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ネコ耳ばすた~ず The Bridge 弐  作者: 七海玲也
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行き着く先に待つものは

 どれ程歩いただろう、途中で昼食も食べたがずっと山道を歩き、既に日も傾いている。


「まだなの?

 もう疲れたにゃ」


 何度この言葉を言ったか分からないほどに歩き詰めだった。最初に走り回っていたせいか、本当に疲れている。


「ずっとそればっかりだな、お前は」


 流騎(ル キ)の冷たい言葉でも、返事があるだけ良かったと思いたい。それに対して明日菜(ア ス ナ)は平然と歩いているように見えるのが不思議だった。


「明日菜は平気なの?」


「私は平気よ、全然。

 こんなのいっつもだもの。

 体力がないのね、私より」


 それは確かに走り回って体力は使ったが、こんなに歩くなんて聞いてないしお昼寝だってしていないから仕方ないと思ったが、反論するだけトゲのある言葉が返って来そうだった。


「明日菜はこの島はどれだけ旅をしたにゃ?」


 何故に旅をしてるか、どうして流騎と一緒なのかを聞いても『行けば分かる、あとで話す』ばかりなので、質問を変えてみた。


「けっこう行ったわね。

 ほら、この地図見て。

 印を付けてあるところが行ったとこ。

 近い印だけでも四日は経ったわ」


 地図には島の半分の至る所に印が付けられ、その内一つだけは異様に離れ、大きな印が付けられていた。


「この離れてるのは何だにゃ?」


「これね、今から向かうところよ。

 で、今はこの辺り。

 もうすぐ、日が落ちきったくらいには着くよ」


 海から少し離れた島の中心に程近い所にいるらしい。


「ホントにあと少しにゃ。

 ちなみに、この国はなんて言うにゃ?」


「この国は天津(ア マ ツ)

 この島は色々な小国があるけど、全てを合わせて『サンライズ』って呼ぶのよ」


 確かに名前だけとっても大陸の国とは響きが違うように思う。島国だと文化交流が頻繁には出来ないからなのだろう。


「お喋りはそこまでのようだ。

 ここからは魔物の巣窟になるぞ」


 急に流騎が振り返り注意を促した。どうやら、このサンライズにも魔物はいるらしい。


「任せるにゃ!

 戦いは得意じゃないけど、わたしも亜人の端くれにゃ」


「可愛い私でも戦えるんだから、そのくらいの意気込みはなきゃね。

 じゃなきゃ、取り柄が耳と尻尾だけだもん、ね」


 片目を瞑るところを見ると悪気はないのだろうが、どうしても胸に突き刺さる。


「さぁ、来るぞ!」


 流騎の呼び掛けに魔物の気配を感じとると、日没間近の暗がりから何体かの影が姿を現した。





 魔物との交戦は難しいものではなかったが、一つだけ不思議なものを目にした。


「明日菜、さっきのは何だったにゃ?

 魔法が消えたみたいに見えたけどにゃ」


「ふふん、驚いた?

 あれが私の能力よ。

 滅多に使わないようにはしてるけどね」


 小柄な喰人鬼(オ ー ガ)の群れに遭遇し、その内の一体が明日菜に向けて炎の魔法を放ったのだが、手をかざした途端に炎は消えていた。


「特別な魔法でも使ったにゃ?」


「魔法じゃないけど、魔法みたいな感じかな。

 実際には私にも分からないけど、詳しくは向かう先で教えてあげるよ」


 なにもかもが謎のまま道なき森へと進んで行くと、再び魔物と遭遇するが、今度は流騎一人で事が足りた。先程は気づかなかったが、流騎の持つ武器も大陸では見られなかったものだった。


「その武器は刺剣(レイピア)じゃないにゃ?」


「これか?

 これは刀剣(カ タ ナ)って武器だが、向こうにはないのか?」


 重装備の鎧は貫通出来ないらしいが、素早く斬ることには長けている武器だそうだ。なまじ重い剣を持ち歩くよりは、余程楽そうに見えた。


「そんなことよりも、着いたぞ。

 あそこが目的の場所だ」


 流騎の指差す先には岩肌がぽっかりと口を開けていた。


「あの洞窟が?

 一体何を見せる気にゃ」


 ようやく着いたと思ったが、まだ進まなければならないらしい。さすがに、歩き詰めて魔物と戦っては疲れてしまった。


「私達の最終目的の場所。

 それに始まりの場所でもあるわ。

 それより洞窟内はもっと暗いけど、猫のミィは大丈夫なの?」


「少しの明かりでもあれば平気にゃ。

 なんなら、明かりの魔法でも使うから」


「それならいいわ。

 松明(たいまつ)をあげるからこれでお願いね」


 火の灯った松明を持たされ、洞窟へと入って行く。そこは、入口から徐々に広くなり、かつて訪れた王城の謁見の間と同じくらいの大きさで道が続いていた。


 私たちの足音だけが響く中、どれほど歩いたのか奥へ奥へと進んで行くと、扉へと辿り着いた。


「ここだ。

 とにかく、見て感じ取ってくれ。

 話はそれからだ」


 流騎は扉の鍵を開けると一歩下がり、私に場所を譲る。

 恐る恐る扉を押しやると、私の目には見たことのない不思議な光景が広がっていた。




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