23話・EX BOSS!?
―――side空志
「走りながらでよいから聞け。」
遺跡の通路を進みながらルーミアさんがボク等に言う。
「精霊達の情報によるとどこぞの魔王が何かを企んどるらしい。それについ最近わかったことじゃが、汝以外にも三魔源素を持つ者が一人ずつおるらしい」
「・・・こんなトンでも属性の人が後二人もいるんだね~・・・」
「今、突っ込むとこ違う!?」
「・・・続けるぞ?それで、やつはどこから仕入れたのかわからんが汝達を捕まえようとしとるらしい」
「・・・でも、こんなコトしたら龍造さんが黙ってないよ?」
「龍造とやらがどんな者かは知らんがあやつは俗に言う魔王の派閥の『強襲派』じゃろう」
「・・・そういえばなんか言ってた気がする」
ライネルさんが平和派とか何とか・・・。
要するに、龍造さん達、平和派が魔物と人間の共存を望む派閥なら、強襲派は魔物による人間社会への侵攻派ってトコかな?ド○クエの魔王的な。
「じゃ、何でボク・・・というか、ボクの力を狙うの?」
「さぁの・・・大方、汝を味方につけて世界制服でも目論んどるんじゃろう」
「・・・なんていうか考えが浅い」
何でこういう魔王さんには世界征服してやるぜ!ヒャーハーッ!!って人が多いんだろう?もう少し面白いことして欲しい。
「まぁ、本当の理由は向こうに聞かんとわからんじゃろうがの・・・ここじゃ」
そういうとルーミアさんは足を止める。
でも、特に何も無いけど・・・?
右を見ても壁。左を見ても壁。前は通路で後はボク等が来た通路。
「こういうのは隠し通路と相場が決まっておるじゃろ?」
「なんかぶっちゃけたね~」
ルーミアさんはボク等の声を無視して指をさっと振る。
すると、壁の一部がボコッとへこみ、瞬く間に壁の一部に新しい通路ができた。
「行くぞ!」
またまたボク等は走り出した。
ボク等が入った途端に、壁は元通りになった。たぶん、向こうから見れば、ただの壁にしか見えないだろう。
「あ、あたし達はど、どこに行くんですか?」
「とりあえず、この遺跡の外じゃ。汝らの通う学び舎に着けばあやつも下手に出てこれんじゃろうて」
「・・・それが、普通の人なら、ねっ!ソラ!!後!!」
ボクは後に向かって銃を撃つ。
撃った瞬間にボク等の来た方向から突然轟音が響く。
ボクの放った魔法の弾丸はそのまま敵に着弾する。
「・・・さすが吸血鬼。てか、コレってボク等やばくない?」
「わ~い!ソラとアタシのコンビ最強!!」
・・・・・・。
よし、無視しよう。
「ルーミアさん!さすがにまずいっしょ!?」
「・・・全力で逃げるんじゃ!!」
そういった瞬間に何かの魔法が飛んできた。
「≪火炎の弾丸≫・・・炎か!?」
「なら、≪水鴎≫!」
ボクは魔法陣を展開して、水の狼を向かわせる。
こいつらは、地面を走ってるように見えるけど実は微妙に浮いてたりする。
そして、この魔法は狼達の牙や爪がウォーターカッターのようになってる。
炎でコレならさすがに防げないはず!!
でも、ボクの予想はあっさりと覆された。
風の魔法で切り裂かれたために。
「何で!?さっきまで炎だったじゃん!?」
「多重属性なんじゃないの~?」
「面倒な!≪水鴎≫!≪雷燕≫!≪焔鳥≫!」
ボクは更に魔法を展開!
コレならどうだ!!狭い通路での弾幕!!
「・・・えげつないです」
「・・・じゃが、嫌な予感しかせんの」
後のほうで小規模な爆発が起きる。
手ごたえはある。
でも、魔力の反応は消えていない・・・。
「・・・ッ!」
リカは突然、鎌を出して走る。
鎌を振るうと、そこにはさっき映像で見た黒ずくめの青年がいた。
その青年は左手を出すと、そのまま鎌をつかんだ。
「片手真剣白刃取り!?どこぞのチートなドラゴンスレイヤーだよ!?」
「・・・ネタがよくわかんないよ~」
「傾○の剣でア○チ・マ○ック・フ○ールドはホントにえげつないとボクは思う」
あれは面白いと思う。
ファンタジー好きな人は読むべし。
「きゃっ」
リカが小さく悲鳴を上げる。
ボクがそっちを向くと、リカがこっちに吹っ飛ばされるところだった。
てか、コレって・・・。
「ぐぼ!?」
「ソラ!?大丈夫!?」
ボクにぶつかりました。
なんというお約束・・・。
「・・・お前等のうち、誰が三魔源素だ?」
「い、言いません!!」
「誰が言うか!」
「というか、ここにはおらん」
「変態!!」
「そうだよ!!誰がソラ君がそうだなんて言うと思ってるの~!」
・・・・・・・・・・あれ?
「・・・『ソラ君』?・・・そうか、お前か?」
そういうとボクをさす。
「何でわかっちゃったの!?」
「「「「オイ!?」」」」
ダメだ!?全部自分でバラしといて何言うか!?
この娘アホの子すぎる!?
ボクは君の将来がものすごく心配だ!
「・・・お前、『結界の魔王』、龍造達と一緒にいたな?」
「・・・なるほど。貴方もどこぞの魔王さんで?できれば強襲派じゃなかったらうれしいね」
「残念だな。俺は強襲派だ」
「・・・てか、魔王さんが一人でこんなトコまで散歩ですか?」
ボクはそう言いつつ≪月詠≫で相手の魔法属性を解析しようとする。
でも、どういうわけか全然解析できない。
「そんなところだ。今回は少し遺跡の発掘にな」
「知っとるか?汝の行動は一般的には墓荒しと言うんじゃぞ?」
「ふん・・・で、どうだ?俺の属性は解析できたのか?」
「「・・・」」
ボクとルーミアさんは押し黙る。
やっぱりと言うか・・・ボク等の属性を知った上でここに来たのか?
それにあの余裕。ボク等が解析できないことを知ってるかのような・・・・・・。
「知っておるのなら早々に立ち去ったほうがよいぞ?わらわとこの子の魔力はほぼ無限じゃ。全力を出せば汝を生き埋めにしてわらわ達だけ安全に逃げることもできるんじゃぞ?」
「魔力があろうと使い手が未熟な者では脅威にならない。そして、たかが神霊にこの『森羅の魔王』、フェイクが負けるとでも?」
やばい・・・。
本能的にそう感じた。
神霊は四条さんの話が正しければ、最高峰の精霊。しかも、ルーミアさんを見てわかるように他の精霊と違って、自分自身で魔法を使える。
四条さんのような人間を媒介にしなくても・・・。
「・・・コレが、本当の魔王・・・」
「確かに、あの変態とは大違い」
「・・・ふんっ。『豪炎』か?あんなザコと一緒にするな!!」
そういうとフェイクと名乗った魔王らしき人がボク等に手をかざす。
そこから光の奔流がボク等に向かって放たれる。
「≪月の盾≫!!」
「≪月守≫!!≪月界≫!!」
シャレにならないレベルの攻撃魔法がボクとルーミアさんが張った防御魔法にぶち当たる。一番外側の≪月界≫が崩れ、≪月守≫が壊れる。そして、何とかルーミアさんの魔法で押しとどめることに成功した。
「む、無詠唱ですか!?」
「魔王クラスならそれが普通・・・」
「龍造さんも無詠唱で結界を張るよ~」
そう言いながら、戦闘に慣れた女子二人は武器を構える。
「・・・そこそこやるようだな」
そういうとフェイクはボク等に指をさす。
指先に光が収束して・・・それがボク等に放たれる。
「レオ!」
ボクの言葉にレオが咆哮覇を放つ。
大気を震わせるような咆哮と共に白い光線が放たれる。
「・・・さすがは幻獣の力だ・・・」
そういうとノーモーションで自分の周囲に障壁を展開していつの間にか後に回っていたリカの奇襲も防いだ。
リカは失敗したことに気づくと、こっちに跳躍する。
「・・・隙が無い」
「・・・ルーミアさん。どこか広いところに出ましょう」
「考えがあるのか?」
「もちろん。そんなわけで戦いやすいところに・・・」
「わかった」
「じゃ、≪焔鳥≫!≪雷燕≫!≪水鴎≫!」
ボクはまたまた弾幕を展開して相手の視界をさえぎる。
そして、再び通路を走り出した。
「ここじゃ!」
ボク等は逃げつつ攻撃をしながら走った。
そして、ついた先は少し大きめの広間のようなところ。あちこちに通路がある。
何かここで舞踏会的なものができそう。
ま、そんなことよりフェイクって人だね。
ボク等は武器を構える。
「鬼ごっこは終わりか?」
「そうだね。こっからは鬼さん交代だ!!スズはいつものように部御して!!」
「わかったよ~。≪相殺殻≫!」
スズの杖から六角形の盾のようなモノが展開する。
それを自分と四条さんの周囲に展開させる。
コレで大抵の魔法攻撃はスズ達に効かない。
「≪千刃嵐≫!」
「吸血呪≪血濡れの大鎌≫!」
「≪月光の衝撃≫!」
風の刃の嵐に斬撃の衝撃波、そして光の奔流がフェイクに殺到する。
敵にぶち当たるが相手は何事も無かったかのように立っている。
そんなことはさっきの攻撃で既にわかってる。
「効いてないよ!?」
ボクは魔法陣を遠隔展開しながら言う。
「いい!とにかく派手な攻撃を続けて!≪紅蓮≫!!」
「わかった!」
そういうと、リカは自分の鎌から衝撃波を飛ばしまくる。
「・・・本当に大丈夫なのかの!?」
そう言いつつルーミアさんも攻撃する。
「ぬるいな・・・」
そういうとフェイクは今度は黒い閃光をボク等に放つ。
「えい!」
スズはタイミングよくボク等の前に六角形の盾を移動させて防御。
さすがに『逆』の盾を突き破ることはできなかったようだ。
「・・・なるほど・・・『逆』か・・・ちょうどいい。お前もついでに・・・」
「へ、変質者がいるよ~!?」
「ゆ、誘拐です!」
「・・・何故だろう。この二人がものすごく余裕そうなんだけど?」
まぁ、そんなことはいい。
・・・それにしても、あのフェイクって人の魔法がおかしすぎる。
別に無詠唱なのは気にしない。だって、龍造さんが魔法使うときに呪文はおろか、魔法名すら言ってないし。『豪炎』の人は言ってたけど気にしない。変態だし。
「汝はスキンヘッドに恨みでもあるのか?」
いや、心を読まないでください。
それに、スキンヘッドで上半身裸のおっさんなんか変質者以外の何者でもない。
ま、変態よりもこっち。
「・・・どうした?その力はその程度の物か?」
「そうだよ。だから、ボクとかスズを誘拐するのはやめたほうがいいと思うよ!」
銃に≪雷閃疾空砲≫の魔法陣を展開してボクが作り出した中で最も殺傷能力の高い弾丸を放つ。でも、何もしてないように見えるのに障壁でガードされる。
なんという技術。
そして、本当に怖いのが・・・。
「・・・さっきのは闇の魔法・・・」
「そうじゃな。さきの魔法からヤツは最低でも『炎』に『風』、『闇』、そして、『光』も使っておる」
「甘いぞ。俺はまだ力を二割も出してないぞ!」
そういうと今度はフェイクの前方の空中に水が収束。
その水はボク等に瀑布となって殺到する。
そこをスズがガードしてくれたおかげでボク等は大事にいたらなかった。
「むぅ~・・・ソラ君以上のチートもいるんだね~」
「コレを無効化するスズも十二分にチートだから、ね!!」
ボクは相変わらず火力を重視した魔法を連発。
真言も考えたけどあれは隙がでかすぎて無理。
できたら確実につぶしに掛かってた。
「・・・そろそろお遊びは終わろうか。俺も他にやることがあるからな」
「それは大変ですね!どーぞお帰りください!」
「お前等をさくっとやってからな」
その瞬間、急にフェイクから尋常じゃない魔力があふれ出した。
こんなの・・・ボクは視たことも無い!?
「こ、これ、ソラが暴走したときレベルの・・・」
「ボクが暴走したとき!?」
じゃあ、相当じゃん!?
しかも、相手はかなり余裕そうだよ!?
「あ・・・あぁ・・・」
ダメだ。
四条さんはこんな異常な魔力量に触れたことが無いからか恐慌状態に陥ってる。
でも、ボクも体が震えている。
・・・・・・・・・・ものすごく怖い。
「・・・ッ!このッ・・・≪焔鳥≫!!」
「・・・ふむ・・・この魔力量でも動くか。なかなかだ」
そういうとフェイクの周囲に直径1メートルほどの半透明の球体がいくつか展開。
指をさすと、その動きに合わせて球体がボク等に向かって放たれる。
そして、ボクが先に放っていた≪焔鳥≫に当たると≪焔鳥≫を消し去ってこっちに向かってきた。球体はスズの盾が無効化してくれたけど、でもコレって・・・!?
「まさか『消滅』!?」
「いかにも!」
そういうと手に魔力で構成された剣を展開する。
魔装の一種だろう。前に智也さんが似たようなことをしてるのを見たことがある。
「あれはまずい!?
―――其は魔に属す法則!!」
「遅い」
そういうとフェイクは姿が掻き消えるほどのスピードで急接近。そのまま手に握った消滅の剣を横なぎに払おうとする。
「危ない!」
ホントにスズさまさまだよ。
ボクを狙った剣戟は六角形の盾に阻まれる。
「面倒だ。まずはお前だ」
そういうと今度はスズに消滅の弾丸を連続して放つ。
スズは必死になって盾を操作するけど次第に盾が敵の攻撃に追いつかなくなってる。
やばい・・・後、少しだけ!そうすればボクの詠唱が終わる!
「―――我、汝と共にあり!
其は猛り狂う煉獄の炎!
我が意に応え、炎の加護をもたらせ!
汝、名をサラマンダー!!
≪炎の剣≫!」
四条さんが早口で詠唱を始め、魔法を発動させる。
すると、炎で構成された剣が空中にいくつも出現し、敵に飛んでいく。
今まで震えていた四条さんにはまったく注意を払っていなかったのか少し慌てる。
手に持った剣を精霊魔法の対処にまわす。
そして、四条さんはさらに魔法を発動させた。
「≪炎の波≫!」
詠唱無しで魔法名を言った途端、炎の波がフェイクに殺到する。
「なっ!?精霊魔法か!」
「何で!?さっきは詠唱してなかったよね!?」
「それが精霊魔法の強みじゃ!一度精霊の加護を受ければ精霊に指示を出すだけで魔法を発動してくれる!じゃが、気分でコロコロ威力が変わるのが欠点じゃ。今回は運がよい。最悪なときは魔法すら発動せんからの」
なんて博打だよ・・・。
「ま、そのおかげで完成したけど!≪月夜≫!」
ボクは魔法陣の中に手を突っ込むと、そこから一振りの刀を取り出す。
バージョン刀、銘は『月閃』。
ボクはその刀を持ってフェイクに切りかかる。
「魔法使いが接近戦か?それは無謀だな」
「いや、ボクは中衛系職業の魔法使いなんでね!」
相手がボクに合わせて剣でガードしようとする。
ボクはそのまま渾身の力で剣を叩き切らんばかりに切りかかる。
ま、実際斬ろうとしてるんだけどね!
ボクは刀で剣を両断する。相手は驚きの表情を見せるとボクを殴り飛ばそうとする。
ボクは刀を媒介に≪月界≫を球状に展開してガード。
でも、あまりの力に吹き飛ばされ、壁に≪月界≫を張ったままの状態でめり込む。
「・・・具現化か」
「ご、ご名答」
ボクは≪月界≫を解除して刀を構える。
ボクの攻撃はガード不可の最強攻撃だ。でも、フェイクが一撃でやられるほどのダメージを与えられるかわからない。
前に具現化を調べたときには、この魔法はどれだけの魔力量を込めたかによって変わるって言うのをバグニールの図書館で見つけた。
ボクの魔力はほぼ無限だけど、込めることに関してはずぶの素人で実はそんなに威力が高くない。というか、マナのコントロールがまだそんなにうまくない。一度だけ優子さん相手に切りかかってみたら、『少し痛いですね』とか言ってフルボッコにされた。
で、フェイクは普通に考えて最低で優子さん並。決定打が撃てるように思えない・・・。
「アタシを忘れてる」
そういうとフェイクの背後に突然リカが現れる。
そして、鎌から衝撃波を放って攻撃する。相手はそれを障壁でいとも簡単に防ぐけどボクはそれに合わせて攻撃。相手を障壁ごときり伏せる。そして、リカの衝撃波もまとめて受ける。
フェイクの周りが煙に包まれてボク等は一旦下がる。
「大丈夫?」
「ありがとう。さすがにコレなら・・・」
「くくくくく・・・」
「「ですよね~」」
声が聞こえたと思ったら煙が掻き消える。
そこには相変わらず無傷な魔王様。
「おい。本当に汝の作戦で大丈夫なのか?」
「まぁ、ボクはコレしか思いつきません引き続き派手な攻撃をお願いします」
「あ、あたしも・・・!」
「無理はしなくていい」
ボク達は油断なくさらに構える。
「面白い、面白いぞ!!・・・その力!!・・・古の力!・・・それこそ俺にふさわしい」
いきなり何かを言い始めた。
厨二が入ってるよ・・・。
「とりあえず、お前をやるか・・・!!」
そういうとまたも姿が掻き消えるほどのスピードで移動。
唯一、その動きを捉えたリカがボク等を庇うけど吹き飛ばされる。
そして、そのまま動かなくなる。
「リカ!?」
「汝!?」
「リカちゃん!?」
「アンジェリカさん!?」
「まずは一人!」
そして、今度はルーミアさんを肉薄。
一気に近づくと光弾を掌から放ち零距離射撃。
ルーミアさんも吹き飛ばされて動かなくなる。魔力の感じから気絶したらしい。
ボクはなりふり構わずに刀を思い切り横に振る。
でも、相手はすぐさま距離をとる。
「≪炎の剣≫!」
四条さんはすぐに魔法を放つけど相手は避ける。
違いすぎる!さっきのはホントにお遊びだったのか!?
「レオ!スズ!時間を稼いで!!
―――其は天に属す法則!!」
「わかったよ~」
レオが咆哮覇を放って攻撃。
でも、その咆哮覇ですら障壁で止める。
でも、レオはそのまま閃光を吐き出し続ける。
「≪逆刺突剣≫!!」
魔法を無効化する白い光の剣が敵の障壁を消す。
すると、障壁が消えフェイクは閃光をモロに受ける。
「≪裂空衝破≫!」
続けざまにボクは真言を発動させ、天空属性の槍を大量に相手に放つ。
フェイクの周囲で風が吹き荒れ、局地的な大嵐が発生して轟音が響く。
あまりの勢いに自分も吹き飛ばされそうになる。
「・・・いくらなんでもここまですれば・・・」
「ここまですればなんだ?」
そして、何事もなかったかのように現れるチート。
・・・さすが。
そして次の瞬間、ボクへと急接近。そのまま拳を振るう。
ボクの腹にその拳が叩き込まれる。そのままの勢いでボクは壁に叩きつけられた。
「がはッ!?」
「ソラ君!!」
「し、師匠!!」
二人はボクに駆け寄ろうとする。
「く、来るな・・・!!」
あまりの衝撃に意識が飛びそうだ・・・。
ホントに何とか意識を保っていられるのは・・・。
「あの程度でこの俺を倒せるとでも思ったのか?」
「・・・ゆ、優子さん・・・以、上の・・・チートに勝てる・・・なんてお、思ってないよ・・・でも・・・」
ボクはそこでフェイクの後の通路をさす。
「魔王二人なら大丈夫でしょ・・・」
その言葉と同時にボクの前に一人の青年が急に現れる。
『閃光』の異名を持つ魔王、ライネル・W・ミスティア。
「空志君。大丈夫かい?」
そして、ライネルさんはボク達の盾になるように立つ。
「・・・どこのやつかは知らんがいい度胸じゃの」
我らが『結界の魔王』、龍造さん。
「大丈夫か!?」
「さっきから派手にしてましたね」
「・・・そいつがやったの?」
「四条!!大丈夫か!?」
「わたくしたちが来たからにはもう安心ですわ!」
「オレッチ達人形持ってないけどね~」
「な!?何故ですの!?」
「忘れちった☆」
「今回はわたしはトモダチがいないから無理ね」
そして、リュウ達どころかカザハ達もいた。
「りゅ、龍造さん達だ~!!」
「だ、代表達!?」
「・・・まさか」
「そのまさかだよ。・・・ボクが魔王に勝てるわけが無い。だから、できるだけ派手な魔法で音を出してここの位置を知らせた。でも、こんなに広い遺跡だから心配だったけどね・・・」
ボクは朦朧とした意識で答えた。
さすがに、真言級の大魔法なら遺跡のどこにいても気づくかなってボクは思っただけだ。
ま、ものすごい賭けだったのは認める。それに、捜索隊の編成がまだかもしれないって可能性があったけど、今回はこれしか考えつかなかった。
「・・・リカさんもこちらの女性も大丈夫です」
シュウは何か薬を飲ませる。
すると、リカとルーミアさんはうめき声を上げて目を覚ます。
「あ、れ?・・・みんな?・・・カザハ達も?」
「・・・吸血鬼のシェルス殿と三谷殿達がここまでボロボロ・・・相手は相当ですね」
「だな。それはオレも思った。この黒ずくめはオレ達とジジイ達でやる。お前等はソラ達をみてろ」
ボクは、リュウのその言葉を最後に気を失ってしまった。