御礼の謎
「…………で、流騎達が来たってワケにゃ」
こじんまりとした食事処で今までの経緯を間単にだが話した。
明日菜は頷きながらしっかりと聞いてくれてる様子だったが、流騎はというと目の前の料理しかみておらず、まるで興味がないとの態度だった。
「それでだ、明日菜。
今の話のどこにお宝が絡んでた?」
ちゃんと聞いていたのか、食事を頬張りながら明日菜をじっとり見ている。
「いっ、いや、まぁその、あの」
こめかみにうっすらと汗が流れている。そんな様子に何だか私まで心苦しく感じてしまう。
「お宝か分からないけど、これならあるにゃ」
少しでも機嫌が良くなるようにと、袋から魔石を取り出しテーブルに置いた。
「どうしたの?
こんなに大きな魔石」
「つい少し前に大陸で拾ったにゃ」
私に価値は分からないが、二人とも目を丸くして驚いているのを見ると結構な物なのだろう。
「いやいや、流石にお宝だがこれは貰えないな」
今までの流騎の感じだとすぐにでも欲しがると思ったのだが、受け取ることを
躊躇っている。
「いらないにゃ?
魔力をすごく感じるけど、お宝じゃないにゃ?」
「いや、確かにお宝なんだがさ、助けたくらいでこれは多すぎる。それに――いや、何でもない」
何かを言いかけた流騎だったが、あえて聞こうとはしない。それとは反対に明日菜は目を輝かせ今も魔石を眺めている。
「私から提案していい?
これを受け取らないなら、ミィちゃんに少しついてきてもらうってのはどう?
お手伝いしてもらってチャラにするの」
「明日菜、結局そうなるんじゃねぇか。
だから――」
「流騎、あんたが受け取らないって言うからでしょ?
受け取れば終わり、受け取らないなら来てもらう。
簡単な問題だわ」
明日菜はしてやったりの表情をすると、流騎の困り顔を覗きこんでいる。
「お前なぁ…………仕方ない、か。
だったら、ついて来てもらうか」
私はどちらでも恩返しさえ出来ればと思っていたので良かったが、どうにも流騎は不服そうではあった。
「それでいいなら手伝うにゃ。
で、何をするにゃ?
あてもなく、お宝を探すとかじゃないよね、まさか」
そうなるとレイヴと合流するのが遅くなってしまう。出来ることならそれだけは避けたいと思っているが。
そんな不安をよそに明日菜は得意気な顔で腕を組み始めた。
「そんなことすると思ってるの?
甘い甘い。
ちゃぁんと目的も、あてもあるんだから。
そんな無意味な宝探しするほど暇じゃなくってね」
「だったら、どんなことを手伝えばいいにゃ?」
「それはね、ある人を解放して欲しいの」
人助けがお宝に繋がるとは思ってもみなかったが。いまいち意図が読めないので詳しく聞いてみようとするが、流騎が私を遮り明日菜を制止した。
「それ以上は言わなくていい。
それに人猫に出来るかも分からないだろ。
だったら、宝を探しだすのが先だ」
「どっちでもいいけど、詳しく教えてくれなきゃ出来るかも知れないにゃ」
どんな思惑があるのか分からない以上、話だけでも聞かなければ出来ることも出来ない。
「ミィはさ、魔法――というか、魔力が備わっているんでしょ?
その力で魔力のあるお宝とか探し出せる?
もしくは、魔力のあるものを壊したりとか」
明日菜が遠回しにだろうか、言葉を選びながら手伝って欲しいことを話してくれた。
「どっちも出来ないことはないにゃ。
探すのは近づかないと分からないし、壊すのはやってみないことには」
「ほら、流騎!
話して連れて行ってみよ!
闇雲に探したりするよりは絶対いいよ!」
明日菜は流騎の肩を叩きながら説得している。それに対して迷っているのが見てとれるが、急に顔を上げ私を見据えた。
「だったら――あまり言いたくはないんだが、一緒に来てくれ。
あるものを見せたい」
私は頷き片目を瞑ると分かったと意志表示をした。




