19話・BRAVE OF FEAR
-―――side空志
それは、唐突に起こった。
目の前で氷の槍が放たれたと思った瞬間、耳元で獣の咆哮と轟音が聞こえ、何かしらの光が氷の槍を薙ぎ払った。
ボクはその時、いったい何が起こったのか全く理解することができなかった。
「何、でこんな所に・・・!?」
聞こえたのは、目の前にいる眼鏡の少女の驚愕の声。そしてそれに応えるがごとく、再び獣の咆哮が聞こえた。
眼鏡の少女が草を踏みつぶしながら、転がるように何かを避ける気配。そして再び大気を震わせるような轟音が響く。
事態に追いつけてきたボクはようやく周りを見渡す。
そこにいたのは、大きな獅子だった。ただ普通のモノと違って、その体は純白の雪のように白かった。そして一番目が引くものは、とても大きな翼が、その背から生えていた。
「なん、で、こんな奴がここに・・・!」
眼鏡の少女が驚愕の表情を浮かべる中、翼の生えたライオンはボクとリカを守るかのように背を向け、喉で低い声を鳴らす。
「・・・ッ!」
先に動いたのは眼鏡の少女。だがライオンもその瞬間に動く。大きく息を吸い込んだかと思うと、ボクの目がその口元に光が集まるのを確認できた。そしてその口から咆哮と共に大気を震わせるような音が聞こえ、更には何かの光線のようなものが出てきた。
「っく!」
眼鏡の少女は先ほどまでのパターンとは違う光を操作し、魔法を使う。目の前に分厚い氷の壁を展開する。しかし、強大な破壊力を持つ光線はそれをいとも簡単に貫いた。それが分かっていたのか、眼鏡の少女は転がるようにして避ける。
そしてすぐさま体勢を立て直し、魔法を放とうとする。
ただ、結果としてそれは意味がなかった。既に、その目の前には己の前足を振りかぶった状態のライオン。そしてその鋭い爪を、振り下ろそうとしていた。
「しまっ!?」
その鋭い爪が目の前の少女を切り裂こうとする。
そんなことをすれば、確実に相手は・・・・・・死ぬ。
「だ、ダメだ・・・」
ボクの口から思わずそんな声が出ていた。
そして、叫ぶ。
「ダメだ、レオ・・・!」
―――side颯太
「普通に考えますと、魔法が使える猫。というものになりますね」
「だな。となると、候補の一つとしては魔獣だ」
魔獣にはある程度の力を持つ者は魔法を使えます。
「ですが、あり得ないでしょう」
「・・・そうか?あんだけ規格外なんだから、アリだと思ったんだがな」
「まぁ、そう・・・ですね」
ですが魔獣は基本的に凶暴で、自分の目に映るもの、目を引くモノ全てを破壊しつくそうとします。なので、レオ君はたぶん違います。
「だとすると、例外の方か?つか、そっちのがありえんだろう?」
「ですが、レオ君は子猫にもかかわらずやたらとご飯を食べます。具体的に言うと、平均的な空志君の倍近くを食べます」
「・・・だとすると、食うことによって魔力を補充してんのか」
「えぇ、おそらく」
魔力の補充は、普通は寝ていればいいだけです。そうすれば、万物に宿ると言われている外部魔力、『マナ』と呼ばれるものを徐々に体に取り込み、自分の魔力へと最適化。そして魔力を補充できます。
ですが、あまりに大きすぎる許容量を持っている人はそれだけでは追いつかなくなる時があります。そこでモノを食べると言う方法で、食べ物に宿る『マナ』を摂取すると言う傾向が出てきます。
「つまり、んなバカみたいな魔力を持っているにもかかわらず魔獣でない。つーことは、だ。お前、『幻獣』の線を疑ってのか?」
「はい」
『幻獣』。それはいたって簡単で、魔獣の例外と言えるものです。魔獣化の過程は、己に身に合わない魔力に当てられてしまい、常に暴走しているようなもの。そして例外とは、その魔力を自分のモノにしてしまうことに成功した魔獣、つまりは『幻獣』です。
「それに、レオ君は空志君達と出会ったとき、酷いけがをしていたそうです。おそらく・・・」
「密猟か」
当然のことですが、『幻獣』は国家指定の希少種。捕獲はおろか、戦闘行為も禁止されています。そしてレオ君がそれに出遭ってしまい、命からがらに逃げ出してし、空志君に出会った。
「おそらく、魔力を多く取り込もうとするのもそのせいでしょう。逃げるときの反撃などで魔力を使い切ってしまったからだと思うと、筋は通ります。実際に空志君達が襲われた時、レオ君を要求されたみたいですし」
「・・・んで、あの小僧は『幻獣』に懐かれた、か」
「まぁ、まだ幼いと言うのもあるのでしょうが・・・」
「だがな、俺が思うに白猫でバカみたいに魔力を持って、魔力を食うような逃げ方する幻獣って言ったら俺には心当たりが一つしかない」
そう、なんですよね。
その条件に合致するものは僕も一つしか知りません。もちろん、新種の可能性も捨てきれませんが、たぶんこれしかないでしょう。
「『飛翔獅子』。翼の生えた獅子で、空中だけでなく地上でも俊敏な動きを見せることの可能な『幻獣』ですね」
―――side空志
ボクの言葉に獅子、いや、レオはその動きを止めた。
「レオ、なの?」
リカが立ち上がりつつも、呆然とそのライオンを見る。
レオはまるでそうだとでもいうようにこちらを一瞥すると、その視線を目の前の少女に向ける。
とりあえず、ボクはリカに肩を貸してもらいつつ、その疑問に答えた。
「なんとなくだけど、そんな気がした。それに、子猫のレオがいないし・・・」
「・・・ホント、だ」
子猫のレオは周りを見渡してもどこにもいない。ただし、目の前には白い大きなネコ科の猛獣、獅子がいる。翼が生えているけど。
そんなことを考えていると、眼鏡の少女が何かしているのを見つけた。
「レオ、さっきの準備!」
「・・・ッ。アンタ、一体本当に何を視てるわけ?」
「さぁ、ね。自分でもよくわかんない。で、眼鏡さん。状況から見るに明らかにボク等の勝ちっぽいけど?」
「何、わたしのことを眼鏡って心の中で呼んでたわけ?」
「そっちだって、ボクの名前知らないでしょ?」
「ソラって、呼ばれてたのはわかったわ。ついでにそっちの吸血鬼がリカって呼ばれてたのも。傭兵まがいのことしていると、こういう相手の名前って情報はわりと重要になってくんのよ。・・・報復のためにね」
さらりと恐ろしいことを言いだす目の前の眼鏡少女。しかもかなり良い笑顔で。
・・・・・・あれ、そう言えばシュウがさっき・・・。
「・・・もしかして、お名前『トウカ』だったりする?」
「・・・」
一瞬、ボク等の間に下りる沈黙。
・・・そして。
「後ろ、気をつけないでいいわけ?」
「そんな古典的なトラップを・・・」
「―――凍てつけ。
≪氷の弾丸≫」
突然の詠唱と魔法の発動に驚く。
ボクの目では魔法の発動の兆候らしき、いつもの光が見えなかった。まさかと思って後ろを振り向く。
けど、そこには結局何もなくて・・・。
「がぁ・・・!」
レオの悲鳴が聞こえ、更にはボクとリカも何か冷たいものに吹き飛ばされる。
「あぁ・・・!?」
「ソラ、大丈夫!?」
「やっぱりね。アンタ、魔眼持ちの類ね。どういうものかは分からないけど、魔法を視覚化できる魔眼なんて、とんでもないレアな物を」
既にかなりのダメージを受けてしまっていて、立ち上がることすらままならないボクを守るように、リカが立ちふさがる。
「けど、魔眼ってのは視界に収まってなきゃそのほとんどが無意味なものなのよ。つまり、何か別のものに視線を移らせることができればそれで対処は簡単。そうよね、吸血鬼?」
「・・・」
リカは何も答えない。けど、明確すぎるほどの殺気を『トウカ』と言うらしい少女にぶつける。
「まさか、名前を知られてるとは思わなかったわ。アンタら消して、こっちの情報を探られないようにしないといけなくなったわね。ちなみに、冬に香るで『冬香』よ」
「まるで、さっきまでは殺す気がなかったみたいなことを言う・・・」
リカがぼそりとそんなことを言うと、冬香はそれもそうねと一言だけ言って数法陣を展開する。
「で、逃げてばっかのアンタがわたしをどうこうできるわけ?」
そう、リカは今まで逃げてきた。それに、相手はかなりの腕。さっきも二人掛かりとはいえ、追い詰められている。そう判断したボクはリカに逃げろと声をかけようとした。
「レオ、ソラを守ってね」
よろよろと立ちあがったレオを見て、リカがそう言う。
そしてボクに振り向くと言った。
「やっぱり、アタシがここに連れて来ちゃったんだもん。けじめはアタシがつけなきゃダメだよね。」
そう言うと、リカは鎌をその手に生み出し、冬香と対峙する。
「もう、アタシは逃げない」
「いいの?いつもみたいに逃げないと、死ぬわよ?」
「死なない。だって、置き手紙にも『帰る』って書いたもん。だから・・・」
リカが足に力を込め、言葉を強く発した。
「誰も、死なない!」
そして、両者が激突した。
―――sideリカ
そうだった。
よくよく考えてみれば、これはアタシがやってしまったことだ。あの飛び込んだ川が偶然ここに繋がっていて、そして辿りついた先が魔窟と呼ばれる、魔物による、魔物の為の、魔物の都市近くの、湖のほとりに流れ着いていた。
そこでまた偶然出会ったのが二人の人間の男女に、人の恰好をした竜の男子。その三人に助けてもらって、魔窟に行って、そこでとても楽しい時間を過ごすことができた。
こんな、闇にまぎれて生活することしかできないアタシを。
人間からも、魔物からも嫌われているアタシを。
何回も、この三人は助けてくれた。
けど、それだけじゃダメだよね?
だから、まずは言葉に出して決めよう、これらの、アタシのあり方を。
「もう、アタシは逃げない」
「いいの?いつもみたいに逃げないと、死ぬわよ?」
もしかすると、そうかもしれない。
相手は血を吸ってなかったとはいえ、吸血鬼のアタシを追い詰めることのできる腕の持ち主。気を抜けば、どうなるかなんて目に見えている。
「死なない。だって、置き手紙にも『帰る』って書いたもん」
もちろん、死ぬのは怖い。死にたくない。
けど、今のアタシは前よりも死ぬことが怖い。やっと手に入れられたモノを、手放したくないから。だから・・・。
「だから・・・誰も、死なない」
足に力を込め、大地を蹴る。
景色を置き去りにして走り、冬香の目の前に立つ。そして魔法を放つ。鎌を振りぬくと、そこから無数の衝撃波が放たれ、冬香に殺到する。
冬香はさっきまでと同じように氷の壁で防御をしようとする。
「そんなの、関係ない!」
右足を軸に、コマのように回る。そしてそのまま鎌を一閃。氷の壁にその凶刃を叩きつけた。氷の壁は魔法で強化はされていたみたいだけど、アタシの腕力がそれを上回った。氷を砕き、そのまま相手がいるであろう場所を狙って追撃をかける。
「・・・え?」
けど、そこには誰もいなかった。
どういうことかと周りを見渡すけど、どこにも人の気配は感じられない。
「下だ・・・!」
ソラの声で思い出す。そう言えば、冬香はアタシ達を足止めするときに『土』系統の魔法で・・・。
そんなことを考えていると、突然足元から土で構成された大きな手がいくつも生まれ、アタシに掴みかかって来た。
「油断、大敵よ」
声の方向を見ると、そこからは地面から土の掌に乗った冬香が現れた。
「モグラみたいな真似を・・・」
「文句は、これを捌いてからにしてくれる?」
その言葉と同時に土の腕がアタシに殺到する。
なら・・・。
アタシはバックステップを踏んで、腕が来る方向を一つに絞る。
「もっと疾く、大きく・・・」
鎌を大きく振るう。さっきまでの量を重視した攻撃じゃなくて、威力と範囲に限定した衝撃波を腕に向けて放つ。
土の腕を切り裂き、魔法を無効化する。
「何で、アンタはそう技術的なことができるのよ!?吸血鬼は、力のゴリ押ししかできない種族でしょ!?」
「アタシは、吸血鬼の中でも弱い方の部類だってわかってる。だから、こんな小細工しないと勝てなかったの・・・!」
アタシは、弱い。心も、体も。
「だからこそ、アタシは強くなった。吸血呪はお家芸と同じような扱いなの。要するに、単なる見世物。確かに、一部の吸血鬼も使う。けど、それは遠距離攻撃ができるようになる≪血濡れの大鎌≫で終わる」
後はこれの応用で多彩な攻撃ができる。
実際に、パパもこれで色々とわけのわからない技術を身に着けていた。うっとうしいけど、無意味にすごかった。
「けど、アタシは弱いから、他にもいくつか使える。―――吸血呪」
「どうせ、追尾のやつでしょ!」
「≪夢幻魔眼≫」
吸血鬼が使える、魔眼系スキル。これは相手の目を見ることで催眠術をかけると言うもの。本来、この魔法は証拠隠滅の為に吸血鬼に遭ったことを夢だったと錯覚させる魔法。
だけど、戦闘中に使っても相手に猛烈な眠気を促すことができる。そして見当違いの攻撃にあわてた冬香は自分の目を覆う。
「吸血呪≪血の舞踏≫!」
鎌を思い切り投げる。
くるくると回りながら冬香へと鎌が迫る。目を覆った状態の冬香に当たる寸前、相手はその身を沈めて回避。そして魔法を使い、地面から勢いよく生えてきた腕がアッパーカットの要領で弾き飛ばす。
「追尾系魔法の弱点は、こうやって横からでかいダメージを受けると消滅すること
。丸腰のアンタに攻撃すりゃ・・・」
「貴女は勘違いしている」
「何、ここにきて強がり?」
「あの魔法は、追尾魔法じゃない。それに、アタシは追尾魔法は一つも持ってないの」
「何を、わけの分かんないことを」
アタシはその言葉を無視して腕を振り下ろす。
「あの魔法は、鎌の遠隔操作魔法なの」
その言葉と共に冬香の頭上から勢いよく鎌が降ってくる。
それに気づいた冬香は間一髪で避け、鎌に攻撃を放つ。
「だから、アレはわざと弾かれたように見せただけ。こういうこともできる」
鎌に放たれた氷の槍を全て避け、冬香に直接攻撃を仕掛ける。
そして、その鎌は冬香の生み出した土の腕に掴まれ、動かなくなってしまった。でも、その距離なら・・・。
「≪終演≫」
鎌の魔力が爆発し、黒い光となる。
静かな爆発は音もなく空間を削り、光がなくなると、爆発の光の部分だけが奇麗になくなっていた。
「・・・いない!?」
また地面かと思って下に注意を向けたその瞬間、上から氷の巨塊が落ちてきた。土の腕を使って上に跳んだんだと理解が及ぶけど、今は目の前の氷塊を何とかしなくちゃいけない。
「あぁ・・・!」
自然と口から声が漏れ、無手となった拳を氷塊に叩きつける。
アタシの拳に酷く重い感触。そして腕がそのまま氷塊の中に突き刺さり、氷塊が砕けた。
「ふざけた力ね。けど、終わりよ!」
いつの間にか地面に降り立った冬香が機械を操作。
砕けた氷が急速に変形し、槍の形をとる。気づけば、アタシの周りは氷の槍で取り囲まれていた。
終わった、そう思った。
「まだ、終わらないでくれ・・・!」
声が聞こえた。
それは、何度も、何度もアタシを助けてくれた声だった。
アタシは自然とその声をした方を向くと、そこにはあり得ない光景があった。
「何で、ソラが魔法を使えるの・・・!?」
―――side空志
酷く、歯がゆかった。
魔力が空っぽで、何もできない。
「レオ、頼むからリカの方を手伝って・・・!」
「・・・」
目の前の傷ついた獅子はボクの言うことを聞いてくれなかった。
ボクが逆の立場でも聞かなかったと思う。あの冬香と言う少女はリカに攻撃しつつも、こちらに何回か攻撃を放ってきた。
たぶん、レオのけん制だ。離れれば、ボクがどうなっても知らないぞと言う脅しの。
そして、ついにリカが追い詰められた。
巨大な氷塊を元に作られた氷の槍がドーム状にリカを取り囲む。
「ダメ、だ・・・」
無理やりに魔力を練ろうとしても、いつものような手応えがない。
それにさっき、言ってた。冬香はボクが魔力を視覚化できるとか。もしも、それが本当なら・・・。
「何で、言うこと聞かないんだよ・・・!」
ボクには、空気中に漂う光の流れが見える。これが、もしも魔力なら、何で使えないんだよ・・・!
今ここで使わなきゃ、いつ使うんだよ、頼むから・・・。
「まだ、終わらないでくれ・・・!」
―――視覚した情報より検索。・・・該当ゼロ。
―――対抗魔法を構築します。
―――魔術構築・・・完了。
―――魔術起動・・・失敗、魔力が足りません。
―――マナを強制的に補填、魔力へ変換します。
―――最低量を変換完了。イメージを展開します。
突然、脳裏に鮮明な魔法陣のイメージがわきあがった。そしてボクは叫ぶようにして言葉を発す。
「魔法陣、展開・・・!」
すると、ボクの目の前に一つの、赤い魔法陣が生まれた。
けど、これだけじゃ足りない。
「もっと、もっと・・・!」
脳裏によみがえるのは、冬香の使った数法術、その数法陣の数だ。
「もっと!!」
―――マナを再変換。
―――記憶より術式の補強。
―――魔法陣を、多重展開します。
目の前の魔法陣が脈打つかのように見えた。そして次の瞬間、膨大な数の魔法陣が最初の一つを中心に現れた。
「アンタ、一体何を・・・!」
冬香の驚愕の声には答えず、代わりにボクは一言だけ言った。
「行け、≪焔鳥≫!」
魔法陣から炎が噴きでて、一つ一つの魔法陣から炎で構成された鳥が生まれた。そして鳥達は何をすべき変わっているかのようにリカのいる方へと殺到する。リカが思わず防御の構えをとるけど、それは結果として意味はなかった。
炎の鳥達はリカを避け、氷の槍だけを体当たりで正確に撃ちぬいた。
「何、この精密な魔法攻撃精度は!?」
まだ、それだけでは終わらない。
氷の槍を突き破った鳥達で、無事だった数十羽が今度は冬香へと攻撃を開始し始めた。
「くっ!?」
冬香が必死に撃ち落とそうとするけど、鳥達はそれを見事に回避。
迎撃では意味がないと察した冬香が氷の防壁で対応した。残る数十羽が氷の壁にそのまま突っ込み、壁を砕く。けど、砕いたところで炎の鳥達はいなくなってしまった。
「な、何よ、あの魔法は。それに、アンタ魔力が・・・!」
冬香がヒステリックな声でボクに叫ぶ。
ボクは、魔力の使い過ぎでもう意識までももうろうとしてきた。けど、これで十分だ。
「君が、知る、必要は、な、いね・・・。ボク等の、勝ち、だから」
「何を・・・ッ!?」
冬香が気づいた時には遅かった。
リカの光速の手刀が冬香の首筋に放たれ、気を失う。
勝った。そう思った途端に、体にすら力が入らなくなってきた。既にもうろうとした意識の中、優しげな女性の声が聞こえた。
「よく頑張ったわね、空志君」
「ゆうこ、さん・・・?」
ボクは自分がちゃんと言葉を発せたのかどうかも確認できず、意識を手放した。
作 「というわけで『恐怖と言う名の勇気』をお送りしました!」
隆 「やっと、終わった・・・」
作 「絶賛氷漬けの隆介君にお越しいただきました」
隆 「なりたくてなってるわけじゃねぇ!?」
作 「まぁ、これで一旦区切り。役者がそろいました」
隆 「・・・まだ、なんかあんのかよ」
作 「うん、割とすぐに」
隆 「過酷労働だ!改善を要求する!」
作 「却下!だって、面白くない!!」
隆 「この外道が・・・!」
作 「まぁ、そんなわけで次回!激闘の末、死んでしまった空志・・・」
隆 「死んだのかよ!?」
作 「いや、全然?」
隆 「勝手に殺すなよ!?」
作 「だって、こっちのが盛り上がらない?」
隆 「知らねぇよ!?」
作 「そんなわけで次回もよろしく」
隆 「全然次回予告になってねぇ!?」