21話・BOSS?
―――side空志
「じゃ、手始めに・・・≪焔鳥≫!!」
ボクは魔法陣を多重展開する。
そうすると、数十羽の炎の鳥が守護岩石騎士に殺到する。
でも、動きがまったく鈍らない。どうも効果は薄いらしい。
「はぁ!!」
リカが鎌で斬りつけるがあまりの強度に鎌がはじかれる。
「コレ硬い!」
「リカは全力でやればいい。今回は隠す必要は無いし・・・≪千刃嵐≫!!」
ボクは銃で魔法陣を遠隔展開させると、魔法を発動させる。
竜巻が発生し、風の刃で敵を切り刻む。
『損傷、軽・・・戦闘ヲ続行』
そういうと今度は敵が背中に背負った巨大な棍棒のような剣を振り下ろす。
「≪風火車輪≫!」
ボクは魔法で、リカは吸血鬼の力をフルに使って回避。
「・・・吸血呪≪血濡れの大鎌≫!!」
複数の斬撃の衝撃波が攻撃。
でも、それでも相手の岩の体の表面に傷がついた程度だ。
「お待たせ~≪逆刃千本短刀≫!」
スズの魔法で千本もの魔力で構成された魔法破壊の短刀が守護岩石騎士の体にぶすぶすと突き刺さる。
やっぱり、魔法を無効化するスズの魔法はなんともできなかったみたいだ。
『・・・損傷、大・・・魔法攻撃、属性『逆』ト判断・・・優先順位ヲ変更・・・戦闘形態、剣士ヨリ、銃士ニ移行』
そういうと向こうは手に持った剣を地面に捨てる。
剣が地面につくと同時に地面がかなり揺れる。
・・・ドンだけのものを持ってたんだ!?
てか、さっきの話だとかなりヤバイ!
向こうは親切にも宣言どおり、右掌をこっちに向けてる。手首がガクッと外れると、そこからは何かの射出口が顔を出していた。その先には・・・スズたちだ。
『えねるぎー充填・・・射出十秒前・・・』
「あ、あれって、ま、まずくないですか!?」
「ソラ君!!詠唱が間に合わないよ!?」
「詠唱しといて!!来い!魔術符!」
ボクは手の中に数枚の魔術符が現れると、そのままスズたちのところに投げる。
空気を読んで召喚獣達がボクの魔術符をキャッチして地面に刺してくれる。
「≪月界≫!!」
『・・・壱・・・零・・・発射』
その瞬間、轟音と共に視界が真っ白になる。
ボクは≪月詠≫をしててわかった。これ、全部魔力だ!
超高密度の魔力の砲撃をしてる!?
コレじゃ≪月界≫が持たない!
「リカァァァァアアアアアア!!」
ボクは轟音が響いてて届くかわかんないけど無我夢中で叫ぶ。
「≪終演≫!!」
そんな声が聞こえた気がした。
そして、真っ白な光は唐突に消えた。
そこには、右肩の辺りが消失してしまってる守護岩石騎士がいた。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「リカ・・・マジ最高!!」
「お礼は後でいいよ」
「あ、ありがとう~」
「も、もう、ダメだと思いました・・・」
「スズ!結界張っといて!それなら何とかなるでしょ」
「うん。一番頑丈なのにしとくね~」
よし、コレで何も心配することはない。
でも、驚いた。まさか『逆』がわかるなんて・・・。
昔はそれほど珍しい属性でもなかったって事か・・・。
『致命的ナ損傷・・・結界展開確認・・・優先順位ヲ変更・・・引キ続キ銃士デ戦闘』
そういうと今度は左手を伸ばして、指先をボク等に向ける。
・・・いやな、予感がする。
『魔力砲連弾』
「ありえない!?」
「ちょ!?きゃぁ!?」
いきなり左手からマシンガンみたいに魔弾を掃射された。
ボクとリカは必死に避ける。
相手は土・・・なら!!
「魔法陣展開、≪紅蓮≫!!」
ボクが使う≪焔鳥≫以外の炎属性魔法。
何故かよくわからないんだけど、使える属性。
魔法陣を掌に展開して、剣のように伸ばす。
「たぁぁぁぁああああああ!!!」
ボクは≪風火車輪≫の超加速で接近。
そのまま炎の剣を相手の左腕に叩きつける。
あまりの熱に赤くなるけどそれだけ。
「なら、これなら!?」
ボクは前にやったみたいにマナの中から水の魔力だけを取り出す。
すると、ボクの掌には直径三十センチほどの水球ができる。
それを熱したところにぶつける。
あてた瞬間に白い湯気がもうもうと上がる。
「ソラ!」
「え?ちょ、うわ!?」
ボクはいきなりリカに腕をつかまれるとものすごい力で引っ張られる。
たぶん、相撲さんに引っ張られたらこんな感じなんだろうな・・・。
それと入れ違いにボクのさっきまでいたところに岩でできた腕が通過してく。
「な、何で!?」
『・・・修復完了』
「・・・そういうこと。リカ、ありがとう」
「いいよ。でも、どうする?」
「左腕は?」
「左腕?」
左腕の湯気は既に晴れている。
そこを見ると、ひび割れた腕があった。
よし。化学は通じるみたい。
「熱膨張。急に温度が変化したからそれについていけなくなるとああなる」
「あぁ~。じゃ、ソラがアレをやれば解決?」
「そうだね。それに、≪紅蓮≫は本来、ああ使う魔法じゃないし」
ボクは銃に魔法陣を展開する。
そこには赤い紋様が描かれていった。
ボクは引き金を引くと、その魔法陣を遠隔展開する。
「≪紅蓮≫!!」
そういった瞬間、敵の地面から極太の炎の柱が上がる。
≪紅蓮≫はどこぞの禁書目録に出てくる魔法使いよろしく炎の剣を生み出す魔法じゃない。あれは無理矢理にボクがああ使ってるだけ。本来は、広範囲の戦術系魔法。要するに、≪雨雷≫の炎バージョン。
で、後は水。
ボクの属性は『天空』。これは、風と雷を操る魔法じゃない。天候操作の魔法属性だつまり、ボクには擬似的に水も使える。
「でも、ぶっつけ本番なんだよね!魔法陣展開、魔法を構成・・・≪水鴎≫!」
ボクの周りに青い魔法陣が展開。そして、水で構成された鳥が出現する。
「行け!!」
そういうと俊敏な動きで敵に殺到。
そしてそのまま体当たり。そのたびにもうもうと湯気が上がり、敵を覆い隠す。
「・・・よし、≪突風≫!!」
ボクは魔法で湯気を払う。
そこには全身ひび割れで、動きがぎこちなくなってる守護岩石騎士。
「じゃ、リカよろしく」
「おっけ~・・・吸血呪≪血濡れの大鎌≫!!」
リカが鎌を振るう。そこから無数の衝撃波が放たれ、もろくなった敵をいとも簡単に切り裂いた。
全身を切り裂かれたために立っていられなくなったのか、地響きを立てて倒れた。
「・・・終わった?」
「・・・たぶん?・・・少なくとも、魔力は感知できない」
「いいの?」
「よ、よかった」
「でも、最後の砦があんな弱くていいの?」
「・・・そうだね」
そう、これは弱い。
だって、修復能力に関しても他のゴーレムのほうが優れている。
さらに、別にそのゴーレムをここに展開してやられたほうがボク等は確実にやばかった。
たしかに、あの右の砲弾は死ぬかと思ったけど、結界が張られたとたんにボク等に優先順位を変更。つまり、『逆』を超えられないことを理解していた。
「・・・でも、何もないんじゃないの~?」
「そ、そうですよ?」
「・・・いや、案外コレには隠し玉があるかも・・・それに、ここのほかの罠のスペックを考えると、怪しい」
「・・・ソラ、来る」
リカがそういった瞬間にいきなりブザーが鳴り出し、周囲の地形が変更された。
『・・・緊急事態、対象ノ殲滅ハ困難・・・最終こーど、特攻形態ニ移行・・・戦闘場変更・・・』
ボク等のいる広間の地面や壁から、いきなり柱がにょきにょき出てくる。
更には天井まで上がってる!?
何このカラクリ屋敷!?
「どうなってんの!?」
「・・・ッ!?守護岩石騎士から魔力!?」
「≪相殺結界≫!」
スズは解除した結界を素早く張る。
そして、ボクとリカは再び構える。
『・・・変更完了・・・守護岩石騎士、移行』
そういうと、今度は守護岩石騎士が爆発した。
「あれ?ミスった?」
「・・・ソラ、現実見ようよ」
「だってさ、二段変身とかは仮○ライダー、カ○トとかだけで十分じゃん!」
爆発して、燃える瓦礫からボク等と同じぐらいの大きさの人影が現れる。
両手には手の変わりに剣が生え、更には足の脛にも刃がついてる。
『最終形態・・・移行完了・・・流星騎士』
その言葉を受けてか目の前の守護岩石騎士、流星騎士が構える。
『・・・戦闘開始』
その瞬間、シュウもかくやと言うレベルのスピードでこっちにダッシュしてきた。
「!?」
「ソラ!」
またまたボクはリカに首根っこをつかまれると、近くにあった柱の上に飛び乗る。
下のほうで轟音が響く。それと同時に断末魔の悲鳴。
スズ達が騒いでる声が聞こえるから、召喚獣達が瞬殺されたんだろう・・・。
「ゴメン・・・リカ、ありがとう」
「そんなこと・・・別にいいよ」
ボクはリカに礼を言いつつ、敵の位置を確認する。
すると、そこには足にローラーのようなものを展開して壁走りしてるモノが。
「なにあれ!?あの人変態!?」
「・・・無機物に変態も何も無いと思う」
ある程度の高さまで来ると、敵はこっちに跳躍。
「吸血呪≪血濡れの大鎌≫!」
「≪雷閃疾空砲≫!!」
さすがに空中では無理でしょ!!
ボクとリカはここぞとばかりに集中砲火を食らわせる。
でも、敵は左手を上に向けると左の剣が射出。その剣にはワイヤーのようなものがついているのか左手から剣の間に細いものが光ってるそのまま天井に突き刺さると敵の体が重力を無視して体が上に行く。
もちろん、ボク等の攻撃は全部外れ。
「・・・まさか、ワイヤーで自分の体を持ち上げた?」
「・・・たぶん」
なんつー高性能!?
さっきのが弱すぎる!
向こうが天井につくと、そのまま天井をけってボク等のほうに飛び膝蹴りの形で突っ込んでくる。
さすがに重力とかそのスピードで来られたら対処ができない。
「ふん!!」
リカが前に出る。
すると、敵は脛の刃をリカの鎌に叩きつける。そのまま両手の剣でリカに切りつけようとする。
「させるか!」
ボクは魔法銃で発砲。
でも、敵はありえないことに魔法の弾丸を手の剣ではじき返した。
「五○衛門か!?」
「ぅ~・・・えぇい!!」
リカが吸血鬼の膂力で敵を吹き飛ばす。
ボクはそれにあわせて攻撃するけど、またもや手の剣を射出して回避した。
「・・・何でもありだし強い」
「うん・・・どうするの?」
「・・・シュウに勝ったときは、狭い室内で≪雨雷≫して勝った。でも、今回はそれは無理。ここは広すぎる」
コレだけ広かったら逃げられる可能性が高すぎる。
「・・・ソラが核を一番早い魔法で打ち抜くのは?」
「相手に気づかれないようにって言うのが無理だと思う。核は胸のところにあるっていうのはわかってる」
「・・・八方塞?」
「だね・・・とりあえず、相手の足場になりそうな上のほうの柱を崩そう・・・≪雷閃疾空砲≫!!」
雷を内包する風の弾丸が近くの柱にぶち当たる。
ばらばらと瓦礫が崩れ落ちるかと思うと、次の瞬間にはビデオの巻き戻しを見るようにして柱が修復された。
「・・・無理」
「・・・来た!?」
今度はしたから強襲。
リカは鎌を思い切り振り下ろす。
敵は簡単に避けたけど、リカは構わずそのまま柱に鎌を叩きつける。
すると、柱が崩れる。
「なるほど!」
ボクはリカの考えてるだろうコトを実行。
≪風火車輪≫で接近すると、敵を崩れた柱のところに蹴り込む。
そうしたら、修復に巻き込まれてお前なんか生き埋めに・・・。
「・・・あれ?」
今度はなんと修復しなかった。
敵はまたまた剣の射出で移動。
「・・・リカが考えたアレでダメならどうしろと!?」
「え?別に何も考えてなかった・・・」
・・・まぐれかい。
しかも、気がつくと柱はまた修復された。
「・・・ホントにこれはまずい。敵はあれだけじゃなくてこの空間そのものだ」
「・・・うん」
ボクとリカはいつになく真剣な表情で言う。
ホントにこれは不利とか言うレベルの騒ぎじゃない。
さっきまでとはレベルが違いすぎる。
「でも、ソラなら何とかしてくれるでしょ?」
「・・・・・・無理かも」
とか言いつつも考える。
相手が対応できなくなる攻撃をしまくって何とかする。
それぐらいしか思いつかない。
でも、相手は機械みたいなもんだ。できるかどうかわからない。
「・・・いや、相手はAIなんだから・・・それしかないか」
「さすが!じゃ、どうするの!?」
「・・・効率が悪いけど、敵に攻撃しまくって。できれば向こうが対応できなくなるくらいに。所詮はAI。何かしらの行動パターンがあるはず」
「わかった・・・敵は?」
「・・・向こうに隠れてる」
ボクは一つの柱をさす。
そこから魔力の反応がする。
「まず、相手は奇襲中心。それとシュウを超えるようなスピード。もちろん薬使ってる状態。武器は両手の剣。でも、他にもあるかもしれない」
「うん。じゃ、行ってくる」
そういうとリカは霧になってこっちから奇襲を仕掛けた。
ボクも魔法陣を限界まで展開。
今回は数でいこう。
「≪焔鳥≫、≪雷燕≫、≪水鴎≫」
そういった途端にボクの周囲の魔法陣が光る。そこには同じみの魔法たち。
魔法の鳥達はボクの指示を受けて四方から敵に突撃してく。
リカももはや防御の概念を捨てたかのように猛攻を仕掛ける。
ボクは魔法を繰り出しつつ、その戦闘を観察する。
「・・・できるか!!」
無理だった。
いや、ボクは格ゲーのプロじゃないし・・・。
「でも、敵にもダメージいってるらしいよ!」
リカの言葉に敵を見てみると、そこにはさっきと違ってところどころ傷がついていた。
とても速い分、どうしても装甲がもろいのかな?
「じゃ、このまま押し切る!!
―――其は魔に属す法則!!」
魔法陣を展開して敵に致命的なダメージを与える。
なら、防御不能のこの魔法なら勝てるはず。
それを、リカに使わせる。
相手にほんの少しでもかすれば少なくともかなり大変なことになるはず。
「―――≪月夜≫!!
バージョン大鎌『月狩』・・・と、言うわけでリカ!!」
ボクは真言で造った白銀に輝く大鎌を思い切り投げる。
煉さんが見たら卒倒するだろうけど今はそんな場合じゃない!
リカはまるで後に目がついてるみたいに何事も無く鎌を空中で受け取る。
「吸血呪≪血濡れの大鎌≫!!」
そして、鎌を振り下ろすとそこから衝撃波が放たれる。
どういう原理かわからないけど、『月狩』から放った魔法でも直接魔力に攻撃することができるみたい。まぁ、物量作戦に更にはリカの魔法も喰らえばさすがに向こうも無理だったらしい。
リカの攻撃はそのまま直撃。
『―――異常事態!魔力回路ニ異常!流星騎士、操作不能・・・停止・・・』
けたたましいサイレンのような音共に今度こそ敵の動きが止まる。
≪月詠≫にも魔力の反応は無い。
でも、さっきみたいなのがあるからなぁ・・・・・・。
「・・・大丈夫だよね?」
「・・・たぶん?」
「ソラ君、リカちゃん大丈夫~?」
「し、師匠~!」
結界を解いちゃったのか、スズと四条さんの二人がこっちに来る。
「す、すごいです。あんな息ピッタリで・・・」
「・・・何故かよく一緒にいるからね」
「もう!・・・/////」
リカが何故か照れる。
てか、さっきのとこに照れる要素なんてあったっけ?
「でも、リュウ君とソラ君のときもすごいよ~」
「・・・後でリュウをシバく」
「いやいやいや!?ダメだから!?」
「・・・?」
まぁ、何はともあれ障害は消えた。
コレで中に入ってボクがちょいちょいと魔力を見ていじれば万事オッケ~。
「よし、中に入ろう。リカ、その鎌で切り刻んじゃって」
「ん・・・セイッ!」
リカが『月狩』をふるって扉を切り刻む。
ちょうどいい感じの大きさの穴が開いて、ボク等はそこから中に侵にゅ・・・お邪魔させてもらった。
「え?」
「何で!?」
そして、中には案の定というか・・・いたるところに石盤みたいなのがあって、空中にはパソコンのウィンドウのようなモノがたくさん浮いてる。それぞれにこの遺跡の中の映像や罠の操作をするためのものっぽいのがある。
でも、ボク等が驚いたのはそこじゃない。
「ひ、人ですか?」
「こんなところに住んでる人がいるんだね~」
「ん?・・・おう、ようやく来おった」
ボク等の目の前には金髪の長い髪を後で結んだ目付きが明らかに狩人っぽい雰囲気を持つ人がいた。
「だ、誰ですか?」
ぽけ~っとしてるスズ以外の人間が構える。
こんな遺跡に人がいるとか怪しすぎる。
「うむ。教えるのはやぶさかではないが・・・一つだけ汝らに言わせてくれ」
何だか真剣な表情で言う。
ボク等は息をするのも忘れてじっと相手の言葉を聞く。
「・・・汝ら、アホじゃろ?」
「「・・・返す言葉もございません」」
「そうだよ~勉強しなきゃダメだよ~」
「そ、そうです。い、いくらDでバカだからって・・・」
「「「あんた等のことだよ!?」」」