アスタット領酒場にて
酒場での一幕
ゼオン大陸の最西端からおよそ4分の1を領土とするヴァイン公国。残りは全てアガス帝国領であり、帝国評議会員がそれぞれの領土を治めている。
ヴァイン公国の南西海域にはティータリア諸島があり、6つの島からなる連合国を築いている。
ゼオン大陸の北、海を渡った先にはリュセナ大陸があるが、大陸間の海域には大渦がいくつもあり、およそ5月に一度しか渡ることは出来ない。今だ謎であるが5月に一度、大渦が収まり2週間ほど行き来ができる。必然的にお互いの特産物は高く取引される。
ゼオン大陸の南、諸島をさらに越えた先にはそびえ立つ塔が海から建っていて、雲の上まで延びているその塔は世界どこからでも見れるほどに巨大で美しく、「神の塔」「神界への道」等と呼ばれている。
数々の冒険者や王公貴族が挑むも帰ってきた者はいない。
ヴァイン公国のアスタット領は、公国領の南西に位置している。ヴァイン公国は地域を4分割しており、南西をアスタット家、北西をイズマス家、南東をカーウェン家、北東をフューギルド家が、そして中央に公都がある。
アスタットの町はアスタット家の拠点でもあり大きな町で、港がありティータリアとの交易が盛んな町でもある。
宿屋:「いらっしゃいませ♪」
ブリック:「三人部屋一つと一人部屋一つあいてるか?」
宿屋「かしこまりました♪70銀貨になります♪」
ブリック:「おう」
宿屋:「こちらお部屋の鍵でになります♪ごゆっくりおくつろぎください♪」
ブリックは一人部屋の鍵をマゼンタに渡し、それぞれが部屋に入っていく
マゼンタ:「あたしお風呂にはいるから後は任せたわよ。夕食時になったらロビーにいくから」
ブリック:「長風呂はやめてくれよ?」
マゼンタ:「乙女は身支度に時間がかかるのよ」
三人:「乙女って…」
マゼンタ:「コロス…」
三人:「ヤベェ!逃げろ!」
マゼンタ:「全く…」
それぞれが部屋に戻り一息着いた後、宿屋の向かいの酒場にいく。
この酒場「マタタビ亭」はいかにもな名前だが…いかにもなのである。
マー:「いらっしゃいませにゃー♪」
セム:「らっしゃい…にゃ」
ティータリアに住む猫族の夫婦が経営してる酒場で、かわいらしい妻のマーと渋い夫のセム。
料理の味は一級品で人気の酒場である。
猫族は120センチ程の小柄な種族で、とても器用かつ俊敏、フレンドリーな種族である。
マゼンタ:「マーちゃーん♪」
いきなり抱きつくマゼンタに驚きつつも頬擦りするマー
マー:「マゼンタにゃー♪久しぶりだにゃ♪7月位かにゃ?」
マゼンタ:「うんうん♪それくらいー♪マーは変わらずかわいいなぁ♪」
ブリック:「よぉ。セム」
セム:「おぅ…にゃ。なんにする…にゃ」
ブリック:「エール3つブドウ酒一つ。後、飯は任せる。」
セム:「おぅ…にゃ」
マー:「あはは♪相変わらずブリックとセムは会話が少ないにゃ♪」
ブリック:「まぁ男なんてこんなもんじゃねーの?一応料理の師匠だしよ」
ゾーム:「そのわりにはお主の飯は不味いがの」
ブリック:「うるせぇジジイ」
パック:「お久しぶりです姉御」
マー:「パックにゃん♪元気にしてた?♪ちゃーんとやれてる?♪」
パック:「えぇ…こいつらに振り回されてますがね…」
マー:「あはは♪頑張るにゃんパック♪」
店主達と会話しながら席につく一同。それを不思議そうに眺める他の冒険者達。
ベテラン風情の冒険者一同が敬意を払ってる姿が不思議に見えるのだろう。
若い戦士:「なんだ?あの猫族すげーのか?」
若い魔法使い:「わからない。でもあの魔女…あれ[深紫の魔女]様だぜ…」
若い戦士:「マジかよ…」
ざわつく周りの騒音に居心地が悪くなったのかセムは早々とキッチンに引っ込む
マー:「相変わらずうちの旦那もシャイだにゃぁ♪」
マゼンタ:「騒がしちゃってごめんねぇ♪フカフカだぁ♪」
パック:「いい加減姉御から放れろよ…マゼンタもよぉ…」
マー:「良いにゃ良いにゃ♪」
一同が和気あいあいと久しぶりの再開を喜びあっている時、酒場の扉が乱暴に開け放たれる。
なかなかに厳つい冒険者が5人、ドカドカと煩く入ってきた。
場数をある程度こなして気が大きくなっているのだろうその冒険者達はどかっと椅子に座り横柄な態度で酒を注文する。
マー:「はいはい♪エール5つにゃ♪」
厳つい冒険者:「おう!なんだこの酒!薄めてんじゃねーのか!?」
マー:「薄めてないにゃ!そんなことするはずないにゃ!」
厳つい冒険者:「なんだぁ?!俺が嘘ついてるっていいてぇのか?」
ゾーム:「まぁまぁ…落ち着きなされ。どれどれ…わしが味見してやろう。」
そういうとゾームは厳つい冒険者の酒を一気に飲み干した
ゾーム:「んー!うまい酒じゃ!店主。これは一級品じゃな。諸島の綺麗な小川を感じるぞい」
マー:「そうにゃ♪エンバスの小川の水は世界一の水にゃ♪私たち猫族が端正込めたお酒にゃ♪」
そういうマーはどこか誇らしげに胸を張る。ティータリア諸島のエンバス川は満々と清水が涌き出る世界一綺麗な小川であり、その川のほとりで作る猫族のエールは世界各国で愛される酒である。
ゾーム:「そうじゃ、お主らこの酒が薄いというならわしと飲み比べでもせんか?水みたいに薄い酒じゃと言うならわしに勝てるじゃろ」
そういうとゾームは懐から包みをだしてテーブルに置く
ゾーム:「ほれ、金貨300はあるぞ。わしに勝ったらこれをくれてやる」
厳つい冒険者:「ほほぅ…やってやろうじゃねーか!」
厳つい冒険者達はニヤつきながら承諾すると、周りに野次馬が集まりいよいよ飲み比べが始まる。
一人二人と厳つい冒険者達は潰れていくがゾームは全く顔色変えず。
三人、四人と倒して最後の一人になってしまった
厳つい冒険者:「このジジイ化けもんか…」
そういうと最後一人はテーブルに突っ伏す
ゾーム:「なんじゃなんじゃ…若いもんがジジイより早寝とは…ずいぶん行儀がいいもんだ」
マー:「さすがにゃ♪ゾーム様に飲み比べで勝てる相手はいないにゃ♪」
ゾーム:「マー殿や、こんなうまい酒ならずっと飲んでても酔わぬぞい」
マー:「にゃはは♪嬉しいにゃー♪」
パック:「おいおい…酒代幾らだよ…ヤベェだろ…」
セム:「代金は構わない…にゃ。今日は助かった…にゃ」
パック:「ってもよぉ…あにさん…見てみろよ…ゾームのおっさんまだ飲んでるんだぜ…」
セム:「……だ、大丈夫…にゃ」
呆れかえる一同と盛り上がるゾームと野次馬。
わいのわいのと盛り上がる酒場の夜が明けていく。
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