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DARK・MAGIC ~闇夜の奇術師達~  作者: 夜猫
1章 ≪異世界との遭遇≫
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7話・DESTROYER’S LESSON

―――side鈴音

 いま、わたしは颯太さんに魔法の講義をしてもらっているよ~。

 でも、ぶっちゃけ全然わからないよ~・・・。

 詠唱とか範囲の指定とか出力とかわけのわからない単語が出てきて、わたしの頭はすでにオーバーヒートを起こしてる~。


 「・・・・・大丈夫ですか?」


 「だいじょーぶですよ~」


 「視点のあってない目で言われても・・・・・。ちなみにそれはレオ君です」


 あれ~?

 いつの間に入れ替わったの~?


 「ま、とにかくは魔道書を読みましょう」


 「でも、わけのわかんない文字で埋め尽くされていますよ~」


 日本語じゃないし、英語でもないから読めないよ?


 「いえ、魔道書は感じ取って読むんです」


 ・・・・・それって、勘のことかなぁ?


 「近いですが違いますね。まぁ、これはヒロシ君の方がうまくできたようですが」


 あ~。あれだね!

 本とリンクして夢の中で~ってやつ。


 「そうです。ま、気長にやりましょう」


 「は~い」


 「ぎゃぁぁあああああ!!!!!」


 どこか遠くから断末魔の叫びが聞こえるよ~。幻聴かな~?




―――side空志

 「やっぱり、これじゃダメなのかしら?」


 「だ、ダメ、です・・・」


 既に何回三途の川を渡りかけたのか・・・。

 一応優子さんは刀を鞘におさめたままやってくれているけど、アレだってものすごく痛いんだよ?下手な鈍器よりも痛いからね?それに、優子さん二十歳ぐらいに見えても本当はドラゴンだし、身体能力は非常に高すぎる。


 「う~ん。戦闘に余裕を持って魔法を使えるぐらいになれば、制御なんて簡単なんだけどね~。と言うか、それで十分なのよね。魔法で食べていこうと思わなければだけど」


 まぁ、確かに優子さんの言いたいこともわかる。

 それこそ、この人のようなハイレベルな戦いをできる人に余裕を持って魔法を使えるだけで十分な制御ができているとは思う。

 けど、ボクが使っているのは『魔法陣』。非常に大器晩成型な魔法。使いこなせれば超強いけど、使いこなすまでが大変って言う代物だ。


 「・・・やっぱり、やめる?」


 「・・・それはそれで、嫌です」


 「案外、頑固なのね」


 「よく言われます。特にリュウに」


 とりあえず、優子さんに断って準備をする。

 さっきまでは本の魔法陣が描かれたページに指を挟んで、攻撃するときにそのページをさっと開けるようにしたけど、正直、動きが速過ぎる優子さんには無意味。

 なら・・・。


 「準備、できました」


 「そう・・・・・・じゃぁ、行くぜ・・・!」


 この、キャラの変わりようが既に怖い。

 そんなことも言えないので、ボクはすぐさま魔法陣の描かれたページの一つに手を当て、魔力を込める。


 「魔法陣展開、≪鎌鼬カマイタチ≫!」


 緑色の魔法陣が展開され、そこから風の刃が放たれる。

 それを優子さんは手に持った刀で、いとも簡単に斬り裂く。このやり取りも既に何回やったのか覚えていない。そして続く第二波を放つ魔法を探しているときには既に終わっている。

 だから、探さない!


 「魔法陣展開、≪鎌鼬カマイタチ≫!」


 続けて放つ。

 けど、やっぱりその魔法も斬り捨て、ボクに刀を振りかぶる。ボクはガラ空きの横を転がるようにして抜け、背後の至近距離から魔法を放つ。


 「≪鎌鼬カマイタチ≫!」


 完全に相手の死角、とった・・・!

 そう思ったのもつかの間、次の瞬間には優子さんの姿がかき消え、風の刃は何もない空間を通り過ぎる。一瞬だけ何が起こったのかわからなかった。けど、次の瞬間には無理やりに理解させられた。

 後頭部にものすごい衝撃。

 そう、まるで長い、金属入りの棒にでも叩かれたかのような・・・。


 「ッ~!?」


 「ボケっとするな!敵は、あらゆる所から襲ってくると思え!」


 声にならない悲鳴を上げていると、案の定、ボクの背後から優子さんの声が。

 たぶん、あの距離から一瞬でボクの背後に回ったんだ。文字通り、眼にもとまらないスピードで。


 「それに、魔法を一つだけ使うんじゃ訓練の意味がない!これはどれだけ素早く、且つ、状況に適した魔法を放てるかと言う訓練だ!」


 優子さんはそう言いながらボクにもうひと叩き。

 目の前で星が散る。


 「い、いえす、まむ・・・」


 どっかの軍隊の鬼軍曹も真っ青な仕打ちにそいうことしかできなかった。

 けど、こうでもしないと魔法の連発ができない。だって、こんな複雑怪奇としか言いようがない魔法陣を完全に覚えてイメージするなんて、難しすぎる。

 何か、いい方法はないものか・・・。


 「・・・やっぱり、無理やりにでも魔法陣の『抽象展開』を覚えるべきね」


 依然として刀をその手に握ったままだけど、戦闘モードから戻ってきた優子さんにそんなことを言われる。


 「とりあえず、何事も反復練習よ。やってみましょう!」


 『えい、えい、おー!』とでも言いたげなノリでそんなことを言ってきた。


 「でも、そんな簡単にできたら・・・」


 そんなことを口で言いつつもボクは優子さんに言われたとおりにやる。

 まず、イメージを頭の中に。けど、これが簡単にできれば苦労―――。


 ―――術式のイメージ展開。

 ―――・・・イメージが確に定義されていません。

 ―――イメージの補助を実行。

 ―――視覚した情報より術式検索

 ―――・・・検索サーチ・・・該当ヒット

 ―――術式、起動ブート


 ―――なんて、しないよ・・・。

 そう思っていると、何故か頭がすっきりとしている気がする。まぁ、すっきりしている程度で魔法がうまく使えるなら、誰も苦労はしない。


 「―――魔法陣展開」


 ボクの体から何か温かなものがあふれ、それは水が流れるように体外へと排出される。そしてその水がボクの掌にの中で小さな魔法陣を創りだした。

 そこに現れたのは、緑色の魔法陣で、ついさっきまで使っていた≪鎌鼬カマイタチ≫だった。


 「・・・え?」


 「・・・どういう、こと?」


 ボクと優子さんの口から出てきたのは、困惑の言葉。

 おかしい、さっきまでは魔導書を使わなきゃ全然使えなかったのに、何で急に?しかも、ボクはあんまり暗記系の科目ほ得意じゃない、理数系の脳内構造のはず。・・・何故か国語だけが異様にできるのは秘密だ。

 いや、そんなことよりも・・・。


 「アレ?ボク、さっきまでは・・・?え?」


 「空志君、落ち着いて。さっきまでと何か違ったと思うことは?」


 「え?いや、特に・・・。強いて言うなら、頭の中がすっきりした程度かと?」


 「・・・それで魔法が使えるようになったら、誰も苦労はしないわ」


 ですよねー。

 いや、けどこれ以上は本当に何もしていない。


 「・・・魔導書の力とかは?」


 とりあえず、思いついたことを優子さんに話してみる。


 「どういうことかしら?」


 「いや、こういうのって小説とかだと、大抵は魔導書とか、キーアイテムのおかげだったりとか多いじゃないですか」


 ファンタジーなこの世界ならきっと大丈夫。

 そう言う小説的な展開があっても不思議じゃない。


 「それはないわね」


 ないらしい。


 「魔法って言っても、そこまで便利じゃないわ。空志君達は、火を起こそうと思ったらどうするかしら?」


 「とりあえず、薪を集めます」


 「・・・いきなり、サバイバルな方向に行くことに驚いたわ」


 ・・・おかしい。ボクはしごく普通なことを言ったはずだ。

 だって、まずは小さな乾いた木の葉と小枝を集めて、次に木の棒といい感じの大きさの木を持ってきて擦り合わせる。そして火種をゲットしたら木の葉に引火させて、次に小枝。そして少しずつ大きな枝に火をつける。これで火はつくはず・・・!


 「マッチ、使うでしょ?」


 「・・・はい」


 何で、ボクは文明の利器を使うと言う選択肢を選ばなかったんだろう?

 別にボクは山の中に済んでいるわけでもないし、原始人でもないのに・・・。


 「君達は『道具』を使って、私達は『魔法』と言う力を使って火を起こせる。その程度よ」


 「いや、十分すごいと思うんですけど?だってみんなが、優子さんの言う『魔法』っていう道具を持っているんですよ?」


 「けど、基本的にみんなはそれぞれ一つの『魔法』っていう道具しか持てないの。『火』の道具を持っている子は『水』の道具を使えないし、その逆も然りよ」


 「けど、それが使える道具もあるんじゃないですか?ほら、魔法の道具とか」


 「あるにはあるけど、ひどく効率が悪いわ。その人の魔力がなくなれば使えないし、一日に使える魔力も限られているわ。確かに、力が強ければそうでもないかもしれないけど、そんな人は一握り。・・・う~ん、どう言えばいいのかしら?」


 確かに今のボクの質問は、何でお空は青いの~って聞いてるレベルだしね・・・。

 ボクが逆の立場でも困ってしまうかもしれない。


 「・・・そうそう!ライター、これ見て」


 すると、優子さんはどこからともなく、数々のライターを取り出した。


 「・・・優子さん、ヘビースモーカーですか?」


 「いいえ、家では誰も吸わないわよ?」


 なら、何でこんなにライターを持っているんだろう。


 「これ?つい最近の子は、タバコ吸ってるのがカッコいいと勘違いしてるのよね。ちょっと、お話して取り上げているの。若い子がこんなものに手を出しちゃダメよ~って」


 「・・・」


 何故か、合掌してしまうボク。

 優子さんの口ぶりから、これは未成年から取り上げたものなんだろう。けど、どういった状況で未成年から取り上げる必要が出てくるんだろう?

 まぁ、ボクの精神衛生環境が悪化しないためにも話しを続けてもらおう。


 「これ、ライターはオイルいるでしょ?」


 「はい」


 「これが魔力。そして、こうして・・・」


 優子さんがえいと声を出しながら両手でライターの火をつける。その手つきはたどたどしく、本人の言う通り慣れていなさそうな手つきだ。しかも、『熱っ』と言う声も聞こえた。


 「・・・これが、私達の使う魔法の原理としましょう」


 「はい」


 「けど、ライターで水を出すなんて芸当はできないでしょ?」


 「・・・なるほど」


 まぁ、ライターの構造がそう言う風になっているんだし。


 「もっとちゃんとした原理は旦那の方が詳しいけど、大まかに言っちゃえばこういうこと。ライターと同じように、『火をつける』以外に使い道がないのよ。確かに魔法の道具は存在して、ある程度までなら『火』以外の魔法も使えるけど、それには余分にたくさんの魔力を必要とするわ。『火』を何か別の属性の力に変換するための術式に通さなきゃいけないなら、当たり前よね?」


 「・・・ようするに、魔法の道具は普通の魔法とは違って、もうワンステップ魔法を使うからですか?」


 「そうよ。だから、その分だけ魔力が多くなるの。まぁ、この部分はいいんだけど。私が何を言いたいかっていうのはね、要するに、魔法は属性に沿った力以外はほとんど使えないの」


 「・・・どういうことですか?」


 「だから、『火』の属性を持った人が『火をおこす』、『熱を生み出す』と言った魔法を使えるけど、『水を発生させる』、『冷気を生み出す』魔法は使えないのはわかってくれたわよね?」


 「まぁ、なんとなくは」


 「それで十分よ。そして魔導書を作ったのはお義父様。つまり、お義父様の力が使われているはずよね?」


 「はい。夢の中でもそう言ってました」


 「お父様に、そんな『他人に魔法の原理を強制的に理解させる』と言う力はないわ」


 「・・・」


 要するに、ボクが突然魔法陣による魔法を行使できたのは『魔導書』のせいじゃない。


 「じゃぁ、何が?」


 「・・・魔法陣は、≪鎌鼬カマイタチ≫だけが『抽象展開』できるようになったのかしら?」


 「・・・わかりません。とりあえず、やってみます」


 優子さんに指摘され、気になったボクも魔法陣を展開。

 すると、全ての魔法陣を展開することができた。しかも、ちらりとしか見ていない、上級レベルのものまでも使用可能になっていた。


 「・・・一体、何で?」


 「・・・ダメね。まさか、魔法陣は使えば使うほど覚えるのかとも思ったけれど、そうでもなさそうね。何十回しても私には使えないわ」


 そう、優子さんが風系の魔法陣を何回使っても全然できないのに、何故かボクだけはうまくできる。

 ・・・どういう、ことだ?


 「封印を破る力に、魔法陣を覚える力を持つ属性?そんなものが存在するのかしら?それと、空志君は本当に・・・『天空』の属性なの?」


 「・・・そんなすごそうな力、ボクの魔力量じゃあり得ないですよ」


 「・・・」


 優子さんは真剣な表情で考え事をしているのか、ボクの言葉も耳に入らないようだった。けど、本当にボクの力って・・・?


 「・・・とにかく、考えてもしょうがないわね。それに、もしもそれが空志君の力だとすれば、暴走すれば何が起こるか見当もつかないわ。何としても、制御を覚えましょう」


 「・・・はい」


 そして、優子さんが刀を構える。


 「じゃぁ、今度は『抽象展開』でやってきな。適当に揉んでやる」


 「・・・さっきまでのボクとは、違います!」


 魔法陣を展開し、魔法を放つ。

 さっきまでとは格段に違うスピード、そして魔法の展開速度。一切無駄のない、魔法。

 これが、魔王の使う魔法・・・!これなら、大魔神にだって勝てる・・・!




 「甘い!」


 「ぎゃぁぁぁぁああああああ!?」





 ・・・・・・そう、思っていた時期がボクにもありました。


作 「というわけで『優子さん教室』をお送りしました」

隆 「・・・オレは、何も突っ込まねぇぞ」

作 「まぁぶっちゃけますとね、頑張りましたよ。伏線張り」

隆 「言っていいのか!?」

作 「いや、だって絶対に分からないと思うよ?」

隆 「お前はなにがしたい!?」

作 「楽しくなればそれでおk!」

隆 「こいつに常識を教えてくれ!」

作 「というわけで次回、魔窟ネストに行こう!」

隆 「もう来てるけどな!?」

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