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DARK・MAGIC ~闇夜の奇術師達~  作者: 夜猫
2章 ≪学園編≫
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18話・DOGFIGHT

―――side隆介

 数刻ほど前に戻る。

 オレの視界が晴れる。

 そこはオレ達がよく知る場所。間学園のグラウンドだった。

 周りを見ると、そこは惨状だった。

 あちこちから火の手が上がり、学校もいろいろなところが壊れてる。

 だが、悲鳴なんかは聞こえない。

 おそらく、魔窟の魔物達がこの町の住人たちを既に避難させたんだろう。


 どごぉぉぉぉおおおおおおん!!!!!


 突然校舎から爆発音が響く。

 オレは反射的に音のしたほうを向いた。三階の一部の壁が吹き飛び、そこにいたのは多湖と田中だった。

 剣や斧といった近接武器を構えた軍服を着る何人かの人間に囲まれている。おそらくは敵だろう。


 「オイ!!あいつら避難してねぇぞ!?」


 「ちょ!?どうしよう~!?」


 「・・・わたしがこっちに注意向けるからシュウ。三人を保護して」


 「わかりました」


 「俺も行こう」


 「じゃ、数宝珠!・・・発射ショット!!」


 冬香は魔法機械デバイス、数宝珠を出すと、すぐさま氷の槍の弾幕で攻撃。

 すると、敵は突然の攻撃にうろたえる。

 その隙に、シュウと智也はかなりの距離があるにも関わらず、さらには跳躍して三階に到達。三人を引っ付かんで戻ってくる。

 ・・・こいつら人間じゃねぇ。


 「俺だけ何で引きずられてんの?!」


 「・・・気分だ」


 智也に連れてこられた田中が文句を言う。


 「シュウ君ありがとう。おかげで助かったよ。でも、お姫様抱っこは恥ずかしい」


 「では、次回から気をつけます」


 シュウは紳士のように多湖を地面に降ろす。


 「で、何でお前らは避難してない?」


 「あたしがエリアとみんなを守りながら体育館に避難してたんだけど、そうしたらさっきの状況になっちゃって・・・」


 「そうか・・・だが、無理はするな。ちなみに魔法はどうだったんだ?」


 「やっぱり今回も効かないよ」


 「俺も隙をみて殴ってみたんだができなかった。つか、一回魔法に当たりかけて死ぬかと思った・・・」


 「・・・アンタ、よく生きてたわね」


 「まぁ、ここはわたしの出番だね!みんな武器出して!」


 オレ達は坂崎に言われたとおり、武器を出す。

 そこに坂崎は魔力付与エンチャントを施す。

 コレで敵に攻撃が通るようになった。


 「・・・俺はここを守る」


 「よし、んじゃ、オレ達は町の敵をボコって来る。ま、その前にこいつらだけどな」


 その言葉と同時にオレ達の周りに円を書くように多くの敵が現れる。

 その数ざっと50か?

 オレ達は背中を合わせて敵に身構える。


 「シュウ、オレとお前は前衛だな」


 「もちろんです。ですが、リカさんとソラさんがいないのは辛いですね・・・」


 「でも、今のあいつじゃ無理よ」


 「お前バカだな」


 「なんですって~!?」


 「ソラ君は絶対に来るよ~」


 「てか、あいつは見つかったのか!?」


 「でも、何でいないの?」


 「何、ちょっとした休憩だ」


 「・・・いい加減にしろ。来るぞ」


 とか言うが自分から智也は敵に突っ込んでいくと、敵の障壁を切り刻む。


 「な!?」


 「遅い。≪クリア≫だ」


 すると、敵の装備を全部消滅させる。

 敵はインナーのみになる。そこを智也は剣の柄で首をたたいて気絶させる。


 「・・・いつみてもすげえな」


 「・・・あいつには負けるがな」


 智也はすぐに敵との距離をとってオレ達のところに来る。


 「何故だ!?」


 「俺たちには攻撃が通じないんじゃないのか!?」


 「・・・ふん。そんなものに頼るからお前らはダメなんだ。この俺がそれを教えてやる。『消滅の賢者』として」


 敵に動揺が走る。

 『消滅の賢者』。智也の通り名。炎の帝国最強を誇る魔導師。消滅属性を持つ彼の畏怖の名。

 向こうの世界で知らないやつはいない。


 「全員でありったけの魔法をヤツに放て!!」


 「・・・確かにいくら俺でも全部はどうにもできない。だが、お前等は勘違いしている。俺より先に倒さなければならないのがいる」


 「準備できたよ~」


 「・・・マイペースですね」


 「まぁ、それが鈴音だしね」


 「ま、とにかくやれ。オレ等のほうがヤバいってコトを教えてやれ」


 「おっけ~。≪反射結界リフレクション・エリア≫!」


 オレ達を囲むように半球状の結界が展開される。

 そして、雨のように膨大な数の魔法がこちらに放たれる。

 だが、それらはすべて正確に放ったやつの下に跳ね返されていく。


 「今だ!解除しろ!」


 その言葉と同時にオレとシュウが敵に突っ込む。

 オレは双剣で障壁を攻撃すると敵を気絶させる。


 「何だ!?こいつらは!?」


 「お前が知る必要はないな」


 「がッ!?」


 「すみません。後で薬を処方しておきます」


 ・・・お前はいつもそれだよな?

 だが、こいつはそこらへんの兵士より確実に強い。

 何人かがシュウの死角から魔法を放つがシュウはまるで目で見ているかのようにリバース魔力付与エンチャントされた手甲ガントレットでガードする。

 そして、中国拳法のような動きで敵を倒す。

 つえ~な。

 だが、他のやつらも負けてない。


 「発射ショット!」


 「エリア!!」


 水と氷の弾幕で冬香と多湖が敵の視界を潰す。

 田中はまぁ・・・アレだ。応援。


 「≪相殺空間アンチ・ディメンジョン≫!」


 坂崎が結界のようなものを張る。

 すると、敵の障壁は消えたようだ。


 「こっちも負けてられないな。・・・魔法剣≪斬黒ざんこく≫!」


 オレは坂崎が障壁を無力化したヤツに黒い斬撃を飛ばして気絶させる。

 ≪闇の刃ダーク・エッジ≫と違い、切れ味や威力、さらには斬撃の数をコントロールできるのがこの魔法剣の特徴だ。


 「死にたいやつからかかってこい!!」



―――side空志

 「・・・くちゅ」


 「あ~。寒いよね~。ボクはゴーグルにちょっとした細工をして寒くないようにしたからな・・・」


 町の上空。

 そこからボクは今の戦況を見ていた。

 魔物の魔力が200ほど。そして、人間の魔力が300。

 ・・・勝てる気がしないんですけど?


 「いや、ガントさんがいたら一騎当千かな?」


 「・・・でも、黒幕の人はあの人を倒せば終わるんじゃない?」


 「それがさ、見つかんないんだよね」


 ボクが視た限り、あの人の魔力はなかった。


 「だから、ボクはまずこの戦況をひっくり返す」


 「でも、相手に攻撃は通じないんだよ?」


 そう。そこが問題。

 でも、ボクは解析してわかったことがある。


 「うん。大丈夫。アレはそこまで万能じゃなかった。あの障壁は上級魔法までの威力にしか耐えられない。つまり、真言を使えば確実に潰せる」


 「・・・それって、一人数人しか倒せないじゃん」


 「でも、ボクならそれができる。真言は外部の魔力、つまりはマナをかなり使う。そして、ボクはマナを操れる」


 月の属性のおかげで。

 みんなを傷つけてしまったこの力で。

 今度こそみんなを守る。


 「でも、≪月夜ツキヨ≫は具現化マテリアライズの魔法でしょ?」


 ≪月夜ツキヨ≫は強い。それこそモノにできれば優子さんもヤバいと認めるほどに。でも、それは1対1にしか向いていない。


 「うん。だから≪月夜ツキヨ≫は使わない」


 「え!?・・・じゃ、真言で一気にできないよ!?」


 「・・・ボクの属性を忘れたの?」


 「え?月じゃないの?」


 「じゃ、見せてあげるよ。

 ―――其は・・・に属す法則!」


 ボクは詠唱を始める。



―――side隆介

 「・・・まだいんのかよ!」


 「・・・さすがに多いですね」


 敵で誰かが応援を要請したのかここには続々と人間が集まってきている。

 コレじゃキリが無い。


 「きゃぁぁぁぁああああああ!?」


 突然聞こえる甲高い悲鳴。

 この声の咆哮にあるもの、それは・・・。


 「「「「「「体育館!?」」」」」」


 ヤバい!?

 ジジイの結界があると思っていたんだが張ってなかったのか!?


 「シュウ!智也!田中!お前等は体育館に行け!」


 「何で俺「わかりました!」ってぇぇぇえええええ!?」


 「・・・」


 シュウが田中を引っ張っていき、智也は無言でここから離脱。

 だが、こちらはかなり戦力が下がってしまった。てか、前衛が俺しかいない。


 「う~。魔力がなくなってきてるよ~」


 そして、ピンチのお知らせ。

 坂崎の魔法は燃費がものすごく悪い。

 最下級魔法は普通の魔法使いでも何発も撃てるが坂崎の場合は数十発が限度。

 いくらソラが作った杖があるとはいえ、今回は対軍団用の魔法も数回使っているからな。


 「お前は今回の唯一の切り札だ。無理はするな!」


 「あ~、それは無理☆」


 ・・・やけにいい笑顔で言われてもな。


 「リュウ!アンタも根性見せなさい!発射ショット!!」


 「エリア!がんばって!」


 『きゅ!』


 そして、オレ達は懸命に戦う。

 だが、沸いて出てくる敵兵にオレ達は徐々に押され始める。


 「ハァッ・・・ハァ・・・」


 「リュウ君!大丈夫!?」


 「・・・大丈夫だ」


 魔力は特に問題はない。

 さすがのオレも精神的にまいってる。倒しても倒しても来る敵に。

 だが、それは全員同じだ。

 そして、オレが敵に突っ込もうとしたときだった。

 上からありえない魔力を感じた。

 全員が思わず上を見る。そこには、空を覆う超巨大な空色に輝く魔法陣が展開されていた。


 「なにあれ!?」


 「ったく。ホントにおせえよ」


 「普通に考えて真言ね。演出が派手ね」


 「まぁ、来てくれたからおっけだよ~」


 オレは敵との距離をとる。

 すると、空の魔法陣が一際ひときわ輝き、魔法が発動する。

 空がぐにゃりと歪む。それがもとに戻った瞬間に、空色の無数の槍が雨のように敵に降り注ぐ。

 それが敵に着弾すると、敵に小規模な嵐が発生し、雷や風が障壁を打ち破って意識を刈り取った。

 コレが天空の魔法か?

 オレは周りを確認すると、とりあえず左の腰にある剣帯に武器を収める。

 たぶん敵はいない。


 「コール、リカ・・・リカ。聞こえるか?」


 オレはピアスでリカに連絡を取ろうとする。


 『聞こえる』


 やっぱりこっちに来ていたか。


 「サンキュ。助かった」


 『それはソラに言って。ソラはみんなにあんなことして落ち込んでるから』


 「そうだな。・・・ま、あれはしょうがなかったんだ。誰も気にしてねぇよ」


 『そうだよね』


 「じゃ、ソラにこっちに来るように言え。ピアスを渡す」


 『わかっ・・・え!?リュウ!すぐに真言で迎撃して!』


 突然リカが切羽詰まった声で言う。


 「は?何を言って・・・」


 「きゃぁあ!?」


 「茜ちゃん!?」


 「発射ショット!」


 冬香が魔法で敵の視界を潰す。その隙に敵に捕まりそうになっていた多湖をオレは背後に庇う。

 いつの間にかオレ等の後ろに全身を黒い服で身を包んだ敵兵がいた。

 だが、オレは気配を感じ取れなかったぞ!?


 「・・・」


 無言でナイフを両手に構えるとシュウや智也並みの速度でオレ達に襲い掛かってくる。

 そうか、隠密系の伏兵か!

 さすがにオレはシュウほどのスピードを持ち合わせていない。

 コレはヤバい!


 「魔法剣≪黒針≫!」


 オレが魔法を発動させ、影から出てきた闇の針が敵を串刺しにしようとする。

 だが、それも障壁でガードされる。


 「チートだろ!?坂崎!」


 「・・・無理!速すぎて当てれない!」


 やべぇ。万事休すか?




 「リュウ!真言だ!」




 声が聞こえた。

 オレはその言葉を聞いた瞬間に魔法を紡ぐために相手を力の限り吹き飛ばし、オレ自身も下がることで距離をとる。

 そして、急いで詠唱を行う。


 「―――我、喚ぶは絶対なる闇の力。

     その力は全てを飲み込む。

     汝に畏怖と恐れを。

     闇の暴力に屈せ。

     今ここにその力を示せ。

     ≪終焉の黒エンデ・オブ・ブラック≫!!」


 魔法が発動。

 オレの背後に闇の壁が出現する。

 それはまるで生きているかのようにうごめく。それが敵に覆いかぶさる。そして、数秒ほどで闇が消える。そこには、泡を吹いて倒れる敵がいるだけだった。

 この魔法は、敵が魔法を放ってもその魔法を飲み込みさらには相手の魔力を浸食し、無理やり魔力を使わせる。すると、生命力をギリギリ残した状態でもう虫の息という状態の人間を作れる。そして、魔力が無理やり使われていくのがわかるため、恐慌状態に陥るやつが多く、精神的にもヤバくなる。

 てか、オレはこの魔法の加減ができねぇから嫌だったんだ。以前、敵にコレを使ったときは、くらったヤツらは精神的におかしくなって廃人の一歩手前まで逝った。・・・字が違う?いや、あってるぞ。リアルに逝きかけたからな。

 ・・・良いカウンセラーを探してくれ。


 「つか、二人とも遅えんだよ」


 「「・・・さーせん」」


 そこにはボードに乗るソラとリカがいた。



―――side空志

 またまた時は数刻ほど戻る。


 「―――其は天に属す法則!」


 ボクは掌を上に向けて言う。


 「え!?ソラは天空の真言もできるの?」


 「いや、今回が初めて」


 ボクは一旦詠唱を中断してリカに答える。


 「・・・詠唱を途中でやめちゃったら最初からだよ?」


 「え?そうなの?前に≪月夜ツキヨ≫したときはマナを固定させたら中断しても発動できたよ?それにほら。魔法陣も消えてない」


 リカが驚きの顔になる。

 ・・・そうか、だから前の魔窟襲撃のときに「ありえねぇ!!」って叫んでた人がたくさんいたんだね。


 「・・・さすがソラ」


 「・・・」


 とりあえず続けよう。


 「―――それは風と雷の嵐の魔法。

     嵐の力をもって全てをなぎ倒せ。

     災厄を、穢れを流せ。

     この手に空を!!

     ≪裂空衝破レックウショウハ≫!!」


 ボクの上に超巨大な魔法陣が展開される。

 ま、今回はそういう風に魔力を注ぎ込んだからね。

 そして、空がぐにゃりと歪む。それがもとに戻った瞬間に、空色の無数の槍が雨のように敵だけに降り注ぐ。

 ・・・たぶんね。

 ここからはよくわからないけど、敵の魔力反応から考えるにほとんどは気絶したみたい。


 「・・・以外に地味な真言だった」


 「アレのどこが地味なの!?」


 「え?だって、ただの天空属性の槍でしょ?」


 「アタシががんばって見てみたけど、着弾の瞬間に小規模な嵐みたいなのが敵をやっつけてたよ!?」


 ・・・想像以上にえぐい魔法だったのかもしれない。

 でも、さすが吸血鬼ヴァンパイア。視力もいいんだね。

 リカが何か言おうとした瞬間にその口が止まる。


 「聞こえる」


 ・・・あれ?

 それってそういえばボクが作ったピアスだよね?


 「何で持ってるの?」


 リカは手で待ってというしぐさをすると、ピアスの会話に集中する。

 ・・・ま、次はみんなに合流するか。

 ちょっと怖いけど。

 ボクはとりあえずリュウの魔力を探す。

 それはすぐに見つかった。

 学校のグラウンド。そこには他にもスズと冬香、インチョーがいるようだ。

でも、ボクはそこで違和感に気づいた。

 みんなの死角に知らない魔力がある。コレは人間の魔力だ。

 そして、魔法を使おうとしてる?

 敵か!!


 「リカ!リュウに真言使うように言って!背後に敵がいる!!」


 「え!?リュウ!すぐに真言で迎撃して!」


 ボクはリカのその言葉を聞いた瞬間に学校に向かってトップスピードで移動。

 なんかレオとリカの悲鳴が聞こえるような気がするけど気にしない。

 すると、すぐにグラウンドが見えてきた。

 リュウは真っ黒い敵に苦戦してるようだ。


 「リュウ!真言だ!」


 リュウは相手との距離をとると、すぐに詠唱を始めた。


 「―――我、喚ぶは絶対なる闇の力。

     その力は全てを飲み込む。

     汝に畏怖と恐れを。

     闇の暴力に屈せ。

     今ここにその力を示せ。

     ≪終焉の黒エンデ・オブ・ブラック≫!!」


 魔法が発動。

 ボクはその魔法を無意識に解析すると、えげつないことがわかった。

 敵に同情するよ。

 そして、リュウは疲れた顔をすると、ボク等の方を向いてこう言った。


 「つか、二人とも遅えんだよ」


 「「・・・さーせん」」


 ボクとリカはボードから降りて謝る。

 レオも地面に飛び降りる。

 そして、ボクは今までつけたままだったゴーグルを外し首にかけてみんなを見る。


 「・・・バカソラ」


 「ハイッ!」


 ボクは冬香に話しかけられる。

 なんかものすごい恐怖を感じる。


 「後で、文句をたっぷり言うから覚悟しときなさい」


 「三谷君・・・よかった、無事で」


 「ソラ・・・ふんっ!」


 バシッ!


 リュウに思いっきり殴られた。


 「オレはこれで十分だ。だが、オレ等を助けてくれてありがとう。そしてお前の忘れもんだ」


 そう言うとリュウはボクに月の模様が描かれたピアスを投げる。

 ボクはそれをキャッチする。

 掌にあるピアスとみんなを見る。


 「大丈夫だ。お前はオレ等を傷つけてなんかない」


 ボクは思わず涙が出そうになった。

 でも、なんとなく泣くところを見られたくなくてこらえ、ピアスを右耳にはめる。


 「みんな、ゴメン。そして、ありがとう」


 「うぅ~。よがっだよ゛~」


 「ちょ!?スズ!?」


 今まで静かだと思っていたら泣いてたようだった。

 ボクはどうしようと思って、とりあえず慰めようと頭をなでてみる。


 「うん。ホントにゴメン。もう、ボク一人で抱え込まないから・・・みんなにも頼るから。だから、泣かないでよ。ボクは笑顔の方が好きだよ」


 「・・・うん」


 まだ、涙でスズの顔が濡れていたが、そう答えた表情は笑顔だった。

 ボクやみんなが思わず笑顔になる。


 「・・・ソラ?」


 そして、後ろから地獄の底から聞こえるようなドスの利いた声で全員の顔が引きつった笑顔に早変わり。


 「・・・リカサン?ドウシタンショウカ?」


 リカだった。

 てか、いつの間に鎌を構えたの?

 って、スズに向かって突撃態勢をなんで取るの!?


 「ふふふふふふふふふふ・・・・・・・・・・鈴音は信じてたのに・・・」


 「りりりりりり、リカちゃん!ち、違うよ!これは、その!?」


 「問答無用!!」


 「いや、ダメだろ!?≪月守ツキモリ≫!!」


 「キャァァァァアアアアアア!?」


 ガキンッ!


 ボクはとっさにスズの盾になる。

 てか、前の時みたいにすごい力ですね!?


 「やっぱり、ソラも・・・ふふふふふふふふふ・・・・・・・・・・ソラを殺してアタシも死ぬ!!」


 いや、なんか全力でものすごい勘違いをしているよ!?

 って、スズ!なんで君はそんな安全地帯にいるのかな!?


 「・・・・・・・・・・ソラ君なら大丈夫」


 「リュウ!!冬香!!インチョー!!助けて!!」


 そう言うと三人はやたらといい笑顔で親指を立てて同じことを言った。


 「「「お前のことは忘れない!!」」」


 ちょぉぉぉぉおおおおおお!?


 ビシィ!!


 「ぎゃぁぁぁあああああ!?また盾にヒビが入ったぁぁぁぁああああああ!?」


 「ははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!あの世で幸せに暮らそ!ソラ!」


 無理だから!

 あの世とか逝く時点で幸せじゃないから!!

 ボクの悲鳴とリカの哄笑が夕暮れの学校に響く・・・。


 「いやぁぁぁぁぁああああああああ!!!???」


 「あははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!」


 「・・・大丈夫かな?」


 「ソラだし大丈夫だろ」


 いや、さすがコレは無理な気がするよ!?



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