表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネコ耳ばすた~ず The Bridge 弐  作者: 七海玲也
1/8

暗がりの中で

「……ここは?」


 真っ暗で何も見えず、ここがどんな所かも分からない。

 手足を動かそうにも鎖で繋がれているのか、大した身動きすら取ることもままならない。


「おーーーい、誰かいるかにゃーーー?」


 返事が無いかわりに聞こえるのは私の声の残響だけだった。

 どうやら広い空間に居ることだけは分かったが、どんな所なのかは検討もつかない。


「わたし、どうしてここにいるのかにゃ」


 少しばかりの頭痛をこらえ、記憶を遡ってみる。


 レイヴと共に御家騒動に巻き込まれ、その後廃墟に辿り着いた。それから――


「そうだにゃ、わたし……あそこで気を失って……」


 なんとなくだが把握してきた。


「そっか、多分あの予言者に捕まったんだにゃ」


 となると、レイヴだ。


「レイヴ!

 レイヴいるの!?」


 私の呼び掛けに応える声はなかった。

 彼のことだ、まさかとは思うが安否が気になる。


「うそだよね、そんなことないよね……まさかレイヴがそんなこと……」


 短い時間ではあるが、彼といた想い出が甦り涙が溢れてしまう。信じたくない気持ちは、この場にいない現実に押し潰されてしまいそうだった。


 膝を抱え、嗚咽を漏らしながら泣く私の耳に足音らしき物が聞こえてきた。


「おやおや、何やら騒がしいと思って来てみると意識を取り戻したのですね、猫娘」


 少しばかりの光りにも目は慣れず姿形しか見えないが、声の感じからするにあの時の予言者だろう。


「レイヴはどうしたにゃ!?

 ここはどこにゃ!?

 わたしをどうする気にゃ!?」


 高ぶる感情のままに飛びかかろうとしたが、鎖に邪魔され伸ばした手は空を掴んだ。


「一度に質問されても困りますよ、私だって人の子ですのでね」


「それなら!

 レイヴは、レイヴはどうしたにゃ!?」


「あぁ、あの男ですか。

 意外としぶとく厄介な男ですよ、彼は。

 そんな彼に付き合ってられるほど暇ではないのでね、私の方から身を退きましたよ。

 それに私の目的は貴女でしたし」


 生きている、ちゃんと生きているんだと実感するとまたも涙が頬を伝っていく。


「そっか……レイヴ、無事なんだ」


「他人の心配ではなく、少しは自分の心配もしてはいかがですか?

 クックックッ」


 確かにそうではあるが、私はもう親しい人とお別れするのは耐えられない。ならば、自らが犠牲になるのはいとわない。


「だったら!

 ここはどこにゃ!」


 ようやく目も慣れ、男の姿が薄明かりの中に浮かび上がっている。やはり、あの予言者の男そのものだった。


「ここは?

 というと、地下牢とでもいうべきでしょうか。

 それとも、大陸から離れた独自の文明をもつ島とお答えするべきかな?」


 聞いたことがある。一時だが行動を共にした女性が、独自の文明をもつ島国から来たのだと言っていた。

 一度は行ってみたいと思っていたが、こんな形で来る羽目になるとは想像もしていなかった。


「そんな遠い島国に来てまで、地下牢に閉じこめるなんて変にゃ。

 大陸でも良かったはずにゃ」


「ふむ。

 まだ少女だというのに目のつけどころが良い。

 そう、こんな島国に来なければならない理由というものがあるのです。

 そうでなければ、わざわざ来ませんよ」


 話を聞けば聞くほどに疑問の数も増えていく。


「だったら、この島国でわたしをどうするにゃ?

 また実験台にするにゃ!?」


 少し声を荒げ放った言葉に男は鼻で笑ったかと思うと、高笑いへと変化していった。


「実験台か!

 なるほど、貴女はあいつの元から逃げて――いや、殺してきた人猫(ワーキャット)だったのですか。

 これはこれは、面白いものですな」


 私の予想もしていない答えが帰ってきた。予言者同士は繋がりを持っていて、情報の交換は常にしているものだと思っていた。多分、レイヴもそんな風に思っていたと。


「どういうことにゃ?

 あの予言者とは話してないにゃ?

 結局、目的はなんだにゃ!?」


「また質問責めですか。

 いやはや、困ったお嬢さんですね。

 今、貴女に色々とお話する訳にはいかないのです。

 ここまできて、せっかくの未来が変わってしまっては台無しですからね。

 ただし、これだけは言っておきましょう。

 明日になれば少しずつ分かってきますよ。

 クックックッ」


 含み笑いに苛立ちを感じるも、これ以上は聞いても無駄だと判断し言葉を呑み込んだ。

 すると、男も話すことはないのか一歩踏み出し立ち去るのかと思うと、急に歩みを止めた。


「そうそう、ちなみに今はまだ日も沈んだばかり。

 夜はこれからです。

 食糧と飲み物は持って来させましょう」


「だったら、魚とミルクがいいにゃ!」


 今の私に抵抗出来ることといえば、このくらいの我が儘しかない。惨めと言われればそれまでだが、大好物を要求するのに惨めもへったくれもない。

 しかし、男は用意させると言い高笑いと共にこの場を立ち去った。

 それには呆気に取られたが、用意してくれるのならここは黙って待ってみようかと思う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ