表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/55

戦争の裏側篇 2 第4章 武器無き戦い 2

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 ニューワールド連合軍連合空軍の主要航空基地として新設、整備されたアンダーセン空軍基地は、連合防空軍、連合戦略軍航空軍、連合輸送軍航空輸送軍が使用する、重要な戦略航空基地である。


 連合空軍も、戦闘部隊は配備していないが、司令部等は置かれている。


 アンダーセン空軍基地には、B-1B[ランサー]や、B-2[スピリット]等の戦略爆撃機や、空中給油機等の大型航空機が駐機している。


 加藤以下随行員を乗せた政府専用機は、アンダーセン空軍基地の滑走路に着陸した。


 政府専用機から加藤たちが降りると、丁度、エプロンの一角で、ニューワールド連合軍連合空軍に参加のアメリカ空軍警備隊が、警備訓練を行っていた。


 アメリカ空軍が導入している、デジタル迷彩服であるABUを着込み、同じデザインのヘルメットと、タクティカルベストを身につけている。


「今日は、何の訓練を行っている?」


 加藤が、随行員として同行している、ニューワールド連合事務次長付首席補佐官に聞いた。


「はい。予定では、明日から開催されます最高評議会の会議中に、武装勢力からのテロ・コマンド攻撃を受けた場合を想定し、最高司令官、最高副司令官を含む要人たちの、緊急脱出訓練と、脱出機への緊急輸送及び警護訓練です」


 補佐官からの説明に、加藤は歩きながら、訓練を眺める。


 要人輸送ヘリから、脱出機である大型機までの間に、防弾仕様のハンビィーや、M4やNIMINI等で武装した警備兵たちが展開し、要人役の兵士たちを、脱出機へ誘導する。


 加藤の周辺でも、アメリカ空軍警備隊の警備兵が、配置されている。


 アメリカ空軍警備隊は、航空自衛隊基地警備隊と同様の基地施設の警備、防護を担当する警備部隊であるが、まったく同じでは無い。


 基地施設以外の警備、防護だけでは無く、基地内の憲兵業務も、兼任している。


 アメリカ空軍のデジタル迷彩服は、航空自衛隊のデジタル作業服と同じ灰色系だが、どちらかと言うと、タイガーストラップに近い。


「史実では、1944年にアンダーセン空軍基地は開設され、それ以降、同基地は重要な戦略空軍基地として、朝鮮戦争、ベトナム戦争では重要な戦略爆撃機の基地で・・・」


 その時、轟音と共に加藤の声が、かき消された。


 滑走路の1つで、2機のF-22A[ラプター]が、離陸している。


「防空軍も、忙しそうだな」


 加藤は、連合防空軍の常備戦闘飛行隊として配備されている、F-22Aを眺めながら、つぶやいた。


「250機程度で、量産が打ち切られた。ステルス戦闘機だな」


「そうです。現在では発展型である、F-22D[スーパーラプター]が、主力として配備されています」


「だが、この時代では、発展型のステルス戦闘機も、前型のステルス戦闘機も、変わらないだろう。この時代のレーダーでは、どちらも捕捉できないだろう」


 加藤の指摘は、もっともである。


「ですが、我々の登場により、相対的に、この時代の技術の進歩は、急激に高まっています。レーダー等の索敵装置の向上も、急速に発展するでしょう」


 補佐官の指摘は、的確である。


「そうだな。君たちも知っているか?ステルス機の研究は、レーダーが開発された時に、すでに始まっていたという事を」


 加藤が、随行員たちに告げた。


 これは、事実であり、第2次世界大戦時にレーダーが導入され、従来での奇襲攻撃等が不可能になった。


 レーダーという、圧倒的な目を避けるために、ステルスの研究が行われた。


 特に研究に力を入れたのは、レーダーを導入したアメリカやイギリスでは無く、日本とドイツであった。


 ただし、どちらも技術者不足や、熟練の作業員不足等が重なり、結局、ステルス開発は理論と実験に止まったが、実用性のある物も開発されていた。


 その1つが、機体や船体を、木製化する事である。


 実際、日本は本土決戦時に置いて、本土防衛戦略として、木製化した特攻兵器を大量に配備し、レーダーという圧倒的な索敵装置に対する武器にして、連合軍と戦う事を考えたとされている。


 さまざまな研究機関で、木製化された特攻兵器に対する評価試験が行われ、諸説存在するが、アメリカ側の言い分では、当時のアメリカ海軍は、完全にレーダーシステムに頼った戦術を駆使していたため、旧来の方法での迎撃に熟知した将兵は、そのような部署に配置されていない事が多く、経験の無い新兵や、若手兵たちに任せなくてはならなかった。


 これは、アメリカ海軍の艦艇造船計画と、大勢の新兵教育のために、一定の経験を持つ下士官、上級水兵が必要になったからだ。


 当然、そのような人材は、大量建造された駆逐艦やフリゲートだけでは無く、戦艦、空母、巡洋艦にも必要だ。


 連合軍の日本本土上陸作戦である、ダウンフォール作戦は、1945年11月頃に予定されているオリンピック作戦と1946年3月頃に予定されていたコロネット作戦を統合させた作戦である。


 連合軍は、さまざまな情報網から、レーダーによる捕捉が難しい、木製化された水上、航空の特攻兵器の存在を確認しており、運良く、目視で発見できれば、艦載の機銃で対処できる。


 水上船の特攻兵器としては、ベニア板で作られたモーターボートに、爆薬を満載した震洋が存在する。


 震洋は、フィリピン、沖縄でも存在が確認されており、戦果は不明であるが、回天よりも恐れられていたとされている。


 戦果不明なのは、震洋で編成された陸軍海上挺進戦隊の戦闘記録が存在しない事と、連合軍側の記録が曖昧であるからだ。


 日本側に記録が無いのは、部隊が全滅叉は消滅したからである。


 震洋は主に、視界が悪い夜間に、入り江や洞窟等に潜み、近付いてきた駆逐艦やフリゲート等に特攻を仕掛けるため、見張員が運良く目視確認でもしなければ、わからないだろうし、発見者が死亡すれば、永久に迷宮入りだ。


 フィリピン及び沖縄では、駆逐艦やフリゲート、輸送船が謎の爆発を起こして消息を絶つ事案が複数存在したため、震洋の戦果では無いかとする意見がある。


「学校の授業では、特攻兵器は、単に戦争継続者たちの悪あがきと、教えていますが、実際は確実に成功を期すために、さまざまな工夫が行われていました」


「そうだ。特攻兵器を、甘く見てはいかん。神風特別攻撃隊も、旧式の零戦に爆弾を抱かせた状態で、九州の特攻隊基地から沖縄まで飛ばなければならない。当時の航空燃料の精度では、燃料を満タンにしても、たどり着けるかどうか、怪しかった。その状況下で、たどり着き、連合軍の軍艦に体当りをしたのだ」


 補佐官からの言葉に、加藤はうなずきながら、例を出した。


「そうです。連合軍は、対神風特攻機対策をとり、レーダーによる索敵警戒を厳重にしましたが、神風特攻隊も、レーダー網をかいくぐる策を考案しました」


 戦争は、所詮イタチごっこに過ぎないという言葉がある。


どんなに優れた兵器や早期発見可能な索敵装置が存在しても、すぐに敵は、対抗策を見つけ出す。





 加藤は、用意された宿舎で疲れをとった後、服装を整えて最高評議会に出席した。


 ニューワールド連合最高評議会は、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、シンガポールの7ヶ国の常任理事国と、常任理事国の決定権を白紙に戻せる日本、韓国の2ヶ国の計9ヶ国で行われる、最高意思決定機関である。


 評議会議長であるグレン・フォード・ハンプソンは、9人の文民代表が集まった事を確認すると、評議会を開催した。


「開戦から一月以上が経過し、アメリカを中核とする連合国は、大日本帝国側の和平交渉に応じる事も無く、対日戦略に力を入れている。だが、ここまでは予想された範囲内である。本日の議題で提出されるのは、アメリカ国内及び連合国に属する国家の実情だ」


 開戦後からアメリカ本土や、イギリス本土等に潜入させた潜伏工作員から、もたらされた情報である。


 アメリカ合衆国各州では、さまざまではあるが、対日戦、対独戦に対しての見方が異なる。


 世界恐慌の傷が癒えておらず、1941年の段階で、アメリカ経済は、恐慌前の水準に回復しておらず、フランクリン・デラノ・ルーズベルト大統領を支持した州知事や、州議員等は、大衆の間で広がるルーズベルト不況の影響を、もろに受ける事になった。


 日本帝国陸海軍によるハワイ攻撃と占領、その後のアメリカ本土等への空襲は、ルーズベルト不況を、大きく加速させていた。


 そもそも、宣戦布告だけでは無く、事前に警告を受けていたにも関わらず、こうも易々と日本帝国陸海軍の攻勢を許した。


 ルーズベルトを支持する州知事や、州議員だけでは無く、資金提供等を行う有権者たちへの不支持率が上昇した。


 各州では、ルーズベルトを支持する州と、不支持の州で温度差はあるが、対日戦に対しては、双方でこのような事態が発生している。


 まず、支持する州では、反日感情を植え付けるために、さまざまな工作が行われているだけでは無く、全面戦争を主張している。


 これだけなら、まったく問題無いのだが、対日戦に反対する議員たちを、さまざまな工作で弾劾し、反対する議員の意見に賛同した市民団体に、裏で主戦論派の議員たちの援助を受ける反社会団体が、それらの市民団体を脅迫、暴行等の暴挙が行われていた。


 一方の不支持派の州でも、それの逆の状況で、似たような惨状が繰り返されていた。


 それに対し、そのトップであるルーズベルトは、双方の対応に時間を無駄に浪費しているだけであった。


 世界恐慌で大打撃を受けたアメリカ経済を、建て直す事を全面に出し、大統領に当選したルーズベルトの政策は、実際には簡単に説明される、世界恐慌でのアメリカ経済の回復とは大きく異なる。


 彼の政策は、反発と賛同のイタチごっこであり、1年目には景気が回復したと思われたが、2年目では再び元の不況に逆戻りを繰り返していた。


 さらに労働者への賃金の支払いや、労働条件等をめぐり、労働者と、労働者を管理する組合との激しい対立は、日常茶飯事だった。


 大統領に任命された、1933年から日米開戦勃発の1941年までに、アメリカ経済の景気回復と不景気が、1年単位で繰り返されていた。


 ルーズベルトの大統領支持率も、上がる時は右肩上がりを続けるが、下がる時は一気に下がったという。


 ルーズベルトが大統領を、3任期もできた理由は、数多く存在するが、当時のアメリカ経済を考えれば、1つ納得がいく説がある(ただし、様々な説が存在するため、必ずしも、これという訳では無い)。


 それは、誰も未曾有の経済危機に、我こそはと名乗り出る大統領候補がいなかった・・・だそうだ。


 史実の日米開戦時、アメリカ経済の惨状に明日の不安を持っていた者たちは、どうにでもなれ、という投げやりの感じで、国債を買った。


 その結果は、誰もが知っての通り、財政難に苦しみ、満足に軍備の確保もできなかったアメリカ財政が回復した。


 これは、景気回復にも繋がり、多くの国民が借金をしてまで、国債を購入した。


 それは、史実での話である。


 この時代では、州知事として、州議員として、次の選挙に勝つために、州の景気回復に躍起になっている者たちによる合法、非合法活動が行われている。


 特に黄色人種を敵視し、差別をする有権者たちによる違法行為で、財産を奪われる事案も報告された(これは、日系人だけで無く、アジア系の移民も、被害に遭っている)。


「アメリカ合衆国政府は、未曾有の事態に対し、国内をまともに統治する事ができず、アメリカ市民権を有する正当なる国民に害を及ぼしている。このまま、このような惨状が続けばアメリカだけでは無く、悪影響は連合国全域に、広がるであろう」


 ハンプソンの言葉に、代表たちは、熱心に報告書に目を通す。


「そこで私は、諸君等に問う。ニューワールド連合軍による、太平洋戦争への軍事介入を決定したい」


 ハンプソンの主張に、代表たちは、顔を上げる。


「諸君等が危惧しての通り、戦争に介入するには、情報が不足している。戦争に踏み切るには、時期尚早と言わざるを得ない。すぐにとは言わない。ある程度の情報収集と戦争の行方を判断した上で、軍事介入を決定する」


 ハンプソンの提案により、代表たちも納得した表情は、浮かべている。


 そもそも、太平洋戦争への軍事介入も、当初のプランで用意された1つの中にあった。


 しかし、人間の底力は計り知れず、連合国だけでは無く、枢軸国の情勢も把握しなくてはならなかった。


 そのため、徐々に未来の軍事戦力が介入し、その行方を把握する事から始めた。


 80年後の兵器は、この時代では未知数の兵器ではあるが、少し頭を働かせばわかるように、80年後に登場する兵器はどれも、理論だけでは無く、研究もこの時代で行われていた物もある。


 理論が存在するのであれば、自分たちがそのような兵器を使えば、それが立証される。


 本来は、数10年という年月を経て立証される物が、一瞬で立証されるのだ。


 その瞬間、現存技術を結集し、開発されるのは必然である。


 ニューワールド連合軍が、即座に軍事介入をしなかったのは、それらを見極める必要があったからだ。


 代表たちの議論を聞きながら、加藤は慎重に思案を巡らせていた。


 加藤は、最高評議会副議長であり、事務次長である。


 彼が意見するのは、議題が混戦し、決定権の行使か、拒否権の行使かを求められた時にのみ口を開く。


 そのためには、双方の意見に口を挟まず、聞くだけの姿勢に止める。


 双方の意見を聞き、双方の意見の、肯定的評価と否定的評価を行う。


 この2つの評価を行った状態で、自分に問いかけ、拒否をするか、肯定するかである。


 そして、その決定には絶対の責任が伴われる。


 誰の意見にも耳を貸さず、自分の決断のみに従う。


 あくまでも他人の意見は、助言にとどめなくてはならない。


 それは、決して並大抵の事ではできない物である。


 だが、それが指導者の勤めだ。

 戦争の裏側篇2 第4章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますがご了承ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ