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DARK・MAGIC ~闇夜の奇術師達~  作者: 夜猫
4章 ≪魔法学園奮闘記!≫
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17話・POWER OF SATAN

―――side空志

 「三谷さん?この方たちは?」


 そう聞いたのはリオネ。

 まぁ、最もな疑問だと思う。

 ボク等はすでに戦闘形態を解いていて、みんなから質問攻めに合ってる。レオは小さくなってボクのところにいる。

 そして、今はレイ先生たちが魔法を中断して休憩に入ってる。


 「こっちは間学園の生徒の間隆介、李樹リー・シュウ、平地冬香。ボク等の仲間だよ」


 「オレが一応こいつらのチーム、『夜明けサンライズ』のリーダーだ。使うのは魔法剣で属性は『闇』だ」


 「私のことはシュウと呼んで下さい。このチームの薬剤師兼格闘士です」


 「わたしが「金の亡者」で数法術士の平地冬香・・・って、アンタ何言ってんの!?」


 ボクは冬香の突っ込みをスルーして続ける。


 「ついでにボクは魔道具技師」


 「アタシはソラのカレ「鎌使いね」・・・」


 「料理担当だよ~」


 ・・・何でそんなのがあるの?

 もはや生産職だよ?

 ボクはリュウ達にカザハ達を紹介した。


 「でも、学生ギルドに登録してるのか?」


 「いや、オレ達はワケありで、一般ギルドだ。」


 「おぉ~すげ~!?」


 みんながみんな思い思いに雑談してる。

 てか、ボクの疑問はどうなった?


 「結局なんでここにいるの?」


 「あぁ、今回は依頼だ」


 「依頼?」


 「そうそう。僕の依頼だよ」


 いつからいたのかにへらっと緊張感の無い笑みを浮かべる魔王がいた。


 「って、何でライネルさんが!?」


 「久しぶりだね~」


 『閃光の魔王』の異名を持つライネルさんがいた。


 「でも、置いてくなんて酷いじゃないかい?」


 「アンタは死んでも死なないでしょ?」


 「それに魔獣の殲滅を優先したのは貴方ですよ?」


 「ま、確かにそうじゃの」


 ・・・ボクはもう、驚かないぞ。

 例えボクの隣に神出鬼没が売りの龍造さんがいたとしてもボクは驚かない!!


 「何でいるの!?」


 無理だった・・・。


 「リカちゃんと鈴音ちゃんが恋しくての」


 「アタシはソラのものだから無理!!」


 「何言ってんのこの子!?」


 「あ、あの、この人達は?」


 四条さんが勇敢にもこの空気を打破しようと声を出す。


 「この人達はバカ一号さんと二号さんで十分だよ」


 「は、はい。よ、よろしくお願いします。一号さん、二号さん」


 ・・・この子には冗談が通じないようだ。

 今度から気をつけよう。

 ボクは龍造さんたちに再度聞く。


 「で、何でここに?」


 「ピクニックじゃ」


 「シバくぞコラ?」


 「キャラが崩壊しとるぞ?」


 「関係ない。ちょっと向こうで拳で語り合いましょう」


 「・・・っふ。まだまだ若いもんに負けるわしではない!」


 そういうとボクと龍造さんは立ち上がってみんなに聞こえないところまで来る。


 「魔窟ネスト関係ですか?」


 「いや、魔王のほうじゃ」


 龍造さんはボクに最近のことを話す。


 「要するに、別の魔王領で不穏な動きがあるからそれを探りに?」


 「うむ。さっきの魔獣もここの魔王領で造られた・・・・ものらしい。じゃから、異常に強かったんじゃ。お主が苦戦するぐらいにの」


 「でも、魔物ってあんな危険なものなんですか?ボクなんか魔法がかき消されましたよ。しかも≪八岐雷大蛇ヤマタノオロチ≫が」


 「・・・本当か?そんな魔獣はおりはせん。・・・おそらく特殊な古文書で魔獣に組み込んだんじゃろう。そういえば目は大丈夫か?」


 「あ、はい。でも、何で目のことを?」


 ボクは目の子とは一言も龍造さんには言ってない。


 「呪力を見たんじゃからな。アレは一種の毒みたいなもんじゃしの」


 「呪力?」


 「簡単に言うとマナを汚染させた魔力じゃ。あの魔獣は過剰な量の呪力に当てられて強化させられたもののようじゃ。簡単に言うと呪力は魔力の澱みが生んだ有害なエネルギーじゃ。魔物の中には呪力を好んで使うものもおる。ちなみに魔物ぐらいの魔力があれば簡単に呪力を人工的に発生させることができるぞ?」


 「要するに魔物なら誰でも呪力を使えるんですか?」


 あの、鬼人オーガのガントさんは魔力が魔物の中で一番低いらしい。けど、それだけでも普通にこの学校で言うAぐらいはある。


 「そうじゃ。それに呪力を使う魔法、俗に邪法と呼ばれるんじゃがコレも桁違いに強力なんじゃ。どこの魔王かわからんのじゃがさっきのようなものをそこらへんに捨てられると被害が深刻じゃ。早急に対処する必要があるのじゃ」


 なるほど・・・・・・・・・・ん?

 何でまだ終わってないよ的な言い方なの?


 「おぉ、言うの忘れとったのじゃがさっきのがこの森の中に大量に出没しとるぞ」


 「何でそんな大切なことを忘れるの!?」


 「まぁ、この周囲にはわし直々に結界を張っておいたから大丈夫じゃろう。おぬしらは目的を果たしたら帰るのじゃ。後はわし等が適当に潰しておく」


 なるほど。それなら安心だ。

 それにボクは今回だけは足手まといになりそうだしね。


 「おっけーです」


 「うむ。みんなのところに戻るかの」


 そういうとボクとお龍造さんはみんなのところに戻った。

 すると、そこには何やら激論中の方々。


 「・・・なにコレ?」


 「あ!?おいソラ!さっきアンジェリカが吸血呪ヴァンパイア・スペルとか言ってたがありゃ何だ!?」


 「・・・吸血呪ヴァンパイア・スペルは固有魔法です・・・吸血鬼の」


 ・・・・・・ッチ。

 何で気づくかな?

 要するにリカの正体がばれそうだと?

 リカを見るとみんなから離れたところでかなりうろたえてるようだ。


 「アレはボクの魔法だよ」


 「「「・・・は?」」」


 「ボクの得意技は魔法陣の魔法の構築。それで前に魔物の図鑑で吸血鬼はそんな魔法ができるって言うのを見たことがあったから。それに偶然にもリカは鎌を使うからボク達は前からコレを練習してたんだよ。いやぁ、ぶっつけ本番だったけど成功してよかったよ。」


 みんなは目を点にしてる。

 でも、数々の非常識を展開してるボクだから次第にみんながなるほどとかいいはじめた。

 ボクもよく自分の口からこうもでまかせを出せるもんだと思ったよ。


 「それに吸血鬼は太陽の下じゃ灰になる。リカは太陽に当たっても灰になんかなってないでしょ?」


 「・・・それもそうですわ。それこそ始祖の血統でもない限りありえませんもの」


 残念ながらその血統です。

 リカには弱点らしいところが無いんだよ。

 みんなの目から妙に殺気だった気配が消える。


 「でも、リカが例え吸血鬼でもボク等の仲間に変わりは無いと思うんだけどね」


 「確かにそうね。別にコレだけ長いこといて何も被害ないし」


 「まぁ、紛らわしいことやったボクがダメなんだけど。まぁ、リカもゴメンね」


 リカはいまだに隅で縮こまっている。

 ボクはリカのところに行くと頭をなでる。


 「大丈夫。ボクは絶対にリカの味方だから」


 「・・・・・・・・・・うん」


 よし、誤魔化し完了。

 リュウ達がアイコンタクトでよくも口からあんな堂々とでまかせを・・・とかしてくるけどそんなものは幻想だ!!


 「まぁ、誤解が解けてよかったよ」


 「だが、その人がお前のところの学園長なんだろう?」


 「いかにも。わしがこの子達の学校の学園長の間龍造じゃ。この隆介の祖父じゃ」


 「不本意ながらな」


 そしてリカはボクにいつも以上に引っ付いてきてみんなは異文化交流をしてる。

 ・・・・・・でも、ボクなんか忘れてる気がするんだよね。


 「あ、またさっきの魔獣が!!」


 また!?てか四条さん見つけるの速ッ!?

 龍造さんやライネルさんも気づいて無かったよ?


 「・・・ホントだ。ここから北東に1.3キロ先の方向にいるよ」


 「・・・ソラの周りには珍しい属性の子がおるんじゃな」


 「確かに。龍造さんの言うとおり一キロ以上先を感知するのは普通の子じゃできませんよ?僕自身できないし」


 「まぁ、わしの結界があるから大丈夫じゃ。それこそソラに核解析コア・アナライズされん限りわの」


 !?

 そうだ!!ボクはすっかり忘れてた!


 「向こうもボクの≪八岐雷大蛇ヤマタノオロチ≫解析して破壊してきた!?」


 「はぁ!?お前のアレをか!?」


 リュウが驚きに声を上げる。


 「・・・!?い、いろんな方向から魔獣が!?」


 「え!?うわ!?なにコレ!?」


 アスカと四条さんがかなり焦ってる。

 ボクは目を使うと痛みで大変なことになるからできない。

 でも、殺気みたいなものは感じられるようになって来た。


 「・・・みなさん。コレはまずいです囲まれました」


 「全員わたし達の周りに集まって!」


 「・・・メンドイ」


 リュウ達はいつものように武器を構えると学園の生徒を背中に周囲に注意を向ける。


 「お、おい。あの三谷でも無理なんだぞ!?お前等も俺達と同じ学生なのに大丈夫なのか!?」


 そういったのはここに同行した先輩。

 まぁ、学生であんなことできるのは確かにボクが初めてだろうね。


 「お前な、確かに俺達はそこのソラより強くは無いかも知れん・・・魔法剣≪黒刃≫!そして、魔法剣≪斬黒≫!」


 そういうとリュウは剣を抜刀すると剣の刃に闇の魔力の刃を展開してそのまま斬るモーションを行う。

 その先にいた魔獣はリュウの放った魔法の斬撃で吹き飛ばされていた。


 「だが、そこまで弱くない」


 リュウはどんどん構えを取る。

 すると双つの剣から様々な魔法が放たれる。


 「コード≪槍衾ファランクス≫」


 冬香は数法術で氷の槍の弾幕を張って敵をこっちに近づけない。

 更にはまだ何かのコードを展開しようとしてる。


 「コード≪巨人ギガンテス≫」


 すると空気中に水が集まったかと思うと瞬時に凍る。

 それはクリスタルのような形をとると氷の人形になってそれを無数に生み出す。

 冬香の無敵艦隊久しぶりに見たな~。


 「・・・おい。お前の学友はチートか?」


 「いや、むしろ全員まだ全力じゃない。それに注目すべきはシュウだよ。・・・できないけど」


 「?・・・オレッチにもわかるように言ってくれ~」


 「耳を澄まして」


 かすかに風を切る音が聞こえる。

 その音がするたびに魔獣が一体ずつ地面に倒れていく。

 魔獣は自分が何をされたのかわかってないと思う。


 「・・・!?・・・三谷殿?あのシュウという御仁ごじんが超高速で動いてるように見えますが?」


 「うん。シュウは魔法こそ使えないけど薬と格闘はピカイチ。たぶんボク等の中で一番強い」


 「いえいえ、私はまだまだですよ」


 いきなりボクの後ろから出てきてよく言うよ。

 ボクとリカとスズ以外は超驚いてるよ?


 「では、ソラさん。万が一にも怪我をした方にはコレを」


 そういうとボクに薬ビンをいくつか渡す。

 それぞれに何の薬か書いてあるから大丈夫だ。


 「わかった。ボクは何もできないけどがんばれ」


 「普段はいつも人一倍がんばってますからいいですよ」


 そういうとシュウはふっと消える。

 またその拳一つで戦いにいったんだろうね。


 「三谷君たちは何者?一人は無詠唱で剣から魔法出すし、あの年で数法術を完璧に使いこなすし、異常な戦闘力をもつ人がいるし・・・」


 「まぁ、そんな集まりだよ」


 ボクは杏奈の疑問を適当に返して言う。


 「・・・来おったかッ!!」


 龍造さんがいきなりボク等の周囲に結界を展開。

 すると、少し遅れて炎の魔法が結界にぶち当たって轟音を響かせる。


 「まさかの本命?」


 炎の魔法でここまでの威力はおかしい。


 「最悪じゃな。ライネル、お主がこやつらを守れ」


 「へいへい」


 そういうと龍造さんは結界の一部を解除して外に出る。


 「誰じゃ!出てこんか!!」


 「ガハハハハハハハハハハハ!!!まさか『結界の』か!?」


 すると龍造さんの目の前に身長が二メートルはあろうかという大男が現れた。

 何故かスキンヘッドで上半身裸だ。

 ・・・・・・やることが一つしか思い浮かばない。


 「今すぐ警察に通報しよう」


 「おい!?いきなりそれは無いだろう!?」


 「・・・『豪炎』か・・・・・・おい。ライネル。わしメンドイからおぬしやれ」


 「え~・・・ここは龍造さんが適当にぷちっとやっといてくださいよ」


 「あ、あの・・・あのおじいさんは大丈夫ですか?あ、あの人強そうですよ?」


 四条さんが心配そうに言う。方や、力が強そうな大男。もう片方はひょうひょうとした雰囲気を持つおじいちゃん。

 確かに心配だ。コレは確実にアホの頂上決戦的なものになりそうな気がする。


 「あぁ、大丈夫。あの人僕より遥かに強いから」


 「は、はぁ・・・でも・・・」


 「大丈夫。龍造さんはそんなぐらいで死なないからむしろ死ぬところが想像できない」


 「わしだってさすがに寂しいと死んでしまうんじゃぞ?」


 「うぉい!?オレサマを無視するな!」


 いきなりスキンヘッドがブチギレる。


 「で、おぬしはもっと南のほうじゃと思ったがの?」


 「領地拡大のためにここに来たんだよ!!バカだな!!『結界』!!」


 「・・・おぬし、先日の会議パーティでできるだけ侵略はせんように決まったのを知っとるか?」


 「はぁ?オレサマは寝てたから知らん!!」


 「・・・ライネル「イヤです」・・・」


 魔王にはまともな人がいないようだ。

 全員が奇人変人とか・・・大変そうだね。


 「おい、さっきからお前んトコの理事長はなに言ってんだ?」


 「・・・まぁ・・・うん・・・いろいろあるんだよ」


 ボクはあいまいな笑みで答える。


 「まぁ、予想はついておる。おぬしのことじゃ執事あたりに無理難題を押し付けてコレをしとるんじゃろう?おぬしのところの行政は部下が血の涙を流してやっとるらしいの?」


 「は、はぁ?お、オレサマがんなみみっちいことするかって!!」


 「・・・目を見て話さんか」


 どうもこの人はかなりの外道のようだった。

 しかもものすごいバカ。


 「ライネルさん。何で『豪炎』なの?」


 「快なの魔王って意味だよ」


 「何か強そうだね~!」


 「・・・アホさ加減がにじみ出てる」


 ボクもそう思うよ。


 「そんなことよりだ!!魔王の中でも最強を誇るお前に勝てばオレサマが一番っつーコトだよな!!」


 そういうと向こうのスキンヘッド魔王は腕に炎を纏わせるとそのまま突撃してくる。

 魔装系っぽいね。


 「喰らえ!!≪燃える拳ヒート・ナックル≫!!」


 「・・・おぬし、アホじゃな」


 龍造さんは何もしない。

 ただ立ってるだけ。

 周りの生徒やレイ先生は叫んでるがボク等はいたって冷静だった。

 ボク等も戦う龍造さんを見るのは初めてだけど、どこかで龍造さんなら大丈夫だと思ってたんだと思う。

 相手の拳は龍造さんの周りに展開された結界によって阻まれる。

 

 「ハッ!!そうじゃねぇとつまんねぇよな!!≪爆炎の槍バーン・ペネトレイト≫!!」


 そういうと手を貫手にしてまた龍造さんに飛び掛る。

 一点集中の攻撃だったのか結界が壊れる。

 龍造さんはすると腕を振るう。

 そこにはいつの間にか透明な丸棒が握られていた。

 向こうはそれに気づくとのけぞって回避。

 そのままバック転して距離をとる。


 「・・・そうじゃな・・・いい機会じゃしの・・・ソラ?」


 「はい?」


 ボクは急に龍造さんに名前を呼ばれて返事をするけど声が変になる。

 龍造さんはそれには構わずにそのまま続ける。


 「おぬしはわしの秘術を操れる可能性を持っておる」


 「秘術?」


 「・・・まさか龍造さん、アレをするの?たかが『豪炎』に?」


 「ちょうどいいじゃろう?何のためにわしがここにソラを入れるようにしたか知らんのか?」


 「あ~・・・二人とも何言ってるの?」


 ボクは話についていけない。


 「まぁ、それは聞くより見たほうがいい」


 「では、やるぞ?久しぶりじゃからの・・・」


 龍造さんは武器を右手に持つと左手を前に突き出す。

 すると、何も描かれていない魔法陣が出現。


 「・・・ソラと一緒の魔法陣の構築?」


 「わしもの、真言は詠唱せんとできん。もちろん、詠唱中は精神集中のために動くこともできん。じゃが・・・」


 そう言うと、龍造さんは魔法陣を展開したまま敵に棍棒を叩きつける。

 その時、ボクはあり得ないと思って、思わず≪月詠ツクヨミ≫をして確認してみたけど・・・やっぱりそうだ。


 「何で魔法陣で真言を構築してるのに動く・・・てか、戦えるの!?」


 「え?どういうこと~?」


 「アレが『結界の魔王』、龍造さんの秘術・・・というか特殊詠唱法。同時並行処理詠唱パラレル・ライン・スペルって言ってた」


 ボクは右を見ながら左を見るなんて芸当はできない。

 でも、龍造さんは明らかにそれに近いレベルのことをしようとしている。


 「いや、実は龍造さんは詠唱を除いて最大五つまでの詠唱ラインを組める。今回はその応用で、真言を組みながら戦っている。もし、龍造さんが本気なら、五つ以上の詠唱ラインを展開しつつ、さらにはそれを合成して戦える。でも、五つはあくまで僕が見た最大数だ。ひょっとすると、それ以上の詠唱ラインを組めるかもしれない」


 龍造さんは魔法を展開したままで戦っている。

 コレがこの詠唱法の強みなんだろう。

 複数を同時に行う・・・・・・・・。こんなことができれば詠唱のタイムラグなんてあってないようなものになる。

 ボクは完全に魔法のタイムラグが真言以外は無い人間だ。でも、ボクがコレを取得すれば戦いながら詠唱する・・・・・・・・・ことができる。その間にボクは誰かに守ってもらわなくていい。むしろ先頭に立って戦うことすらできる。今の龍造さんのように。


 「ッ!?なら、オレサマの切り札を喰らえ!!≪陽炎拳かげろうけん≫!!」


 「遅いの・・・≪絶界ゼッカイ≫」


 すると、龍造さんの魔法が発動。

 龍造さんが丸棒を突き出す。

 スキンヘッドの魔王はヤバイって顔をしながら大きく右に跳び出す。

 すると、丸棒の先、5メールトル程の空間が歪む。

 次の瞬間にはその歪みに巻き込まれた木々や地面がまるで最初から無かったかのように消え去った。


 「・・・どうじゃ?わしのこの魔法は一定範囲内のありとあらゆるものを問答無用で消す。消滅属性のような制約はないぞ?それに手加減されてわしに傷一つ付けられんとはな最後の≪絶界ゼッカイ≫も本来はわしを中心に発動させる術じゃぞ?」


 あまりの衝撃的過ぎることにこの光景を見ていた全員が何もいえない。

 魔法の制約とかそんなものは関係なかった。

 確実にボクの『月』を越えるまでに魔法の常識を覆してる。


 「ひ、非常識すぎる・・・」


 「・・・おぬしが言うか?わしはの、結界で封印できんかったのはソラだけなんじゃぞ?」


 ・・・よく考えるとボクは地味にすごいことをしたのかも知れなかった。

 でも、龍造さんに気を取られて、ボク達は気づかなかった。

 四条さんの後ろにいつの間にか魔獣がいたことに・・・。

 ボクが気づいたの目の痛みだった。


 「危ない!!≪月守ツキモリ≫!!」


 四条さんは幸いにもボクのすぐ近くにいた。ボクは魔獣と四条さんの間に入るととっさに魔法の盾を展開。

 ギィンと金属同士がぶつかるような音が響く。

 そして、ボクは忘れていた。まだ、≪月詠ツクヨミ≫をしてたことを。

 更にはその目で魔獣を直接見てしまった。


 「ぐ、ぁぁぁああああ!!??」


 目に激痛が走る。

 魔獣の呪力を見たせいだ。

 魔獣はその隙を逃さずに盾ごとボクを吹き飛ばす。

 ボクは死ぬような思いで≪月詠ツクヨミ≫を解除しようとする。

 でも、気づいたときにはボクは既に魔獣に間合いを詰められていた。解除する暇どころか回避する暇さえない。

 龍造さんもかなり焦っている。ライネルさんはスキンヘッドの魔王に何か言ってる。

 ヤバイ!?






 「≪相殺殻アンチ・シェル≫!!」


 「―――我、汝と共にあり!

    其は吹き荒れる暴風の風! 

    わが意に応え、風の加護をもたせ!

    汝、名をシルフ!!」







 ボクの前に盾が展開されて、更に魔獣の後ろから誰かが詠唱をする。・・・いや、ちょっと違う?

 そして、その人は魔獣を指さしていう。


 「≪かぜやいば≫!!」


 風で構成された無数の鋭い刃が魔獣に切りかかる。

 断末魔の悲鳴を上げる魔獣。

 すると、急にボクの目から痛みが引く。

 そして、魔獣を見ると呪力が消えていた。

 変わりに魔法が放たれた方向を見るとその射線上には四条さん。

 しかも、傍らには何だか半透明の小さな丸い物体がふよふよと浮いている。


 「だ、大丈夫ですか!?・・・あ、あたしがボーっとしてたばかりにっ!!」


 「ソラ君大丈夫!?」


 「みゃぁ~」


 ボクのところにスズ、四条さんが駆け寄ってくる。ついでにレオも。

 ボクは大丈夫って言おうとした。

 でも、二度あることって三度あるんだね・・・。

 ボクの足元からなにやら不穏な音が響く。


 「「「・・・え?」」」


 いきなり地面が崩れた。

 ・・・・・・今更ながらにここに来た目的を思い出す。

 地盤が緩んでるからその対策。

 たぶん、この辺は龍造さんの魔法でかなりやばくなってたんだろう。

 そして、ボク等4人というトドメ。


 「神様、見事なフラグです。この野郎!!!」


 「ソラ!!??」


 「え!?きゃぁぁぁぁああああああ!!??」


 「~~~~~~~~!!!???」


 「ソラ!?」


 リカの驚きの声が聞こえたような気がする。

 そしてボクとスズ、四条さんは地面に飲み込まれていってしまった。




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