミシミシ!グキッ!ベキベキッ!


…あ、これアカンやつや…。

目の前が真っ暗になる…。酸欠と共に首、背骨をへし折られ、人狼は完全に意識を手放したのであった。


ーー


「心太!心太!しっかりして!」

…目の前の女がうるさい。分かっているから少し黙ってろ。

しかし…声もうるさいなら外見もうるさい女だ。金色に染めたウェービーヘアが鼻にかかる上に下品な香水の匂いがしてたまらん。

…だが胸は大きい。

それだけだな、こいつの取り柄は。


「うるさい、殺すぞ。」

殺気を込めて睨む。大体の人間はこれだけで逃げていくのだが…

目の前の女は目を潤ませて俺を抱きしめてきた。

「あぁ、心太…なんて冷たい目をするようになったの…」


…心配して、泣いている…のか?


いや、しかしここはどこだ?見たところ何もかもが別世界で音に塗れた世界だ。空気も悪い。

周りに巨人しかいない所を見ると、ここらは巨人の住処なのだろう。

人里を離れているうちに文明というものはここまで変わるのか…。俺はぼんやりと周りを見ていた。


「心太、警察が来て事故処理が終わったら病院に行くわよ?」

耳慣れない単語ばかりだ。一体何の話かもわからない。シンタという呼称は自分のものか、とは理解したが…

しかし…ここは迂闊に動くのは危険だ、と感じた。

巨人達には巨人達のルールがあるし、それをみだりに破ってはならない。

我ながら迂闊にも程がある、と胸のポケットに入れておいたタバコを探す。が。


…ない。代わりにあるのは可愛らしいアップリケだけだ。


身体の異変に気付く。

これは…巨人の国などではない。

彼らは間違いなく人間。そしてーーーー


俺は子供に戻ってしまった。


という理解不能で理不尽な現実を突きつけられた時。


あまりの不可解さに俺の脳ミソは焼き切れちまったようで、その場で意識を失った…。


ーー


「はッ…!私はあのバーサーカーに…」

人狼は並外れた回復力の為になかなか死ぬ事は無い。

それだけに長く見た悪夢…

筋骨隆々のおぞましいオッサンから抱き着かれ、意識を吹き飛ばすまで首を絞め上げられあまつさえ首や背骨をバキバキに折られたという悪夢のような現実…

それを思い出し、人狼は辺りを見る。


…どうやら悪夢は去ったようだ。


「…たまに子供達に栄養を摂らせたいと願うとこのざまだ。」


やれやれ、と首を振り人狼は人の姿を取る。

金髪のウェービーヘアに人里で買った一番安いセール特売の服を着た人狼は…

人狼がバーサーカーと呼んだ男を否応無く刺激した。


バーサーカーは野原でウサギと鬼ごっこをしていたが…彼はまた人狼を見て笑顔を見せる。


「ヒィ!」


短く叫ぶ人狼だが、最早打つ手などない。バーサーカーの姿を見て腰が抜け立ち上がる事すら出来ない人狼は人間の姿に戻った事を激しく後悔した。


犯される。その上で殺される。

いや、そもそも殺して貰えるのか?

あの男はずっと山籠りをしていた。となれば人里に戻るつもりもないのだろう。

人狼の頭をよぎるのは…バーサーカーのペットとなり彼に無理矢理奉仕させられる姿だ。


「く…来るな…!」


人狼となりてどの位の時間が流れたのかはハッキリ覚えていない。

だが覚えているのは、それまでのように泣かなくて済んだ事。

自分は強くなった。なのにまたこうして男に屈服させられるのか!


「来るなぁぁぁぁぁぁ!!!!」


人狼は叫ぶが…バーサーカーは満面の笑みで足を早める。

そして…


「ママー!」


バーサーカーは人狼の胸にダイブした。

「ぐふぉ!」

顎にモロに頭突きを喰らい人狼はダウンする。

…その時にまた首の骨が折れる音が聞こえた気もしたが…そんな事すら些細な事だ。


…ああ、次に目が覚めたらこの悪夢が終わっていますように…


人狼は人狼になって初めて神に祈り…また意識を手放したのであった。


ーー


ママがおかしい。

ぼくいつもみたいにママにとびこんでいっただけなのに、ママはめをまわしちゃった。


…まぁいいや。ママもつかれてるからおひるねくらいしたいよね。


ぼくもつかれてきたし、ママのおっぱいをまくらにしてねようっと。


ーー


ベキベキベキ!

肋骨が軋む音と共に人狼は目を覚ました。

そこにあったのは…自分の胸を枕に横になるバーサーカーの姿だった。


「ぐえええええぇぇぇ…!

っ!!何さらすんじゃ、オッサンクソボケぇーーーーーーーーーーーッ!」


全力で起き上がり、渾身の力でソバットを繰り出す。

頬にヒットしたソバットはバーサーカーを怯ませたが…


「…ひどいよ…」


バーサーカーは目にいっぱい涙を溜めて人狼を見る。

「ママがぼくをぶったーーーーーーっ!」

大声で泣き叫ぶバーサーカー…。

あっけに取られた人狼だが、すぐにその声の危なさに気付いた。


野ネズミに限らずウサギや鳥がバタバタと倒れていき、近くの湖の魚達が失神し浮かぶ。

人狼もまた耳と鼻から大量の血を流し失神しかけたが…ここで失神する事は死に繋がる。


「ぼ、ぼうや、ごめんなさいね、大丈夫だった…?」


目からも血を流しながら人狼はバーサーカーに微笑みかける。

次第に泣き止むバーサーカー…。

「ごめんなさいね。大好きよ。」

トドメとばかりに抱き締める。この位置からなら頭をひと噛みにして殺せる…!


「うん…ぼくもママだいすき…」


ぎゅう、と再度自分を抱くバーサーカー…

「ぐえええええぇぇぇ…!」

軋む骨の音を聞きながら人狼は思った。


何なんだよこの拷問。

これじゃ犯されて奴隷にされた方がまだ精神の持って行き場があるぞ。

寧ろそうしてください。いや割とガチめに。

お願いですから。何でも言う事聞きますし逆らいませんから。何でもします。女としての尊厳を全てこのバーサーカーに差し出しても構いません。

だからーー


こんなオッサンに自分をママとなんて呼ばせないで下さい、神様……


そしてーー


めきょっ☆


という嫌な音と共に、人狼はまた意識を手放したのであった…。


ーー


…信じ難いが俺は異世界とやらにいるらしい。

病院とやらで診てもらったが異常はない。

「ちっ、死んでなかったのかよクソガキが(良かったわね、何もなくて)。」

…この女は口ではボロカスに言うが本心は真逆だ。

その証拠に俺を見て目を潤ませ、抱き締めながら涙を流している。


…獅子は我が子を千尋の谷から突き落とすと聞く。


これは例え親であろうと誰にも心を開くな、という母の愛情から来る教訓、そして帝王学だろう。

だが我が子を可愛く思わぬ訳がない。それが言葉とは裏腹の愛に溢れた態度だ。まさに獅子の心無くしては出来ぬ帝王学…。

口で罵りながら心の中で泣き…。俺の身体の持ち主はそんな母の心を理解した時、自分は誰よりも母に愛されていた、と思い知るのであろうな…。


周りの人間は武器すら携帯していないが、それは力でなく頭脳で相手を支配出来る自信があるからに相違ない。

故の帝王学であればこの女の行動も十二分に納得が出来る。


「…成る程。理解した。」


誰にも心を開いてはいけない世界か。

世界は違えど人は何も変わらないのだな。

…しかし今の俺は無力。この女の庇護無くしては一日たりとも生きられんだろう。

女に連れられ帰った家は…


「ウサギ小屋じゃないか…」


こじんまりとしたウサギ小屋だった。


「おい心太、今日隣のかすみちゃんにお風呂入れてもらえ。」

女は仕事だと言い家を出る。夕刻を回ってからの仕事という事は飲食業であろうな。やれやれ、何処の世界でも何も変わりはしないものだ。


「おう、来たかところてん。」

…5歳くらいか?快活そうな少女が俺の頭を撫でる。

「風呂に入りに来た。かすみとやらは何処にいる?」

「…は?ところてん、かすみはアタシだろ?ボケたのか?じいちゃんみたいに。」

…訂正。快活改め失敬な女と言い換えよう。


こんな子供の身体を見ても情欲もクソも湧きやしない。

だが久々に子供の身体をまじまじと見てみると子供の頃から性差というものが存在するのだな、と思う所だ。

性差について学術的な興味は湧くがとてもではないが劣情など催さない。自分にそのような趣味が無いと分かっただけでも一安心だな。


頭を洗い身体を洗い、風呂を借りた恩だしかすみとやらの身体を流してやる。

「ありがと。」

ニヘラ、と笑う笑顔が眩しい。

こんな笑顔を向けられたのはいつ以来か。

久々に気分が安らいだ時…脱衣所から声がする。


「かすみー、しんちゃん、お風呂入るわよー。」

「はーい。」


かすみの母だろう。

そして脱衣所から風呂場に来た女は…


…どこまでも艶めかしく、山にて人との接触を絶っていた男にとっては目のやり場もないようなあられもない身体をしていた。

なだらかな双丘、そして艶やかな肌…いかん!


「おい、どうしたところてん!いきなり湯船に浸かって!」

「溺れちゃうわよ?全く。」


…まだ幼少故か、身体的な反応が無かったので良しとしよう…。

だが。目に毒にも程がある!


…元の山に帰りたい…!


俺は心底そう思い…身体を拭くべく外に出た。


ーー


「(厄介な事になっちまった…)」

人狼はバーサーカーと手を繋ぎ家路へと向かう。

人間が建てたログハウス…それが人狼と子供達の棲む家だ。

子供達といっても妙齢で雌しかいない。

雄の子供も何人か居たが、雄の子供は性成熟が早く人狼よりは人としての生を選び、人里に降りていった。

そんな中にこんな危険生物を連れて行って良いのか悩む所なのだが…

ニコニコ笑うバーサーカーの顔は幼児のそれだ。力加減さえ間違わないならそうそう危険はあるまい。


「(あー気持ち悪い。)」


自分も大概な年齢といえば大概な年齢だが、それでも若作りはしているつもりだ。

が。バーサーカーは髪は伸びっぱなし、上半身裸、そして裸足。救いはパンツを穿いているくらいか。


「ママ、おなかすいたー!」


「はいはい…」

これが全て演技で、家に着いた途端に本性を出して自分も娘達も皆頂くつもりじゃないだろうな…

と思う人狼だが…それは杞憂に過ぎなかった。


バーサーカーは娘達を「お姉ちゃん」と呼んで懐き、娘達はドン引きながらも

「記憶喪失になった可哀想なおじさん」

と認識し…全ては上手くいくと思われた。


が。


「…ママ…おねえちゃん…おしっこ…」


バーサーカーは内股でもじもじと歩く。

「は?アンタ…トイレすぐそこ!」

「ひとりじゃできないよう!」


「「「「なにいぃーー!!!!」」」」


四人が叫ぶ。

「いやいやいや!あんなオッサンのナニ掴むのなんて嫌よ!」

「アタシも嫌よ!つか密室で二人になんかなりたくない!」

「ちょっ…お姉ちゃん達!私も絶対嫌だからね!ママがやってよ!」

「は?何で!アタシも嫌よ!」

醜い諍いが起き…それもすぐに終わった。


「もれちゃうーー!はやくーー!」


バーサーカーが暴れ出し…ログハウスが揺れる。


「あ、昔使ってたおまる!あれは…」


人狼は納屋に走り、バーサーカーにおまるを渡す。

バーサーカーはパンツを下げおまるに座り…


「Oh…」


それなりの経験を持つ人狼をして絶句させる程の大砲を晒したのであった。


「(…こいつが記憶喪失で良かった。こんなもん使われた日には内臓が口から出るわ…)」


…本当に厄介な事になった。


人狼は泣きたい気持ちを抑えながら、なんとかバーサーカーの記憶を取り戻す方法を考えるのであった。

書いていて気持ち悪くなった作品というのも初めてですね…


気分転換にはなりましたが、これの続きはあんまり期待しないで下さい。

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