11話・RESUSCITATION
―――side空志
「≪朱雀≫!!」
魔法陣から炎があふれる。
しかし、それすぐに収まる。
変わりに、ボクの頭上に大きな火を纏う鳥が・・・。
「アレ!?いない?」
いなかった。
・・・不発?
つんつん。
足元で誰かにつっつかれる。
足元を見てみると、そこには赤い色のスズメのような鳥。
ただし、膨大な魔力を感じる。
「お前かい!?確かに朱い雀だね!!」
「・・・失敗?」
「・・・わかりません。」
足元には首をかしげてかわいらしいしぐさをするスズメ。
でも、コイツは他の魔法と確実に違う。
まず、実体がある。今までは炎で構成されてたり、雷で構成されてたりした。つまり、幽霊に近い存在だ。でも、コイツには、実体がある。ちゃんと触れるし、攻撃されたら傷つくだろう。
そして、おそらく自我がある。理由は単純。勝手にそこらを無意味にひょこひょこ歩いてるから。ただの魔法ならこんなことをする必要は無い。
「・・・エリアと同じなのかなぁ?」
だとすると、自己進化のプログラムが組まれている。
つまり、ボクが達しているレベルが雀なんだろう。
・・・なんか地味に落ち込むよ。
「ハハハハハ!そんなので戦おうってかい!?」
「ですよね~」
肩にスズメが乗る。
いや、愛玩にしか向かないね。
「な、朱雀、君さ、アレをどうにかできない?」
スズメはボクの言葉を聞くと相手を見る。
そして明後日の方向を見る。
ダメなんですね。
「ビビッて損したぜ!姐御!」
「本当だ。見掛け倒しもいいとこだ」
「ボクもそう思います」
「自分で言っちゃったらダメだよね」
「ま、そろそろ遊びは終わろうか」
リーダー格の姐御さんが土の弾丸を形成。
すると、手下二人は土の弾丸に魔力付与。
「ヤバい!インチョーボクの後ろに!!」
「え?うん!?」
「≪月守≫!!」
ボクが盾を形成するのと相手が合成魔法を放つのは同時。
風の力で高速で放たれた土の弾丸をかろうじて盾で防ぐ。
だが、土の弾丸が盾に着弾すると、大爆発を起こす。
ボクの盾は破壊され、インチョーもろとも吹き飛ばされる。
「くぅ!?」
「きゃぁぁああああああ!?」
ボクとイインチョーは地面に打ち付けられる。
「さすがにこれは無理だったようだね」
「これはあっしらの最強の攻撃ですからね」
「無論だ」
痛みで意識が飛びそうだ。
インチョーはピクリとも動かない。
ひょっとすると頭を打ったのかもしれない。
「じゃ、コレでトドメだよ」
さっきと同じ魔法。
防ぐための魔力をうまく練れない。
どうすりゃいいんだよ!!
あたりが夜の帳に包まれる。そこには相手の必殺の魔法。
ボクは、思わず目をつぶった。
―――side太郎
「ハッ!」
アンジェリカさんが大鎌を振るう。
すると、相手の魔法が次々に切り裂かれていく。
まるで、切り裂かれた火が花びらのように舞う。
だが、攻撃はしない。いや、できない。ただ、相手の攻撃を防ぐだけ。
「・・・どうした?さっきより動きが鈍っているぞ?」
そう、原因は俺だ。
俺に何の力も無いから。
ただ、魔法について少し知ってるだけ。それだけの人間。
俺はレオという三谷のペットに守られている。
レオは口から光線のようなものを出して攻撃をしているが相手には届いてない。
「・・・そいつは何もしねぇのか?」
「一般人。だから、逃がしてあげて」
「ハイソウデスカ。とでも言うと思ってんのか?」
放たれる炎の弾幕。
アンジェリカさんにも疲労が現れている。
足手まといになっている。
ちっぽけでいい。俺にも何かできれば!!
「俺にもできることは!?」
「ダメ!!貴方が危ない!!」
「ガウ!!」
「・・・余裕だな」
言葉と同時に弾丸を放つ。
それがアンジェリカさんをついに捕らえた。
「しまっ!?」
「≪反射≫!!」
声が聞こえた。
すると突然、アンジェリカさんに当たる瞬間に魔法が反射した。
俺は驚いて声のした方向を向く。
「すごいね~。コレ、魔法精度も上がってるよ~」
そこには自分の背丈を越える魔法の杖を構えた天然系魔法使い、坂崎さんがいた。
「た、助かった・・・」
「遅れてごめんね~。他のトコにもカードを使う人がいたんだよ。じゃ、わたしがんばっちゃうね~」
「・・・何人来ようと同じ」
「そうだ!!相手には攻撃どころか魔法すら効かない!!」
俺は坂崎さんに情報を伝える。
だが、二人は余裕の表情で敵の言葉を聞き流す。
「いえ、ゲームオーバーね」
「というわけで≪逆刺突剣≫!!」
何をしてるんだ!?
相手に魔法は通じないはず!!
俺がそう思ってた、敵も同じだろう。
だが、純白の光の刺突剣は相手の障壁をいともたやすく突き破り、あまつさえカードに達した。だが、それだけだった。
「・・・何をした?」
「こういうこと!!」
アンジェリカさんが間合いをつめる!!
そんなことをしても障壁が!
ギンッ!!
アンジェリカさんの大鎌は地面をえぐりつつ、相手の首の皮一枚のところで止まった。
「っ!?バカな!?」
「魔法はもう撃てない。あんたの負けよ」
「何で!?何で!?何で!?」
俺にもわけがわからない。
ついさっきまでこちらの攻撃は一切届かなかったのに・・・。
「それがわたしの魔法だよ~」
「『逆』の属性。魔法に対しては最強の属性」
・・・なんというチート。
それで杖か・・・後衛に徹しろという意味ですね。
「俺様は!!選ばれたんだ!!なのに何で!?どうして!?」
フードが落ちる。そこには髪を振り乱して血を吐くような叫びを上げる敵の姿。
・・・。
・・・・・・アレ?
「って、女ぁ!?」
「女で悪いか!?」
・・・サーセン。
「・・・ま、ちょっと気絶しててね。」
バシッ!ドサ。
アンジェリカさんが手刀で敵を気絶させる。
「じゃ、ソラ君のほうに合流しようか~」
「そだね」
・・・何?この女子最強伝説。
―――side空志
・・・何も起きない。
ピギャァァァァアアアアアア!!!
甲高い生物の鳴き声。
ボクが前を見ると、そこには朱金に輝く羽毛を持った鳳。
その鳥がボクを守るようにボク達の前にいる。
『お父様、気付きになられましたか?』
「誰がお父様だよ!?」
ボクは声の方向を向く。
そこには、透き通る肌を持つきれいな女性。
・・・別に表現は間違ってない。
実際に透けてる。
だって、水の精霊っぽい人だったんだもん。
『貴方です。わが父』
「・・・いや、残念ながら君のような娘は知らない」
『なっ!?』
ショックに目を開く水の精霊。
いや、ホントに誰!?そんな風に見捨てられた子犬のような目で見られても!!
「う~ん・・・?」
お、インチョーの目が覚めたようだ。
『マスター、大丈夫ですか?』
水の精霊がインチョーに言う。
・・・マスター?
「・・・まさかエリア?」
『もちろんそうに決まっております。こんな美人が私以外にいるのですか?』
「いや、自分で言うな」
「・・・ホントにエリア?」
驚きの表情でインチョーが確認をとる。
『はい』
・・・何が起きたんだ?
エリアがなぜか急成長した。
・・・ひょっとして、この鳥は・・・。
「朱雀?」
ピギャァァァァアアアアアア!
「・・・さいですか」
「どういうこと?」
ボクにもわからない。
「そいつはなんだい!?」
ごめん、わかんない。
『ご命令を』
ピギャァァアア!!
・・・よし、いっちょやりますか。
「インチョー、ボクの援護。エリア、朱雀は攻撃。ボクは魔法を練る」
そういうとエリアと朱雀は敵に攻撃を開始。
エリアは以前とは比べモノにならないほどの量の水塊を操り、敵を攻撃。
敵には何らかの障壁があるために魔法は届かない。だが、敵はこの勢いに押されてへっぴり腰になってる。
朱雀は炎を纏って敵に突進をかましている。
・・・リアル・ゴッドバーダアタック的なやつだね。
さて、改良版≪月夜≫を放ちますか!!
何も描かれていない魔法陣を展開。
「―――其は魔に属す法則!!
それは黒の夜のごとき魔法。
それは太陽の光のように全てをてらせない。
しかし、黒の夜を照らす一筋の光のよう!!」
「そいつを殺せぇぇぇええええええ!!!!!」
ボクに魔法が放たれる。
「≪螺旋の水弾≫!!」
回転する水の弾丸の弾幕が放たれる。
・・・今度は洗濯と≪水の弾丸≫を組み合わせたね。
でも、インチョーのおかげでできたよ。
「―――それは闇夜を照らす月の光の魔法!!
≪月夜≫!!」
魔法陣に複雑な紋様が描かれている。
そこから、前回とは比べモノにならない魔力の嵐が吹き荒れる。
魔法陣の中心で小さな何かが三つ形成される。
それは、銀色の光を放つ、銀の弾丸だった。
悪魔や狼男を一撃で倒す魔を討つ必殺の弾丸。
「『ナハト』!『ナイト』!」
ボクの両手に銃が出現。
すると、弾丸が2丁の拳銃に吸いこまれるようにして消える。
・・・ボクは引き金を引いた。
三つの弾丸は、障壁をものともせずに貫通。
それらは正確にカードを粉々にする。そればかりか、着弾の瞬間に光がはじけ、敵の意識を刈り取った。
「・・・死んでないよね?」
「・・・今回は自信がない」
「えぇぇぇぇええええええ!?」
『大丈夫です。ちゃんと生きています』
よかった。
マジでどうしようかと思った。
『お父様』
「いや、お父様止めれ」
『おそらく、お父様は力を極限にまでセーブしています。今回、偶然そのリミッターが外れたためにわたしや朱雀にその影響が現れました』
「・・・ボクは君をそんな風に育てた覚えはない!!」
『それをお忘れなきよう。では、リカ様や田中様と合流を。まだ敵勢力は町中でお父様の仲間を探して戦闘を行っています』
・・・最後までスルーされた。
ま、今はとにかくエリアの言うとおりみんなと合流しよう。
「・・・夢みたいだね」
「残念ながら現実。・・・また課題を見つけちゃったし」
ボクが本気を出すとすごいらしいことが判明した。
でも、その本気の出し方がわかんないけどね!!
「そんなことより、リカの方に田中もいる。すぐにそっちへ行く。インチョーはどうする?ボクとしては家に帰ってほしいな~」
「行く。エリアもいるしね!!」
『そうです』
ですよね~。
ボクはため息をつくとインチョー達とともにリカのいる方向へ走った。
―――sideリカ
突然だけどアタシの魔法、吸血呪は三つしかない。
少なくとも今使えるものは攻撃系、 ≪血濡れの大鎌≫、≪血の舞踏≫。
そして、最後に特殊系、≪夢幻ノ魔眼≫。
普通の攻撃がダメ。
なら、これを使うしかない。
でも、前回に使用したとき、実はぶっつけ本番でした。
ソラを守りたい一心でホントに頑張った。
簡単に言うと、ひょっとしたら失敗するかも!?
と、いうわけで、本来は吸血呪に詠唱は必要ないけど、今回はします。
「―――我、闇に潜むもの。
我、血を求めさすらうもの。
我、不死なるもの
我、絶対的な古の種族。
我が魅了の眼に囚われろ!!
≪夢幻ノ魔眼≫!!」
アタシはその目で敵をにらみつける。
し~ん。
・・・失敗?
今回は強制的に眠らせるようにした。
「あれ?アンジェリカさん目が「見ちゃダメ!!」え?何で、で、す・・・」
アタシは叫ぶが時既に遅し。
バタ。
「田中くぅぅぅぅううううううん!?」
成功してるようだ。
ならどうして?
障壁のせい?
実は、現在、たくさんの敵と交戦中。
どうしてもスズネの魔法が間に合わない。
というわけでアタシもコレならと思ってやってみたけど・・・ご覧の通り。
・・・最終手段は≪血濡れの大鎌≫ → ≪血の舞踏≫ → ≪終演≫をしなくてはならないかもしれない。
でも、これは確実に人を殺す。
アタシは人が怖い。でも、殺したくなんかはない。
どうすればいいの!?
「リカちゃん!!」
「!?」
いつの間にか相手が魔法を放ってる。
アタシはそれを避ける。でも、避けてばかりじゃ勝てない。
「エリア!!」
「朱雀!!レオ!!」
唐突にアタシの目の前で水と火とレオの放った咆哮覇が敵を攻撃。
相手にはこれは効かない。
でも、目くらましになり、相手の攻撃が止まる。
「準備完了!!≪逆刺突剣≫!!」
スズネが相手を無力化。
「≪雷迅≫!!」
そして、ソラの雷の弾丸の魔法が相手に当たる。
すると、相手はスタンガンを受けたかのように気絶する。
「ソラ君。あり・・・」
「どうし・・・」
スズネがビックリしてる。アタシはそれを不思議に思いつつ魔法が飛んできた方向を見る。アタシもビックリした。
『・・・お父様。お二方が固まっておりますが?』
「いや、全力で君のせいだと思うよ」
そこには茜と、とてもきれいな水の精霊のような人と、ソラの肩には朱金に輝く羽を持つ鳳がいた。
・・・って!?
「「お父様!?」」
「あ、この子ね、じ・・・」
「どうしたのイン・・・」
ソラと茜がアタシを見て固まる。
そんなことより重大なことがある。
お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様お父様。
その言葉がアタシの頭の中でリフレインする。
コレの意味すること、つまり、ソラは誰かと・・・。
「・・・・・・ふふ、あは、あはははははははははははははは!!!!」
・・・みんなが怯えてる。
でも、関係ない!!
アタシは大鎌を構える。
「・・・リカサン?何をしようと?」
「と、とりあえず落ち着こう!!」
「そ、そう!!」
『・・・リカ様、貴方はお父様に対して勘違いを・・・』
ダッ!!
アタシはソラに突撃する。
おそらく、普通の人間なら今のアタシのスピードにはついてこれない。
なぜかというと、あまりの速さで人間の目では視覚できないレベルだったから。
「つ、≪月守≫!!なんで!?」
でも、ソラはアタシの必殺の一撃を止めた。
「ソラを殺してアタシも死ぬ!!」
「いや、理由になってないよ!!」
「・・・リカちゃんはヤンデレ属性だったんだね~」
「・・・みたいね」
『・・・お父様の誤解を解かなくてもいいのですか?』
ピキッ。
魔法陣の盾にヒビがはいる。
「うぉぉぉぉおおおおおおい!?さっきより力が強くなってるよ!?てか、壊れる!!」
「エリア、もうお父様って言っちゃダメ。・・・アンジェリカさん。話を聞いてください」
「必要ない!!」
「助けて~!!!!!」