11話・CONVERGENCE
―――side空志
『さ、さて・・・では二回戦の準備をお願いします!!』
向こうはその言葉と同時にすぐに選手を出す。
出てきたのは、スズと大食い大会で戦った・・・たぶん『暴食』を司っているライニーって女の子にメンドイとか連発してる女子、何かまた関係の無いものを欲しがってる少女か少年かよくわからない子。
「・・・じゃぁ、ここは俺が行きます」
「なら、私も行くですぅ」
「・・・じゃ、あたしもがんばる」
ボク等からは双子とインチョー。
・・・他は出ないようだ。
ま、ボク等は勝たなきゃいけない。そして、今日は勝てばこの後にもう一試合来る。ここで全戦力を投入なんてしたら後々で大変なことになるからね。ある程度は残しておかないと。
「みんながんばれ~」
「応援してる」
「インチョーの魔術符、≪水域≫は制御さえすれば双子ちゃんもぬれないから」
「・・・だが、ヤツ等は七人にもかかわらず残り全員を投入か・・・何かあるのか?」
「私達ががんばるから大丈夫ですぅ」
「俺達もできるだけのことはします」
「あたしもエリアもいるから大丈夫!」
そういうと三人はフィールドに入っていった。
でも、中々にバランスがいい組み合わせになってる。
治癒にシャンちゃんだし、前衛にシャオ君、後衛がインチョー。
それに、シャンちゃんは普通に前衛でもかなり強い。
体内の『気』、つまりは魔力全てを自分に持っていくことが無意識にでき、意識したときには『気功術』として治癒に使える。
・・・何でボク等のメンバーの治癒担当は前衛が多いんだろう?
だって、シュウもたぶんボク等の中で魔法抜きなら最強の人だし。いや、魔法があっても対抗できるのがリカだけという超人だからな・・・。
『出揃ったようです!!では、第二回戦始め!!』
その言葉同時に双子ちゃんが何も示しあってないにも関わらず前に飛び出す。
インチョーは既に魔術符とコップを取り出し、相手に向けている。
「・・・メンドイ」
「早く終わらせようよ~。お腹減った~」
「おぉ!?あの双子速い!」
そういうとリンゴアメが欲しいとか言ってた子とスズがライニーちゃんとか言ってた子が前に出る。
そして、ライニーは小さな体には似合わない武器を・・・。
「って、大砲!?どっから出した!?」
「・・・まぁ、オレ達も似たようなもんだ気にするな」
まごうことなく、大砲を・・・それを小脇に抱えるようにして持つ。
「撃て~」
へろへろ~とした声からは想像ができないような光の砲弾を双子に向かって撃つ。
・・・たぶん、魔法銃の一種だ。砲弾からは魔力しか感知できない。
「シャオ!」
「大丈夫!」
そういうと双子は簡単に避ける。
ま、それもそうでしょ。シュウはアレぐらい目をつぶっててもできると思うし。
でも、次の現象にボク等は目をむいた。
「≪追≫!」
ライニーが一言言った途端、砲弾はありえない起動を描いて双子に向かっていった。
双子はそのことに驚き、とっさの行動ができない。
「危ない!!エリア!」
『きゅ!』
インチョーがエリアを呼びだし、水を操作。
そして、水塊を精製し双子をを吹き飛ばす。
「「わきゃぁぁぁぁああああああ!?」」
「・・・ゴメン」
『・・・ごめん。えりあ、まちがえた』
・・・何をしてるんだろう?
威力は低かったのか双子は普通に立ち上がる。
「大丈夫、ですぅ・・・」
「俺も助かりました」
「おぉ~。ナイスコンビネーション!」
どこが?って思ったけど突っ込まない。
向こうのライニーはどこと無くスズとベクトルが似通ってるんだろうってことで自己完結しておく。
ボクは隣のリュウに聞いてみる。
「あれは?」
「あれは本来、魔法銃を使うものの基本技能だ」
・・・あれ?
ボクはあんなのしたこと無いよ?
ボクのその表情から何を言いたいのか察してリュウは重ねる。
「本来、魔法銃を使うのは膨大な魔力を持っているがそれを魔法として行使できない、あるいは極端に魔法を収束させることができないヤツのために考え出された武器だ」
要するに、あまり魔法がうまくない人のために考え出されたんだろう。
・・・じゃ、ボクがこの銃を持ってる意味って何?
「ま、これを期にお前も覚えろ。そうすれば攻撃のバリエーションが増える」
「まぁ・・・するけどさ」
ボクはそう言いつつ≪月詠≫をこっそりと展開。
相手の銃の魔法構成を解析する。
もちろん、ボクの持ち技に加えるために。
「・・・でもさ、よく考えるとあの魔砲じゃつぎ込む魔力も桁外れになるんじゃない?」
「あぁ。だから、アレは完全に後衛の武器だ。・・・だが、何でヤツは前に出てきた?」
そんな魔法の素人に聞かれても・・・。ボクがそう思ったときだった。
さっきからライニーは魔砲弾を撃ちまくっていたからかついに魔力が切れた。
ま、これもボクだからこそわかることだけど。
「む?魔力が切れた~」
「おけおけ。ライニーは後ろ行って!リートがやっちゃうもんね!」
そういうと、自分をリートと呼んだ少年か少女かいまいち判断のつきにくい子はどこからとも無く二本のナイフを取り出し、三人を相手に切りかかる。
双子は息のあったコンビネーションで相手を少しずつだけど確実に追い込んでっている。
そして、双子が何の合図もなしに突然猛攻に出たそのとき、まるでそこを狙ったかのように魔砲弾が放たれた。
その先には、ライニーがいた。
「何で!?」
「あ?どうした?」
「いやいやいや!?魔力が切れてたのに撃ったよ!?」
「え~・・・ソラ君の間違いじゃないの~?」
「でも、ソラが間違ったことってあんまり無い」
「今回はそのたまたまだったんじゃない?」
ボクもそう思っただろう。
その魔力がほぼ回復していなければ。
「今のあの子の魔力は最初のときとほぼ一緒」
「んなバカなことがあるか」
「んなバカなことが目の前で起きてるの!!」
でも、いきなりの不意打ちにもかかわらず双子は冷静に対処。
インチョーも≪水の機関砲≫で相手を攻撃する。
相手は魔砲をインチョーに向けて撃つことで弾丸を弾き飛ばし、インチョーが避けなくちゃいけなくなる。
そして、何発か撃つとまた魔力が切れる。
「むぅ~まただ~」
「はいはい。さっさとしちゃってよね~」
そういうと、ライニーは突然どこからとも無く大きなおにぎりを取り出した。
ボク等がいったい何をしようとしてるのか困惑してると、戦闘の最中にも関わらず大きく口を開けておにぎりをほうばり始めた。
ボク等はその光景に唖然としてしまった。
「・・・どういうことだ?」
「きっとお腹が減ったんだよ~」
「・・・そんな・・・鈴音みたいな・・・」
「・・・まぁ、余裕なんじゃない?」
「違うわ!!解析したらとんでもないことがわかったんだけど!?」
「何だ?」
「何か、おにぎり食べたら魔力が回復した」
「・・・ソラ、RPGのしすぎだよ」
「違うから!」
「準備オッケ~・・・撃て~!」
またもへろへろ~とした声で砲撃を開始。
魔力が切れていたとは思えないほどの威力だ。
属性は『変換』とでも言うのかな?
それで効率よく魔砲の弾丸の特性を変換し、更には自分の魔力が無くなれば外部からエネルギーを摂取して、つまり食べることで自分の魔力を回復。
「『暴食』。そういうことか」
「わたしもがんばればできるかな~?」
「・・・鈴音ならできそうな気がしてきた」
うん。ボクもそう思う。
何でだろう?とても不思議だ。
たぶん、スズは常識では測れない超常的な存在なんだろうね。
「・・・おい、そういうや向こうのもう一人のヤツはどうしたんだ?」
・・・そういえば、敵は二人で双子とインチョーに対応している。
ボクはさっきまで敵の三人がいたところを見てみる。
そこには腕を組んだままたたずむものすご~く眠そうな女子。
今にも寝そう・・・。
「・・・・・・・・・すー・・・」
「・・・おい」
「・・・リカ?」
「アタシにも聞こえた」
「ほい、双眼鏡」
宇佐野さんがボクに双眼鏡を渡してくた。ボクはそれをのぞいて相手を見てみる。
宇佐野さんが何で双眼鏡を持っていたのか聞かないでおく。
「それはメイドだからですよ、ゴ・シュ・ジ・ン・サ・マ☆」
「聞いてないし意味がわからない」
ピントを合わせてみると、そこには・・・。
「・・・立ったまま寝てる」
「おい、そんなギャグは要らんぞ」
「さすがにそれは・・・」
ボクは無言で双眼鏡を二人に渡して確認させる。
相手を見た瞬間、二人は明後日の方向をむき出した。
「・・・ZZZZZ」
「そろそろ起きてよ~。リート疲れた。それに早くお祭り行きた~い!」
「私もお腹減った~。ディアさ~ん。ちゃっちゃとして~」
「・・・ZZZZZ」
「疲れたー!!」
そして、リートと名乗った子がいきなりナイフをディアと呼んでいた女の子に投げつけた。
そして、何も無いはずの空中で硬質な音を響かせて地面に落ちた。
「・・・ん~?・・・眠い。・・・リート、お前か?」
「だって~!!もう疲れた~!!」
「・・・我侭なヤツだ。・・・さすが『傲慢』。・・・ZZZ」
「寝るなー!」
そういいながら二人のコントがこっちの三人の攻撃をガードして繰り広げられる。
ふざけたことをしてるけど・・・・・・ものすごく強い。
「・・・あぁ~・・・わかったわかった。瞬殺するから」
そして、おもむろに杖を取り出す。
そこを詠唱の邪魔をするために双子が強襲。
開いた穴はエリアとインチョーが何とか持つ。
エリアが水を操作して小さな水球を縦横無尽に走らせる。
インチョーはさっきから弾幕系の攻撃を仕掛ける。
「「ハッ!!」」
双子の息のあった攻撃が行くが、相手は杖を軽く一振りするだけで双子を吹き飛ばた。
あの人何!?強すぎない!?
それに、今解析してわかったんだけど・・・!
「・・・甘いよ。≪身体強化≫はもちろんしてるに決まってるでしょ。・・・ちなみにジ・エンドだから」
そういうとディアは手を上にかざす。
やっぱりか!?
「三人とも!!それはやばい!!降参してもいいからとにかく死ぬな!!」
「え!?急に何を言い出すの!?」
「・・・・・・≪降り注ぐ隕石≫」
「「「うそぉ!?」」」
突然だった。
いきなり上空に燃え盛る大岩の塊がいくつも出現。
『火』、『風』、『土』の本来は三人でつむぐような混合魔法。
向こうの学校でスズがこれの下位魔法である≪劫火の隕石≫をやられて大変なことになりかけた。
「それを一人って何!?てか、三属性持ちとかいるの!?」
「あぁ~・・・いるぞ?目の前に」
「ボク以外で!!それにボクはいろいろと規格外でしょ!?」
それに、ボクのあの『火』はひょっとすると『天空』の要素の一つなんじゃないかって思い始めた。・・・とある魔法の実験で。
「お前な、自分だけが規格外じゃねぇんだぞ?確かにホントのホントに希少だがちゃんと三属性もいる。だから多重属性なんだろうが」
「知らねー!」
「でも、混合魔法はすごいね。それほどの魔力を持ってるのかな?」
「それに、ワタシの情報だとあの人は体術もすごいらしいよ~」
なにそのチート!?
すごすぎ!?
そして、そんなことを話し合っているうちに会場を大きな地震が襲った。
「・・・ホントに死ぬかと思いました」
「もう二度と来ない・・・」
「・・・疲れたですぅ」
アリアさんの服のおかげかインチョー達はボロ雑巾のようになりはすれど生きていた。
ホントに今回はアリアさんに感謝だ。
「・・・おかしいな?ぺしゃんこで消し炭になるはずなのに。・・・まぁいいや。・・・寝る」
向こうから恐ろしい独白が聞こえたけど聞こえないことにしておこう。
そのほうがこの三人には都合がいい。
『・・・さて、会場の修復が完了したしました!三回戦目の準備をお願いします!』
「・・・どうする?」
相手は一人。
あの大柄でごつい体格で大声の人。
そして、たぶん『憤怒』を司る。最後の一人。
・・・こういう人はかなり強いって定番だ。でも、ここで残りのメンバーを投入するのもなぁ・・・。
「よし、リュウ!レオ!」
「みゃ」
「おし。オレ達だな」
ボクとリュウがフィールドに向かう。
今回はリカも文句を言わずに・・・。
「ダメだよ~。後でソラ君を好きにしていいから今回はガマンして~」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わかった」
後でボクが売られた気がする。
スズめ・・・後で覚えとけ!スズのゴハンを片っ端から奪ってやる!
「お前等が俺の相手か!!」
「そうだ!!」
「そうか!!何でそんなに大きい声なんだ!!」
「アンタが言うか!?アンタが!?」
『選手が出揃ったようです!では、第三回戦、始め!!』
ボク等のボケはまったく無視して試合を始める。
・・・空気を読んでいるのか読んでいないのかまったくわからない。
「俺は『憤怒』を司るヴァルス・サタンだ!!」
「あ、丁寧に・・・ボクは三谷空志。で、こっちの黒いのが間隆介」
「黒いのって、お前・・・」
「そうか!!では、行くぞ!!!」
一際大きくボク等に向かって言うと、手に二メートルほどの大きな剣・・・ツヴァイハンダーが現れる。ツヴァイハンダーの特徴は剣身の根元近くに革などが巻かれていてそこをもてること。革でまかれた部分を持って振り回しより大きな破壊力を生み出す。By煉さん。
そして、相手もその例に漏れず自分の身長を越える大剣を柄と剣身の革がまいてある部分を掴みこっちに突進してくる。
「まずは手始めに≪雷――≫・・・。
―――其は風に属す法則
風よ、ボクの力となれ
それは猛り狂う迅き風の如く
≪風の舞≫!」
「詠唱が遅いぞ・・・≪影抜け≫」
ボクは風で移動し、リュウは影にのまれて消える。
ヴァルスはそんなのお構い無しでボクに突撃。
大剣をボクに振りかざす。
そこでボクはある程度は予想がついていたから魔法銃を構えて魔法弾を叩き込む。
全弾直撃。
だが、相手の勢いは止まらない。
「あぁ~さすがにまずいかな?」
「もっと魔力の収束を練習しとけ!」
リュウがどこからとも無く現れ、魔法の刃をともしていない短めの刀身の双剣で切りつける。完全に間合いのうち。
そこで、ついに相手は魔法を発動した。
相手の体から炎が発生する。
「ナルホドな!」
リュウは軽業師のように跳躍して距離をとる。
ボクは魔法の推進力を持ってリュウの隣に高速で移動。
「『炎』で魔装系、か。ベタだね」
「そういうお前等も『闇』と『風』か?しかもかなりトリッキーな戦い方だ」
「そんなホメんなって」
「そうそう。でも、残念でした。少しだけ外れ
―――其は雷に属す法則!
鮮烈なる光の刃。
それは空の怒りの如く!!
≪空の雷鳴剣≫!!」
ボクは上に手をかざして魔法を発動させる。
すると、バチバチという音を立てながら雷が収束。
それは一本の雷の剣を形成し、相手に放たれる。
雷が空気を焦がす臭いがし、着弾したあたりの地面から雷の柱が昇る。
「ん・・・。まぁまぁかな?」
「だな。まぁ、ごく普通レベルだ」
そういうとリュウは≪闇の刃≫とつぶやくと大量の黒い刃がボクが狙ったあたりに殺到する。
そして、そのあたりから大きな火柱が上がった。
その火柱の中からまるで悪魔か何かのようにヴァルスが出てくる。
「・・・なるほど、『風』と『雷』・・・いや、『天空』か?」
「ご名答」
ボクは魔法銃から弾丸を放つ。
相手はその弾丸を大剣を振り回してなぎ払う。
「・・・おい、ソラ参謀どうする?」
「さぁ?何も思い浮かばないからリュウ突撃隊長が何とかするってことで」
「ハァ?メンドイ」
相手はボク等のところにその体には似合わない俊敏さで肉薄。
そして大剣を振り下ろす。
ボク等は間一髪で避け、そこに牽制の魔法を放つ。
そしてまた膠着状態になる。
「これじゃキリが無い」
「だな。・・・別にジジイには連絡したが別に本気出したところで問題ないッつーてたからな」
・・・よく考えると、ボク等よりも特殊な魔法を使ってた人がゴロゴロ転がってた気がする。
「・・・本気で行く?」
「それが手っ取り早い」
ボクは≪風の舞≫を解除し、リュウは双剣を腰の剣帯に収める。
ヴァルスはボク等の行動に眉をひそめ、周りの観客も困惑の声を上げる。
『どうした?『夜明け(サンライズ)』の隆介選手に空志選手は降参でもする気か?』
「誰が降参だ?」
「そうそう」
「「こっからは全力だ!!」」
そういうとボク等は一気に魔力を解放。
今までためにためてた分をここで吐き出す。
「魔法陣展開・・・」
「魔法剣・・・」
ボクの銃には紋様が現れ、リュウの双剣からは黒い光が鞘から漏れる。
「≪雷閃疾空砲≫!」
「≪刹那≫!」
ボクからは雷を内包する風の弾丸。
リュウからは極限まで収束させた闇の刃を居合い抜きのように抜き放って飛ばす。
ヴァルスは攻撃を受け止めるという愚を冒さずに避ける。
その瞬間ヴァルスの横ギリギリをボク等の魔法が駆け抜け、壁に着弾して轟音を響かせる。そこには壁どころか新しい通路ができていた。
「・・・やっちゃった」
「・・・あぁ」
『な、何だ!?いきなり魔法を放ったと思ったらさっきまでとは段違いの威力!!??この二人、ここまでの実力を隠してここに来た!?』
「・・・それがお前達の本気か?」
「それなりにだな」
「まぁ・・・。そういうわけでボクの目はごまかせないよ。そっちも本気で来なよ」
「・・・どういうことだ?」
「いや、君さ、ホントは『炎』と『氷』の多重属性持ちでしょ?」
その言葉に向こうのメンバー全員が驚く。
ま、そりゃそうだ。
いきなり見ず知らずの人に見せてもいない属性を言い当てられたら誰だってビックリする。
「おい。初耳だぞ?」
「別にリュウは知らなくても対処したでしょ」
「まぁ、そうかもしれんがな・・・魔法剣≪黒刃≫」
リュウが構えを取ると剣に黒い魔力の刃が展開される。
これでリュウは無詠唱で魔法剣を行使できる。
「お前のは魔装系の一種か?」
「違う。これはあくまでオレが『魔法剣』と名づけた一種の詠唱法だ」
「でも、来ないならこっちから行くよ?」
ボクは魔法陣を展開。
今回はできるだけ動物系の魔法はやめておこう。
後でいろいろと大変そうだし。
「レオ。出番だよ」
「みゃ」
ボクのフードの中にずっといたレオもやっと出番かとでも言うように地面にすたっと降りる。そして、光に包まれると一頭の翼の生えた獅子がそこに現れる。
「じゃ、レオは適度に攻撃して」
「がう」
レオは心得たとばかりにボクに短くうなるようにして答える。
じゃ、ボクもやりますか。
「リュウ!相手の動きを!」
「わかった!・・・魔法剣≪影討ち≫」
その言葉でリュウは自分の影の中にずぶずぶと入っていく。
その次の瞬間には相手の真後ろに。
相手はそれに気づいて力任せに大剣を振るう。
リュウはそれを先読みしてしゃがみ、続けざまに魔法を放つ。
「魔法剣≪影縫い≫!!」
リュウが剣の片方を影に向かって突き刺す。
すると、相手はまるで縫い付けられたかのように動けなくなる。
ボクはそこに魔法を叩き込む。
「≪雷閃疾空砲≫」
ボクの銃から魔法が放たれる。
そして、ありえないことが起きた。
「うぉぉぉぉおおおおおお!!!!!」
「っ!?」
リュウがそこで剣諸共吹き飛ばされた。
そして、相手はどこから出したのか二本目の大剣を取り出し、ボクの魔法を受け止め、そのまま横へと流した。
「何だ!?リュウ!!」
「大丈夫だ!!こいつ、ものすごいバカ力だ!!」
いやいやいや!?
それでも大剣二刀流とか聞いたことが無いですよ!?
と言うか大剣の二刀流ってのを聞いたことが無い。
普通は片手半剣でするものだ。
むしろ、リュウの剣はそれよりかなり短い。
そこで魔法の刃をはってちょうどいい長さになるってだけ。
「いいだろう、俺も本気を出す!!」
そして、剣の片方から熱気が、もう片方からは冷気があふれ出した。
・・・何かどこぞのテ○コマンドメ○ツ?
「俺がここまで本気を出したのはかれこれ・・・・・・いつ以来だ?」
「「知らねぇよ!!」」
「三年前じゃない?」
「いや、一ヶ月前だろう?」
「・・・んぁ?」
「それより早く祭り~!」
相手チームはフリーダムだった。
って、今は関係ないし・・・。
「まぁ、そんな事はどうでもいい」
どうでもいいなら言わないでください。
こっちがいろいろと大変だから。
「行くぞ・・・。≪凍てつく炎≫!!」
気合の声と共に思い切り二本の大剣がすぐそばのリュウに振り下ろされる。
リュウはいつものように影から影へ移動することで攻撃を回避。
さっきまでリュウのいたところには猛り狂う青白い炎が周囲を凍らせていた。
「なにあれ!?物理法則的にありえない!?」
「わからん!!魔法だろ!」
「俺の剣は絶対零度の炎で凍る。このようにな!!」
今度はボク等に向かって剣をフルスイング。
すると、さっきの青白い炎がボク等に向かって放たれる。
炎の通った先は燃える氷になって残ったままだ。
「リュウ!」
「わぁってる!!≪闇の侵食≫!!」
リュウの闇が魔法を喰らう。
でも、そのリュウの魔法をもってしてもとどめるのが精一杯みたいだ。
ボクは魔法弾をいくつか放つ。
相手はそれに合わせて二つの剣を振って氷の炎でボクの弾丸を止めた。
「なんつーか、あれはねぇだろ」
「・・・まず、たぶんあの魔法は二つの剣を振るうことが条件。炎に少しでも触れれば攻撃も凍結。・・・なら、魔法を壊そう」
「・・・いいのか?」
「大丈夫だよ。リュウ、頼んだよ」
「おう」
「よし、レオ!咆哮覇だ!!相手に近づくのはダメ!!」
レオはボクの指示ですぐにボクのそばで咆哮覇を打ちまくる。
リュウは炎を避けて相手に接近。
そのまま攻撃して相手の注意を自分に向ける。
「俺に近づくと大変なことになるぞ?」
「だろうな!!魔法剣≪斬黒≫!!」
リュウは黒い斬撃を放つ。
相手はそれを自分の周りに炎を展開。
氷の壁で防御をし、物理攻撃は攻防一体の炎を飛ばす攻撃。
そうするうちに相手の足場が少なくなる。
「おいいいのか?そんなにやるとお前の足場もなくなるぞ?」
「ふん!俺がこの魔法をコントロールできないとでも思ったのか!!」
相手は炎をコントロールして自分は凍らないようにできるようだ。
・・・たぶん、インチョーが≪水域≫の魔術符を使っても術者がぬれないようにボクが設定したみたいに。
「ッチ!おいレオ!やれ!!」
レオは言われなくともとでも言うようにヴァルスにどんどん攻撃をしていく。
もうすぐだ。
「おい!お前まだかよ!?」
「・・・できた!リュウは下がって!!≪月夜≫!」
ボクは魔方陣に手を突っ込む。
リュウが隣に来るのを確認して、相手に話しかける。
「・・・ねぇ、アルテミスって知ってる?」
「?」
「アルテミスはギリシャ神話に出てくるゼウスの娘で『月の女神』なんだ」
「・・・それがどうした?」
「でも、アルテミスは他にもいろいろと司っていることがあるんだ。例えば、豊穣とか・・・狩猟とか。それで、海と馬の神のポセイドンが三叉矛を持つようにアルテミスは『弓』を持っていたんだ」
「だからそれがどうした!!」
ヴァルスは痺れを切らして炎を飛ばす。
リュウはすかさず≪闇の侵食≫でガードしてくれた。
ボクは、それをしっかりと見据えて言う。
「つまり、こういうこと!来い、『月弓』!!」
そして、魔力がボクの手に集中して一つの形を作る。
それは、銀色に輝く綺麗な弓だった。ただし、矢は無い。
「そんなもので俺は倒せない!」
「・・・ボクさ、魔力のコントロールは得意なんだけど収束が全然ダメなんだ」
「そんなもの、銃を見た時点でわかっている!!」
「で、実はこの魔法は刀とかによくしてたんだ」
「何をワケのわからんことを!」
「今回、ボクはこれにたった一つの魔術構成を組み込んだ」
そして、ボクは弓の弦に矢を番えるように構える。
「ボクがここに注ぎ込む魔力をとにかく収束するように!!」
ボクはそこで思いっきり魔力をつぎ込み始めた。
魔力は見る見るうちに収束し、光り輝く一本の矢を形成する。
そして、ボクは収束を弓に任せ、とにかく矢の形になるように魔力を整えていく。
ここでミスれば全部おじゃんだ。
この弓と言う武器、そして魔法の特性上まっすぐに飛んでいかない。
「な!?それは魔弓か!?そんな古代の魔法を!!」
「・・・なにそれ?」
「あぁ。魔弓は魔力を矢のようにして放つ武器だ。だが、これには膨大な魔力、そしてコントロールが必要なため廃れていった」
わぁお。
じゃ、またボクはやっちまったわけだ。
「・・・ま、いい感じに収束したし・・・穿て!!」
ボクは、弦から指を離す。
すると、弓から光り輝く矢が高速で飛び出し、相手の氷の魔法を吹き飛ばして突き進む。
そして、相手に着弾。
一瞬光ったかと思うと相手がぐらりと揺れ、ばたんと前のめりに倒れる。
「おい、大丈夫なのか?」
「・・・大丈夫、魔力にダメージが行ってるだけだから。・・・都合よくいつもの具現化と同じ効果をやってくれたみたいだね。・・・たぶん、この魔法自体がそういう効果の魔法だからかな?」
「ま、何はともあれオレ達の勝ちだ」
シーンと静まりかえった会場にリュウの声が響いた。
作 「と言うわけで『収束』をお送りしました」
空 「いやぁ、やっとできたよ。あれ限定だけど」
作 「まぁ、自分は結構神話とかそれなりに好きだし、いつかは出そうと思ってた」
空 「でも、アルテミスってホントに神器的なモノが『弓』なの?」
作 「いや、それはさすがにわからなくて・・・。ぶっちゃけ、たぶんで」
空 「・・・いいの?」
作 「・・・許して」
空 「まぁ、神様が持つのでよく知ってるのが北欧神話だしね」
作 「偏った知識でゴメン。だが、反省はしていない!!」
空 「それで馬鹿なんだ」
作 「次回予告じゃぁぁぁぁああああああ!!!」
空 「・・・またか」
作 「次回、ちょこっとシリアスに突入!」
空 「へ~。そうなんだ」
作 「何かノリで進めてたらこうなった」
空 「シリアスってノリで造るものなの!?初めて聞いたよ!?」
作 「自分の才能が恐ろしい!」
空 「・・・ある意味でスゴイ才能だよね」
作 「つーワケでがんばれ、主人公」
空 「・・・またボクか!?」
作 「次回もヨロ!!そしてダッシュ!!」
空 「逃げるなぁぁぁぁああああああ!!!」