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DARK・MAGIC ~闇夜の奇術師達~  作者: 夜猫
2章 ≪学園編≫
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17話・COURAGE TO STAND UP 

―――side空志

 いつの間にかボクはリュウの家にいた。


 「・・・・・・・、・・・・」


 優子さんがいて、何かを言われる。でも、ボクには届かない。

 リカがボクをリビングのソファに座らせる。

 レオがボクを見ている。

 でも、ボクは何も感じない。


 「・・・・・、・・・」


 今度はリカがしゃべる。でも、ボクには届かない。

 ただ、前を見る。

 ・・・・・。

 ・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


 ポタ・・・・・ポタ、ポタ。


 ボクのズボンに水滴が落ちる。

 気づくと、リカがボクの横に座っていた。そして・・・。



 泣いていた。





―――sideリカ

 ソラは何を言っても全然反応してくれなかった。

 アタシはソラの隣に座ってソラに話しかけている。


 「ソラ君はどうしたの?」


 そう尋ねるのはアタシの隣に座った優子さんだ。

 あまりのソラの変わりように驚いた表情をしている。


 「・・・アタシ達が止めたから」


 「どういうこと?」


 「ソラは・・・ソラはアタシ達を守るために離れたの。でも、ソラもアタシ達から離れたくないのに行方をくらまして・・・。アタシ達がそうとも知らずに無理やり連れ戻したから・・・。だから、もう、どうすればいいのかわからないんだと思う。アタシ達、ソラを探さないほうがよかったのかな?」


 優子さんはアタシの話を聞くと、ゆっくりとこう言った。


 「私にはわからないわ。でもね、コレだけはいえる。みんなは、ただ、ソラ君のためにそうした。ソラ君もみんなのためにそうした」


 「・・・まるで、三銃士みたいですね」


 一人はみんなのために、みんなは一人のために。

 三銃士の有名なセリフだ。


 「でも、それが仲間、でしょ?」


 優子さんはそこで話を切り上げ、立ち上がる。


 「さて、リカちゃんはソラ君のために何ができるのでしょうか?」


 そういうと、優子さんはリビングから出て行った。

 レオも優子さんについていった。

 ここに残されたのはアタシとソラだけ。


 「・・・ねぇ、ソラ。ソラは、いつもみんなを守ってるよね?」


 ソラは答えない。でも、アタシもあきらめない。アタシの声を、そして、みんなの気持ちをここでソラに伝える。それが今のアタシにできるコト。

 アタシは話しかけ続ける。


 「一人で、いつもみんなを守ってる。たぶん、みんなのために。でもね・・・」


 自然とアタシの目から涙がこぼれる。


 「ソラが一人で抱え込んで辛いと、アタシ達もつらいよ・・・」


 そのときだった。

 ソラが、やっとこっちを向いてくれた。


 「ボクのことはほっといてくれ」


 出てきた言葉は残酷だった。

 でも、アタシは諦めない。



―――side空志

 「・・・何で?」


 リカが尋ねてくる。


 「・・・」


 傷つけたくない。でも、そんなことを言えば絶対に近寄ってくるのは目に見えていた。でも、だからといって、ボクには相手を傷つけるような言葉が思いつかなかった。

 だから、ボクは黙るしかなかった。


 「傷つけたくないから?」


 「・・・」


 ボクは答えない。いや、答えられない。


 「だから、さっきのところで・・・自分の属性のことを調べてたの?アタシ達を傷つけないために」


 「・・・」


 「だから、アタシ達に何も言わずに「黙れ!!」」


 ボクは叫んだ。


 「怖いんだよ!みんなを傷つけるのが!!だからボクは一人だけでこの力を調べようと思った!!ボクはあの時暴走した!!あんな惨事になった!!下手したらみんなが死んでた!!ボクのせいで!!」


 「・・・ソラの・・・バカ!!!」


 リカが抱きついてくる。

 そして押し倒される。


 「何で!?何でそんな風に考えるの!!心配したんだよ!!みんなも!!別にしょうがないよ!!暴走なんて誰にも予想ができないんだもん!!」


 ボクはリカを思い切り押し、逆に押し倒す。


 「この力は謎だらけなんだ!!あれからこの目が解除できない!!ボクにも把握できていない!!だから!!ボクはまたみんなを巻き込みたくなかったんだよ!!みんなには笑ってて欲しかったんだよ!!ボクは傷つくのは構わない!!でも!!みんなだけは嫌だ!!この力はみんなを守るためにって!!あの時誓ったんだ!!」


 ボクはそう叫ぶと、リカから体をどかしてここから出て行こうとした。

 でも、できなかった。

 リカがボクを優しく抱いてたから。まるで、子供をあやす母親のように。


 「・・・離せ」


 「何でソラは自分のことを考えないの?」


 そんなつもりはない。ボクはそう思った。


 「いつもそう。ソラは時々、自分の事なんかお構いなしで誰かを助ける。そんなソラが好き。でも!!アタシ達は巻き込まれてなんかいない!!それにあれはしょうがなかったの!!ソラが優しかったから・・・だから怒って、偶然そうなっちゃっただけ」


 リカの抱きしめる力が強くなる。


 「アタシ達だってソラには笑ってて欲しい!暴走が怖いならアタシ達が止める。傷つけたならその重みをアタシ達も背負う。絶対にソラを一人にしない。少なくともアタシはそばにいる。だから、約束を守ってよ」


 どこかで聞いたことのあるような言葉を言うリカ。

 ボクは何故かその言葉が自然と自分の中に染み渡っていくのを感じた。


 「・・・約束?」


 「アタシを一人にしないで」


 「・・・何でだよ。怖くないの?」


 わからなかった。

 何で、ボクはみんなを傷つけたのに。


 「ソラは優しい英雄ヒーローなんだよ。アタシ達が一番よく知ってる」


 何だよソレ・・・。

 いったい、いつの話なんだよ。ホントに。

 なんか視界がぼやけてきた。


 「う、ぅぅぅぅぅぅ・・・・・。あ・・・」


 ボクはもう、みんなには怖がられているのかと思った。

 あんな力を目の当たりにして、みんなに怖がられるのが嫌なだけだった。

 だから、ボクはみんなから離れた。

 それに言い訳が欲しかっただけなんだと今気づいた。

 ボクは落ち着くと、最初に言わなきゃいけないことを言った。


 「・・・ゴメン」


 「・・・後でみんなに怒られよう」


 「そうだね」


 そういうと、見つめあうボク達。


 「・・・」


 「・・・」


 ・・・・・。

 ・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・・・・今考えるとこの状況はまずくね?

 まず、ボクがリカを押し倒していること。

 次に、周りには誰もいない。

 さらに、若い男女が二人きり。

 距離がなんと20センチあるかないか!!

 顔が全力で近いです。

 って、目を閉じないで!!

 なんか確実にそういう雰囲気になってるよ!!

 レオ!!

 ・・・・・。

 って、いなかったぁぁぁぁああああああ!!!!!

 援軍は!?

 てか、このまま雰囲気に流されてもいいの!?

 確かにリカは美人だけど!!

 それこそ、十人いれば十五人ぐらい振り返るかもってレベルで!


 「・・・・・・ソラ」


 「!?」


 その言葉で、なぜかボクは引力に引かれるようにリカの顔にボクの顔が近づいていく。

 ボクはリカとの距離をつめていく。

 ・・・・・10センチ・・・・・5センチ・・・・・3セ―――。




 バタァァァァアアアアアアン!!!


 「うちのバカ孫はここかぁぁぁぁああああああ!!!???」




 突然、間家のリビングに誰かが突撃してきた。


 「にょわぁぁぁぁああああああ!!!!?」


 「~~~~~~~~~~!!!!?」


 ボクとリカはお互いに一気に離れる。


 「「今、ボク(アタシ)は何をしようと?」」


 あ、危ねぇ!!

 危うく・・・うん、まぁ、あれだよ。

 リカは何で残念そうな顔なんだろう?


 「・・・すまん。ワシは出て行く」


 「いや、全力で勘違いだから、じいちゃん」


 「じいちゃん?」


 「そう、この人がソラ君の祖父」


 いつの間にか現れた優子さんが説明。


 「ワシが三谷隼人みたにはやと。空志、通称ソラの祖父」


 「えぇぇぇぇええええええ!!!???」


 リカの絶叫が響く。

 うん、こんな元気いい人がおじいちゃんなんてびっくりだよね。


 「何で、ここに勇者がいるの!?」


 「・・・は?」


 ボクの耳がおかしくなったのかな?


 「ソラ君のおじい様はね、実は七十年ほど前に魔窟の魔王討伐を命じられた人なのよ」


 ゑ?

 マジで話についていけない。

 いや、昔になんか言ってた気がする。ボクが小学校とかの時。


 『ソラ、じいちゃんはな、勇者なんだ』


 『へぇ~。じゃ、魔王とかをやっつけるの?』


 『いや、みんなが笑顔になれることだな』


 『へ~。じゃ、ボクが大きくなったらじいちゃんの手伝いをするよ!』


 『そうか、楽しみにしとるぞ?』


 ・・・・・。

 言ってたぁぁぁぁああああああ!!!???


 「マジかよ!?」


 「そのとおり。ヤツとは昔から拳で語り合う仲だな」


 「龍造さんが言ってたのはそういうことかよ!?」


 「その通りじゃ!」


 ブンッ。

 ガン!ガン!ガン!


 「相変わらずバカ丸出しだな、龍造!」


 「おぬしはやたらと力が弱くなったの。そろそろ老衰で死ぬのかの?隼人よ」


 「ふん。コレはウォーミングアップだ」


 方や、結界魔法ですべての攻撃を無力化する魔王。

 方や、己の拳で魔王に必殺の一撃を与えようとする勇者。

 この突然始まった意味不明な戦いは素人目に見ても確実に他者が介入して止められるものではない。


 「いい加減にしなさい」


 「「ごば!?」」


 そして、それをいとも簡単に止める魔王と勇者を遥かに超える大魔神。

 ・・・ここはどうも異次元のようだ。


 「・・・ソラ、訓練お疲れ」


 「・・・ありがとう。これからも必死にがんばるよ」


 死なないようにね。


 「で、何でじいちゃんが?」


 「決まってるだろ」


 そう言うとじいちゃんはボクのほうを向いてこう言った。


 「そこの譲ちゃんとソラの息子を「≪雷燕ライエン≫!」ぎゃぁぁぁぁああああああ!?」


 このクソジジイは何を言い出すんだ!?


 「リカもなんか言ってよ!」


 「子供は・・・二人がいいかな?」


 うぉい!?

 顔を赤らめて何を言い出すの!?


 「隼人さん。そろそろ本題に」


 「わかった。わかったからその日本刀を仕舞ってくれ」


 やっと、まじめな話か。


 「簡単に言うと、かなりまずい状況だ」


 「何が?」


 「お前は知らんのか!?向こうの間学園とその周辺が襲撃されとるんだぞ!?」


 「・・・起動!」


 ボクは飛翔盤フライングボードのカードを取り出して展開。

 足元のボードに飛び乗ろうとする。

 でも、優子さんに阻止される。


 「行かせてください!!」


 「まずは話を最期まで聞きなさい」


 ボクは優子さんをどうこうできないのでおとなしくボードを仕舞う。


 「・・・何がまずい状況なんですか?」


 「有り得んのじゃ。こちらの攻撃が効かずに、向こうの攻撃だけがこっちに来る。そしてな、全員が多くの属性の魔法を使ってきとる。最低でも自然元素系の四つをな」


 「「え!?」」


 驚いたのはボクとリカだ。

 だってありえない。

 属性は基本的に一人一つ。たまに二つとかがいる程度だ。

 自然元素系、つまりは火、水、風、土をすべて持っているのはそれこそいても一人いるかいないかのレベルのはずだ。それが何人もいるのはありえない。

 いや、思いつくことが一つだけある。もし、ここ最近の事件の黒幕が絡んでるのだとしたら・・・。


 「・・・例のカード」


 「それしか考えられん」


 「カードはどこに?」


 「?・・・ログのヤツが解析中じゃ。一枚わしが持っとるがの」


 そういうと龍造さんは例のカードを取り出す。

 それをボクはひったくるようにとる。


 「ボクが解析します。今すぐに。コアの解析・・・」


 核の解析アナライズ・コア

 これはボクが暴走状態になってからできるようになった。

 簡単に言うと、コレは対象の魔法の魔法構成プログラムを視る。おそらくは≪月詠ツクヨミ≫が強化されたんだろうと思う。魔法は発動すると、プログラミングされたとおりに動く。あるいはそういう効果を発揮させる。核とは、そのプログラミングされたことが書いてある命令書のようなものだ。では、その核が破壊されたらどうなるのだろうか?答えは簡単だ。魔法の核がなくなるということはその魔法自体が・・・・・なかったことになる・・・・・・・・・。だから、核を壊せば魔法は消える。そして、核を視れればどんな魔法・・・・・だったかわかる・・・・・・・


 「・・・解析完了」


 ボクは核をつかむとそれを紙のように広げた。


 「「なんじゃそりゃぁぁぁあああああ!?」」


 「「さすがソラ(君)」」


 「・・・ボクは人間です」


 よくわかんないけどみんなにも見えるらしい。

 ボクは魔法構成プログラムを視てみる。


 「・・・やっぱりか」


 「どういうコト?」


 リカが尋ねてくる。


 「止めないとダメだ」


 「そんなのはきまっとるじゃろ」


 「違う!コレを使ってる・・・・・・・人たちに使用・・・・・・をやめさせるんだ・・・・・・・・!」


 「どういうことだ?」


 ボクは最初にここに来てスズが倒れたときのことを思い出す。

 魔力は生命力に近い・・・・・・ものがある。


 「コレは、生命力を削って魔法を使用可能にする魔道具だ」


 「「「「な!?」」」」


 「だからかわからないけど無理やり他の属性も使えるようにプログラムされている」


 生命力には属性が無い。たぶんそういうことだろう。

 だから、カードで何とかできる。

 今回の目的はこのカードの実験。実用段階まで持っていけるかどうかだったんだろう。

 だから、危険地帯・・・・だということ・・・・・・になっているこの町での実験が効果的だとふんだんだろう。

 でも、コレを使い続けるのはまずい。


 「最悪、死者が出る。その前にカードを破壊しないと!」


 ・・・あれ?

 なんかみんなが笑ってるよ?


 「ソラ、おぬしはそれが一番お前らしい」


 「ワシからしてみたらお前は昔のワシより勇者らしい」


 「ソラ君。あなたは大丈夫。誰も傷つけてない。今も敵ですら助けようとしているのよ」


 上から龍造さん。じいちゃん、優子さんの順でボクに声をかけてくれる。


 「ソラ」


 「みゃ~」


 「ソラはソラが正しいと思う道を進めばいいんだよ。そうすればみんなが笑顔になれるから」


 「・・・ボクはそんなにすごい人じゃないよ」


 それは自分が一番よくわかってる。

 でも・・・。


 「でも、少なくとも近くにいる人ぐらいは助けたい」


 「それでいいんだよ。少なくともアタシ達は笑顔になれる」


 そっか。


 「よし、それなら行こうか。今回、レオは体力温存で。リカはボクとこいつに二人乗り」


 「みゃ」


 「りょーかい!」


 ボクはまたボードを展開。

 そして、レオはボクの後頭部。ボクはボードに乗り、その後にリカを乗せ、ボクに掴まらせる。


 「知っとるか?ボードは免許がいるんじゃぞ?」


 龍造さんがにやけた顔で言う。

 ボクは顔に不適な笑みを浮かべて言う。


 「無免許運転は高校生の特権だよ。じゃ、≪風門フウモン≫」


 風が巻き起こる。風が収まると、そこはボク等の町の上空。


 「じゃ、今回も黒い勇者アンチヒーローといきますか」


 「でも、ソラがしようとしてるのは、たぶん勇者ヒーローだよ?」


 「ま、とにかく行くよ。しっかりと掴まって」


 ボクは一気にボードをトップスピードにもって行き、空を駆け抜ける。



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