6話・OVER DRIVE?
―――side空志
「・・・どうしたの?」
ボクは目の下に隈を作った女子達に聞いた。
「ガールズトークしてたら盛り上がっちゃって・・・」
「・・・ZZZZZ」
「立ったまま寝るな。・・・って坂崎器用だな!?」
「つか、相手の手の内がわかってるガールズトークなんて面白いのか?」
「何で?じゃ、なんて話したか当ててよ」
「坂崎の好きな人はいない。タイプはどうせ飯屋の息子とかで理由は自分が腹いっぱいになるため。宇佐野は自分の情報すら売るようなやつだ。シャンはシュウだろ?リカは言わずもがなだ。・・・お前だけだなわからないのは」
何でそんなすらすらと。
インチョーもこいつ当てた!みたいなこと言って驚いてる。
「シャン起きろ」
「シャオ~負ぶってってですぅ~」
「はわ~・・・さすがのワタシも少しだけ眠いかな」
一番元気そうなあんたが何を言うか。
で、唯一いつもと変わらないのが・・・。
「みんな元気ないよ~」
「リカはさすが吸血鬼だね~」
「みゃ~」
微妙に不安なコンディションでボク等は大会に臨んだ。
『レディース・エンド・ジェントルメーン!!!大変長らくお待たせいたしました!闘技大会二日目、本戦を開催いたします!』
司会の言葉に会場が盛り上がる。
ボク等は選手控え室にいたにもかかわらずよく聞こえた。
試合はトーナメント方式で昨日とほぼ一緒。
でも、今回はかなり強いらしい。
話によるとここに来るまででかなりふるいにかけられるらしい。
ボク等みたいにストレート勝ちしかしてないチームのみがここに立ってるみたいだ。
いたとしてもすぐに負けるとか昨日、他のチームの人の会話を盗み聞きした。
つまり、最低でも田中レベルはあると・・・。
「あれ?よく考えたらそれってザコじゃ?」
「おい。お前、さりげなく俺をザコ呼ばわりにしたよな?」
「心読んだ!?」
「声に出てたわ!!」
「ボケるのもたいがいにしとけトーナメント表が出るぞ」
リュウがボク等にそういうと、空中にスクリーンが展開。
そこにトーナメント表が現れる。
一番下にはチーム名が書いてある。
ボク等は・・・っと。
「また一回戦目?」
「らしいよ。でも、ソラなら楽勝だよ」
「いや、ボク魔法陣使えないからさ・・・」
「ソラ君ドンマイだね~」
「みゃ」
「昨日は双子と田中に任せっきりだったからな。今日はオレ達でやっとくからお前等は休憩でもしてろ」
「いいんですか?」
「遠慮なくそうするですぅ」
「んじゃ、俺はベンチから応援しとく」
『では、第一試合!選手は入場してください!』
「行くぞ!」
ボク等は思い思いに返事をするとリュウについていった。
フィールドに入ると周りから歓声が上がる。
『初出場にもかかわらずその力を見せ付けるルーキー・・・冒険者ギルド所属『夜明け』の登場だ!!』
司会の言葉に合わせてどんどん会場のボルテージが上がってく。
・・・初戦からテンションマックスですね~。
『さて、対するは・・・そのトリッキーな魔法で相手を翻弄する自由気ままな大道芸人達の集団、『黒猫サーカス団』!!』
・・・何でサーカス団が出場してるの!?
てか、観客がうるさい!
『さて、もはや大会常連の『黒猫サーカス団』が勝つか、それとも『夜明け』が勝つか!全員、見逃すなよ!』
しかも相手は常連なんだ!?
サーカス団強っ!?
ボクは向こうから入ってきた人たちを見る。
「・・・あれ?ピエロさん?」
「・・・お~。君はいつぞやの女の子の連れじゃないか!」
一昨日、噴水の広場で知り合ったピエロさんだった。
「まさか、君達とは・・・」
『おぉ~?どうやら互いに知り合いだったようですね~』
「団長?あれが昨日のあの龍の女の子ですか?」
団員らしき人がピエロさんに聞いている。
てか、団長さんだったんだ。
「あぁ。・・・そうだ。いいことを思いついた。君!」
「はい?あたしですか?」
インチョーが名指しで指名される。
・・・嫌な予感しかしないけど、今回はボクに関係が無いはず!
「この試合、私達が勝ったら入団してくれ!!」
「・・・え?」
「「「えぇ~!?」」」
インチョーは話についていけないのかぽかんとしてる。
ボク等は急な展開にビックリすることしかできない。
『何だか面白いことになりましたね~。では、それを認めます!』
「おい待て!それはオレ達が決めることだろう!?」
リュウが慌てだす。
ボク等もパニックで頭がまともに回っていない。
『では、話もまとまったところでダイスロール!!』
まとまってない!!
ボク等は心の中でそう突っ込みながらスクリーンに映し出されたサイコロを見る。
目は・・・五だ。
『では一戦目、どうぞ!』
「助けて!!」
インチョーがボク等に助けを求める。
元から優勝しなきゃいけないんだけど、負けられない理由が一つ増えてしまった。
「ちょ!?誰が行くの!?」
「・・・ここは一気に行こう。リカとスズで」
前衛のチートと後衛のチート。
これなら大丈夫でしょ。
「いやぁ~。ソラとがいい~」
「・・・この際それでいいや!!」
「そんな適当に決めないでよ!?」
「大丈夫だって。ボクも負けるつもりないし」
「それにアタシ達も十分強いよ!」
そういうとボクはリカとフィールドに入っていく。
既に相手は準備を済ませていた。
相手は片方がボク等と同い年ぐらいの少年。
もう片方が二メートルはある偉丈夫。背中に背負った戦斧がやたらと大きい気がするけどあの人が使うとちょうどよさそうなサイズだ。
『さて、両者決まったようです。では、始め!!』
「・・・これはリカがあっちのでっかい人ね!」
「わかった」
「は?オデがだか?譲ちゃん、悪いこたぁ言わねぇから降参しなって」
ものすっごい訛ってる!?
どんなド田舎から来たんだよ!
「舐めないで・・・『クレセント』」
リカは自分の大鎌を取り出すと構える。
向こうの人も戦斧を構える。
そして、リカの姿がぶれる。
次の瞬間にはでっかい人のすぐ近くにいた。
でも、相手はリカの動きに反応して鎌を受け止める。
それにもかかわらず相手はリカのフルスイングした鎌で会場の壁にまで吹っ飛ばされた。
会場はリカが自分の背丈と体重を遥かに越える男の人をぶっ飛ばしたのに驚愕の声を上げる。
相手も相手でごく普通に立ち上がったし。
「うわ~。ダオスさんが吹っ飛ばされたよ。あの子すげ~」
「そのわりには驚いてないね」
ボクは目の前にいる少年に言う。
「まぁね。そっちには魔力無効化体質もいるんでしょ?他にも隠しだまとかありそうだね」
「さぁ、どう思う?」
「ま、いいけどね。ガトウです。よろ」
「三谷空志」
「みゃ!」
「こっちはレオ・・・って、ついてきたの!?」
いつの間にかレオがボクのフードにもぐりこんでた。
・・・ま、いいか。
とりあえず銃を放ってみる。
相手は軽業師のように避ける。・・・て、軽業師か。
「猫か・・・キャラ被るんだよな~」
「何言ってんの?・・・君は獣人族じゃないよね?」
「もち。ごく普通の人間」
なら、どこに被る要素が?
「ちなみに被るってこういうこと。≪獣装・猫≫!」
そういうとガトウが光を纏う。
光はすぐに消え、そこにはシュールな光景が。
「・・・猫耳?」
「そうだにゃ。言ったにゃ、キャラ被るってにゃ」
ガウトからは猫耳に尻尾、手からも鋭利な爪が生えていた。
ま、一つだけいいたい事がある。
「男が猫語はちょっと・・・」
「いやいやいや!?女の子だから!」
「・・・え?」
「いや、わたし女の子。ぴちぴちの十八!」
「・・・年上!?女子!?でも、年頃の人が猫とか「これ使うと強制的ににゃるんだ!!」・・・さいですか」
まさかの展開。
名前から口調から男の子っぽいから。
ついでに見た感じも。
「・・・まぁ。本気で行くにゃ!」
そういうとガウトはさっきよりも若干スピードを上げてボクに向かってくる。
たぶん、自分に動物の特徴を付与する魔法なんだろう。
猫だから機敏さとかかな?
ま、対処できなほどじゃない。
「≪風火――≫じゃなくて。
―――其は風の法則。
風よボクの力となれ。
それは猛り狂う迅き風の如く。
≪風の舞≫」
魔法が発動してボクは足元に風を纏う。
風の推進力を使って高速での移動を可能にしておく。
・・・でも、≪風火車輪≫のほうが段違いに速いんだよね。
今回はできるだけ使うなって言われたししょうがない。
ボクは銃を放つ。
だが、相手も身体能力が上昇したために簡単に避けられる。
・・・これじゃ埒があかない。
「みゃ~」
「ん?どうしたの?」
「ふん!子猫にできることなんかないにゃ!」
「みゃぁ!」
何故か猫同士で会話を始めた。
レオはボクの返事を待たずに地面に降り立つ。
そして、いつものようにライオンに変身。
「・・・へ?」
レオが咆哮覇を放つ。
ジ・エンド。
急な事態についていけなかった相手はあっけなくレオの手加減された光線によって戦闘不能にされた。
「やっぱ百獣の王は強いね」
「がう」
レオは当たり前だとでも言うようにボクに言う。
で、ボクはリカのほうを向いて見る
そこには美少女とむさい大男が力比べをするというシュールな光景が広がっていた。
実際に、今現在も鎌や斧によるクレーターの製造を二人はせっせとしている。
「大変だね~」
「がう」
「手伝ってよ~」
「ガウトちゃんが負けただか!?おめーさん強ぇんだな」
「そういうアナタもリカについていける時点でかなりすごいです。まぁ、そろそろ本気でやればいいんじゃない?」
「いいの?」
「舞さんが何とかする。しなくてもさせる」
宇佐野さんに頼めば万事解決のはず。
・・・脅迫しようとしてるんじゃないよ?少し頼むだけだよ?
「おめーさん、本気出してなかっただか!?」
「うん。というわけで」
その瞬間、リカの姿が本当に消失した。
ついさっきまで、リカはボクでもわかる程度の速さで戦っていた。あくまで、リカの本気はシュウの身体強化薬の服用したとき並みの、姿が消えるほどの速さと、大岩を片手で砕けるその力にある。
次の瞬間には大男は急行列車にでも轢かれたみたいに壁にものすごい勢いで吹っ飛んで激突。壁にめり込むどころか破壊して通路が丸見えになってる。
「・・・リカ、死んでないよね?」
「うん。適度に加減した」
あれで?
普通なら死んでると思うんだけど?
ボクなら確実に死ねる。
『な、なんと!?初出場のチーム、魔道具技師の三谷空志と鎌使いのリカ選手が常連の獣装のガウト、豪腕の斧使いドルクがやられてしまった!?』
周りは呆然。
ボクとリカは疲れたーとか言ってみんなの所に戻る。
上の観客席でガチャガチャ言ってるけど気にしない。
「おつ」
「お疲れ~」
「さすが三谷っち、リカっち」
「・・・俺が出ればよかった」
「はいはいはい。田中、乙」
「さすが三谷さん達です」
「リカさんすごいですぅ」
「ボクはほとんど何もしてないんだけどね」
「がう」
ライオンのままのレオが言う。
ボクがレオの頭をなでたり喉の辺りをなでると、レオはごろごろする。
「何だか魔道具技師っつーより猛獣使いだな」
「ま、確かに魔道具技師がライオン手なずけるとかあまり無いだろうね」
「いや、絶対にねぇよ」
『・・・信じられないことが多々ありますが第二試合!!』
「だってさ。どうする?」
「ここはあえて負けるか?」
「ちょっと!?あたしがいなくなるんだけど!?」
インチョーが慌てる。
・・・まぁ、確かにそうだね。
「ここはリュウとスズで瞬殺してきたら?」
「あ?・・・もはやイジメじゃねぇか」
「ボクもそう思う」
「じゃ、がんばってくるね~」
「おい!オレを引っ張るな!」
なんだかんだでスズがリュウを引っ張っていった。
あの二人なら大抵の魔法を消すチートだからね。
まさに外道。
敵さんドンマイ。
二人はリカが散々壊したフィールドに立つ。
・・・てか、直せよ。
「かったりー」
「そんなこといっちゃダメだよ~」
向こうからは踊り子っぽい女の人と手に鞭を持った女の人が出てくる。
『両者、決まったようです!では、第二回戦、始め!』
すぐにリュウは相手に接近。
今回、リュウは魔法剣を使わないから双剣はもっぱら杖の代わりにでも使うんだろうと思っていたら違った。いつものように詠唱を素早くすると≪影抜け≫で移動。相手に一気に迫る。
「甘いわね。おねーさんは強いわよー」
そういうと踊り子の人が手をさっと振る。
すると、リュウの襟の一部が刃物で切られたように裂かれる。
リュウはヤバイと思ったのかすぐに距離をとる。
「なにあれ?」
「・・・魔法?」
「≪月詠≫・・・属性は『斬』?よくわからないけどたぶんそう」
「何だそれ?」
「・・・斬る属性なんじゃない?」
「三谷っちアバウトだね」
「『斬』ですか?珍しいですね」
「知ってるの?」
「はいですぅ。『斬』は簡単に言うと刃物以外にこの属性を付与すると剣みたいに斬ることができる属性ですぅ」
「つまり、あの人は手に付与させて、更に魔法か何かを使ったんだと思います」
なるほど。
でも、ボク等はベンチだし教えるのはダメだね。
ここは公平に行こう。
「チッ・・・珍しい属性持ちってとこか?」
「察しのいい子は好きよ~。でも、レディ・ファーストな紳士はもっと好きね」
「・・・降参しろってか?」
「・・・していただけるとうれしいです」
今度は鞭を持った人が動いた。
いつの魔に描いたのか魔法陣が書いてある。
「ボクと同じ・・・じゃない!?」
「・・・≪召喚≫」
魔法陣が輝く。
そこから何匹ものモンスターが出てきた。
鷲のような頭を持ち、ライオンの体躯を持つモンスター、グリフォンだった。
「・・・行け」
「させないよ~!≪相殺殻≫!」
スズが六角形の盾を展開。
それでリュウの周りを囲んでガードする。
「防御魔法?・・・まぁ、いい。行け」
今度はスズに狙いを変える。
スズはうかつにも自分の盾を全部リュウに回している。
つまり、スズを守るものは何も無い。
「ヤバい!?坂崎!こいつをさっさと戻せ!!」
「え!?う、うん!!」
でも、グリフォン達が邪魔で思うように動かせないようだった。
「遅いわよ≪惨殺の斬線≫!」
踊り子さんが踊る。
それに合わせて魔力が空中に固定されていくのがボクには視えた。
解析・・・。
「あ、ミスった。ま、大丈夫かな~」
あれが大丈夫だって!?
確かに威力は低いけど当たり所によってはやばいでしょうが!
「まずい!?リュウ!!スズがやばい!」
「わかった!」
リュウはまたも≪影抜け≫で移動しようとする。
そこで、グリフォン達が四方から火を噴いた。
リュウの足元の影が薄くなる・・・。
「!?・・・てめぇ!!」
「させない」
リュウは形振り構わずに盾の間を抜けてスズのところに行く。
後からグリフォンが攻撃してくるがお構い無しに突き進む。
そして、相手が踊り続ける
リュウは後ほんの少しでつく。
相手の魔法が発動。
空中で待機してた目には見えない斬撃がスズに殺到し、更に踊り続けてることでどんどん斬撃が追加されていく。リュウ達の周りは砂煙で見えなくなった。
「おい!?リュウ!!」
「鈴音!」
「間!!」
「間君!!」
「すずっち!」
「「二人とも!」」
ボク等は固唾を飲んで煙がはれるのを待つ。
煙がはれると、そこにはスズを抱きかかえるようにして庇ったリュウがいた。
ところどころが切れ、血がにじんでる・・・。
ボクは踊り子の人に怒鳴った。
「さっきの!確実に殺す目的で使っただろ!?」
「な!?・・・確かに威力の設定を間違えたわ。でも、これは事故よ」
「っ・・・リュウ!!大丈夫か!」
「あぁ、大丈夫だ。死んだオレのババアが川の向こうで手を振ってる・・・」
「絶対に大丈夫じゃない!?」
「リュウ君?」
「おう。坂崎、大丈夫か?」
「え?・・・血が・・・」
「あ?んなもん掠り傷だ・・・」
「うそ!!だって、わき腹からいっぱい出てるよ!?」
ボク等はリュウのわき腹の辺りを見る。
でも、こっちからはわからない。
「まさか、反対側!?」
「・・・確かに、気が流れてるですぅ!」
その言葉を否定するようにリュウ立ち上がった。
「大丈夫だ。バカ!お前もんな顔すんな!スズ・・・さて、もういっちょやる・・・ぞ」
そして、崩れ落ちた。
「イヤァァァァアアアアアア!!!」
スズの悲鳴が会場に響き渡り、魔力が暴れだした・・・。
作 「と言うわけでまさかの相手は大道芸人という、そして何かやばげです」
小狼 「・・・俺がここに出ていいんですか?」
香桜 「気にするなですぅ!」
作 「今回のゲストは双子です」
小 「で、どうなるんですか?」
作 「いや、それ言ったらネタバレだから」
香 「・・・ほーほーですぅ。次は鈴音さんが・・・」
作 「殺れ!!」
小 「わありました!!」
香 「え!?何でですぅ!?」
作 「ネタバレの防止だ!!」
香 「その前に殺人の防止をしてくださいですぅ!!」
小 「俺達は獣人族だから少なくとも半分は人殺しじゃない」
香 「半分は人殺しですぅ!?とにかくダメですぅ!」
作 「しょうがない。今度からはネタバレに気をつけたまえ」
香 「何だか普段はかなりボケ倒すのにこういうときだけズルイですぅ」
小 「では、次回は?」
作 「おっけ。・・・次回!鈴音が暴走!?それとも・・・?」
香 「私達の出番はどうですぅ?」
作 「あります!」
双子 「「いえい!」」
作 「と言うわけで次回もよろしく!」