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ネコ耳ばすた~ず The Bridge 弐  作者: 七海玲也
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過去からの悲劇

「姉は幼少の頃から先を読むことに長けていたんだ。

 だが成長するにつれ、近い将来に起こりうることまで見えるようになっていった。

 その噂が広まると姉は城へと招かれ、二度と帰ってくることはなかった……」


 流騎(ル キ)の背中越しに見える女性は、予言者と同じく未来を見通せる能力があるようだった。

 もしかすると、膨大な魔力をもってすれば未来が見えるのかも知れない。


「それからだ。

 両親が亡くなったあと姉が城を抜け出したと聞き、足取りを追ったオレはこの洞窟でやっと会うことが出来た。

 しかしだ!

 姉と一緒にいた金髪の女がオレに気付くと、魔法を唱えオレは身動きが取れなくなった。

 二人が詠唱を始めると、姉の足元から結晶体が沸き出すと、徐々に身体を包み込んでいった。

 その光景を見ている事しか出来ないオレに、謝り涙を流しながら最期に『もう未来は見たくない』と言い残し包み込まれてしまった……」


 結晶体に伸ばす流騎の手が震えているのが分かる。目の前で見ることしか出来なかった悔しさだろうと思う。


「それで、これを壊そうとしてたにゃ?

 でも、ホントにお姉さんの意思でしたことなのにいいのにゃ?」


「姉は、未来を見たくないと言った。

 ならばオレが、見なくていいようにするまでだ。

 その手段も探しだしてみせる!」


 強い決意を感じる眼差しに気圧されそうになるが、協力してあげたい気持ちが強くなっていく。


「それなら出来るだけ手伝うにゃ」


「なら、オレ達は何をすればいい?

 何をしたらいい?」


 壊すとなれば、まずは魔法の仕組みを知る必要がある。


「まずは、魔法の解除自体は大きく分けて四つあるにゃ。

 一つは、解除魔法を使うこと。

 二つ目は、魔法の効力が切れるのを待つこと。

 三つ目は、術者が死んじゃうこと。

 最後は、魔法を解くほどの力が備わってる道具で消滅させるか。

 この四つが魔法を解く鍵になるにゃ」


「すると、魔法には魔力をもってして対抗するしかないわけだ。

 やはり、魔具を探しだすのが早いって訳か……」


 流騎の出した答えは間違いではない。

 しかし、私には違う方法も思いついていた。


「一緒にいた金髪の女性の行方は?

 その人ならお姉さんの魔力にも打ち勝って消滅させることも出来ると思うにゃ。

 造り出した本人なら尚更にゃ」


「オレも考えたさ。

 だか、行方は全く。

 大陸に渡ったという話もあったくらいだからな」


 それは困った。本人がいないとなると、魔具を探す手立てしか今はないだろう。


「ねぇねぇ、知り合いにスゴイ魔法つかえる人っていないにゃ?」


 いないとは分かっているが、手っ取り早い手段としたら最早これしかない。


「いたらもう頼んでるわ!

 この島で一番の魔力を持ってるのが、流騎のお姉さんなんだから!」


明日菜(ア ス ナ)、それホントにゃ!?」


「そうよ、流騎の両親が言ってたみたいだもの。

 祖先は凄い人だったって」


 その魔力を受け継いだからこその能力だったのか。


「オレの祖先はこの島を導いてきた。

 未来を予言し、災厄から守る為に犠牲になっていたらしい。

 婢御子(ヒ ミ コ)と言う名を知らない人は、この島にはいないだろう、それだけの人だと話していたよ」


 予言者の末裔ってことなのか。

 これは、おかしなことになってきた気がする。

 私に何もせず姿を消した予言者は、私たちが出会うのを予期していたのかも知れない。


「やはり、魔具を探し出すか。

 ありがとうミィ。

 色々手段を考える手間が省けたよ。

 これからはオレと明日菜でやっていくよ」


 流騎の差し伸べた手を握り返すことは出来なかった。

 どうしても助けたい気持ちと、予言者の考えが気になる気持ちとの葛藤で簡単にはいかない。


「待って……わたしは――」


 言葉を発しきる前に大きな揺れを感じた。洞窟が揺れ、石が落ちてくる。

 

「これは!

 出るぞミィ、明日菜!

 ここにいたら危険だ!」


 流騎は私と明日菜の手を取り、外へ向かうように連れ出したが、扉をくぐった先には既に天井が崩れだし岩が道をふさいでいた。



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