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DARK・MAGIC ~闇夜の奇術師達~  作者: 夜猫
2章 ≪学園編≫
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16話・MIXED FEELINGS

―――side智也

 「これも違う」


 「・・・いい加減にしたらどうだ?」


 「まだ、あと少し。」


 こんな調子で一週間。

 ずっと自分の属性を調べ続けている。

 この地は俺の出身地バグニール、通称『炎の帝国』で知られている。

 この地は活火山が多く、年に数回山が噴火する。しかし、鉱石等がよく取れ、上質な武器等が作られる。ここが帝国と呼ばれるゆえんだ。

 そして、ここはそのバグニールの図書館。

 俺はここで月の属性の古文書を偶然見つけた。

 だが、なぜか見つかっていない。


 「・・・おそらく、借りられたんだろう」


 「・・・なら、首都に行く」


 「ここにないから首都にあるとは限らんぞ?」


 「いい。首都の図書館は本が読めるの?」


 「俺の地位はそれなりに上だったからな。おそらくはお前を俺の弟子とか偽れば大丈夫だろう」


 「なら、行こう」


 そのときだった。

 突然大きな声が響いたのが。


 「いた~!!!」


 「!?・・・何でここが?」


 「・・・俺が休んだのがバレたな。どうする?」


 「ソラ君!逃がさないよ!」


 坂崎鈴音、といっただろうか?

 ショートカットの髪にどことなく天然な空気をかもし出している。


 「逃げる。魔法陣展開」


 そう言うと三谷は魔法陣を展開する。

 これはポケットの魔法か・・・。

 そこから金属のカードを一枚取り出す。魔術符だ。


 「起動」


 そう言うと魔術符が起動。

 三谷の手からカードが飛び出すと地面で大きくなって人が一人乗れるボードのようになる。

 三谷がそこに乗るとボードが浮いた。

 浮遊盤ホバリングボードか。だが、これは初めて見る。


 「智也さん」


 「・・・俺は男に掴まる趣味はないんだがな」


 そう言いつつ俺は三谷の後に乗る。


 「行きます」


 その言葉とともにロケットスタートをする。


 「こ、これは軍用モデルよりも速いぞ!」


 「ボクがスピードのみを追求して作ったから」


 本棚と本棚の間を疾走していく。


 「来たわね!」


 「そうですね」


 まるで待ち構えていたかのように少女と少年がいた。

 平地冬香と李樹リー・シュウ


 「―――大地よ、彼の者を捕まえろ!

     ≪大地の御手ガイア・ハンド!≫」


 地面から轟音とともに土でできた巨大な手が俺達を捕まえようと迫ってくる。


 「掴まってて」


 そう三谷が言うと、ずっとつけていた銃を土に向ける。


 「コアを解析。装填チャージ


 そして引き金を引く。

 すると、ただの魔力の弾丸のみで土の手を破壊。土煙が舞う。


 「どこまでチート化したの!?」


 「ま、私がいますがね!!」


 煙の中からリーが出てくる。だが、そこには俺達はいない。


 「それぐらい、ボクも読んでたよ」


 「な!?」


 リー下からこちらを・・・・・・・見上げて驚く・・・・・・

 そうだろう、本来、浮遊盤ホバリングボードは地面すれすれで滑空する乗り物だ。

 だが、これは空を飛んでいた。


 「これは飛翔盤フライングボードだよ」


 そう言うと入り口に向かって再び空を駆け抜ける。

 そして、外に出た瞬間だった。


 「待ってたぜ。≪鎖の闇輪舞チェイン・ダークネスロンド≫!」


 突然、魔法が放たれる。三谷は知っていたのか上空へ逃げようとするがボードの一部が捕まって動けなくなってしまう。


 「・・・リュウとリカにレオか」


 「ソラ・・・」


 「みゃぁ~」


 「どうする?」


 俺はボードから降りつつそう聞いた。

 三谷もボードから降り、ボードをカードに戻して自分のポケットに入れる。


 「・・・智也さんの転移で例のところに逃げる」


 「俺は行ったことが無いからな。無理だ」


 「・・・」


 「イェイ!」


 「ちゃんと捕まえなさいよ!」


 「いえ、私たちに言う資格はないと思うのですが?」


 全員がそろってしまったようだ。


 「オレ達から逃げるんなら全員気絶でもさせないと無理だぜ?」


 「あきらめろ。お前の負けだ」


 「・・・嫌だ」


 三谷はゴーグルで顔が隠れてわかりづらいが悲痛な顔でそう言った。

 そして、銃を構える。


 「・・・俺も最善を尽くそう」


 俺も剣を構える。


 「・・・全員、構えろ」


 「でも~!!」


 「アタシがソラをする。できればアタシだけで」


 「大丈夫なの!?」


 「そうですよ!ソラさんですよ!?」


 「・・・オレ達は智也だ。やるぞ!!」


 その言葉とともに全員でかかってきた。



―――side空志

 ボクの目の前にはリカが立っている。

 何でこうなったんだろう?

 ボクはみんなを傷つけたくなかっただけなのに・・・。

 でも、今はみんなを傷つける立場にいる。


 「ねぇ、ソラ。もう、帰ろ」


 無理だ。それだけはできない。


 「みゃぁ~」


 「来るな!」


 ボクは銃の片方をレオに突きつけ、さらには銃に≪雷閃疾空砲ライセンシックウホウ≫を展開し、背後にも膨大な数の≪焔鳥ホムラドリ≫と≪雷燕ライエン≫の魔法陣を展開し、けん制する。


 「レオ。下がってて。・・・アタシにさせて」


 リカがボクにゆっくりと歩いてくる。


 「来るな!!」


 ボクはもう一つをリカに向ける。

 すると、リカの足が止まる。


 「ソラ・・・」


 「ボクには目的がある。それを達成するまでは帰らない」


 そして、みんなを傷つけたくないから。

 それはボクの完全な自己満足だ。ボクは身体的にはみんなに傷を負わせていない。でも、精神的にとても傷つけている。

 わかっている。でも、ボクはみんなのもとに行けない。いや、行かない。


 「・・・」


 「来るなッ!!!」


 ボクはこちらに無言で歩いてくるリカに二つの銃口を突きつけ、背後の魔法陣をさらに展開させる。


 「何で?」


 リカがそうつぶやく。


 「何でソラは一人で溜め込むの?」


 傷つけたくないから。


 「うるさい」


 「アレはしょうがなかったんだよ」


 しょうがなくない。

 ボクはみんなを殺しかけたんだ。


 「黙れ」


 「アレは・・・本当はアタシが悪いんだよ」


 違う!!


 「黙れ!」


 「でも・・・」


 「ダマレェェェェエエエエエエ!!!!!」


 ボクは、魔法を放ち、銃を撃った。

 轟音が響き、土煙が舞う。


 ヤッテシマッタ。


 ボクは、みんなを傷つけないためにやったのに。


 「う・・・う、うあぁぁぁぁああああああ!!!」


 思わず声をあげてしまう。


 「シャレんなんねえぞコレは!!」


 声が聞こえた。

 土煙でよく見えない。でも、ボクにはわかった。

 魔力が視えた。

 それは漆黒の魔力。


 「さすがにヤバかったな」


 「・・・ありがとう」


 間隆介。闇の魔法使い。

 魔王の孫にしてボクの・・・悪友。


 「ここからはオレだ。リカは向こうの相手をしろ」


 そう言ってリュウは智也さんをさす。

 だが、リカは首を縦に振らなかった。


 「イヤ、アタシもこっちで「あいつ相手に戦えるのか?」・・・」


 リカは口を閉ざす。


 「・・・心理状況が無理だ。オレがあいつを殴って目を覚まさせる。お前は・・・オレの後方支援をしろ」


 「・・・わかった」


 そういうとリカは後に下がった。

 ボクとリュウが対峙する。


 「・・・そういうやオレとお前が殴り合いをするのは初めてだな」


 そう言いつつ、双剣を出現させる。リュウはなぜか両方共を左に吊っている。理由はボクにはよくわからない。


 「そうだね」


 ボクは右の銃を仕舞い、魔法をいつでも発動させれるようにする。


 「オレはお前をぶっ飛ばす」


 「・・・」


 ボクは何も言わない。

 そして、ボク等はまるで示し合わせたように戦い始めた。



―――side隆介

 「ハァ!!」


 オレが剣をソラにたたきつける。

 ソラは紙一重でかわす。

 だが、コレはヤツの精一杯じゃない。むしろ逆だ。

 最低限の動きでかわしている。

 さらに、間合いに入りこもうとしてくる。ソラの銃には銃身の下側に銃口から引き金までを刃が覆ってあり、接近戦もできる。そうすれば、オレのほうがリーチが長いがそれよりうちに入られたらソラが圧倒的に優位にたつ。そこでオレは後に思いっきりバックステップをする。


 「≪風火車輪フウカシャリン≫!!」


 「・・・ッ!」


 ソラが高速で突っ込んでくる。

 オレはとっさに二つの剣をクロスさせてガード。

 オレとソラのつばぜり合い。


 「≪暗黒の刺剣ダークネス・スピア≫!!」


 オレは魔法を発動させる。

 これは対象に影から無数の闇の針を出現させて串刺しにする魔法。

 だが、ソラはわかっていたかのように高速で動いて回避する。

 これは死角からの攻撃だ。普通は避けれない。


 「・・・≪月詠ツクヨミ≫か」


 「そっちの魔法は当たらないよ」


 最悪だな。


 「レオ!」


 後から声が聞こえると同時に獣の咆哮。

 光がオレの横を通り過ぎる。

 咆哮覇か。


 「≪月守ツキモリ≫」


 だが、強固な魔法陣の盾によって、防がれる。


 「・・・できればほっといて欲しい」


 ソラがそう言う。


 「できないよ!!」


 「できねーよ」


 オレとリカが同時に言う。

 こいつは忘れてる。


 「「仲間が苦しんでるのにほっとけるか!!」」


 だから、本気で行く!!

 オレがそう決意したときだった。

 突然だった。オレの武器が光りだした。



―――side空志

 何だ?

 突然、リュウの武器が光りだした。

 だが、すぐに光が収まる。

 リュウの武器が少しだけ短くなり、剣の腹に文字や記号が描かれていた。


 「・・・まさか、武器の進化!?」


 「いや、違うな。最適化だ」


 リュウがそう言う。


 「見せてやるよ。オレの奥の手をな!!」


 リュウが剣を構える。すると、魔力が剣に行き、魔力で刃を作り出した。

 そうとしか言えない。リュウの魔力が刃を覆ったかと思うと、そこから魔力が少し伸び、光る前の長さにまでなった。


 「なに・・・それ!?」


 「オレの奥の手」


 どうやら、魔力は可視できるレベルほど濃密なものらしい。

 リカの言葉でわかった。

 そして、さらにリュウが構えを取る。

 そして、ボクに向かって離れたところから・・・・・・・・剣をふってきた。

 すると、二つの黒い斬撃がボクに放たれた。


 「な!?」


 ボクには相手の魔法がわかる。発動のタイミングや攻撃範囲、形状、その他もろもろ。だが、リュウは魔法を使っているにも関わらず、ボクにはその攻撃がわからなかった。

 わかったのは魔法が放たれた後だった。


 「≪月守ツキモリ≫!!」


 ボクはガードをする。


 「まだまだだ!!」


 そういうとリュウはさらに魔法を放つ。

 今度は地面から双剣に纏わせている闇の魔力を伸ばし、それを鞭のようにしならせてボクに攻撃してくる。

 リカも驚いているようだ。


 「何だコレは!?」


 「・・・オレはな、詠唱が面倒でな考えたんだ」


 「「・・・は?」」


 ボクとリカは思わず間抜けな声を出してしまう。


 「だからな、詠唱をしない魔法・・・・・・・・を作った」


 「そんな!?魔法は威力や範囲、形状を詠唱や魔法陣で決めるはずだろ!?」


 「だからな、オレは詠唱の変わりになるものを考えた。それがコレだ!!」


 構えを取る。

 すると、魔法が発動、リュウの体を魔力が包み、リュウはそのまま突貫。

 ボクはとっさに銃の刃でガード。

 コアを解析してそれを打ち抜けば発動は止まる。


 「コアを解析・・・!?」


 コアがなかった。

 いや、あったけど、核がリュウ自身に・・・・・・なっていた・・・・・

 つまり、リュウを殺さない限り、魔法は止まらない。


 「そこでオレは、構えを詠唱の・・・・・・代わりにした・・・・・・


 「なッ!?」


 「魔法剣。それがオレの本気ガチだ!」


 リュウがさらに魔法を発動させる。


 「魔法剣≪影討ち≫」


 そう言うとリュウの姿が消えた。

 ボクは背後に違和感を感じ、右に飛ぼうとした。


 「終わりだ」


 リュウがボクの背後から心臓を狙って剣を構えていた。

 ボクの完全な敗北だった。



―――sideリカ

 リュウが唐突に変な魔法を使い出した。

 魔法剣とか言ってたけど・・・。

 リュウがソラの前から消える。

 だが、次の瞬間にはソラの背後にいた。


 「終わりだ」


 ソラは膝をついた。敗北を認めた。

 でも、ソラは今にも壊れそうな表情をしている。


 「・・・決着がついたな」


 いつの間にかあの歩く辞典とみんながこっちを見ていた。

 でも、みんなは今のソラの状態を見て何も言えない。


 「おい、行くぞ」


 「・・・」


 呆然としているソラ。

 どうすればわからないといった顔で、焦点の定まっていない目でリュウを見ている。


 「いい加減にしろ!!」


 リュウがソラの襟首をつかんで無理やり立たせる。


 「もういいだろ!?」


 「・・・」


 何も言わない。まるで、どこかに魂だけを置き忘れてしまったかのようだった。


 「心配したんだぞ!?全員、必死にお前を探してたんだぞ!!」


 「・・・傷つけたくなかった」


 ソラがぼそりとつぶやく。


 「ボクはみんなを傷つけたくなかったんだ!!」


 「だから!アレはしょうがないっつってんだろ!!」


 「しょうがなくない!!下手してたら殺してた!!ボクのこの力で!!守ると決めた力で!!龍造さんと誓った魔法で!!」


 血を吐くような、悲鳴のような声を上げるソラ。


 「・・・・・・ッ」


 奥歯をかみ締めるリュウ。

 何を言えばいいのかという顔だ。

 アタシ達は今わかった。

 ソラは、みんなが大切だからこそ行方をくらました。

 だからこそ、魔法を使ってみんなに攻撃してワルモノを演じようとした。

 アタシ達を守るために・・・・・・・・・・


 ~~~~~。


 ケータイのバイブ音。


 「何だよ!!」


 リュウのものだったようだ。

 リュウは乱暴にケータイを開いて通話しだした。


 「あ?・・・ここにいる。・・・なんだと!?だが、今のこいつは無理だ。・・・今すぐにオレ達が行く。・・・監視は置いていく」


 リュウはそういうとパタンと折りたたみ式のケータイを閉じる。

 そして、アタシ達のほうを向いて言う。


 「町と学校に敵襲だ」


 「本当ですか!?」


 「何でこんなときに・・・最低ね」


 「敵はしかもおそらくこっちの人間だ」


 「・・・ついに本腰を入れてきたか」


 「・・・・・ソラ君はどうするの?」


 「今のこいつは使い物にならん。だから、逃げないように監視をおく。一応、魔窟に連れて行け」


 「アタシがする」


 「・・・わかった」


 リュウは行くぞと言って、転移をする。

 そして、視界が黒に包まれる。

 視界がはれると、アタシとソラは広い道にぽつんといた。ここは魔窟のメインストリートだろう。それもリュウの家の前。

 みんなは直接向こうに戻ったのかいない。

 アタシは無気力なソラをつれて中に入っていった。



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