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ネコ耳ばすた~ず The Bridge 弐  作者: 七海玲也
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脱出への糸口

 ほどなくして揺れは感じなくなったが、幾重にもなる岩が通路を塞ぎ人が通れる隙間は無かった。


「ここはこの道しかないにゃ?」


 流騎(ル キ)は無言で首を振り、ただ岩を見つめている。


「私の魔法でやってみようか?

 弱い魔法なら生き埋めにならないでしょ」


 明日菜(ア ス ナ)の提案に私たちは同意した。


「我が手に宿りし、金色の(いかずち)――行く手を阻みしモノへ裁きをあたえん」


 短い詠唱のあと、明日菜の掌から雷の魔法が放たれ一つの岩へと直撃した。

 人が一人通れるだろう穴が空き、出られそうだと思った直後、私たちの気持ちを嘲笑うかのように上からの岩が穴を塞いでしまった。


「今なら行けそうな気がしたのに悔しいにゃ。

 でも、今以上の魔法は怖いにゃ」


「そうね、こんな感じじゃ押し潰されても仕方ないわね。

 ミィと違って可愛い私が台無しになっちゃうわ」


 こんなときにも軽口を叩ける明日菜を関心してしまう。危機感を感じてないのか、何か考えがあるのか。


「明日菜は他に手があるにゃ?」


「有るわけないでしょ。

 そういうのを考えるのは流騎の役目」


 単なる性格の問題だったらしい。

 それにしても急に崩れてくるとは何事だろうか。一度だけ大きく揺れただけ変わった様子は何もない。

 念のためにと地に岩肌に耳を付けてみるが、何も変わった様子は感じられなかった。しかし、通路を塞ぐ岩の隙間に耳を傾けると、声らしき音が聞こえてくる。


「これは――静かにして!

 何か聞こえるにゃ!」


 私の制止に、息すら止めているかのように辺りは静寂に包まれた。

 目を閉じ集中すると、段々と近づく音がはっきりと人の声だと分かるようになってきた。


「この声……レイヴ、レイヴにゃ!!」


 絶対の確信を得ると私の心は歓喜に満ち溢れ、安らぎにも似た安堵感を感じることが出来た。彼なら何とかしてくれると確かな信頼を持っているから。


「その顔は、ミィの仲間か?

 助けに来たのか」


 顔に出ていたのだろう、流騎は私の表情を読み取り察してくれた。だが、当の本人は何やら浮かない顔をしているように見える。

 それでも私はレイヴに気づいてもらうため、名前を呼び岩を必死で叩く。


「叩いたって聞こえないわよ。

 響くようなものじゃないんだから」


「分かってるにゃ!

 だけど、だけど!

 レイヴ、ここにゃぁぁぁ」


 聞こえて欲しい、気づいて欲しい一心で叫び叩き続けると、向こう側に気配を感じたように思えた。


「レイヴ?

 わたしにゃ!

 ここにゃ!!」


 少しでも届くようにと隙間に口を当て、声を張り上げ返答があるか聞き耳を立てるの繰り返しを幾度か重ねると、石がぶつかる音が聞こえ始めた。


「レイヴ、ここにゃ!」


「ミィ……ミィか!?

 そこにいるのか!」


 岩を隔ててはいるが、はっきりと声が聞こえてくる。間違いなくレイヴだ。


「やっと、やっとにゃ……」


 レイヴの声に何故だか涙が流れてくる。嬉しいはずなのに私の心が乱れている。


「ミィ、そっちはどんな感じだ?

 こっちには来れそうにないか?」


「――こっちからはムリにゃ。

 何か方法がないかにゃ?」


 向こうの状況は分からないので聞いてはみるが、多分一筋縄ではいかないだろう。

 すると、レイヴが返事をくれる前に流騎が私の肩に手を乗せた。


「ミィよ、この状況を打開するには一つ手がある。

 もちろん、レイヴとかいうヤツの手も借りるが。

 やってみるか?」


 先程の顔はこの事を考えていたのだろう、私が頷くと手を差し伸べ握手を求めてきた。


「今、この時をもってオレ達への手伝いは終わりだ。

 お前はお前の成すべきことをしに行け」


「ちょっと、流騎!

 ……って言っても、そうなるよね

 もう、仕方ないから付き合ってあげるわ」


 流騎の意図を察したのか、明日菜は反論を辞め飽きれ顔で私とルキの握手に手を乗せた。


「どういうことにゃ!?」


「おーい!

 レイヴとやら聞こえるか?

 今から一瞬だけ穴をあける。

 そこからミィが通るから引っ張り出してくれ」


「まさか、流騎達は残る気にゃ?」


 私の速さであれば、確かに先程のやり方なら出られる可能性はある。ただ、崩れ出すタイミングなど同じな筈はない。


「あぁ、オレ達は勝手に何とかするさ。

 部外者のミィだけはここから出さなきゃならないのは目に見えてるだろ。

 そういうことさ。

 それでだ、確実に出してやるには向こう側に一人手伝いが必要ってわけだ」


 一瞬が命取りになる賭けを少しでも確実にする為に考えていたのだろう。

 レイヴに詳しく伝えると分かった旨の返事があった。


「それじゃあ、やってみますか。

 明日菜頼んだぞ」


「はいはい。

 流騎といるとホント飽きないわ。

 じゃあね、ミィ」


 二度と会えなくなるような別れの言葉に、私は心苦しくなった。


「そんな言葉イヤにゃ。

 絶対また会って、この恩を今度はしっかり返すにゃ!」


「ありがと、ミィ。

 その時は私より可愛くなってることを願ってるわ。

 いくわよ……」


 皆が明日菜を基点に呼吸を整えると、短い詠唱が始まった。


 






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