第7話 闇へ
ズゥゥゥゥゥゥゥン
竜のブレスが洞窟にこだまする。
俺は竜を待ち伏せしながらシロナのステータスを思い出していた。特に気になるステータスはスキル「重力操作」と武技「ロスト・ゼロ」である。
スキル 重力操作LV1
重力が自在に操れる。操作できる範囲は自分と、自分から半径3メートル以内。操作できる重力の強さはマイナス三倍から三倍まで。
武技 ロストゼロ
スキル「重力操作」を持っていることで発動できる。
自分が選んだ地点から半径1メートル以内に敵が触れた時に発動できる。設置してから30秒で敵が触れなければ自動で発動がキャンセルされ、しかし使ったという扱いになる。
ブラックホールを生み出し、敵を消し去る。使用限度1日1回のみ。スキル「重力操作」のレベルにともない、範囲、設置時間上昇。
これは……強い。うまく使えば一撃であの竜を倒せる……いや、正確には消し去れる。
そこで今回の作戦の要はシロナである。
俺がまずエレメントボールを乱射し、竜の注意を向ける。そして、シロナがロスト・ゼロでとどめを刺す。
俗に言う囮作戦だ。上手くいくことを祈ろう。
「グルァァァァァァァァ!」
竜が来た。作戦開始だ。
「うぉぉぉぉぉぉ!」
俺は少しでもドラゴンの注意を引くため、大きな声を出し、ドラゴンの注意を引く。
「エレメントボール!」
とりあえず俺はエレメントボール(火)を放つ。
しかし、綿密に練った作戦は失敗するのが物の道理。
竜はこっちをちらっと見ると、エレメントボールを翼で弾き飛ばした。
マジかよ……
そのまま、俺は無視しても問題ない無害なものだと思ったのか、ドラゴンはシロナに向かって走り出す。
竜は少し首を引くと、ブレスを吐き出した。
しかし、ブレスが放たれた時にはもうすでに俺は竜とシロナの間に立ち塞がっていた。
「らぁッ!」
俺は余裕でブレスを弾き飛ばした。
今度は俺を敵と認めてくれたようで、竜は俺に向かって突進してくる。
俺はいつも通り、そのままはじき返そうとした。
しかし、竜の後ろ足が一瞬光った気がしたので、直感を信じ、滑り込むように横に回避する。
結果、俺の勘は当たっていた。
竜の後ろ足が眩く輝いたかと思うと、天高く跳び、一気に下降してくる。
一度喰らったから覚えている。
この技はメテオ・スマッシュ。防御力低下のバッドステータス効果のある、俺の天敵だ。
俺は交わしざま、気合い一閃、剣で斬りつけた。
竜はそれをジャンプでかわした。見た目の割に俊敏性が高い。
そのまま竜は俺にのしかかってくる。
「うぁぁぁぁぁ!」
俺はのしかかりは回避したのだが、鉤爪に引っかかり、吹き飛ばされてしまった。
そのまま吹き飛んで行き、岩にめり込み、抜けられなくなってしまった。
そこで俺が岩に埋まっていると、竜がこれ見よがしに突進してくる。
そのまま竜は高く跳び、まばゆい光を纏いながら下降してくる。間違いない。メテオ・スマッシュだ。
そのままどうすることもできず、メテオ・スマッシュを喰らってしまう。
その時に岩は崩れたが、防御力が低くなるだけでこうも痛みを感じるものなのかと、驚いた。
しかし竜は止まらない。
竜は勢いのまま突進してくると、俺を咥え、壁に擦り付けながら走り出した。
俺は痛みに耐えながらも必死に竜から逃れる方法を考えていた。
突然、竜の動きが鈍くなった。
どうやらシロナが重力操作で助けてくれたらしい。
しかし、シロナは上手く岩陰に隠れているので、竜は俺がやったものだと考え、俺にまた突進してくる。
何分経っただろうか。俺の体は傷だらけ。竜には傷ひとつない。俺は力の差に漠然としながらも、立ち上がった。すると、シロナが岩陰から手を振っている。設置ができたようだ。
「エレメントボール!!」
俺は最後の力を振り絞るように両手に魔力をかき集めると、エレメントボール(無)を放つ。
そのまま凄まじい速さでエレメントボールは飛んでいくと、竜にしっかりとクリーンヒットした。
「ギィァァァァァァァ!!」
さすがに今回は聞いたようで、竜は怒りをあらわにし俺に飛びかかってきた。俺はそれを回避すると、設置ポイントに誘導した。
竜はそのまま血が上っているのか、何の疑いも持たず設置ポイントに到達した。
その瞬間、シロナから莫大な魔力が溢れ出す。
「無に帰せ!ロスト・ゼロ!!」
シロナが詠唱をすると、竜の翼にあたる部分が光りだし、(恐らくそれが設置してあったロスト・ゼロであろう)大きなブラックホールが現れる。
竜は面白いように吸い込まれていく…………はずだったのだが、最後の力とでも言いたげに、俺を道連れにした。つまり、俺を咥えてそのままブラックホールに吸い込まれて行った。
「クロアァァァァァ!」
どこからかシロナの声が聞こえてきたが、俺は吸い込まれるように(事実、吸い込まれているのであろうが……)消えていき、そこで意識が途切れた。
次回の更新は18日の月曜日、夜10時になります。
是非読んでください。
僕の小説を読んでいただき、本当にありがとうございます。次回も楽しみにしていてください!