13話・TWO PEOPLE TWO PEOPLE
―――sideリカ
「・・・っ」
ソラが走り去って行った時、アタシはいつものように後を追いかけることができなった。
何でかはわからない。
・・・ううん。わかってるけど、認めると・・・・・・。
怖かった。ただ、拒絶されるのが。
「・・・いいのかい?」
向こうのチームのキザ男、ルクスとか言うのが声をかけてくる。
「・・・だって・・・」
「・・・ジュリア、君は向こうを頼む」
「ルクス・・・手を出さないでよ」
そういうとジュリアがどこかに行った。
それに触発されるみたいにみんなが歩いていった。
・・・鈴音はゴーイングマイウェイだった。
「・・・」
「・・・」
アタシ達の周りはただ、沈黙で支配されていただけだった。
―――side空志
「・・・静かなトコがここしかないとか・・・はぁ」
ボクは何故か浜辺にいた。
波の打ち寄せる音しか聞こえない。
・・・ホントに静かだ。
「・・・みー」
「うん?大丈夫大丈夫・・・。まぁ、違和感はあるけど」
「こんなところで黄昏てどうしました?」
ボクは声のした方向を向くと、そこにはジュリアさんがいた。
「・・・一人にしてくださいって言ったのに」
「そうなんですか?てっきりフリだと」
「フリ?」
「はい。玉手箱的な」
・・・絶対にあけてはいけませんとかか。
でも、あけたくなるのが人の心理。
「で、いいんですか?」
その質問に何がとは聞かない。
・・・わかりきってるから。
「・・・さぁ?」
「無責任ですね」
「・・・まぁ、ボクなりに考えはあります」
「どんな?」
「・・・」
ボクは言ってもいいものかどうかと悩んで、手を首に当てた。
その時、ぬるっとした感触が手に伝わる。
手を見てみるとそこには血がべったりとついていた。
「・・・そうか、無理矢理引き剥がしたときに・・・」
「・・・真っ赤ですね」
「・・・まぁ、そうですね」
ボクは海辺に行くと、手を海水で洗った。
そして、元の場所に座る。
「・・・治さないんですか?」
「・・・・・・リカを傷つけた罰です」
「ルクスにもそれぐらい反省して欲しいです。嫉妬します」
ジュリアさんがむっとした顔になる。
何故か可愛らしく見える。
「では本題です。考え、とは?」
「・・・リカって、実は人が怖いんです」
「そうなんですか?でも、貴方にはそうでもないようですが?」
「むしろべったりでしょ?でも、怖いんです。人間と友達になろうとして、バレて、裏切られて、その繰り返し。そして、ボク等と出会った」
「・・・そうなんですか?」
「まぁ。・・・で、リカはボクからなら吸血を行えます。でも、他の子では無理。吸血しようとするとどうしても相手に痛みを与えちゃうみたいで」
「・・・中々にシュールな吸血鬼ですね」
若干呆れた顔でジュリアさんが言う。
でも、ボクもそう思う。
「・・・でも、それじゃダメでしょ。・・・ボクは、ずっとリカのそばにいられるわけじゃないし」
「・・・確かにそうですね。・・・でも、少なくとも、今のあの子は貴方を必要としてますよ?」
・・・そんなこと、ボクだってわかってる。
今のリカは人間恐怖症でボク以外の人間には心を開けない。
・・・いや、ボクにだって開いてるのかわからない。
でも、吸血することができるのがボクだけ。それは変わりようの無い事実。
「・・・貴方は、肝心なところがわかってないです」
「肝心なところ?」
「はい。・・・でも、それは人に言ってもらうんじゃ意味が無いです。それに、リカさんがかわいそうです」
かわいそう?
リカが?
・・・肝心なところ?
「・・・できるだけ早く気づいてあげてください。・・・失ってからでは遅いですよ」
そういうと、ジュリアさんは行ってしまった。
・・・。
「・・・ぶっちゃけ、ボクを嫌って、それで他の人に無理矢理にでも慣れてもらえばいいと思ったんだけどな・・・」
「・・・」
ボクの問いかけに相棒である白い子猫は何も答えてくれなかった。
―――sideルクス
「いいのかい?」
彼女、リカと呼ばれる少女は何も答えなかった。
たぶん、あのソラという少年に心から、それも絶対の信頼や好意を抱いてた相手にかなりキツイ物言いをされたからね。
あの少年の性格から考えて普段はお人よしで誰にでも優しい性格をしているんだろうと思う。
だから、まだ、出会って日が浅い少年のこういう態度を見たことが無かった分、ショックが大きかったのだろう。
だが、この子は傍目に見てもあの少年に依存しすぎてるようにも思う。
・・・まぁ、自分も人のことをいえたものではないけどね。
「・・・当ててみようか?君は、あのソラという子に拒絶されるのが怖いんだろう?」
「・・・」
何も答えないけど、その表情が全てを語っていた。
ものすごく、悲痛な表情だった。
「だが、いいのかい?君はあの少年が欲しいんだろう?自分の全てを捨てても。例え、それが全世界の人を敵に回そうとも」
「・・・わかんないの」
やっと言葉を発してくれた。
「わからないとは?」
「・・・アタシ、ソラに助けられたの」
その後のことはこの少女側から見た、自分が殺されそうになったときの詳しい話だった。
あの時、僕達はこの少女が『魔氷狼』、つまりは冬香という少女に命を狙われたとしか聞いてない。
「・・・で、アタシは・・・ソラが好きなんだな~って思った」
「・・・そうか。で、君はどうしたい?」
僕がそう聞くと、彼女は今にも泣き出してしまいそうな表情になってしまった。
だが、内心の動揺を押し隠してじっと耳を傾ける。
「・・・わかんない。何をしたいのか。・・・何をすればいいのか。・・・わかんない。・・・ねぇ、アタシはどうすればいいの?」
僕にすがりつくような目を向けてくる。
まるで世界から捨てられてでもいるかのようだ。
でも、僕に言えることは一つだけだ
「・・・君がやりたいことをすればいい」
「え?」
「僕が『別れろ』と言えば別れるのかい?」
「それは・・・」
「そんな事は、他人に言われてやることじゃない。・・・とだけ言っておこう」
僕がそういいきると、向こうからジュリアがやってきた。
・・・ちょうどいい。
「じゃ、僕はこれで」
「あ・・・」
彼女は何か聞きたがっていたがあえて無視した。
「・・・いいの?」
「あぁ。それを決めるのは僕じゃない。・・・そうだろ?」
「・・・まるで、あのリカちゃんって、昔の貴方みたい」
「それなら、向こうの彼は君だ」
「・・・かもね」
『色欲』の僕と『嫉妬』のジュリア。
狙ったとしか思えないような組み合わせ。
だが、そうなってしまった。
「でも、何故か彼らなら大丈夫だと思うよ」
「・・・いつもそんな根拠の無いことばっか言って・・・」
「失敬な。根拠はある。・・・僕達に似てるって事さ」
―――side隆介
「・・・リカさん達、大丈夫ですぅ?」
「・・・さぁな。・・・ソラのヤツはまた、自分を勘定から外して突っ走りやがって」
「ソラさんも、リカさんのためだからって・・・」
「・・・でも~わたしよくわかんなかったんだよね~」
「それは・・・あれだけ宇佐野さん達と屋台の話をしてたら、ね?」
「・・・?さっきから何言ってんだ?」
「田中っちはメンドイからいいって」
「さり気にひどくねぇか!?」
・・・だが、むしゃくしゃする。
・・・次の試合でぶっ飛ばすか。
『さて、ではでは次の試合!!まずは~・・・期待のルーキー、『夜明け(サンライズ)』!!そして、対するは・・・今大会初出場で最小のチーム!!『マスク・ド・デモン』!!』
オレ達はその言葉にフィールドに出る。
・・・次はどんなヤツが相手・・・。
「ふはははは!!!わしが相手じゃ!!」
「・・・何で俺が」
「掛かって来いや!!」
「・・・おい、人数が少なくねぇか?」
『あぁ~・・・何故か大会運営側から特例でOKでました』
相手は三人だった。
一人は龍の仮面をつけた爺さん。
もう一人は変な仮面をつけた青年。
最後はオレ達と同じぐらいの年の女で、魚を模した仮面をつけていた。
「ね~ね~、何でりゅ「それ以上は言うな。オレ達が知り合いだと思われる」何で~?ダメなの~?」
もちろんだ。
主に世間体的にだ。
あんな変態仮面一座と知り合いだとか思われたくない。
「でも、どうするの?」
「だよね~。間違いなく相手は『災禍の焔』を超える最強のメンバーだよ☆」
「・・・最悪だ。俺の出番が」
・・・よし、しょうがないがやるしかない。
「オレに考えがある。オレに全て賭けろ」
「え、でも・・・」
「大丈夫なんですか?」
「そういうのは三谷っちが担当だよ~?」
「すごい!リュウ君ってソラ君みたいにできるの!?」
「馬鹿か?オレにはあそこまで割り切る自身がねぇ」
「なら、どうすんだよ?」
「相手は魔王ですぅ!!私達は冬香さんのためにも勝ち進まないとダメですぅ!!」
「だから、こうすんだよ。・・・おい!!司会!!」
『はい?なんでしょう?』
オレは呼吸を整え、大きく息を吸う。
そして言い放つ。
「あの三人はオレ一人で十分だ。一試合のみで決着をつける!!」
「「「!?」」」
「ふん!小童が言うようになったの!!」
「君がこの私に勝とうなんぞ百年早いっ!!」
「・・・何でもいいが帰してくれ」
『あぁ~・・・相手もいいようなので許可します。ですが、そんな大見得きって三秒とかで終わった場合は出場停止でと運営から来てます』
「上等だ」
オレはそういうとフィールドに歩いていく。
後のやつ等がかなりうるせぇが問題は無い。
速攻でカタをつける。
「・・・おい、ジジ「わしは『ますく・ど・どらごん』じゃ!!」・・・クソ仮面。「じゃから」クソ仮面。「・・・」オレ達にはどうしても優勝しなくちゃいけねぇ理由が一つできちまった」
「依頼なら問題ないぞ?」
「・・・冬香のことだ」
「・・・どういうことじゃ?」
「んなことはどうでもいい。とにかく、降参してくれ」
「・・・ふ、甘いよ。隆介、君はちうからそんなに甘甘になっちゃったのかな!?優勝したくば、私達の屍を超えてゆけぇぇぇぇええええええ!!!」
「・・・帰っていいか?」
「どうしてもか?」
「・・・隆介、わしもそう思うぞ。いくら冬香ちゃんのためでもじゃ」
ジジ・・・クソ仮面はやたらと沈痛な面持ちで答えた。
・・・マスクしてっからよくわかんねぇけど。
「そうか、残念だ」
「仕方が無い。それが定めというものじゃ」
「ジジイの命日が今日になるなんてな」
「・・・は?隆介、おぬしは何を言って・・・」
オレはポケットからケータイを取り出して電話をする。
・・・つながった。
「あ、お袋か?ジジイがここでふざけてる。さっさと連れて帰ってくれ」
「隆介ぇぇぇぇええええええ!!??」
「・・・しょうがねぇだろ。最強に勝つには『最凶』をよぶしかねぇんだよ」
後のヤツらのさっきまでの緊張の雰囲気が別の意味での緊張の雰囲気に変わっていた。
まぁ・・・だろうな。
「・・・『どらごん』、君のことは忘れない。心置きなく逝って「あ、シャニアさんか?あんたのところの舞がここにきている」ノォォォォオオオオオオ!!!」
「・・・終わったな」
智也・・・じゃなくて仮面の青年が微妙にうれしそうにそう言った瞬間、何故か天気が悪くなった。
・・・今日は快晴のはずなんだがな。
何で嵐が来そうな天気なんだろうな。
オレがそう思った瞬間、闘技場の一つの入り口から二つの影が飛び出してきた。
一人は眼鏡をかけたスーツの女性、何故か手に日本刀を持っている。
そして、もう片方が執事服の老紳士で杖を持っている。
「・・・隆介、ありがとう。後でおこずかいアップね」
「お、マジか?やりぃ」
「・・・お嬢様、帰りますぞ」
「ちょ、ちょ~っとだけ待とう!私達には口っていう便利で平和的な器官が・・・」
「そ、そうじゃぞ!?じゃ、じゃから落ち着け!」
「智也さん。貴方はどちらの味方かしら?」
智也は仮面を外し、手をすっとジジイたちに向ける。
・・・これでジ・エンドだな。
「わしはまだ負けんぞ!!」
「わ、私だって!!」
「「反省しなさい!!」」
そこから先は・・・。
まぁ、悲しい事件だったとだけ言っておこう。
『あぁ~・・・『マスク・ド・デモン』が自滅しました』
ま、打倒だろう。
会場が何故かものすごく静かなのには突っ込まないでおこう。
「おし、勝ったぞ」
「勝ち方がえげつないね☆」
「褒めんな照れるだろ」
「・・・リュウ君は照れると刃物を突きつけるの!?」
「・・・まぁ、俺もえげつぎゃぁぁぁぁああああああ!!??」
田中は何となくむかついたからぶっ飛ばした。
まぁ、大丈夫だろう。
「・・・でも、間君のおかげで問題の一つは解決したよね!!」
「あぁ。そうだな」
問題の一つ、はな。
何故か急に悪くなった天候はまだまだもとに戻る気配が無かった。
作 「と言うわけで『二人と二人』をお送りしました!」
鈴 「何かいつの間にか大変なことになってる!?」
作 「そーいえば君はライニーと食べ物の話で盛り上がってたからね」
鈴 「むぅ~何だかおいてけぼりだよ~」
作 「まぁまぁ、君は真言ができるようになったからいいじゃないか」
鈴 「でも~」
作 「あんなところに肉まんがッ!?」
鈴 「加速そーち!!」
作 「・・・ガチで消えたよ。ま、次回予告」
鈴 「なかったよ~」
作 「・・・二人はどうなる?でも、物語はどんどん進んでいく!!」
鈴 「進まない物語ってあるの~?」
作 「・・・あんなところにももまんがッ!!」
鈴 「スズちゃんダーッシュ!!」
作 「そー言うわけで次回もよろしく」
鈴 「なかったよ~」
作 「何で食べ物のときはそんな超人的パワーが出るの!?」