クラスメイトと下校
いつ生徒会室を出たのか全く覚えてなかった。気づけば自分のクラスの前まで戻ってきていた。あまりの出来事に放心していたのだろう。……昨日から驚きの連続過ぎるだろ。
時間は放課後になってから1時間は経過していた。随分と長いこと生徒会室にいたようである。もしくは戻ってくる間に放心しながらふらふらしてた可能性もあるが……そちらの可能性は捨て置こう、俺の心の平和の為に。
時間が時間の為、流石に興味深々であったクラスメイトらも教室には残ってないだろうと考えながら、扉に手をかけ一気に引く。ガラッと音をたてて開いた扉を抜け、夕日が差し込む教室へ足を踏み入れると――
「あ、おかえり。初凪くん、待ってたよー」
――予想外にもクラスメイトが1人だけ残っていた。
「……瀬野、何で帰らず残ってるんだ?」
聞かなくても大体は想像がつくのだが、自身の予想が外れたばかりなのでとりあえず本人に聞いてみる。
「それは勿論、シュウくんに頼まれたからだよ!」
そう満面の笑みを浮かべ、右手でビシッと敬礼を取りながらそのように返ってきた。やはりシュウの差し金か。
はぁー、と俺は深いため息をつきながら自分の座席へと移動し、筆記用具だけを鞄へと入れる。鞄を持ち隣の席へと向き直ると、その席に腰をかけている瀬野へと苦い表情をしつつ告げる。
「……生徒会室で何があったかは帰りながら話す。さっさと帰ろう」
「うん!」
対して明るい表情を作る瀬野。俺の嫌そうな表情を見なかったんだろうかこやつは。
2人揃って校門を抜けながら、俺は瀬野に先ほどの生徒会室でのことを話した。
「――というわけなんだ」
「……わたしが想像してたことよりすごい事になってるね」
瀬野は横に並んだ俺を見上げながら、驚きつつも苦笑しながらそう言った。
「シュウにはそんな感じで伝えてくれ。……頼まれたことってこのことだろ?」
シュウ――瀬野シュウゾウは俺の友人の1人で、シャノン学院の1年生、つまり俺達の後輩である。部活にも入っておらず、お世辞にも妹のチドリとは違い社交的とは言いがたい俺が何故後輩であるシュウと友人なのか。その理由は単に趣味仲間なのだ。知り合ったのはお互いが中学生の時なのでもう数年の付き合いになる。
今日はおそらくアルバイトでもあるのだろう。いつもなら俺を待って残っていそうではあるが、バイトの日は学校が終わり次第急がなければいけないようなので、家族である瀬野――瀬野モミジに代わりを頼んだのだろう。
俺の隣を歩くクラスメイトの女性、瀬野モミジはこの春にシャノン学院に転校してきた。シュウとは親戚同士らしく、この街に1人で越してきた彼女はシュウの家で世話になっているとのことだ。シュウの両親はとても気さくな方々で、シュウの友人である俺ですら家族の様に接してくれる。
瀬野は同世代と比べると少し小柄で、感情を体全体で表現することが多く、見ていると小動物を彷彿とさせて周りを和ませる。
シュウの家では子供はシュウだけの一人っ子なので、彼の両親はそんな瀬野を実の娘が出来たようにとても喜び、可愛がっている。
シュウ自身も、瀬野のことは「モミジちゃん」と呼び、実の姉の様に慕っている。瀬野本人は「お姉ちゃんって呼んで欲しいんだけどなあ」と言っていたが、それは流石に恥ずかしかろうて。
「シュウくんにはそのままを伝えとくね。でも初凪くん、どうするの?」
首を傾げながら瀬野は俺に問うてくる。どうする、というのは生徒会へ入るかどうかということだろう。
「……どうするかな。正直、何で俺が勧誘されてるのか全くわからんし」
そうなのだ、勧誘理由が会長と話していてもさっぱりだったのだ。割と適当な理由で勧誘されることはあると聞いたこともあるが、結果として新役員は生徒からも好評価を受けたらしい。俺に生徒会の仕事や立ち回りで役に立てるとは思わないんだが。
「うーん、そうだよねえ。春からの学院しか知らないけど、今の生徒会役員でも問題なく回ってるよね?」
まだ学院へ転校してきて1ヶ月程しか経ってない瀬野ですら、そのような印象らしい。
「まあ、帰ってからチドリに相談してから決めるさ。俺が必要な仕事があるようなら手伝うかもな。どうせ帰宅部だし」
そんな感じで現状保留、つまりは先延ばしにするのだった。
そのような事を話している内に、俺達は帰路の途中にある、大きな池が中心にある公園へと足を踏み入れるのだった。
既に色々と矛盾点が出てるかもしれません。
気づいたことがあれば修正させていただきますので、どうかよろしくお願いします。