プロローグ
『嘘が上手な人ほど嘘をつかない』
と、何かで見たことがある。
そしたら、私の嘘は全世界に見破られるレベルに違いない。
私は嘘つきだ。
今日もウサギが部屋を跳ね回っている、私の部屋はどことなくふれあい動物コーナーの臭いがする。
築40年の古臭いアパートの2階、駅から徒歩30分、バス停までは約7分。
利便性が良いとは言えないが、住めば都とはよく言ったもので家電と机とベッドしかないこざっぱりした空間も居心地のいいものになってきた今日この頃。仕事に忙殺されながらも、毎日をこなしていることに充実感を覚えて、頑張ってる自分に満足している、自己陶酔型22歳おひとり様女子。
昔から、時々変なものを見たり、不思議な体験をすることがあった私は、ソレが怖いことだとも変なことだとも思わずに後日それについて妄想を膨らませるのが大好きだった。
そんな癖は大人になってからも変わらずエスカレートして、メルヘンを越えてリアリティになり私の現実は妄想の狭間で嘘と本当の境界線が曖昧になった。
例えば、愚痴をAさんに話している妄想(受け答えまで、いかにも本人の言いそうな事をしっかりと練って)をしていると、本当に頭の中で会話が成立するから、2~3日後には私の『Aさんに愚痴った』妄想は記憶にすり替わっていて、次にAさんに会った時に「こないだは愚痴ってごめんね」と言ってしまう。もちろんAさんには何の話か分からない為、不思議そうな顔をされる、が脳味噌お花畑な私は『Aさんは優しいから忘れたフリをしてくれている』と変換される。しかし、そんなことも長く続けばさすがに違和感がわくものでつい最近になって私は、自分の妄想癖がいよいよ実生活に問題をきたす域に到達してしまったことに気付いた。
つまり、私の本当は本当ではないかもしれなくて、それの区別すら自分ではつけられない。
そんなグレーゾーンの私の心模様と不思議な出来事をお話ししようと思う。