19話・EXPLORATION
―――side空志
「あ、あの、アンジェリカさんは師匠と契約を結んでるわけではないんですよね?」
「うん。てか、ホントにやめて。ソラでいい。何回も言うけど、リカはただ単にみんなと仲良くしたかっただけ。リカ自信が言ってたでしょ?それで、ボク等がリカの最初の友達ってことになるのかな?」
「うん。アタシの秘密を知っても、って意味なら」
「でも、アンジェリカさんも師匠以外の人の血を飲もうとは思わないんですか?」
「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!」
「吸血鬼なのにソラ君の血が飲めなくてもいいの~?」
「いいの!!」
「いや、よくないでしょ?龍造さんがリカが全然ボク以外の人の血を飲めないもんだからこっちに送ったって聞いたけど?」
「・・・モノは言いようだね~」
「どういうこと?それに何でリカは顔が赤くなるし」
今、ボク等はいろいろと暴露大会をしたにも関わらず結構仲良く遺跡っぽいところをさまよっていた。
動かないほうがいいんだろうけど、四条さんの話によるとここは学校の地下遺跡の可能性があるらしい。学校から結構離れたここにまで及んでいるならこの遺跡はかなり広大だ。なら、食料が尽きる前に出ないと確実にヤバイ。どんなにがんばっても三日ぐらいしか持たない。まぁ、リカはガマンすれば一週間ぐらいは大丈夫だけど・・・。
とにかく、少しでも早く見つけてもらおうとボク等は学校のほうに向かって進んでいる。
ちなみに≪焔鳥≫で周りを照らしてる。
コレ、攻撃よりこうやって使うほうが便利なんだよね。
「でもさ、学校ってこっちでいいの?」
「え?わ、わたし知りませんよ?」
「・・・スズ?リカ?」
話をふるとリカとスズはいい笑顔で親指を立てる。
・・・わからないんだね。
「・・・よし、確認しなかったボクも悪い。精霊はなんていってるの?」
「そ、それが・・・精霊さんにもよくわからないらしいです」
・・・コレって遭難?
既に危険度がレッドゾーンを振り切ってるよね?
だが、こっちには秘密兵器がある!
「よし、レオ。いつも見たく何か発見してきて」
「にゃ」
そういうとボクの足元にいたレオはトテトテと近くをふらふら歩く。
すると、何か見つけたのか地面を引っかく。
さすが。地味にこの子はいろいろなものを見つける。今回もコレで何とか・・・。
カチッ
「・・・何故だろう。ものすごく嫌な予感がする」
「「「・・・」」」
すると、後ろからゴロゴロという音がする。
ボク等は恐る恐る後ろを向くとそこにはインディ・ジョーンズもビックリなぐらいベタな大きな球状の岩がこっちに転がってくる。
「「「「ぎゃぁぁぁぁああああああ!!??」」」」
「レ、レオ!!でかくなって!!」
そういうとレオは大きくなる。
そして、ボクの意をくんですぐに咆哮覇をしてくれる。
でも、岩に当たると咆哮覇が霧散してしまった。
「「「「え~!?」」」」
ボクはすかさず≪月詠≫。
解析するとどうも特殊な魔法がかけられているみたい。
たぶん、ボクの真言ならやれる。
でも、そんな暇は無い!
まぁ、結論を言っちゃうと・・・。
「逃げろ!!レオに二人!!こっちに一人!!来い!!盤!!」
そういうとボク等は全力で逃げ出した。
レオは大きな体躯に似合わず翼を使わなくても機敏な動きができる。もちろん、翼を使ったほうが格段に速い。
ボクの盤はログさんの下で造った新型で違法か・・・もとい、メンテしてあるから大丈夫!!・・・・・・・・・・だといいな。
「し、師匠は、速い!!!」
「何で奏がソラのところにいるの!?」
「リカちゃん!?今はそんな場合じゃないよ!?」
「四条さん!?くっつきすぎ!!」
「死にたくないぃ~!!」
~数十分後~
「し、死ぬかと思った・・・」
「い、生きてるってすばらしいことなんですね・・・」
「こ、怖かった~」
「・・・ソラのところに乗れなかった」
何とか岩をまいた。
今、ボク等は遺跡の広場みたいなところにいる。
でも、レオでも間違うことがあるんだね。
ちなみにレオは疲れ果ててボクの制服のフードに入ってる。
・・・地味に首が絞まるけどしょうがない。ある意味こいつが一番がんばったから。
「でも、レオが疲れてるのは結構まずいかな?」
「うん。もしも次にあんな罠があったら全員で逃げれない」
「・・・しょうがない」
ボクは三つの魔法陣を展開する。
それぞれ、赤に黄色に緑だ。
「―――ボクの呼びかけに応えろ・・・
≪朱雀≫、≪風狸≫、≪雷狐≫!」
そういうと赤い鳳に、大型犬ほどの大きさがある緑の狸に黄色い狐。
今回は最初から大きなサイズか。
でも、ストックが後、一回か二回だな~・・・。
「何ていうか師匠って何でもありですね・・・」
「・・・ゴメン、ソラ。カバーできない」
「わ~!スーちゃんにライちゃんにフーちゃんだ~」
スズはそういうとボクの召喚獣達に突撃してる。
何故か召喚獣とスズは仲がいい。
「久しぶり。いきなり呼び出して悪いんだけど、緊急事態なんだ」
召喚獣たちに簡単に現状を説明する。
「ま、そんなわけでボクはいいから女子を守ってあげて」
そういうと召喚獣は心得たとばかりにうなずいたりしてる。
この子達はいざというときはそれなりに戦えるし、まぁ、大丈夫かな?
「・・・でも、偵察は必要だよね」
残念ながらボクの魔法にはそんなモノが無い。
≪焔鳥≫は偵察って言うより囮だし・・・。
精霊は何故かよくわからないらしいし。
ボクが持ってる魔道具には今、役に立ちそうなものは無い。
・・・今度、サバイバル用の魔術符を作っておこう。方位磁針とか方位磁針とか。
「じゃ、これからどうする?」
「ソラに着いてく」
「ソラ君に任せるよ~」
「し、師匠の行くところなら・・・」
ダメだこいつら・・・。
てか、ここは調べてみたけど特に何も無い。
たぶん、安全。
さっきみたいな目にあいたくないしな~・・・。
「よし。ここなら別に危険はなさそうだし・・・ここで救助を待とう」
「わかった」
「わ、わかりました」
「じゃ、ゴハンにしよ~。お弁当セット!」
そういうとスズはポケットの魔術符から大きな重箱のような弁当箱と地面に敷くシート、その他もろもろ・・・。ボク等は見慣れたスズの弁当セットだ。いつもコレで間学園の屋上で昼ごはんを食べてる。
ボクとリカは適当に座る。四条さんも少しためらった後にボク等と同じように座る。
「みんなで食べよ~。いただきま~す」
「「「いただきます」」」
そして昼食。
スズのゴハンはいつもと同じでおいしいね。
まぁ、周りが暗くて遺跡なのが残念だね。
「でもさ、今回は量が多くない?」
「もぐもぐ・・・うん。みんなで食べようと思ったからだよ~」
「・・・ソラ、コレ、アタシも手伝った」
「ん?これ?・・・おいしいよ」
「・・・/////」
「お、おいしいです・・・」
「ありがとうね~」
そして、和やかな時間が過ぎていった。
ボク等はある程度食べると弁当箱を片付けて適当に雑談をしていた。
「でさ、リュウがドラゴンとか信じられなかった」
「だよね~。それにわたしとソラ君の出会いってレオちゃんなんだよね~」
「みゃ~」
「へ~。ソラはそれまでごく普通の生活だったんだ」
「・・・で、でも、中学で不良数十人を相手にするのって向こうでは普通なんですか?」
「いや、全力で違うから。リュウがトラブルを連れてきてボクが巻き込まれてるんだよ」
「絶対嘘だ~。だって、わたしはソラ君のせいで魔法戦闘に巻き込まれたんだよ~?」
「・・・ソラを襲ったのはどこの誰?」
「・・・リカ、とりあえず鎌を仕舞おう・・・でも、遅いな・・・龍造さんたちならもう見つけてもおかしくないのに・・・」
「そうだよね~」
「アタシはソラがいればいい」
「だから、ボク以外の人にも慣れようよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ソラが言うなら」
「あ、あの、あの人達はそんなに優秀なんですか?」
そう聞いてきたのは四条さんだった。
「うん。だって、魔王の孫に凄腕の数法術士、格闘術と薬のエキスパート。それがダメでも向こうのほうにいる仲間にも頼めばすぐに何とかなると思う」
宇佐野さんは三秒以内にボク等が遭難したところを見つけられるような気がする。
インチョーはエリアの力を借りれば何とかできるだろうし・・・。
足手まといは田中だけか。
「でも、わたしが思うにソラ君とリュウ君の魔王と勇者の孫、親友コンビのほうがすごいと思うけどね~」
「いや、あれは悪友だよ」
「・・・やっぱりリュウが一番の敵?」
「いや、仲間だから。さっきのどこに敵になる要素があったの?」
「・・・恋敵?」
「・・・なんだろう?よくわからないけどすごく否定しなきゃいけない気がする」
「ちょ、ちょっと待ってください!?」
「ん?どうしたの?」
四条さんは質問が多いね。
まぁ、しょうがない。
「さっき、勇者の孫って・・・」
「あぁ、ボクのじいちゃんは三谷隼人。龍造さんと唯一タイマンはれる人」
「・・・なるほど、だから師匠はそんなんなんですね?」
・・・どうもボクはいろんな人からチート扱いをされる運命にあるみたい。
酷い・・・。
「そこの人もそう思わない?」
「「「?」」」
ボクは召喚獣たちに目で合図する。
すると、すぐに臨戦体系をとってくれる。
「ソラ?何を言ってるの?」
ボクはあの後、念のためにカラコンをはめなおしてるからリカ達にはボクが≪月詠≫をしててもわからない。
「ボクの目は欺けないよ?それこそ魔力無効化体質並みに魔力が無いと」
そういうと隠れても無駄だと思ったのか急にボク等に向かって音も無く走ってくる。
ボク等に反撃の暇を与えずに何かしようとしてるんだろうけど・・・。
「ボクはアンタより速い人の相手をしてるからね」
ボクは左の銃を素早く抜いて銃を放つ。
相手も中々の反射神経のようで魔法の弾丸を避ける。
でも、ボクの銃に紋様が浮かんでることにまで注意が向いてない。
「甘いよ。≪雷燕≫!!」
ボクの銃弾が弾けたかと思うと敵の後ろに魔法陣が展開され、そのまま雷のツバメになって敵の背後から不意打ちを食らわせる。
敵は何が起きたのかわからないまま気を失っただろうね。
ボクは立ち上がると敵の近くに行く。
「さて、やっぱりこれって、昨日の・・・」
うん。たぶん間違いない。
こんな黒装束を二日連続で見るわけ無い。
そこまで思考をめぐらせると、奇妙なことが起きた。
黒装束の人から黒い霧みたいなのがあふれたかと思うと急に姿が消えた。
「・・・どういうこと?」
「ねぇ、ソラ。さっきのって昨日学校に忍び込んだ・・・?」
「たぶん」
ボクは≪月詠≫をしたままで黒装束の消えた地面を見てみる。
「さ、さっきの人は!?」
「死んではいない。でも、何かの魔法で消えた」
「ソラ君の≪月詠≫で解析したら~?」
「魔力が微量過ぎて無理」
ボクはそう言うと立ち上がる。
「・・・ひょっとすると何か厄介なことに巻き込まれてるのかな?」
今回の黒装束の侵入といい、魔獣に呪力。まぁ、後の二つはあの変体魔王さんなんだろうけどさ。
まぁ、今は何はともあれ、助けを待ったほうがいい。
「・・・いや、よく考えるとピアス使えばいいじゃん!?」
「「・・・あ」」
「?」
ボク等は通信用の魔道具のピアスを持ってる。
校則でピアスはダメなんだけど、ボク等は普段からカバンの魔術符に入れている。
確か、ボクは腕輪に入れ替えたはずだから・・・。
「来い、ピアス!」
そういうとボクの手にピアスが現れる。
それを左の耳につけるとボクは通話機能を使う。
「コール、リュウ」
この言葉でリュウにつながる、はずなんだけど・・・。
「・・・でない」
「・・・こっちもダメだよ~」
「アタシも」
「???」
・・・ここのあの古典的でベタな罠には詳細は解析できなかったけど特殊な魔法で何か魔法の抵抗か無効かするコーティングがされてたっぽい。
となると、ここの遺跡全体に似たようなコーティングがされているのかな?
でも、そんな魔力、魔法の反応はボクの目では解析できない。
「・・・何がどうなってるんだろう?」
「ソラに解析できないんならコレって相当なものだよね?」
「いや、ただ単にボクがまだまだこの力を使いこなせていないだけだから・・・」
「でも、今までは大抵のことはできたよね~?」
「そうなんだよね~。やっぱ、この力に頼りすぎたかな?」
「せ、精霊さんに聞いて見ると、ここは魔法妨害されてるみたいです」
「・・・魔力妨害、ね」
ボクはここに来てから学んだことを思い出す。
魔法妨害はボクの使う具現化と同じ失われた魔法の一種だ。結界を張るみたいに一定範囲内に特殊な術式を組み込むことによって、ある程度の魔法の発動を阻害させることができるらしい。
で、今回は建物に対する攻撃系魔法の妨害らしい。そして、ついでに外部との交信も阻害。
「そして、極め付けにはここまで変な人に狙われるとか・・・ボク等って何か他人に狙われるようなこと・・・」
ボクは魔窟で智也さん達を全員返り討ちにしたことと、エセ陰陽師をぶっ飛ばしたことを思い出す。しかも、ボク等は魔物の間ではかなり有名らしい。
・・・狙われる理由ありまくり!?
「結構あるね~・・・」
「・・・・・・ま、今はそんなことより、ピアスが使えれば問題が全部解決する。それに、魔法妨害もこんな大きな建物全体にしてるんだから、魔窟みたいに結界の制御室みたいなところがあると思う」
もしも魔法妨害の術式が壊れたときにはそこで龍造さんみたいに構築しなおせばいいだけだしね。
「じゃ、そこに行って魔法妨害を解除するの?」
「そういうこと」
「で、ででで、でも、あ、危なくないですか?」
「まぁ、ソラ君なら大丈夫だよ~」
「まぁ、念のために朱雀たちもいるし。朱雀は確かに他の二体に比べると小さいけど、四条さんぐらいなら余裕で運べる。それに、何があってもボク等が全力で守るから大丈夫だよ」
「は、はい・・・ありがとうございます」
そういうと何故か微妙に四条さんは顔を赤らめる。
それと同時に何故かリカから背筋が凍りそうなほどの殺気。
・・・何で?
「と、とにかく、行こう」
ボク等は再び遺跡の探索を開始した。