存在回帰のプロローグ
俺は山に囲まれた何の変哲も無い舗装路を走っていた。
「ブロォォォ」
俺が運転している車の音だけが鳴り響く。
「ぐがぁぁーむにゃむにゃ」
訂正。隣の席で寝ている彼女の音が静寂を嫌う。
「起きろ奈津美。あれを見ろ」
「うん?黒亜?おはよー!」
「寝てる場合じゃない!早く起きろ!」
俺の名前は大刀黒亜。だいとうくろあと読む。年齢は18歳。俺の名前かっこいいだろ?我ながらこの名前を名付けてくれた母さんに感謝だな!
「どうしたの黒亜?私をそんなに見つめて」
隣に寝ている彼女の名は大刀奈津美。だいとうなつみと読む。年齢は18歳。奇跡的に同じ名字だったので運命を感じ何度もアプローチした結果付き合うことになった。付き合い始めて今日で2ヶ月になる。
今日も今日とて奈津美は可愛い!可愛いよ奈津美!
今日はこの前買ったばかりの俺の車に乗り、楽しくドライブに来ていた………はずだった。
俺の目の前にどう見ても天使としか言いようのない白い翼を生やした何かが車の前に立ちはだかるまでは……
「なあ奈津美、あれはなんだと思う?」
俺は問いかける。
「あれは天使だよ〜」
天使か。そっか天使だよね。羽根生えてるし…………………んな訳あるかー!天使なんているわけねーだろ!ここは日本だぞ?てかなんで奈津美は即答したんだ?
「うるさいぞ人間」
いきなり目の前の天使(仮)が文句を言ってくる。
しゃべったーー!天使(仮)がしゃべったー!
天使(仮)がしゃべれるのかと変なところに感動していると天使(仮)が再びしゃべり出す。
「お前をこれから神の王国、その国王に他の人間たちとともに召喚する。生きよ人間!」
天使(仮)はそう言うと手を……正確には人差し指を俺に向けてくる。
「カァァァァッ」
膨大な量の光と熱がその指に集まっていく。
隣の奈津美を見ると……
「ッ⁉︎」
いつの間にか奈津美が消えていた。
俺が戸惑っている間にも光は天使(仮)の指先にどんどん収束していく!
そして光が一際大きくなったかと思うと
「うあーッ‼︎」
膨大な量の光が俺の中に流れ込んできた。
そこで俺の意識はプツリと途切れる。