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ガラスの靴2

 普段は来る者が多いものの、静寂に包まれている大聖堂が沸き立っている。

 最近、神の子という者が現れ、壇上にはその少女を囲む神官たち、そして、先日から集められていたコノ村の人々が居る。

 コノ村は昔は盗賊を生業としており、今やその鳴りを潜め、農耕を盛んに行なっている。

 村から集められた男女数名は、その盗賊家業を行なっていた残りの者たちであった。


 男女の姿は、目を背けたくなるほどに、数々の暴力の痕が晒された肌にある。きっと、衣服の下にもと想像せざるを得ない。


「罪を重ねた盗賊の一族に罰を」


 少女の一声に、信者たちは納得したようでもある。次第に歓声が高波のごとく押し寄せ、少女たちにかかる。

 少女の口元が歪む。それでも神秘的な笑みのように見えた。


「この者たちは、死という償いをし、罪から解放される」


 神官の下にいた女が衣服を掴まれ立ち上がる。

 ふらふらと覚束ない足取りだ。何とか掴まれているので、そこに体重を預けている。

 女の隣に居た男は腫れ上がった目を何とか開き、か細い声でやめてくれと言っている。

 その声が届いたか、少女は男を見つめ、いたずらをした子どものごとく、茶目っ気のある笑みを見せた。


 力なくうなだれた女の首に、輪を括ったロープがかかる。

「やめてくれ、女は助けてやってほしい」

 壇上の声は興奮した信者たちの声にかき消された。

 神官に引き連れられ、即席の絞首台に立たされると、女の足元が開き、ロープだけで体重が支えられた。

 暴れていた女が突然ぴたりと抵抗をやめ、風に吹かれたかのように揺らめいている。

 男は絶望した。




「これで盗賊であった者たちは罪から解放された」


 少女の声に拍手が鳴りやまない。

 神官の手に引かれ、少女は壇上をあとにする。

 集りの中でそれを見ていた神学校の制服に身を包んだ少女は、狂っていると思った。

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