15話・INFORMATION
―――side龍造
「ジジイィィィィイイイイイイ!!!」
「何じゃ?」
初のわし視点じゃ。うれしいの。
メタな発言はここまでにしとこうかの。優子さんが睨んできとるしの。
突然、いつもの面々がここに突撃してきた。
いや、ソラがいない。そして、リカが呆然としている。
「大変なの~!」
「・・・鈴音ちゃんが言うと大変そうじゃなくなるの」
「黙りなさいクソ理事長」
「何故わしが罵倒されにゃならん!?」
「そうです。黙ってくださいアホ理事長。一大事です」
「だから何じゃ?」
「つか、ソラのバカはここにこなかったのか!?」
「隆介、とにかく落ち着きなさい」
優子さんは優しく諭すように言う。
だが、隆介はそれを聞き入れなかった。
「落ち着いてられるか!ソラがどっかに行っちまったんだよ!!」
そして、わしは隆介達からこのことの顛末を聞いた。
最悪じゃ。
こっちはボロボロ。敵には逃げられ。ソラもどこかに消え、行方不明。
「・・・探したのか?」
「探したに決まってるだろ!!リカもわかんねぇし、オレ等もいろんなところを探しまくったんだよ!!」
血を吐くような怒声を上げる隆介。
他の子たちも何かをこらえるように押し黙り、下を向いていた。
「・・・わかった。すぐにソラを探すように魔窟のやつらを呼ぶ。お主らは疲れたじゃろ?少し休め」
「そんなことできない!ソラは!!アタシのせいで・・・!」
そういうとリカちゃんは理事長室を飛び出して言った。
「あ!リカちゃん!!」
それにつられるように隆介以外の子達も走り去って行った。
「・・・隆介」
「おそらく、ジジイ達はオレ等に少しでも休んで欲しいだろう。だがな、それは無理だ。少なくとも、オレ等の気がすむまでやらせてくれ」
そういうと隆介は他の子達と同じように理事長室から走り去って行った。
「いいんですか?」
「・・・好きにさせておこう。今はそれしかできん」
―――side空志
「・・・ここか」
ボクはとあるところに来ていた。
ボクの目の前には大きな建物。
ボクは目には飛行用のゴーグルをつけ、目を見られないようにしている。
今のボクは明らかに異常だ。
少なくとも、原因がわかるまではみんなの所に帰れない。
「・・・本当によかったのか?」
「いい」
ボクは智也さんにそう言う。
何が?とは言わない。
「・・・・・・じゃ、いざというときはボクを殺して」
そして、ボクは目の前の建物に入って行った。
―――side隆介
アレから1週間が過ぎた。
ソラは、あの日から寮に帰ってきていない。
オレ等はあの後も必死に探したがどこにもいなかった。
そして今、オレは学校にいる。
「・・・三谷は今日も休みか?」
そういうのはクラスの男子。
手に持った突撃銃はおそらく朝の恒例行事のために持ってきたのだろう。
だが、学校の欠席よりある意味ヤバい事がある。
ソラにゾッコンなリカがとても暗くなってること。
窓側の席のその一角だけ誰も寄り付かない。
・・・ん?ついに男子が行ったか?勇者だな。
「アンジェリカさん!!」
「・・・」
ぼうっとしているリカ。
とても勇気を振り絞ってます的雰囲気な男子。
・・・あれだな。告白ろうとしてんだな。
「好きです!!」
・・・ベタだな。そして人前で堂々と言うな。だが、クラスのヤツは誰一人としてそいつに見向きもしない。
既に結果が見えてるからだ。これは今に始まったことじゃない。
三谷がいない。アンジェリカさんといい感じでできんじゃね!?という浅はかな考えの男子が何人も来ている。そして・・・。
「ムリ」
バッサリと切り捨てられる。目も向けられずに、すると、男子が何で!?とか言う。
「何で!?」
「・・・」
そして、再びぼうっとするリカ、そんな態度だから男子が怒る。
「あんなヤツのどこがいいんだ!?三谷なんかただの学校サボりじゃないか!!」
「総員退避!!」
「「「了解!!!」」」
オレの一言にクラス全員のヤツが教室の外に。
教室には男子とリカ。
「・・・なんだ?」
ガタ。
それはやたらと大きく響いた。
リカが席を立った音だった。
リカがゆらりと立ち上がる。
「リュウ君。一応聞くけど止めなくていいの?」
坂崎が聞いてくる。だが、オレの答えは決まってる。
「オレには無理だ」
ドカ!バキ!ガコン!ドス!バタ・・・・・・。
終わったようだ。
教室に入ると、そこには出てった時と同じように席に座って窓の外をぼうっと見てるリカ。その近くに大きなボロ雑巾。もとい、リカに告白った男子。
ソラの悪口を言うと必ずこの惨状になる。
・・・学校で死人が出ないためにも早くソラに戻ってきて欲しいと切に願った。
「お~し、席につけ。出席をとるぞ~」
ガントのおっさんがいつものようにやってきてSHR。が始まる。
「・・・っと。今日も三谷だけか・・・。じゃ、お前らは次の授業の用意して待ってろよ」
そう言うとさっさと教室から出て行く。そして、クラスが喧騒に包まれる。
いつもと変わらない。だが、オレ等の中では確実に変わってしまった日常だ。
レオはソラの部屋にずっと引きこもり、リカはずっと虚ろのまま。
他のやつらも心配している。スズは毎回必ずソラのメシを作り、冬香はソラの魔力を魔法機器等で感知しようと躍起になり、シュウは暇があれば周りのヤツにソラのことを聞いて回る。
だが、ソラは見つからず、手がかりすら無かった。
「間君。大丈夫?」
「・・・リカを何とかしてくれたら少しは大丈夫になるかもしれない」
オレに声をかけたのは委員長の多湖だ。
オレの隣の席だしな。
「・・・三谷君は見つからないの?」
「ああ。手がかりすらない」
ソラは病欠ってことになっている。
だが、こいつと田中は事情を知る数少ない人間ってことでソラが行方不明ということもわかっている。
「・・・あたしも何かわかったらすぐに言うから」
「恩に着る」
そして、いつものように授業が始まる。
午後、いつもの魔法の訓練。
だが、理事長室にはオレとジジイだけだ。
他のやつらはこのところ来ていない。
つか、それどころじゃない。
「ジジイ、まだ見つからないのか?」
「わしにもさっぱりじゃ。今のところ、おそらくはこの町の外におると考えて捜索網を広げとるんじゃが・・・」
「見つかってないのか・・・」
魔物達で構成された捜索隊や保安部隊はぶっちゃけ、すごく強く優秀だ。
人間と比べるまでもなく。
だが、ソラはそれをいとも簡単にかいくぐっている。
だが、あいつのことだ。何か裏があるとか魔法で何とかしているに違いない。
「・・・わかった。何かわかったら教えてくれ」
オレはそこで理事長室を後にした。
「三谷は?」
そこにいたのは田中と多湖だった。
珍しい組み合わせだな。
「わからん。お前らこそどうした?こんなところで」
「あたしたちも心配で・・・」
「まぁ・・・な」
「そうか」
「お困りですかにゃ~☆」
突然だった。
オレ達に声をかけてきたやつがいた。
そいつは女子で、小柄、ツインテール、お子様体形。どことなくとても元気なウサギをほうふつとさせる人物だった。
「・・・お前らの知り合いか?」
「俺は知らな・・・い?」
なんか田中が途中で何かに気づいて記憶を探ろうとしている。
「あたし達のクラスメイトだよ。名前は宇佐野美未。ほら、アレ。訓練のとき・・・」
「あ~あん時の女子か」
「よくわからんがまぁいい。で、宇佐野、お前はオレ達になんか用か?」
「うん、用があるのは間君。そして三谷君に関して。わたしのじょーほーによると三谷君はただの欠席じゃないということになってるよ~」
「・・・で?」
オレは内心の動揺を表に出さないようにして普通に聞いた。
だが、ただの高校生が何故、こっちの裏事情を知っている?
オレは相手が只者じゃないことを感じ取り、警戒を強める。
それに気づいてないのか、それとも気付いているが無視をしているのか目の前の女子は軽いノリで俺に話を続ける。
「わたしの予想では学園が何らかの事情により、三谷君を病欠扱いにしてるってこと。そして、君たち五人は三谷君を探してるような行動をとってることからおそらく三谷君は何らかの事件に巻き込まれて行方がわからなくなっている」
「いや、ホントに何が言いたい?」
オレは相手の意図が掴めない。そこで二人にアイコンタクトを取ってみた。
〔こいつはなんなんだ?〕
〔俺は知らない〕
〔彼女ね、情報屋なの〕
〔〔情報屋?〕〕
〔とにかく、情報に関して彼女の右に出るものはいないの噂ではこの学園の理事長のへそくりの場所も知ってるとか〕
本当にこいつは何者だ?
「ふっふ~。わたしは情報屋だよ。証拠に委員長のスリーサイズは上から「キャー!!!」」
そういうと多湖は草野を隅に引っ張ってくと何かを話し始める。
お、戻ってきた。
「・・・ホントだった」
「わたしの情報に間違いはないのだ~☆」
「で、情報屋さんがオレになんだ?」
「この学園で本当に起こっていること、それを教えて」
こいつは勘がよすぎる。どうやってかはわからないが自力でこの学園の秘密に限りなく近いところにいる。
「隆介。そのお譲ちゃんに教えてやりなさい」
「ジジイ!?」
いつの間にかオレの後ろにはジジイがいた。
「ここまで知ったんじゃ。こちらで保護したほうがよいの。それに、話の内容はソラに関してじゃ。こちらの欲しい情報、つまりはソラの居場所を知ってると見ておるが?」
「さすが理事長さん。もちろん、三谷君に通じそうなものを一つだけ持ってる」
「本当か!?」
オレはその言葉に驚いた。だが、教えることがことなだけにオレはどうしたらいい?
「でも、そんな簡単に教えちゃってもいいんですか?」
「俺等のときはかなり三谷に渋られたんだけど?」
多湖と田中も苦言を呈す。
「今回はしょうがないじゃろ。・・・今から言うことはトップシークレットじゃ。他のものに話すと・・・」
「話すと?」
「わしの権限で成績がオール1という留年直行コースじゃ」
こいつ鬼だ!!
オレ達4人はそう思った。
全員顔が青くなっている。
「「「「絶対に言いません!!」」」」
オレ達も思わず敬礼して誓ってしまった。
「そうか、じゃ、話すとするか。隆介。他のみんなも呼んできなさい」
そして、オレがみんなを呼ぶ間にジジイは宇佐野にすべてを話した。
学園のこと、魔法や魔物、オレ達の秘密をだ。
それを話し終えたころにちょうど全員がやってきた。だが、レオはいない。まだ部屋に引きこもってるんだろう。
軽く自己紹介とこうなった経緯を全員に教え、本題に。
「で、お前の言うソラに通じるであろう情報は?」
「一週間前、三谷君と同じ時期から休んでる人がいます」
「それがどうした?」
「図書館司書、城崎智也」
「「「「「あいつか!!!」」」」」
「最初はわたしはその二人で駆け落ちでもしたのかと「人間辞書コロス」ヒッ!?」
「リカちゃん、今は抑えて」
「・・・こほん。でも、さっきの話を聞いてわかった。何か別の目的のために三谷君は城崎さんと一緒にいる可能性が高い」
「・・・何でアホ理事長はあいつが休んだのを知らなかったのかしら?」
「それはじゃな「図書館と学園は独立してるの。だから知らなかった」・・・」
「もし、それが本当ならソラさんは?」
「・・・ここからはわたしの予想、三谷君は自分の属性に一番詳しい人を連れてどこかに行った。だから、こっちの世界じゃなくて、向こうの世界にいるんじゃないの?」
「そういうことか」
確かにあいつならそれぐらいしそうだ。
なら、次に探すところは決まった。
「アリアんところに行くぞ」
「何で~?」
「あいつの魔窟内での情報網はフ○ッツ光並だ。ひょっとすると、ソラ
見かけたとか言う情報があるかも知れん。ジジイ!」
「わかった。すぐに送る。わしのほうも捜索隊を向こうのほうを探すように言っておく」
「ありがとよ」
「わたしたちも行く!」
「・・・俺も?」
「とにかく全員送るぞ?「え?わたしは」転移!」
すると、そこは既に理事長室ではなく、魔窟のメインストリート。
「ようこそ、我らが魔窟へ!アリアんところに行くぞ!!」
オレ等はすぐ近くにあったアリアの服飾店になだれ込む。
「いらっしゃ~い。ナニナニ?青春を謳歌するために学校を抜け出してきた?」
「ソラの場所は!?」
「へ?ソラ君は一週間ぐらい前にここからどっかに行ったって聞いてるけど?」
「「「「「「「ビンゴ!!」」」」」」」
「で、この子は?新入り?」
「あ、宇佐野ちゃ「んな事はどうでもいい!」・・・んな事って」
「ソラさんがどっちに向かったのかわかります?」
「西門のほうから出てったって聞いたけど?」
「「「「「「「おっしゃぁぁぁぁああああああ!!!!!」」」」」」」
「・・・どうしたの?」
「わたしはこの人たちのテンションについていけません」
「アリア!お前もたまには役に立つな!!」
「ホントだね。ありがと~」
「・・・わたしはけなされてるわよね?」
オレはすぐさまケータイでジジイに連絡。
『どうじゃ?わかったか?』
「ソラは西に向かった!」
『わかった!すぐに捜索隊を西に向かわせる。じゃが、目星はついた』
「ホントか!?」
『炎の帝国じゃ』
「炎の帝国・・・バグニールか」
突然だがここでこの世界について説明しよう。
ここの世界は多くの国によって統治されている。
ここの国名前はエナード。四つの地に分かれ、四人の王が統治する変則的な国だ。
一つが南に『大地の王国』、ガース。
一つが北に『風の都』、ストリオ。
さらに東に『水の園』、トラティス。
そして西に『炎の帝国』、バグニール。
そして、魔窟はこの国の中央付近から南にある『迷いの森』と呼ばれる大きな森に位置している。
そして、炎の帝国は、最近ここを攻めてきたところだ。
つまり、おそらくは智也の出身地。
「そうか、わかった。オレ等は準備をしてそこに行く」
『どうせ止めても無理なんじゃろ?』
「もちろんだ」
オレはケータイを切る。
そして全員に向き直って言う。
「今から各自準備をしろ。炎の帝国に行く」
「・・・そこにソラさんがいるんですね?」
「そうだ」
「なら、さっさと準備していくわよ」
「久しぶりの人間の町だね~」
「ソラ・・・待ってて」
「・・・授業は?」
「あ~。オレ等は大丈夫なのか?」
「・・・それにあたし達は戦力にならないよ?」
「お前らは向こうに着いたらオレ等の言い訳を頼む。・・・転移だ」
すると、アリアの店からオレ達は寮にいた。
全員、すぐさま自分の部屋に駆け込むと準備を始める。
「ボウズども!いるか!!」
しばらくすると、リビングのほうから声が聞こえた。
「ログのおっさんか!?」
「おう」
オレは準備を手早く済ませるとリビングに行く。
そこには椅子に座ったログのおっさんがいた。
「何だ?オレ等はこれから忙しいんだが?」
「これをやる」
ログのおっさんはオレに六つのピアスを渡す。
耳に穴を開けなくてもつけられるタイプで、ひとつひとつの模様が違う。
竜を模したものに蝙蝠を模したもの、葉っぱや、雪の結晶、鈴、そして、月。
「・・・これはおっさんが作ったのか?」
「俺がこんなもんを作るわけが無いだろう?しかも個人のために作ったようなものをな」
・・・ソラか。
あの野郎。自分の分をつけるのを忘れてやがる。
「これはな、あいつに言わせると通信用の魔道具らしい。全員に渡そうとしたんだろうが完成したのに俺の工房に忘れていきやがったんだよ」
「・・・そうか」
オレはピアスを見つめる。
「・・・あいつはな、俺の弟子だ。絶対に連れ帰って来い。こっちは商売あがったりなんだよ」
「言われなくとも」
オレはそういうと竜の模様のピアスを耳につける。
「準備完了!レオも連れてきた!」
「みゃ!」
「わたしも~」
「わたしもよ」
「私も大丈夫です」
オレは全員にピアスを配り、みんなはピアスをはめる。
「よし、目指すは『炎の帝国』、バグニールだ!!」
オレ達はソラを探すための一歩を踏んだ。