8話・PARTY
―――side龍造
「・・・面倒じゃ」
ぶっちゃけ、わしは行きたくない。
何が面白くて会議なんぞにいかにゃいかんのじゃ?
「何を隆介みたいなことを・・・」
「何でわしがこんなことをせにゃならんのじゃ?」
「お義父様が魔窟の魔王だからです」
十五年もほったらかしなんじゃぞ?
向こうのヤツらはわしが死んどると考えとるんじゃないのかのう?
「いえ、一応颯太さんが変わりに出席していろいろ説明してましたので」
・・・勝手に心を読むでない。
というか、颯太は後で今月の給料は減俸じゃな。
「シバきますよ?」
「・・・冗談じゃ」
まぁ、既に逃げられんしの・・・。
わしの目の前には大きな建物、というか、明らかに魔王城としか言いようのない城がある。
「久しぶりじゃな。・・・各国の魔王は?」
「私たちが最後です」
そうか、ならさっさと行くかの。
魔王の会合にの・・・。
―――side空志
「昨日も大変な目にあった・・・」
翌日、いつものように校舎でシュウ達と別れた後。
教室までの道のりを適当に話して歩く。
「まぁ、いつものことだ。」
「ソラ君ドンマイ。」
「・・・」
で、何故にリカサンは頬を風船のように膨らませて不機嫌なんでしょうか?
ボクは目でリュウに聞いてみる。
「さぁな」
そうか・・・わからないのか。
それならしょうがない。
ボクは教室に着くと、扉を開ける。
そして、目の前にはおびただしい数の銃。
それらの銃口は全てボクに向けられている。
「・・・どいて」
「「「ッチ!」」」
コレが最近のパターンだ。
まぁ、リカがボクになんかしない限り大丈夫だということがわかった。
でも、「殺せない」とか言わないで欲しい。
そして、クラスのみんなは適当に話をしだす。ボク等も席にとりあえずつく。
「そういや聞いたか?」
「あぁ、どうやら転校生というか留学生っぽいのが来たらしいな」
・・・あの双子か。
てか、龍造さんの権限で交換留学生かなんかの扱いにでもしたのかな?
「そいつらは李の知り合いらしいぞ」
「だが、三谷とも関係があって、昨日三谷はその双子の片割れに殺されかけたらしい」
すげ~。
何でそんなに正確な情報がわかるの?
「フッ・・・三谷っち甘いよ」
「突然現れて何を言い出すの?」
なんか突然キザなセリフとともに宇佐野さんが現れた。
「あれしきの情報、ワタシにかかればチョチョのチョイなのだよ」
「ものすごい全力で死語だよね」
その言葉を無視してウサギのステッカーが貼られた電子手帳を操作する宇佐野さん。
「・・・あの双子の年齢は十四の一つ下。・・・瓜二つだけど二卵性双生児で姉が香桜、弟が小狼。でも、精神年齢的には弟のほうが年上」
何でそんなことを知ってるんだろう?
てか、いきなりクール宇佐野さんにならないでよ。しかも、機械をいじるとこうなるんだね。
「・・・後、昨日そっちの寮に泊まった際に、また騒動があったみたいだけど本当?」
「ホントにすごい情報網だね!?ボクのプライベートが心配になってきた」
「・・・今回の新作魔術符が欲しい。・・・ポケットの魔術符とか言うヤツ。」
「うぉい!?マジで!?そんなことまで!?」
昨日作ったばっかだよ!?
何で知ってんの!?
「・・・ッフ」
「その含み笑がものすごく怖い」
ボクがそんな風に言葉を返しているときに宇佐野さんは電子手帳を自分のポケットに仕舞う。
「まぁ、冗談はここまでにして」
「・・・アレが冗談?」
「で、本題はコレなのだ!」
バッとボクの目の前に一枚の紙を突きつける。
なんか書いてあるっぽい。
ボクはそれを手にとって読んでみる。
「・・・寮祭?」
「そう、寮生だけのお祭りのことなのだ☆」
「でも、何でボク?こっちの寮はリュウが寮長みたいなもんだよ?」
「だって寝てた。それにワタシは三谷っち二号になる気はないのだよ」
宇佐野さんが指で示しながら言う。
ボクは宇佐野さんの指の方向を見ると、そこには寝てるにも関わらずに女子に囲まれてハーレムを形成しているボクの悪友が。
・・・うらやましいヤツめ。
「・・・ソラ?」
「ん?な・・・に?」
リカに声をかけられてボクがそっちのほうを向くと、やたらとすごい量の魔力と怒気を垂れ流しているリカの姿があった。
「あれ?・・・三谷っち、目が?」
「・・・助けて」
でも、宇佐野さんはどっちかというと冬香に近い人間。
宇佐野さんは状況を理解したのか、ニヤリと笑うと。
「そういえば、三谷っちは女子になんか頼まれてたよね~」
え?そんなこと?
別にアレは猫がいなくなったから探・・・。
バキッ!!
「・・・リカサン?何故にシャーペンをへし折ったのでしょう?」
ガタ。
リカが幽鬼のごとく立ち上がる。
・・・ボク、なんかしたっけ?
「・・・ふ、ふふふ・・・あはははははははははははははははは!!!!!」
「何で!?何でリカは急にそうなるの!?みんな逃げ・・・って、早っ!?もう教室にはボクとリカの二人だよ!?」
「ソラ・・・覚悟はできてる?」
「いや、何を覚悟しろと!?」
「一生をアタシに捧げるか、今ここで苦しみぬいて死ぬか」
「なにその究極の二択!?前者はボクに奴隷になれと!?」
「・・・やっぱりソラにはわからないよね、やっぱりあの世で・・・」
何で!?
君はいつもなんでそういう発想に行き着くの!?
そして、リカの渾身の一撃が放たれる。
いつものボクなら魔法でどうにかするけど、今回は学校だからできない。
と、言うことは?
「ザ・死亡フラグ!?」
「ソラ、あの世で一緒に楽しく暮らそう?」
「いや、だからあの世に逝く時点で幸せじゃないぎゃぁぁぁぁああああああ!!!???」
―――side隆介
「ったく、眠ぃのにソラはせっせと死亡フラグ立てやがって。いや、立ててもいいがこっちを巻き込むな」
「まぁ、いつものことだよね~」
「・・・それが日常化してるのがおかしいと思うのはあたしだけ?」
「まぁ、ドンマイだな」
「そういう割りに田中っちの顔が満面の笑みを浮かべてるNE!」
教室からはドカ!とかバキとかグシャ!とか出てはいけない音が出ている気がするが、まぁ・・・大丈夫だ。たぶん。
時折悲鳴が聞こえてるしな。死んではいない。まぁ、虫の息かもしれんがな。
「あ、間クン、三谷っちにも話したけどコレ」
そういうと宇佐野はオレに紙を見せて寮祭のことを説明する。
まぁ、実は知ってたんだがメンドイから言ってなかった。
「ね~ね~。りょーさいって何~?」
「簡単に言うと、寮生でお祭りみたいなことをすんだよ」
「って、言ってもただのお遊びだけどね~」
「へ~。それっていつなの~?」
「放課後」
「じゃ、わたし達は大変だね~」
「何がだ?」
「だって、魔法の練習の後でしょ~?」
「そういやまだ言ってなかったな。ジジイとお袋は学校にいない。だから今日の午後は普通に授業を受けろだとさ。昼に言うつもりだったんだがな」
そん時は冬香にシュウもいるからな。
「じゃ、今日はお祭りに出れるね~!やった~!」
「でも、三谷君は別に死ぬような思いをする午後が無いのに無駄に今、死ぬような思いに遭ってるんだよね?」
「「「「・・・」」」」
多湖の言葉に何もオレ達は反応できない。
「ソラ~♡」
「し・・・ぬ・・・」
教室からやたらとエロいリカの声と、今にも死にそうなソラの声が聞こえる。
「・・・死ぬなよ」
心のそこからそう思った。
―――side空志
「・・・ここは?」
ボクはいつの間にか寝ていたようだ。
てか、ここってつい最近よくお世話になるあそこだよね?
ボクが上半身を起こすと、シャッと音を立てて颯太さんがカーテンを引いた。
「・・・やっぱり保健室ですか」
「まぁ・・・ちなみに君が一番よく利用してるよ」
今度からできるだけ気をつけます。
無理かも知れないけど・・・。
「今、何時ですか?」
「ちょうどお昼休みですね」
・・・リカはボクに相当な恨みがあるらしい。
「まぁ、それなら屋上に行けばみんながいると思うんで行きます」
ボクは床にあった上履きを履いて保健室を出て行こうとする。
「そういえば、今日の訓練はないことは聞いてるのかい?」
「え?そうなんですか?」
「ええ、まぁ。おそらく、屋上で隆介が説明するでしょう」
「じゃ、早く行かないと」
ボクはダッシュで屋上に向かうべく保健室の扉を開ける。
でも、何故か目の前には数々の銃口が。
「・・・みんな、錯乱でもしたの?」
「この野郎!アンジェリカさんに保健室につれて行ってもらっただろうが!?」
「万死に値する!!」
「よって死刑!!」
「最悪な裁判だよね!?」
どうも、今日は厄日らしい。
「お、来たかって、またなんでそんなに息が上がってるんだ?」
「いや、ちょっと運動を。・・・テロとリアル鬼ごっこするっていうヤツ」
「要するにいつものヤツだね~。ハイ、コレがソラ君の分だよ~」
「ありがとう」
「・・・」
何でリカはさっきから不機嫌なんだろう?
・・・アレか?やっぱボクに恨みでもあるのかな?
「ねぇ、冬香」
「あによ?」
冬香は紅茶を飲みながらボクに言う。
「いや、リカってボクに恨みでもあるのかな?」
「・・・それっていつぞやの休み時間の話?」
リュウが話したのかな?
いや、アレだけの修羅場だから耳に入らないほうがおかしいか?
「たぶんそれ」
冬香は少し考えるしぐさをすると、すぐに答えてくれた。
「ある意味そうかもしれないわね」
「マジか・・・」
ちょっとショックだ。
「おそらくソラさんが考えていることとは違いますよ?」
「え?違うの?」
じゃ、どういうこと?
「それより、話すことがある。いいか?」
リュウはそういうとボク等に今日の訓練のことを言った。
「今日は、ジジイにお袋は急用で今日は学校にいねぇ。つーわけで、今日は普通に授業に出ろとさ」
そういうとリュウは昼食を再開。
なんかすげー適当に終わった・・・。
「ん?・・・そういえばよく考えると、ボクはいつも死ぬような思いをする優子さんの訓練を受けなくていいのに今日は何故かリカに死ぬような目に遭わされたってコト?」
ボクの言葉にみんなは目をつつーっと逸らす。
・・・。
「リカ?」
「・・・ソラが悪い」
リカは何故か頬を赤らめてそっぽ向く。
「・・・何故に?」
「「「「その通りだと思う」」」」
「・・・理不尽だ」
「まぁ、そんなわけだから、今日は寮祭に参加しとけ。双子もな。・・・つかどこだ?」
「あぁ、あの二人ならどこかに行きました」
「アバウトね」
「まぁ、後でシュウ君が伝えれば問題ないよ~」
「で、実際には寮祭で何をするの?」
「お呼びですか~☆」
「「「「「「・・・」」」」」」
何でこうも宇佐野さんは神出鬼没なんだろう?
「実は、キャラが濃いくせに影が薄いからって作者さんが・・・」
「キサマ、ここでメタ発言か!?」
「ここでワタシの名を天下に轟かせるのだZE!!」
ダメだ、こいつは何とかしないと・・・。
「で、何で出てきたの?」
「寮祭について教えようってワタシの優しさサ!!」
「・・・では、教えていただけます?」
「モチ!まず、寮祭とは・・・チームを組んで競技をします!」
「へぇ~。で?」
「フッ・・・冬香っち。コレは君が好きな話だよ」
「だから何よ?」
「なんと!優勝すると景品or金一封!」
「わたし、やるわ!!」
ガシィっと手を握りあう成金ども。
でも、寮祭ってそんな豪華なものなの?
「おい。理事長はオレのジジイだぞ?」
「・・・なるほど」
それなら全てに納得できる。
ホントはしちゃだめなんだろうけどね。
まぁ、今は寮祭だね。
「で、ボク等は寮祭に出るはいいけど、何をするの?」
「さぁ?ジジイがオレ等にピッタリなヤツを選んだとか言って「ゴメン。急に腹痛で頭が痛い」・・・ベタな仮病はやめろ。それに、今回はやらねぇとかなり大変なことになる」
「・・・聞きたくないのですがちなみに?」
「特別ゲストでアリアが来るらしい」
「ゴメンね~。わたし急にお腹が痛くなったから外科病院に行ってくるね~」
「・・・鈴音、それは内科に行かないと治らない」
「あぁ、それにな、もし来なかったらあいつはヤバイ。主に社会的な意味で」
確かにヤバそうだ。
アレはもはや天才だけどそれ以上に天災だからね。
ボクには最悪な印象しかない。
「確かに社会的にマズい。でも、ボクは普通に参加しても死亡フラグな気がするのは何でだろう?」
「・・・ソラだから?」
「・・・ボクはリカに嫌われるようなことをしたの?」
リカは何故かフルフルと顔を赤くして否定。
相当怒ってる・・・。
「三谷っちが考えてることと確実に逆だとワタシは思うのだよワトスン君」
「ですね~。ホームズさん。わたしもそう思うよ~」
・・・このアホ丸出しのバカ二人は放っておこう。
まぁ、今日は寮祭を楽しみますか。