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日本共和区偏 第1章 時間跳躍

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 日本国首相である原田辰三(はらたしんぞう)は管理世界から使者として現われたダニエルの提案で、過去の日本に自衛隊含む数多くの部隊と組織を派遣する事を決断し、閣僚会議で大日本帝国に自衛隊等の組織と部隊を派遣する事を決定した。


 その際にアメリカ、イギリス、フランス、カナダ、ドイツ、イタリア、シンガポール等が集まった各国軍で編成された連合軍と民間の団体、企業、組織、警察機関、背広組から集まり組織された連合が同じく、第2次世界大戦の時代にタイムスリップする事になっていた。


 日本と加盟国(後の新世界(ニューワールド)連合と新世界(ニューワールド)連合軍である)は非公式の会談で何度も協議し、緻密な打ち合わせをすると、太平洋戦争時の日本とアメリカを含む連合国との戦争では表向きの介入はしないと新世界連合と新世界連合軍は表明した。


 しかし、自衛隊、大日本帝国陸海軍、警察機関への武器兵器及び技術供与は行う事を約束した。


 だが、その条件としてすべての戦闘データは提供する事を要求した。


 他にもいくつかの要求が出たが、どれも受け入れられる(と言うより、日本国が大日本帝国に行う事を最初から決めていた事だったため、まったく、問題ない)。


 それに、各国の武器兵器を日本側に対外有償軍事援助として、武器兵器装備の価格を低下させ、教育、訓練を受けられる事になった。


 主にこの担当は大日本帝国に派遣される現場組の管理監督等を行う上位組織である統合省防衛装備局と警察機関への援助に関しては保安局に属する装備調達研究本部がそれぞれ担当する事になった。(しかし、この2つの担当は自衛隊と警察機関等の銃器の携帯が公務上認められた組織のみに対応する)


 先ほど、登場した統合省は大日本帝国に派遣される自衛隊、警察、消防等を含む公務員の現場組織と民間の現場組織の上位に位置し、統合省に属する現場担当の組織等の福利厚生、社会保障等を行う事だけでは無く、大日本帝国の行政、立法、司法とは完全に独立し、日本国の行政、立法、司法を行うための機関であり、統合省は3つのうちの1つである行政を任されている。


 統合省はその内部部局に総務庁、法務局、外務局、財務局、文部科学局、厚生労働局、農林水産局、経済産業局、国土交通局、環境局、防衛局、防衛装備局、保安局、復興局、災害対策防災局等が置かれ、統合大臣、統合副大臣、統合省官房長官、官房副長官は原田政権の閣僚である(主に副首相と副大臣等)。


 他の内部部局の長である長官及び副長官職は官僚出身者でも政治家出身者でも無く、大学の教授か准教授又はそれらの分野についての専門家、研究者であり、一定の年齢に達した者と責任能力がある者が選抜された。


 統合省及び総務庁とそれ以外の各局に属するのは省庁から選抜された職員が選抜された。しかし、全職員は保守派では無く、改革派であり、元いた省庁でも優秀ではあるが、性格的にぶっ飛んでいたり、野心家だったり、変人だったり、改革的思想が災いし、孤立気味の職員である。


 外局として、検察局、弁護協会、裁判所、航空機事故調査委員会等が置かれている。これらの組織は行政担当である統合省からも独立している。


 立法として、日本国憲法に従い、日本国と大日本帝国の国会に相当する議会を設置し、大日本帝国に派遣される組織、団体の中から、立候補者を集め、非公式の選挙活動を行い、40人の議員を決定した。





 統合省は非公開で設置され、初代統合大臣に就任したのは原田政権で副首相兼内閣府特命担当大臣であった加藤(かとう)(しげる)が選ばれた。


 加藤は外務省の外交官として、20年以上勤め、ヨーロッパ、中東、北アフリカと情勢が悪い国の大使館や領事館で勤務し、かなり内政の不安が強い国々で勤務していたから、文民として外国人として海外の戦争を傍観していた。20年以上のキャリアを積むと、その後、身内の誘いで政界に入り、原田が属する党に席を置いた。


 原田が党首とする党の幹事長として選挙活動をしていた時、彼が作った広報活動が党だけでは無く、国内外からも高く評価され、彼が属する党は圧倒的支持率で政権を獲得した。


 当初は党首である原田から、首相の話が持ち上がったが、彼は断り、ナンバー2の立場にこだわった。


 もともと外交官出身者であるから、人と話すのはかなりうまく、その決断も原田政権に属する各大臣たちよりも的確に判断し、迅速に伝達する事から、原田以下他の閣僚たちの全員一致の結論で、彼が選ばれた。


 派閥としては改革的思想と保守的思想の2つがあるから、2つの思想を持った考えや政策等をバランスよく立案するから、与野党の質問の際も彼が答えると原田政権が行う政策に反対する党の議員たちも納得するか、黙るしかない状況になる。


 統合省が設置され、加藤が初めて、統合省の各長官たちと顔を合わせた。


 非公式であるため、日本国首都の東京都のどこかにある非公開の予備施設で各種挨拶と大日本帝国に行くための打ち合わせが開始された。


 加藤が大会議室に入ると、統合省内部部局に属する各長官が席から立ち上がった。


「かけてくれたまえ」


 加藤が大会議室の議長席に腰かけると、各長官たちに言った。


 各長官は以下の通りだ。


 統合大臣 加藤茂 統合省の長


 統合副大臣 白井(しらい)由美子(ゆみこ) 統合省の次席長


 統合省官房長官 出馬(いずま)(とおる) 統合省官房の長


 総務庁長官 香山省(かやましょう)() 総務庁の長


 法務局長官 (かし)(うめ)(きち) 法務局の長


 外務局長官 小関(こせき)信男(のぶお) 外務局の長


 財務局長官 出雲(いずも)(たける) 財務局の長


 文部科学局長官 金子静留(かねこしずる) 文部科学局の長


 厚生労働局長官 野口(のぐち)(けん) 厚生労働局の長


 農林水産局長官 関崎(かんざき)一三(かずみ) 農林水産局の長


 経済産業局長官 山下智彦(やましたともひこ) 経済産業局の長


 国土交通局長官 和田(わだ)(かつ)(のり) 国土交通局の長


 環境局長官 青木(あおき)正純(まさずみ) 環境局の長


 防衛局長官 村主(すぐり)葉子(ようこ) 防衛局の長


 防衛装備局長官 (ほそ)(かね)(たくみ) 防衛装備局の長


 保安局長官 白河(しらかわ)(つとむ) 保安局の長


 復興局長官 玉置(たまき)(はじめ) 復興局の長


 災害対策防災局長官 須藤芳郎(すどうよしろう) 災害対策防災局の長


 彼らがそれぞれの局の行政責任者であり、その分野で加藤を補佐する責任者でもある。


 統合省に所属する職員(内部部局のみである)は4500人である。そのうち、女性職員は850人であり、上中下でもバランスよく役職についている。


 ちなみに統合省防衛局の下部組織に統合幕僚本部が置かれており、統幕本部の下に菊水総隊と破軍集団の2つが存在する。


 統合幕僚本部長は菊水総隊司令官の山縣幹也(やまがたみきや)海将が統合幕僚議長だった時、彼の前任者であった本財(ほんざい)(やす)()陸帥である。


 本財は山縣よりも背が高く、歴代の幕僚長たる将の中で自衛官や海外の軍人からももっとも評価され、支持された人物であった。


 陸帥とは幕僚長たる陸将より上の階級として位置づけられており、階級章は幕僚長たる将の4つの桜では無く、1つの菊の花である。諸外国軍では元帥に相当しているが、自衛隊では一種の名誉階級である。


 帥に昇進するには幕僚長たる将で何事も問題が起きず、まったく、処分等を受けず、幕僚長たる将で何らかの職務で国会や政府が認める功績を上げた自衛官が統合幕僚議長又は陸上幕僚長、海上幕僚長、航空幕僚長の任期を終えて、退職する将が昇進する階級である。


 ちなみに、海上自衛隊は海帥、航空自衛隊は空帥である。


 国内外では定年退職時の表彰を階級にしただけだ、と思われている。


 大日本帝国に派遣される自衛隊の階級で、幕僚長たる将の階級が与えられているのは山縣を含めて3人だけである。


 1人は山縣であり、もう2人は統合幕僚本部次長、破軍集団司令官である。


 後、統合省保安局は下部組織に警察総監部、海上保安本部、警備本部、装備調達研究本部が置かれており、防衛局統合幕僚本部と同じく、各種企画等を含む計画、訓練や教育、研究等のデスクワークが主であり、現場がしでかしたミス等の後始末である。





 統合省の内部部局の長官及び副長官と外部部局の局長、副局長又はそれに相当する責任者と顔合わせを終えると、いよいよタイムスリップの時期が迫ってきている。


 加藤は大日本帝国に派遣される日本人(日本国)の代表として、そして、派遣される自衛隊の最高司令官であり、警察、海保等の銃器武装組織の最終決定権を有する者として、宿泊するホテルの部屋で莫大な量の資料に目を通していた。


 その資料に記載されているのは大日本帝国に派遣される統合省の副大臣、各庁局の長官、副長官又はそれに相当する役職の者、統合省の職員、裁判関係者、検察官、弁護士自衛官、警察官、消防吏員、海上保安官、警備官、刑務官、入国警備官等の公務員、特別国家公務員たち、そして、各民間企業から派遣された事務員、社員、技術者、各学校を含む教育施設の教職員、国立、県立、市立の病院から派遣された医療関係者と教育者、技術者たちの名前と家族構成等が記載された名簿である。


 この片道切符の派遣に志願してくれた日本人は当事者たちが驚くほどの規模であった。


 その数は30万人である。


 そのうちの半分が公務員又は特別国家公務員である。後の半分が民間人である。


「しかし、この短期間でよく決断し、ここまで集まったものだ」


 加藤はつぶやく。


 新世界連合軍と新世界連合はこの3倍以上であると教えられている。


「我々の最終目標である核なき世界と恒久的世界平和を築くにはこれだけの規模を派遣しなくては実現できない」


 加藤は資料を、1つ1つ丁寧に目を通した。


(このSATの隊員には2人の幼い子供がいるじゃあないか・・・)


 加藤は今まで触れない事を心に決めたセリフを心中でつぶやいた。


 これまで資料を目にすると親子、兄弟等で志願している者も少なくない。似た者同士であるから考える事は同じ、そして、これは完全な志願制であるから、本人の意思を無視できない。


肉親がいるから外す、という事は許されない。


「・・・・・・」


 加藤は目を閉じ、少し考えると、彼は携帯電話を取り出した。


 自分の腹心であり、もっとも信頼できる男である出馬に連絡した。時刻は後数時間で日の出の時間になろうとしている頃だが、出馬も眠れなかったのか、起きていた。


 加藤はある事を頼み、そして、これまで保留にしていた事を決断し、出馬に頼んだ。


 出馬は快く承諾した。


 加藤はホテルの部屋を出ると、24時間営業のレストランに足を運び、1つのテーブルを押さえた。


 少し待っていると、背広を着た1人の青年が現れた。


「進。こっちだ」


 加藤は息子の名を呼んだ。


 彼の息子の名は加藤(かとう)(すすむ)


 名門大学を卒業し、その後、大学院に進み優秀な成績で卒業した。大学院を卒業後は内閣府の秘書として採用され、現在は首相補佐官(国家安全担当)として首相を補佐している極めて若い青年だ。歳は今年で31歳であり、内閣府では、統合省大臣補佐官に志願している事をできれば辞退し、内閣府に残ってほしいと言われている。


 進は加藤の前に座ると、じっと待った。


「進。お前の意思を尊重する。君を私の補佐官(安全保障担当)に任命するが・・・迷いはないか?」


 加藤が聞くと、進は首を横に振った。


「ありません。大臣」


 進はあくまでも補佐官として答えた。


「そうか」


 加藤はうなずいた。


 彼は自分の息子が自分と同じく、この道に進む事を快く思わなかった。できれば、この時代に残って、人並みの幸せを過ごしてほしいと思っていたが、この派遣に志願した者の中にも自分の子供がいる。だが、誰も子供だからと言う理由で外してはいない。なのに、自分がそれを行う事はできない。そう判断したから、加藤は自分の息子の志願を認めた。





 タイムスリップ当日。


 東京都小笠原村南鳥島にある海上自衛隊南鳥島航空基地ではタイムスリップに備えて、基地に所属する陸海空自衛官と統合省の職員等を含めて、かなりの数の人員がこの島にいる。


 もともと南鳥島航空基地は海上自衛隊硫黄島航空基地隊に所属する分遣隊がこの島に配置されていただけで、同島にいる住人は数10人ぐらいだった。


 現在ではこの島には統合省の職員及び自衛官を合わせれば4000人を超える。タイムスリップの第1陣は北富士演習場でタイムスリップが無事成功したため、今回は本格的な施設と設備等を含む第2陣がタイムスリップする事になる。


 第1陣が到着した翌日である。


 南鳥島航空基地と島に上陸した人間、資材等を1940年(昭和15年)10月5日の南鳥島にそのまま移動させると言う。SFのような話ではあるが、ダニエルの話では可能だそうだ。


 しかし、自由自在に移動できる車両、船、航空機とは違い、固定された建造物の移動にはさまざまな制約がある。


 さまざまな問題が起きるとされており、あまり多くの建造物を送る事はできない。そのため、ダニエルと相談の上で、大日本帝国で派遣される組織、団体がそれぞれの活動をするために本当に必要な施設のみを送る事にした。


「タイムスリップ5分前。各員は指定された天幕へ移動してください」


 南鳥島全域にそのような放送がされた。


 大日本帝国に派遣される日本の行政機関は一時的に南鳥島航空基地を仮行政機関にするが、すぐに大日本帝国帝都である東京府の近隣の土地を買い取り、そこを自治区として行政、立法、司法の中枢とする事になっている。


 すでに土地の購入については第1陣に同行した白井統合副大臣と交渉団が交渉し、大日本帝国政府の承諾を受け取った。


 後は自治体等の地元との交渉だ。


「加藤大臣。タイムスリップ時間です」


 南鳥島航空基地の管制塔に上り、タイムスリップする光景を間近に見たいと思った加藤はその光景を眺められる管制塔に上がった。


 彼にタイムスリップの時間を教えたのは統合幕僚本部長の本財(ほんざい)保夫(やすお)陸帥である。


 統合幕僚議長の任期を終えて定年退職した彼は65歳になるが、誰が見てもまだまだ現役だろうと思える風貌だ。身長も長身であり、その顔つきから誰もが口を揃えるが俳優の世界で飯を食った方が億万長者になるだろう、と10人中9人は答える。


 陸上自衛隊の冬服姿で陸帥の階級である菊が左右の襟に縫われている。


「わかった」


 加藤と本財は実は同じ地元出身なのである。


 お互い一度も顔を合わせた事は無いが、小中学校は同じ学校だったのである。そのため、顔を合わせた後の、2人の仲はいい。


「しかし、この島にある施設と人員等がまったく問題なく、80年前のこの島にそっくりそのまま、送れるとはとても信じられない」


 加藤はつぶやく。


「まもなく、それが実証されます」


 本財が答える。


「大臣。その事については第1陣で実証済みです。今回は規模と状況が異なるだけです」


 背後から聞こえた女声に加藤が振り返ると、きつめな顔つきの女性の中では長身の方に入るスーツ姿の女性が立っていた。


 彼女は統合省防衛局長官の村主葉子である。


 顔つきから、初対面の人が見れば常に怒っているのか、と思われる。


 村主の前職は国立大学で国際情勢や政治、軍事等を専門的に教える教授であり、その前の仕事は海上自衛官だった(退官時の階級は3等海佐)。地方総監部勤務で退官前の勤務は海上幕僚監部であった。


 彼女の10歳下の妹は海上自衛隊自衛艦隊護衛艦隊第1護衛隊群首席幕僚で1等海佐である。


 その時、加藤の意識が少し途切れたような感じがした。


「?」


「どうやら、タイムスリップしたようです」


 加藤が周囲を見回すが、村主は落ち着いた口調でそう述べた。


 本財が管制塔の通信機を取り、確認する。


「通信状態は?」


 南鳥島航空基地通信隊に連絡し、確認する。


 その後、南鳥島航空基地と資材等を含めた人員が目的の時代である昭和15年の南鳥島に到着した事が確認された。


 日本共和区偏 第1章をお読みいただき、ありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

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