22話・ENDING?
―――side空志
「・・・で、ホントに貴女は?」
ボクは目の前の人に聞く。
もちろん、手には銃を握って、その銃には≪雷閃疾空砲≫の紋様が描かれてる。
「お、すまんの。いや、どうしても合言葉のセキュリティを解除できんくてな。変わりに内容を書き換えてよほどのアホでもない限り大丈夫なものにしたんじゃが・・・」
うん。確かにここには想像を絶するアホが二人ほどいたんだよ。
さすがにそれじゃしょうがない・・・。
「じゃ無くてっ!・・・だから、何でこんな遺跡に貴女がいるんですか!?しかもさっきの口ぶりだとここに住んでるように聞こえるんですけど!?しかもボク等をここに呼んだ的な感じになってるし!?」
「いや、ここがわらわの寝床じゃ。それに呼んだんじゃ」
「・・・ちょっと集合」
ボクは目の前の金髪のお姉さんをほっといて、みんなを呼ぶ。
「どう思う?」
「・・・迷い込んで頭打っておかしくなったんだと思う」
「そうなの~!?」
「そ、それは・・・お、お気の毒です」
「違うからの」
いや、それは信用できない。
お酒飲んで酔っ払った人が『酔っ払ってない!』って言うぐらい信用できない。
「まぁ、よい。説明すればイヤでもわかるからの。まぁ、その前に修復しておくかの」
そういうとお姉さんは一つの石盤に近づくと、掌を押し当てる。
それと同時に、ボク等の入ってきた方向から音が響く。
そっちを見ると、そこにはまたまた勝手に修復されてく扉が。
数秒後には何事も無かったかのように、それも一回も切り刻まれたことが無いかのような扉があった。
「・・・こ、古代の技術はす、すごいです」
「うむ。こんなもんじゃろう。紹介が遅れたな。わらわはルーミアじゃちなみにここで遺跡の管理をしておる精霊じゃ」
「あ、どうも、ボクは三谷空志。通称ソラです」
「わたしは坂崎鈴音だよ~!気軽にスズで!」
「・・・アンジェリカ・シェルス」
「し、四条か、奏です」
「まぁ、ボク等は見ての通り、地盤沈下に巻き込まれてここに来たんですけど、外に連絡が取れなくて困ってるんですよ」
「ん?そうなのか?それはすまなかった。・・・ほれ。コレなら外に通じるぞ」
そういうとルーミアさんはボクに受話器のようなものを渡してくれる。
ボクはお礼を言って数字のボタンを押す。
確か、リュウの番号は・・・。よし、おっけ。
そして、受話器を耳に押し当てる。
そして、ワンコールでつながる。
『誰だ!?こんなときに!?』
「あ、リュウ?オレオレ」
『オレオレ詐欺はいらん!!』
「ま、冗談はそこまでにして・・・」
ツーツーツー・・・。
「あいつ切りやがった」
「さっきのはソラが悪いよね?」
「・・・空志よ。汝は何がしたい?」
「いやぁ、ここまでツッコミし続けて疲れたから・・・で、ルーミアさん。種族は?」
「精霊じゃ」
「「「「・・・」」」」
・・・。
よし、専門家に聞いてみよう。
「・・・四条さん。精霊ってみんなこんな感じ?」
「い、いえ・・・。こ、こんな精霊さんは・・・神霊レベル・・・」
「ちなみに神霊って~?」
「・・・精霊の始祖。各属性の神霊から精霊が生まれるって言われてる」
なるほど。よくわかった。
「何でそんな精霊がここに!?」
「ん?なんじゃ?汝らは知らずに入ったのか?」
「だから、巻き込まれたんだよ!ここは学校の地下の遺跡なの!?」
「騒がしいと思ったらいつの間にかうえに学校ができとったのか・・・」
「いい加減に質問に答えて!?」
「面倒じゃな。汝、それでも三魔源素か?」
「・・・なにそれ?」
「アタシも知らない」
「す、すみません」
「わたしは「で、それなんですか?」ぶぅ~!何で~!?」
いや、魔法知識レベルがボクとスズはほぼ同じじゃん。
聞くまでも無い。
「で、誰がその三魔何ちゃら?」
「だから、汝じゃ」
そういうと、ルーミアさんはボクのほうを指差す。
ボクはとりあえず、後を向いてみる。
・・・おかしい。誰もいない。
「いや、汝じゃ、三谷空志」
「・・・ボク?」
「汝、『月』じゃろ?」
「!?」
何でそれを!?
「じゃが、まだまだ使いこなせておらんのそれに魔眼が第二段階までしか進んどらんの」
「ストーカーッ!?」
「ソラは渡さない!!」
「・・・汝、面白いの始祖の血統の吸血鬼に好かれるとはの」
「な、何でそれを!?」
ボクはリカを背中に隠す。
何だか後からリカの息遣いがすごく荒いけど今はそれどころじゃない。
怖いかもしれないけど、少し我慢してて。
「安心せい。別にとって食いはせん。それにしても、中々の面子じゃの。一人は『逆』、もう一人は精霊魔導師」
「「えぇ!?」」
「何でそこまでわかるの!?まるで≪月詠≫したみたいじゃん!?」
「おぉ。おぬしは≪月詠≫と呼んでおるのか?・・・わらわがしとるのはそれじゃ」
「はい!?『月』の属性じゃないと魔力、マナの視認はできないはずじゃ・・・まさか、古代魔術はそんな魔法まであるの!?」
「違うぞ?わらわは精霊、ルーミア。属性は汝と同じ『月』じゃ」
『月』の神霊ってこと?
「ま、ようこそ。わらわの城、月の精霊殿へ」
~数分後~
「落ち着いたかの?」
「・・・大体は・・・」
「す、すみませんすみませんすみませんすみません・・・」
「ハァハァ・・・・・・むふふ・・・」
「り、リカちゃん・・・さすがにそれは・・・」
あまりの超展開にボク等はフリーズしてたのか、途中の記憶がおかしい。
どうも、ここは月の精霊殿って言うところで、月の神霊を奉ってあるところらしい。大昔、ここには多くの人が住んでいたみたいだけど、時代とともに寂れていったらしい。
「じゃ、さっきの三魔なんちゃらは?」
「こっちに来るんじゃ」
そういうとルーミアさんはボク等をどこかに連れて行く。
ボク等はついてく以外に選択肢が無いのでおとなしくついていく。それに悪い人ではなさそうだし大丈夫・・・だといいな・・・・・・。
「・・・ここじゃ」
とある一角に着くと、ルーミアさんは中に入ってく。
ボク等もそれに続いていくと、その部屋にはとても大きな石盤が壁に埋め込まれていた。
石盤にはいくつもの円が放射状に並んでいた。その中央には三つの円があった。
「太陽に・・・星に・・・月のマーク?」
「そうじゃ。まぁ、俗に言う三眼じゃな。これは全部属性を示すマークが描かれておる」
「へぇ~。じゃ、『逆』もあるんですか~?」
「うむ。ほれ、あそこじゃ」
そう言って指さした先には中央からそれほど遠くない位置・・・というか、一つ外の円だった。周りには6個ぐらいあるのかな?
「へぇ~あれが?なんかリサイクルマークみたいなヤツ」
「うむ。ま、ちと話がそれたが三魔源素についてじゃ。まず、この属性は他とは違う魔法属性のことじゃ」
「他と違う?」
「あぁ~ソラ君、魔力見たりできるもんね~」
「そういうことじゃ。ちなみに、この三つにはそれがデフォルトでできる」
「み、三つですか?」
「あの石盤の中央にあるじゃろ?太陽の『陽』に『星』、そして、汝の『月』じゃ」
なるほど。ボク以外にも魔力を見れる人がいるんだ。
・・・と、いうことは・・・・・・。
「これでみんなにチートって言われなくて済む!」
「いや、十分チートじゃからの?」
ボクはごく普通の人間だよ?
別になりたくてチートになったわけじゃないのに・・・。
「まぁ、よい。この属性は魔法属性の原初の属性と言われておる」
「・・・マジで?」
「ソラすごい!」
ところ構わず抱きつくな。
ボクはリカを引き剥がしながら聞く。
「じゃぁ、『月』とか『陽』とかからスズの『逆』とかか生まれたの?」
「そう言うことらしい。この三つにはそれぞれ意味がある。例えば、『陽』であれば強大な力。『星』であれば強大な魔力じゃ」
「ふ~ん。なるほど。要するに、『陽』は力、『星』は魔を司ると・・・じゃ、『月』は?」
「よくぞ聞いてくれた!」
びしっとボク等を指さす。
そんな振りはいらないからさっさと言って。
「わらわも司る『月』それはの。知を司るのじゃ!」
「・・・へぇ~」
「なんじゃ、リアクションが薄いの」
「いや、なんとなくそうかなって思ってたから。それに、ボク自身、≪月詠≫でいろいろと魔法とか解析してるし」
「・・・ま、それが『月』の固有魔法じゃからの。まぁ、ぶっちゃけると、この三つの中で一番ザコじゃ」
身も蓋も無いよこの人。
てか、ぶっちゃけすぎでしょ?
「じゃが、お主は珍しく『天空』も持ち合わせておるようじゃの」
「まぁ・・・」
「ソラは強いんだよ!」
「だから抱きつかないで」
「あ、アンジェリカさん!し、師匠が困ってます!」
「・・・しゅらば~?」
「じゃが、気になることがある」
「はい?」
いきなりさっきまでのふざけた表情から一転、ルーミアさんは真剣な表情になる。
「汝、真言を・・・しかも具現化を使ったの?」
「あ~、はい?そうですけど?」
「・・・『月』はの、全ての魔法を、そして、幻術の類を見切る目を持つ代わりにの、魔力が総じて低い傾向にあるんじゃたとえ、多重属性でもの」
「いや、普通にマナを使っただけですけど?」
「な!?汝、知って・・・おるわけないの」
何かバカにされた。
って、リカ!?鎌出しちゃダメ!
「ソラをバカにした・・・」
「で!何で驚いたんですか!?」
ボクは強引に話題をふった。
「うむ。汝、おそらくは暴走したことがあるの?」
「「「!?」」」
「え、えぇ!?そ、そうなんですか?」
「・・・それがどうしたの?」
「そうだよ~!!ソラ君はしたくて暴走したわけじゃ・・・!」
「・・・ボクは暴走したことがあります」
女子三人は驚いた表情になるけどボクはそれに構わず続ける。
「・・・それが、何か関係あるんですか?」
「・・・まず、汝の言うところの≪月詠≫には数段階の状態ある。まず、マナを見れること、コレが第一段階じゃ」
それが何も訓練無しの状態なんだろう。
「で、次の段階が相手の魔力、および属性、魔法の解析じゃ」
確かに、ボクがコレをできるようになるには少し時間がかかった。
・・・・・・ちょうど、暴走したときを境に核の解析ができるようになった。
「じゃがの、第二段階ではマナの操作などできん」
「・・・あれ?でも、ソラは第一段階の時点でアタシの目の前でやったよね?」
「うん。魔法を勉強し始めて1、2週間ぐらいかな?」
「・・・よほどいい師に恵まれたの」
「・・・いや、毎日が訓練ですよ?」
ボクの脳裏に哄笑を上げながらボクやリュウ、シュウを蹂躙する優子さんのビジョンが・・・。
あ、やば・・・体の震えが止まらない。
「・・・ソラが怖がっているからもうその話はやめて」
「・・・すまんの」
「だ、だだだ、大丈夫デスヨ?」
「し、師匠が壊れた・・・!?」
「ねぇねぇ優子さんとどんな訓練してるの~?」
「と、とにかく、何かおかしいんですか?」
ボクはこれ以上の訓練の話題は精神衛生上に著しく危険が伴うと判断して話題を戻す。
「まぁの・・・普通、マナの操作ができるようになるのは早くて第三段階以降じゃ。それにじゃ、マナの扱いは難しいためにマナの操作ができずに一生を終えるものも昔には大勢いた」
「・・・昔の人が魔法下手っていうのは?」
「これほどの魔法技術を持っとるんじゃぞ?」
ですよね~。
また、みんなの目がこのチートがっ!的な感じになってるよ・・・。
「で、じゃ。特に、汝は暴走したことがある。そういう者は昔にも大勢いた。それで、マナの操作ができたものは暴走時に自分の魔力ではなく、周囲のマナを暴走させる傾向が強くてな・・・そやつらは極端にマナの操作を怖がったんじゃ」
「・・・よ、要するに、魔法が使えなくなったということですか?」
「うむ。精霊魔法と同じで『月』の属性はマナを操作できるようになるとほぼ無限じゃ。暴走すれば誰にも止められん。・・・その点、汝は運がよかった」
「・・・わかる気がします。ボクが暴走したとき、ボクには暴走状態のリスクの魔力の枯渇による命の危険が無かった。・・・でも、ボクのマナの操作でみんなを・・・」
殺しかけた。
あんな思いはいやだった。
だから、みんなの前から逃げ出して、この力の対処法を見つけようとした。そして、いざというときはボクより強い智也さんに頼んで殺してもらおうと思った。
「し、師匠?」
「「・・・」」
「まぁ、それが理由で大半の者が自ら使用を禁じたことが多かった。じゃが、それはな必要なことじゃったんじゃ・・・」
「何で!?あれが!?ボクは仲間を殺しかけたんだよ!?」
「・・・え?」
「違う!!でも、あれが必要なことだとも思わない!」
「そうだよ!ソラ君はものすごく傷ついたんだよ!!」
「・・・確かにそうかもしれん。じゃが、一定以上の魔力を放出しなければ≪月詠≫は第二段階に進まんかったじゃろう」
「一定以上の魔力の放出?」
「汝の言う魔力解析のための魔眼スキル、≪月詠≫は汝が≪月詠≫をした状態で魔力、あるいはマナを使うことによって成長する」
「・・・ホントですか!?」
確かに、ボクが≪月詠≫をできるようになったのは冬香達に襲われて魔法をバンバン使ったりとかしたときだ。そして、強化したのも暴走で必要以上にマナを使ったから。
「・・・でも、それとこれは関係ない・・・・・・」
「汝は自分の力が怖いか?」
「・・・ものすごく怖い。大切な人を傷つけそうで・・・」
「「「・・・」」」
「なら、大丈夫じゃ。ただ、汝は力に呑まれなければいい。その力を、自分のために・・・汝なら大切な人のために使えばよい」
ルーミアさんは、まるで母親のようにボクに言う。
「・・・はい」
「でじゃ、本題に入ろう」
・・・・・・まだ入ってなかったの!?
「あれは前フリじゃ」
「な、長いです」
「汝はおそらく、これから狙われる」
「・・・はい?」
「汝の力はいわば根源の力。そして、つい最近、魔物の動きが一部活発になっておる。わらわも魔王のことはよく知っておるつもりじゃ。ただ、つい最近になってよからぬことを企てとるものがおる。・・・汝等を襲った魔獣じゃ」
「え?でも、あれは龍造さんが言ってた変態の『豪炎の魔王』とか言うのに灸をすえたから大丈夫なんじゃないの~?」
「違う。あのようなアホ丸だしなやつにあんなことができると思うておるのか?」
「いや、確かにそうだけど・・・」
「で、でも、何で貴女がわ、わかるんですか?」
「わらわは月の神霊じゃぞ?外部のことは精霊に聞いておる。それに、わらわは何とかして偶然にもここにきおった汝をここに呼ぼうとしたんじゃが・・・運がよかった」
「で、誰なの?ソラを狙うのは?」
「それは・・・」
そのとき、まるで狙ったかのようにブザーのような音が響く。
警告の音かな?
ルーミアさんは腕を動かす。すると、ルーミアさんの体の前に映像が映し出されてるウィンドウが出現。
「・・・ちなみに聞く。こやつは汝らの知り合いか?」
そういうとボク等にウィンドウを見せる。
そこには、全身黒ずくめでコートに身を包んだ怪しい格好の青年がいた。
・・・どこと無く、あの黒装束の人に雰囲気が似ている。
「知らない」
「わたしも~」
「あ、あたしもです」
「・・・むしろ敵だと思う」
「やはりの・・・」
そういうとルーミアさんは今度は空中に魔力で構成されたキーボードを展開し、それを操作する。すると、目の前のウィンドウにボク等が苦戦を強いられた守護岩石騎士が三体ほど出る。
「え、えげつないです・・・」
「こんなに出す必要があるの?」
「う~ん・・・でも、こっちは大丈夫だよ~」
「・・・すみません。ボクはこの魔法属性を解析できないんですけど?」
「・・・奇遇じゃな。わらわもじゃ」
「「え?」」
次の瞬間、青年が守護岩石騎士達に右手をかざすと、ウィンドウの画面が白に染まる。
光がなくなったとき、そこにはボロボロの守護岩石騎士の姿があるだけだった
「・・・おそらく、こやつが魔獣の関係者じゃ」
「何で?」
「こやつからかすかに呪力を感じる」
ルーミアさんはさらにキーボードを操作すると、今度は流星騎士を五体ほど展開し始めた。
そして、更には元々いた守護岩石騎士も爆発してその中からも流星騎士も現れる。これで合計八体もの流星騎士が出現した。
「・・・おそらく、コレも時間稼ぎにしかならん。逃げるぞ」
そういうと、ルーミアさんは走り出す。
ボク等もそれにあわててついていく。
何故だろう・・・ものすごく嫌なことが起こりそうな気がする・・・。