日本本土防衛戦の裏側篇 第4章 菊水総隊陸上自衛隊第8機動師団
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
村主は、LRー2に搭乗していた。
「長官。新田原航空基地です」
機長からの報告に、村主は静かに答えた。
「わかった」
LR―2は、ゆっくりと高度を下げた。
そのまま新田原航空基地の管制に従い、新田原航空基地の滑走路に着陸する。
滑走路から誘導路へ、そして待機場に移動すると、村主はタラップから新田原航空基地の地面に足を着けた。
「お待ちしていました。村主長官」
菊水総隊陸上自衛隊第8機動師団長の、堀川武文陸将が出迎えた。
「出迎え、ご苦労」
「ヘリを待機させています。詳しい話は、そちらでしましょう」
堀川が第8機動師団第8飛行隊飛行班に所属する、UH-1Jに案内した。
「申し訳ありません、長官。長官クラスの方を乗せるのであれば、UH―60JAに搭乗させるべきなのですが・・・今回の演習に実戦部隊として、投入しますので、長官の出迎えには回せなかったのです」
「気にしなくていい。第8機動師団には苦労をかけている。この事態は仕方ない」
村主は気にした様子も無く、応じた。
今回、村主が第8機動師団の元に足を運んだ理由は、第8機動師団の中で、不満が広がっているからだ。
現在、南東諸島では、大規模な激戦が繰り広げられている。
南東諸島の防衛と警備を任せられているのは、第15旅団であるが、連合軍による大規模な侵攻であるため、彼らの対応を越えている。
そのため、菊水総隊統合防衛総監部に増援要請を行った。
普通であれば、菊水総隊陸上自衛隊傘下の第8機動師団に増援部隊として統合任務部隊の編成が命令されるのだが、増援部隊として統合任務部隊の編制が行われたのは、破軍集団陸上自衛隊第1師団及び第3師団であった。
自分たちの存在を無視されたと感じた、第8機動師団の下級幹部や曹士たちは、不満を爆発させた。
むろん、第8機動師団を、中央部は無視した訳では無い。
第8機動師団は、確かに西部地方の防衛と警備を任されているが、本来の任務は、朱蒙軍や新世界連合軍連合支援軍に所属する、旧中華人民共和国人民解放軍(国民派)との協議で、朝鮮有事及び中国有事に備えて、増援部隊として派遣される事が、任務であるからだ。
朝鮮半島は過去に中国共産党軍とソ連極東軍に2度にわたり侵攻されており、朱蒙軍陸海空軍によって撃退されたが、もしも中国軍とソ連軍が本気で侵攻を行えば、朱蒙軍の対応レベルを超える場合がある。
その時に備えて、第8機動師団等の部隊は、待機していなければならない。
でなければ、もしも同時期に中国有事又は朝鮮有事が発生した場合、第8機動師団が南東諸島に増援部隊として派遣されていますで、そちらに投入出来る部隊はありませんというような事にでもなれば、統合省の信用にもかかわる。
今回、第8機動師団等の部隊は、日出生台演習場と佐多射撃場で、大規模な演習を行う予定である。
村主は、その訓示と演習視察のために来たのである。
今回の演習は普通科部隊だけでは無く、機甲化部隊、特科部隊等が参加する大規模な演習である。
この演習で、下級幹部や曹士たちが、ため込んでいる不満を発散させる事が目的である。
「師団長。報告では下級幹部以下が、不満を爆発させているという事だが、実際はどうなのだ?」
「それは・・・」
堀川は、言い難そうに答えた。
「実際は、中級幹部の中にも不満を持つ者もいます。口には出しませんが・・・」
「そうだろうな」
村主を乗せたUHー1Jは、日出生台演習場の宿営地近くに着陸した。
日出生台演習場は、西日本の最大の演習場であり、その始まりは明治時代にまで遡る。
日出生台演習場のあった地域は、森林が失われ、土壌のやせた土地であった。
そのため、農業には適さない草原であったが、当時はロシア帝国との戦争に備えて、仮想戦地となる演習場を求めていた。
日出生台は、満州の土地に似ているとして、日本帝国陸軍の演習地として利用される事となった。
現代の日本では、西部方面戦車隊や西部方面特科隊等の戦車砲、榴弾砲、迫撃砲、対戦車ミサイル、機関砲等の実弾射撃が実施される演習場の1つである。
それだけでは無く、在日アメリカ海兵隊が、実弾射撃を実施する演習場の1つでもある。
「村主長官。昼食会の準備が出来ております。幕僚たちと意見交換を、お願いします」
「わかった」
村主は、宿営地の食堂に案内された。
「全員、起立!」
号令官の号令で、第8機動師団司令部に所属する、幹部自衛官たちが起立する。
村主は、自分の席に案内され、着席した。
「全員、着席!」
号令官の号令で、幹部自衛官たちが着席する。
村主の前に、アルミ製の食器が置かれる。
師団司令部だからと言って、幹部自衛官たちが、手作りの料理を食べる事は無い。
一般自衛官たちと同様に、戦闘糧食Ⅱ型・・・通称パックメシが用意されている。
メニューは、白米、チキンステーキ、漬物、味噌汁である。
「それでは村主長官。お言葉を」
堀川の言葉に、村主は頷いた。
「では、いただこう」
「「「いただきます!」」」
師団司令部の幹部自衛官たちは、箸を持った。
「長官。今回、我々は九州地方で、待機と言われましたが、再びソ連軍や中国軍が朝鮮半島に侵攻にする可能性があるのですか?」
中級幹部の1人が、尋ねる。
「その可能性は極めて高い。中国国民党軍と共産党軍とは停戦協定を締結したが、それに従わない者たちも数多くいる。国民党軍及び共産党軍の上層部は、暴走する者たちを止めているが、完全に止める事は出来ない」
過去の朝鮮半島侵攻に関して、国民党軍と共産党軍の将兵たちの中で、日本帝国との停戦協定に反対(主な理由としては、アメリカ軍の支援を強く受けていた者たちが、上層部の言う事を聞かなかった)する勢力の暴走が、原因とされている。
彼らは軍の指揮系統を逸脱して、アメリカ軍の支援下で朝鮮半島に侵攻した。
侵攻したものの・・・朱蒙軍の軍事力の前に、ことごとくの部隊が壊滅に追い込まれて、多くの将兵が捕虜になるか中国に撤退した。
国民党首及び共産党首は、命令系統を逸脱して、停戦協定下にも関わらず、朝鮮半島に侵攻した将兵たちを捕らえて厳罰を与えた。
しかし、厳罰を与えたが、結局、国民党及び共産党に対して不信感を募らせる将兵が続出し、第3の勢力を築く将兵たちもいた。
現在、連合国軍のアメリカ軍やイギリス軍は、第3勢力が築いた基地や駐屯地を利用して、再び朝鮮半島侵攻・・・いや、それだけでは無い。
対馬侵攻を、計画している可能性もある。
だが、それらの情報は、まだ、未確認であるため、彼らに話す訳にはいかない。
もしも話してしまったら、いらぬ誤解や混乱を招く可能性がある。
情報を知る者は、その時が来るまで、限られた者たちのみが知っていればいいのだ。
翌日・・・
朝8時に、村主は演説台に立っていた。
「第8機動師団に所属する自衛官たち。現在、北海道、南東諸島、フィリピン等の方面に、連合国軍が大規模な攻勢をかけてきた。貴官等は、その連合国軍の攻勢に対して出撃出来ず、相変わらず朝鮮半島有事、中国有事に備えて部隊を出撃準備しながら待機を命ぜられている。これに対して不満を思う者も多くいるだろう。目の前の火事に対して消火のための出動が出来ず、いつ起こるか分からない大火災に備えて出動待機が命じられているようなものだ。確かに不満に思うのは当然であろう。だが、これも重要な任務であるのだ。連合国軍は、確かに日本帝国領土に侵攻した。しかし、侵攻がこれだけでは無いだろう。朝鮮半島には朱蒙軍、中国には連合支援軍に属する旧中国軍が展開している。だが、連合国軍が本気になれば、中国国民党と共産党との停戦協定等、簡単に握りつぶされる。そうなった時、連合支援軍や朱蒙軍では対応を越える事態となる。朝鮮半島では朱蒙軍に不満を持つ不満分子の粛清が行われているが、中国で活動していた光復軍が、中国国民党との停戦協定に合意せず、地下に潜み韓半島を悪政から奪還するという旗を掲げて、大韓共和国内にいる不満分子たちを集めて、朝鮮半島内で大規模な破壊活動や反政府活動等を行っている。貴官等の出番も、遠くない未来にあるだろう。その時のために、備えてくれ」
村主は、ここで一旦言葉を止めた。
「最後に本演習は、貴官等がため込んだ不満を発散するために用意した。演習終了後は、宴会の準備も整えている。不満が残らないよう本演習で、力を存分に発散してくれ」
村主の演説は、終わった。
「敬礼!」
号令官の号令で、整列した第8機動師団、西部方面戦車隊、西部方面特科隊の隊員たち(主に幹部自衛官)が、挙手の敬礼をした。
89式5.56ミリ小銃を携行している普通科隊員たちは、銃礼を行った。
村主も、挙手の敬礼を行い答礼した。
村主が手を降ろすと、号令官は、「直れ」の号令を出した。
村主が演説台から降りると、変わって先任指揮官として、第8機動師団長堀川武文陸将が演説台に立った。
彼も、訓示を行うのである。
村主は堀川の訓示を横目に、さっき自分が話した、光復軍についての事を思い出していた。
光復軍は、中国国民党の支援の下で、同国臨時首都を創立させた、大韓民国臨時政府の軍事組織である。
韓国では、単に光復軍と呼称されている。
朝鮮半島が日本帝国の統治下から大韓市国の統治下に置かれた時、光復軍の一部が光復軍から離反し、大韓共和国の軍人に身を置く者や、企業に身を置く者に、分かれた。
しかし、韓国臨時政府は、大韓共和国は偽りの独立国だ!をスローガンに、韓国(大韓市国)政府の申し入れを鵜呑みにしなかった。
それどころか、中国国民党を見限り、アメリカの傘の下に入り込むと朝鮮半島に工作員等を送り込んで、韓共和国内の不満分子たちを扇動し、反政府勢力を築いた。
現在は、韓国国家地方警察が主体となって、反政府勢力の摘発に乗り出しているが、警察幹部からは軍の出動が要請されている。
そんな事を考えていたら、堀川の演説が終わった。
再び村主が、演説台に上がった。
第8機動師団(演習に参加する部隊)、西部方面戦車隊、西部方面特科隊の隊員たちが、車輛に搭乗した。
西部方面戦車隊の10式戦車を先頭に、演説台の前を横切る。
西部方面戦車隊本部管理中隊情報小隊に所属する87式偵察警戒車が、まず演習場に現れた。
今回の演習では、実戦を想定しているため、情報小隊による偵察活動が行われる。
87式偵察警戒車5輌が、茂みに隠れながら、偵察活動を行う。
やがて、目標となる的が、出現する。
87式偵察警戒車は、25ミリ機関砲を装備しており、火力としては89式装甲戦闘車には及ばないが、軽装甲車輛や非装甲車輛に対しては撃破可能である。
連合国軍は、偵察及び歩兵支援として軽戦車を前進させるため、軽戦車の装甲・・・正面装甲は、軽戦車によって徹甲弾による貫徹は困難であるが、側面装甲なら貫徹可能である。
標的となる的も、軽戦車の車体をイメージした形をしており、実弾射撃を行う隊員たちの練度を上げるための工夫が行われている。
87式偵察警戒車5輌が一斉に25ミリ徹甲弾を発射した。
最初は単発で、3発を発射する。
その後、連発発射で、10発を発射する。
全弾、目標に命中する。
そして、中戦車が前進してきた、という想定で、87式偵察警戒車の砲塔左右に装備されている発煙弾発射機(4連装発射機)から、発煙弾が発射される。
煙幕を張って敵の視界を遮り、中戦車による攻撃を回避するためである。
中戦車の正面装甲及び側面装甲は、軽戦車とは比べ物にならないぐらい固く、主砲も75ミリ砲と威力が高い。
87式偵察警戒車の火力では、装甲板を貫徹できない。
軽戦車に対しては、87式偵察警戒車でも対応出来るが、中戦車に対しては困難である。
87式偵察警戒車は、後退を始めて、そのままジグザグ走行で戦場を離脱した。
87式偵察警戒車が離脱したと同時に、西部方面戦車隊第1戦車中隊の10式戦車12輌が砲塔を横に向けて現れた。
12輌の10式戦車が、一斉に行進間射撃を行った。
10式戦車には自動追尾機能があり、タッチパネル操作で、目標となる戦車に照準を合わせると、10式戦車に内蔵されているコンピューターが、目標となる的を自動追尾する。
そのため、命中率は90式戦車よりも、はるかに高い。
行進間射撃による目標となる中戦車を想定した的に、全弾命中した。
敵戦車が全滅すると、車長が車長ハッチを開放し、上半身を出した。
そのまま敵歩兵の掃討を行う。
歩兵型の的が現れ、歩兵の速度に合わせて前進を開始する。
車長たちは、12.7ミリ重機関銃を握った。
そのまま12.7ミリ重機関銃が火を噴く。
今回の演習では、命中率も評価するため、機関銃及び小銃等の銃火器は、すべて曳光弾である。
曳光弾であるため発射される弾丸の軌道が、はっきりと見える。
12.7ミリ重機関銃の弾丸が、目標となる的に命中する。
すべての的に弾丸が命中すると、西部方面戦車隊第1戦車中隊の10式戦車は後退を始める。
続いて西部方面特科隊の実弾演習が、行われた。
西部方面特科隊西部方面特科連隊第1大隊に所属するFH-70が、展開した。
目標に向かって、砲撃を行った。
特科隊員たちが155ミリ榴弾を装填し、射撃員がFH-70の砲口を調整し、砲撃を実施する。
その後、陣地転換も行う。
陣地転換を行って、再びFH-70による砲撃を行う。
今回の想定では、敵砲兵陣地に対して、砲撃を行う事を想定している。
西部方面特科連隊第1大隊所属の2個射撃中隊による一斉砲撃で、砲撃訓練は終了した。
日本本土防衛戦の裏側篇 第4章をお読みいただきありがとうございます。
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