第1話 もう一つの世界
ビュゥゥゥ
俺は耳を切る風の音で目を覚ました。
……風の音?
「うわぁぁぁぁぁぁぁ」
俺は落ちていた。黒い空の中をすごい速さで落ちていく。
俺はどうすることもできずにただただ落ちていく。
すると眼下に闇色の城が見えて来た。
その城の天井をぶち破り、瓦礫をばら撒きながらやっと止まる。
「生きてるー!」
俺は何故か少しも痛みも感じない事を不審に思いながらも、生きていた感動に打ち震えていた。
すると突然頭の中に軽快なメロディが流れた。
よく見ると腕の前に「!」マークが出ていた。
なんとなくそのマークに触れてみると、急に目の前に青い半透明のウィンドウが表示された。
魔王城侵入ボーナス!
経験値100000up
称号「勇ましき者」ゲット!
レベルアップ!
レベルアップボーナスを選択しますか?
1、はい
2、後で
何だと?魔王城?侵入なんてした覚えが……ある⁉︎
俺が空を落ちている最中に一瞬見えたあの闇色の城が魔王城なのか⁉︎
まあそれは過ぎたことだ……
それよりもこのウィンドウ……俺が日本にいた頃に極めたドラ◯ンクエストに似てるな……
感慨にふけりながら俺は慣れた手つきでステータス画面を見た。
名前 クロア レベル20
性別 男
職業 勇者
称号 召喚者、大魔導士、勇ましき者
属性 全属性
基本ステータス
体力 600
魔力 無限
攻撃力 400
守備力 5000
スキル
魔力供給LV1、魔法融合LV1、魔力付加LV1
魔法
エレメントボール(火、水、土、風、闇、光)
武器 なし
防具 異世界の服
レベルアップボーナス未選択
強くないか⁉︎
まあ異世界とドラ◯エでは基準が違うだろうし、もしかしたら超弱いかもしれない……
とりあえず称号とスキルの解説を見よう。
称号
召喚者 他の世界からやってきた者に与えられる称号 成長速度補正(大)
大魔導士 魔力が5000を超えた者に与えられる称号 魔力回復速度アップ(大)
勇ましき者 自分のレベルより30以上レベルの高いダンジョンに侵入した者に与えられる称号 成長速度補正(極大)
スキル
魔力供給LV1 常に魔力が少しずつ回復する
魔法融合LV1 自分が使える魔法を2つまで融合できる
魔力付加LV1 自分の使える魔法や武具のうち、一つにだけ自身の魔力を付加し、威力を増すことができる
俺いきなりチートなのか⁉︎
敵キャラとエンカウントしねーかな……
すると突然兵士が現れた
「貴様!どうやって魔王城に侵入した!」
やはりここは魔王城らしい。
「知らねーよ!気付いたらここにいた」
俺は正直に答えた。
「しらばっくれるな!ええい!もういい!貴様には死んでもらう!」
丁度いい。俺の力を試す機会だ。
「いいだろうお前がその気なら……押し通る!」
このセリフ言ってみたかったー!
俺かっけー!
「死ねー!」
兵士が槍をいきなり突き出してきた。
「おいおい……ターン制じゃねーのかよ!」
俺はびっくりしながらも、その槍をかわそうとした。
「遅い!」
しかし兵士は相当強いらしく簡単に俺に当ててきた。
「き、効かないだと⁉︎」
そう、その通り。
俺の守備力が高すぎて攻撃が通らなかった。
兵士が動揺してる様が面白い。
とりあえず俺はさっき覚えたばかりのエレメントボール(闇)に全力で魔力付加を加え、放つ。
「くらえ!エレメントボール!」
兵士はかわす暇もなく、エレメントボールに当たるとスタントマンも真っ青なスピードで壁に向かって吹き飛んで行った。
壁に当たった兵士からは骨の折れる音がしっかりと聞こえてきた。
強え!俺強ぇぇぇぇ!
俺が初めて敵を倒した感動に打ち震えていると……
「何があった!」
さっき倒した兵士と全く同じ姿、格好をした人達が数え切れないぐらい走ってきた。
「おいおいマジかよ」
俺は驚きつつも今から始まるはずの冒険に期待を抱きながら魔法を放った……