第2話 旅は道連れ
「うぉぉぉぉ!」
「死ねー!」
次々と群がってくる兵士たちをなぎ倒しながら進んでいくと、少し開けたホールのような場所に出た。
そこには、微妙な感じのドラゴンが、偉そうに鎮座していた。
「ここまでよく来たな。しかしこの程度でまんぞ…」
セリフが長い……
「エレメントボール!」
「ぐはぁぁぁぁぁ!」
俺は最後まで聞かずにエレメントボール(光)を放った。
「む……無念」
エレメントボールに貫かれたドラゴンは一瞬で死んでいった。
「つまらん……」
端的に言うと飽きた。
最初のほうは楽しかった。いきなりチートでどんな奴が来ても一瞬で倒せる楽しみを味わっていた。
しかし……こうも強すぎるとすぐに飽きた。
もっと強いやつ出てこねーかなー……
「おい、そこのお前、そこにいるってことはボクと戦って勝てるとでも思っているのかい?」
噂をすればというやつか……
これまでのやつらと比べて明らかに強そう。
絶対ボス級だな。
そして何より可愛い。短く切り揃えられた髪からはボーイッシュな雰囲気が色濃く出ているが、それを補ってなお余りあるすっきりと整った目鼻立ちが美少女を主張している。
もちろんやる事は決まっていた。
「好きだぁぁぁぁぁ!」
俺は全力で愛の言葉を叫んだ。
「死ね」
少女がいきなり魔法を飛ばしてくる。
しかし俺にはかすり傷一つ付かない。やはり俺は硬いらしい。
「馬鹿な……⁉︎」
少女は驚くほど動揺していた。
「そっちがその気なら……」
俺はその隙に両手を挙げて、魔力を練る。この美少女には悪いが……
エレメントボールにスキルの魔力融合で光と闇を融合し、魔力付加で威力を底上げした。
魔力が限界まで高まったところで俺は魔法を放つ。
「エレメントボール!」
光と闇の極太の奔流が少女を穿つ……
刹那、1人の男が魔法と少女の間に割って入った。
そのまま男ごと貫くと思われた魔法はあっさりとその男によって打ち消された。
俺は気にせず、もう一度魔力を練ろうとしたが、男が凄まじい速さで俺を組み伏せた。
「痛ぅッ!」
かためられている関節の骨がミシミシと音を立てる。
「お前が我の力となるならば、生きて返さんこともない」
「分かった!分かったから手を離してくれ!痛い!痛すぎる!」
俺は即座に降参。男は呆然としていた。
後日、俺は男の配下となった。聞くところによると男は魔王だったらしい。俺は魔王と契約し、絶対に魔王を裏切れなくする魔法をかけられた。
「おい、それで俺は何をすればいい?」
俺は魔王に問う。
「我は世界を壊す。それに力を貸して欲しい。だが、今のお前では力が足りん。旅に出よ!旅に出て世界を壊せるほどの力を手に入れよ!それが最初のミッションだ!」
マジですか!異世界を旅ですか⁉︎やったぜー!でも1人ではちょっと不安だな。
「魔王、俺一人で行くのか?」
「いや、案内役としてシロナをつけよう」
シロナ?はて?誰だろう?
「お呼びですか、魔王様」
声がしたほうを見ると、そこには言わずもがなさっき俺が振られたばっかりの美少女が立っていた。
「シロナ、お前はこれからクロアと共に旅に出よ!そこで魔法を学び、お前の目的を叶えよ!」
目的?目的ってなんだ?まあいい。こんな美少女と2人で旅に出られるなんて最高じゃないか!
「そういうわけだ!よろしくな、シロナ!」
俺は爽やかに笑いかける。
「分かりました。目的を遂げるためです。致し方ありません……」
シロナは、まるで世界が終わったような顔をして渋々といった様子で肯定する。
「と、いうわけだ。クロア、このボクが共に旅に出て行ってやろうと言ってるんだ。感謝しろ。」
シロナはない胸を張って偉そうに主張する。可愛い……
「では行ってこい!」
魔王の指先に光が集まったかと思うと、俺とシロナは城からまだ見ぬ地へと飛ばされた。
同時刻、神の国にて
「何⁉︎勇者が1人足りないだと⁉︎召喚は成功したはずだ!」
国王がわめき散らしている。
そう。この国は、魔王との決戦に挑むべく、勇者を3人召喚したはずだ。しかし、一番強い勇者がなぜかまだ来ていない。
「どこかに必ずいるはずだ!探せ!名前は大刀黒亜!見つけたものには多額の懸賞金を用意する!」
国中に紙がばらまかれた。