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DARK・MAGIC ~闇夜の奇術師達~  作者: 夜猫
1章 ≪異世界との遭遇≫
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17話・CHEMIST VS MAGICIAN

―――side空志

 「というわけで君の相手をするのはこのボク、三谷空志。まぁ、気軽にソラって呼んで」


 「・・・そうですか、私は李樹リー・シュウ。シュウと呼んでいただいて結構です」


 何故かスポーツマンシップにのっとって、お互いに名乗りあう。

 ボクの相手は長髪長身の中華風の男子。残念なことに、ボク一人で相手をしないとダメだ。


 「・・・できれば、私はこういうことをしたくないのですが?」


 「そんな様になってる構えを見ても説得力皆無だよ。中国四千年の歴史の拳法がどうとかいう体術を会得しているって言っても納得できるね」


 「中々に鋭いですね。当たらずとも、遠からずです」


 「・・・」


 ・・・・・・早く、逃げたいなぁ。

 そう言うわけにも行かないのでボクは魔導書を適当に開いて、いつでも魔法を放てるようにしている。ちらりと見てみればそれは≪雷迅ライジン≫の魔法陣。

 幸先がいいね。この魔法は直進しかできないけど、ボクが知ってる魔法陣の魔法でも最速を誇る。相手がどんなに早かろうと、亜光速に勝てるわけがない。


 「貴方は、見たところ体術等を学んでいないようですが・・・どうにも怪しいですね。それに、姿を見せない三人も気がかりです」


 「さぁ?案外、ボクもすっごい体術習得してるかもよ?それこそ、君はボク一人で十分ってくらいに」


 「そうですね。何事も油断は禁物・・・では、私もある程度全力で行かせてもらいましょう」


 「・・・え?」


 そう言った瞬間、相手の姿がかき消え、ボクの目の前で拳を振りかぶる姿がアップで映し出された。


 「おわぁ!?」


 「ハッ!」


 咄嗟にサイドステップを踏み、放たれた拳を避ける。素っ頓狂な声を上げながらも何とか回避したものの、その直後に地面をえぐる鈍い音が聞こえた。

 恐る恐る見てみれば、そこには右拳を地面にめり込ませ、かつクレータを生み出しているシュウの姿があった。


 「・・・え?」


 「避けきりましたか・・・。貴方も相当な訓練をしているようですね」


 いや、ボクなんて避けることしかできません。

 それに、あの攻撃も優子さんの訓練イジメがなかったら確実に喰らっていた。


 「・・・今からでもさ、ギブアップってできない?」


 「不可能ですね。私の師匠の教えは、やるからには互いに死力を尽くせ、です。それに、貴方は頭が回りそうですし・・・」


 非常にめんどくさい教えだ。そしてシュウは人を見る目も持ってる。

 もちろん、オッケーが出ればボクはすぐに正々堂々と背後からさっくりとやっていたと自信を持って言える。

 ボクはそこで唐突に魔法を放つ。


 「≪雷迅ライジン≫!」


 魔導書から黄色い魔法陣が浮かび上がり、そこから一発の雷の弾丸が高速で放たれる。けど、思った通り相手の姿がかき消えた。

 そして今度は自分の本能に従い、勘でしゃがむ。するとその真上を相手の砲弾の如き右の拳が通り過ぎていった。


 「偶然では、ないようですね!」


 続けざまに左でジャブ。その拳をかろうじて回避してボクは足払いを仕掛ける。ただし、格闘素人のボクだからか、簡単に先を読まれて逆に蹴り返してきた。


 「ですが、どういうわけか格闘の心得が全くありませんね。それに、≪身体強化フィジカル・ブースト≫も使えないようですし」


 「・・・」


 ヤバい。どんどんボクの化けの皮が剥がれていくのを感じる。今のところ残念なことにボクはハッタリオンリーで何とか相手に無意味な警戒心を抱かせて実力が拮抗している。そして今のボクが切れるカードと言えば、後一つ。それまでは精一杯演技をし続けなくちゃいけない。


 「本当に、イタイ・・・」


 蹴られた足がじんじんと痛む中、シュウを睨みつけてそう言う。


 「安心してください。後で薬を処方しておきます」


 「わけわかんないよ!」


 腰の銃を素早く抜いてそのまま何回も引き金を引く。銃口から魔力で構成された弾丸が高速かつ至近距離でシュウへと放たれるけど、それさえもサイドステップで躱す。


 「けど、こっちが狙いだ!≪紫電シデン≫!」


 すぐさま魔導書のページを一つめくり、そこに描かれている魔法陣を発動させる。

 ≪紫電シデン≫、これは地面に指向性を持った雷を流す魔法。それをシュウに向けて放つ。いくらなんでも、着地地点にこんなことをされたらたまったものじゃない。


 「ハァ!」


 シュウは気合いの入った鋭い声と共に、その体をくるりと回転。体が百八十度回転する。重力を無視したその動きは側転風の、バック宙だった。


 「・・・ありえない」


 思わずそんなつぶやきが漏れつつも、ここで攻撃の手を緩めてしまうのは悪手。優子さんとの訓練イジメのおかげで培われてきた勘がそう告げ、ボクはその勘に従う。

 宙に向いていた銃口を再びシュウへと向け、引き金を引く。

 シュウは新体操の選手よろしく、アクロバットな動きで一旦ボクから距離をとり、ボクの攻撃すべてを避けきって見せた。


 「本当に、貴方が素人なのか私でもわからなくなってきましたね」


 スタッと地面に降り立ちながらそう言う。けど声には全く焦りを感じることができず、まだまだ余裕であることがうかがえる。


 「では、少し本気を・・・」


 そう言ってポケットから何かをとりだしたとき、突然大きな鎌がシュウを強襲。それに対し、シュウはボクに対して初めて全力の回避を見せた。


 「大丈夫!?」


 「・・・いや、本当に助かった」


 周囲の霧はいつの間にか晴れていて、この場にはボクとシュウ、そしてリカがいた。


 「先ほどから姿を見せないと思っていましたが、逃げたわけではなかったのですか?」


 「いや、その案は真っ先に考えたね」


 そう。シュウの指摘した案は真っ先に考えついた。

 だって、敵の目的はリカの駆逐。つまり、全く関係のないボク等が適当に時間稼いでどこか遠くに逃がせば、それだけで相手の戦う意味が消失する。たとえボク等がその過程で人質にとられたとしても、そのうち優子さんあたりがやってきて助けてくれるはずだと踏んだ。

 なら、なぜその案を採用しなかったのか。それはいたって単純。


 「アタシだけ逃げるのはいや」


 数の暴力だ。

 この案に対しての賛成は一票。残りはもちろん拒否一択。残念なことに、ボクが優子さんから教えてもらったことは逃げる・・・方法だけだ。戦う方法なんてこれっぽっちも教えてもらっていない。


 「本当に、何でこうなったのか・・・」


 「・・・苦労、しているのですね」


 シュウから憐みの視線を頂戴した。

 同情はいらないから、適当に負けてください。心の底からそう思った。


 「とにかく、二人の方は大丈夫なんだよね?」


 「うん。とどめを刺すところだったから、すぐにこっちに来たの」


 「つまり、先ほどまではあちらに?」


 シュウがボク等の会話を耳ざとく聞きつけ、質問してくる。

 ここは次の計画の為にも会話で引き延ばすのが吉だ。そう判断してボクはこっそりと魔導書のページをめくりながら言う。


 「あの霧、変だと思わなかった?」


 「・・・そう、ですね」


 「まぁ、答えを言っちゃうと、アレはここにいるリカだったんだよね」


 「・・・なるほど、固有魔法ですね」


 固有魔法、それはその種族のみが使うことのできる特殊な魔法の総称だ。

 そして吸血呪ヴァンパイア・スペル。これがリカ達吸血鬼の使う固有魔法。普通なら詠唱が必要な魔法も、固有魔法に限っては必要としないモノが多いらしい。


 「アタシが使ったのは吸血呪ヴァンパイア・スペル変化チェンジミスト≫」


 吸血鬼には様々な伝承がある。

 その中には霧になってどこかに消えるっていうのを耳にしたことがある人も多いと思う。


 「で、今回重要だったのがその状態で意思の疎通が可能かどうか」


 「・・・つまり、貴方達の攻撃が嫌によく当たったのはそこにいるリカさんに教えてもらったからということでしょうか?」


 「そう言うことだね。だから、今ここにリカがいる意味もわかってくれるよね?」


 「・・・そうですね」


 理解の言葉を発するも、相手はいまだに攻撃の意思を崩さない。


 「では貴方方を倒し、冬香さんを連れて逃げさせていただきましょう」


 「・・・なるほどね」


 半ば想像はできていたため、ボクとリカは構える。


 「薄々、感じてはいたようですね」


 「まぁね。んじゃ、とりあえず≪雷迅ライジン≫」


 ページの一つに手を当て、ボクは魔法陣を発動。黄色い魔法陣が展開され、そこから雷の弾丸が放たれる。シュウはその驚異的な身体能力をもってボクの攻撃を避けた。ただ、今回はボクだけじゃない。


 「吸血呪ヴァンパイア・スペル血濡れの大鎌デスサイス≫」


 リカが魔法を発動。その手にはまるで死神が持っているかのような大きな鎌が現れ、それでシュウに斬りかかる。


 「また、その武具召喚魔法ですか・・・!」


 「違う、これはあくまで魔法!」


 器用に鎌の柄の部分で攻撃をしたシュウに、リカは吸血鬼の膂力にモノを言わせて思い切り鎌を振る。そして攻撃の力を受け流したシュウに向けてその鎌を振るう。


 「面倒なものです!」


 シュウは素早く鎌を振った射線上から離脱。すると、その空間をいくつもの衝撃波が駆け抜け、シュウの後ろにあった木々を両断した。


 「先ほどとは、威力も規模も桁はずれですね」


 「そりゃ、ボクの血を上げたからね」


 ボクはそう言いつつもシュウに向けて次々と魔法を放つ。今回の攻撃はかろうじて当たらないけど、さっきまでのように余裕で避けられるといった感じではない。流れはこっちに来ていると考えてもいいと思う。

 するとそんなボクの表情を見てか、何故か相手は申し訳なさそうな苦笑いを浮かべつつ、ボク等にいう。


 「すみません。それでは私も少しばかり本気を・・・」


 「「・・・え?」」


 疑問の声を上げるボク等に構わず、シュウは腰にある大きめのポーチらしきものから一つの小瓶を取り出す。そしておもむろにコルクの栓を開けると、その中身を一息に飲み干した。


 「では、行きます」


 静かにそう言った瞬間、シュウの姿がかき消えた。

 それと同時に、リカが何かに反応してボクの前に立つ。すると、鎌の柄の部分で何かを受け止めたかと思うと、今度は別の方向へと鎌を振るう。

 その行動は、まるでボクに何かを近づけさせないためのようで・・・。


 「な、何が、起こってるの?」


 「ッ!防御で、手がいっぱい・・・ッ!」


 その言葉の意味を考えようとしたとき、突然ボクの視界がブレた。気づけばリカにぶつかって、ぶつかったリカもろとも近くの木に吹き飛ばされ、次第にわき腹が痛くなってきた。


 「ッ、あぁ・・・!」


 「大丈夫!?」


 ボクに押しつぶされる形になっているはずのリカが、ボクの安否を尋ねてきた。そこでボクは猛烈に嫌な予感がしてきた。痛む脇腹を無視し、適当に魔導書を開けて魔法を発動する。


 「―――≪突風トップウ≫!」


 ボクとリカを中心に大風を吹かせる。すると、リカの背後から迫ってきていたシュウがたたらを踏み、それに気づいたリカは大鎌を一振り。すると、またもシュウの姿がかき消えた。


 「まさか、≪身体強化フィジカル・ブースト≫の類!?」


 そう言うボクの言葉に、リカは否定の言葉を出す。


 「あり得ない。だって、樹族は・・・」


 「はい。私達樹族は、魔法薬作成以外での魔法は使えません」


 声の方向を見ると、そこにはいつの間にかシュウが立っていた。


 「ですが先ほどの薬、私達樹族にのみ作用する『強化薬ブースト・ポーション』を使用すると、一時的にですが身体能力を向上させることができます」


 「ご丁寧にも、どうも・・・」


 まったくもってありがたくないけど、一応礼を言う。


 「リカ、≪身体強化フィジカル・ブースト≫は?」


 「ごめん。吸血鬼ヴァンパイアは使えないの」


 「・・・」


 非常にマズい。

 さっきのことからわかるように、今のシュウは驚異的な身体能力を誇る吸血鬼ヴァンパイアのリカをも超えている。

 ただでさえ魔法が当たらないのに、これじゃぁ絶対に当たる魔法でも使わない限り勝てない。確かに、魔法はある程度までは自分のイメージで当てることが可能だ。ただし、そんなのは野球のカーブ程度の変化球と似たようなものだと思う。だから、相手を完璧に追尾する・・・・・・・魔法を使おうと思えば、そう言う魔法構成を作る必要がある。そして、ボクとリカにはそんな魔法が一つもないことは確認済みだ。


 「だとすると・・・」


 「ソラ、どうするの?」


 相手をうかがいつつもリカはボクにそう声をかけてくる。


 「・・・あると言えば、あるのかなぁ」


 うん。何とかなりそうな作戦が一つ。ただ、これを実行するとなると色々と自分のプライドとかポリシーを捨てなきゃいけない。


 「今からわりと最低なダメ男のお願いするけどいい?」


 「・・・うん」


 だけど、自分のプライドは障子紙より薄いことを思い出した。人間にしても他の生けとし生ける生物にしても、命あってのモノだ。


 「リカ、今からシュウを全力で攻撃。ボクを守るとかそう言うのは全くなしで」


 「え?・・・でも、そんなことしたら」


 「いいから。今、現状でシュウに渡り合えそうなのはリカしかいない。けど、ボクが合図したらすぐにシュウからできるだけ離れて」


 そう言うと、ボクは魔導書のページをめくり、目的の所を開ける。

 今から使うのはかなりの魔力を消耗する。慣れていないから、発動するかも不明だけど、やらないよりかマシだ。

 リカはボクの行動で何をしようとしたのか察し、何の予備動作もなしにシュウへと斬りかかった。


 「そう、来ましたか」


 シュウはそう言うと、こともなげにリカの鎌を器用に避ける。最小限の動きで横にずれ、そして体の側面ギリギリをかすめる鎌の刃を裏拳で弾き、リカの態勢を崩そうとした。さっきまでのリカなら、鎌の大きさのせいでその身が振り回されていた。

 ただ、今回は違った。


 「はぁっ!」


 気合いの声を上げ、体を一回転させつつその大鎌の刃をシュウへと叩きつけようとする。勢いがついた大鎌は危険だと判断したのか、そこでシュウが文字通り目にもたまらぬ速さで回避。間をおかず、さっきまでシュウのいた所からは盛大な土煙りと土砂が飛び散った。


 「非常識な力ですね・・・!」


 「まだまだ!」


 リカはそのまま追撃をかける。

 地面に突き刺さってしまった鎌を利用して、両足を空中へとはね上げる。そしてそのまま両足の裏でシュウへと足蹴りをかまそうとした。

 ただし、シュウもそれ以上は黙っているつもりはないようだった。シュウはリカの片方の足首を掴み、蹴りだされた勢いを利用してそのまま地面へと叩きつけようとする。そこでリカは残った片足でシュウの側頭部を蹴りつけた。シュウは蹴られるも、そのまま強引にリカを地面に叩きつけ、距離をとる。

 すると、リカも何事もなかったかのように立ち上がった。


 「・・・何、この超人対決」


 リカの力は普通に強い。弱っている時でさえ、颯太さんを吹き飛ばせるレベルのもの。話によれば、単純な力と頑丈さなら優子さんのそれを上回ると言うんだからリカの常識離れした膂力は驚嘆の一言に尽きる。

 ただ、それをまともに頭に食らって、ふらつきもせずに構えているシュウはどうなんだ?と言うか、地面に盛大に叩きつけられているリカもどう?


 「・・・力を、流された」


 「はい。そうしませんと、軽い脳震盪を起こしそうだったので」


 「いや、その理屈はおかしい」


 アレで脳震盪?ボクがアレを受ければ側頭部陥没と言う恐ろしいことになっていたはずだ。そして≪身体強化フィジカル・ブースト≫は属性によってちょくちょく効果が変わってくるらしく、力や頑丈さと言った全てを上昇させるのはあまりないらしい。

 颯太さんの『治癒』はその数少ない、全能力を上昇させるもので、優子さんの風系統は敏捷性を上昇させるのが精いっぱいらしい。

 そして、ボクとスズはどういうわけか≪身体強化フィジカル・ブースト≫向けの属性ではないらしく、使えない。

 まぁ、何が言いたいかと言えば・・・。


 「あのさ、樹族って言うからには植物系統の魔法属性だよね?」


 「はい、もちろんそうです。一説によると、私達樹族は人間と樹の精霊ドリアードとの間に生まれた種族のようです。ですから、普通なら≪フィジカル・ブースト≫は使えません。それはおろか、私達樹族は魔法薬の作成以外には魔法を使えないと言う特殊な性質を持っています」


 ちょっと、信じがたい話だったからリカに視線で聞いてみる。


 「うん。全部本当」


 そう返ってきた。


 「・・・どうしよう、今度から薬局に行けないよ」


 「安心してください。格闘術を極める方は少数派です。私達は通常の魔法をしようできないので、普段は劇薬などで戦うんです」


 「今、心の底から君でよかったと思ったよ。・・・ちょっとだけ」


 劇薬とか、不穏すぎる響きのものでなくてよかったと思う。

 まぁ、たぶんこういうことなんだろうと思う。この世界には魔法がある。更には魔獣とかいう危険な生物に、普通の人間から見れば危険な魔物がいる。そして、自衛の手段では魔法が使われる。なら、その自衛のための魔法を持たない樹族はどうしたか?その答えの一つが目の前にある。

 ぶっちゃけて言えば死ぬほど体を鍛える。または劇薬でえげつなくやっつける。そう言うことだろう。


 「そうですか。・・・しかし、貴方を守るそぶりを見せなくなった途端に、互角にまで渡り合えるようになりましたね」


 「まぁ、一般的に守りながら戦うのはとても難易度が高いからね」


 まぁ、言ってしまえばそれだけの話。

 だけど、嫌な予感しかしないためにボクはいまだに魔法を作り上げていく。


 「ですが貴方の魔法は、少しイヤな予感がしますので・・・」


 そう言いながらさっき飲んだ薬の瓶を取り出す。

 『あっ』と、ボクの口から間抜けな声が思わず出た思うと、その中身はすでに空っぽになっていた。

 そして・・・。


 「どこを、見ているんですか?」


 「ッ!?」


 後ろからの声。振り向くと同時に一陣の風が通り抜ける。そして振り向いた方向にはその姿はすでになく、視線を前に戻すとそこにシュウはいた。

 『サルでもわかる魔導書』を片手に持って。


 「嘘・・・」


 「いえ、これが現実です。貴方は、この本がなければ魔法が使えないのでしょう?」


 シュウがそう言った途端。リカもまた一陣の風の如く動く。

 鎌を左手に持ち替えたのが辛うじて見えたから、ボクの魔導書を取り返そうとしたんだと思う。


 「させません!」


 ただ、シュウもさっき以上に上昇した身体能力でリカに対応。

 まさか、あの薬の効果が重ねがけできるとは思わなかった。さっきまでの互角の戦いは、その勝利の天秤をシュウの方へと傾けさせた。

 今回は魔導書がとられたために、シュウは守備へと転じるほかにない。それが分かっているからか、リカも猛然と攻めかかる。鎌をその細腕で振り回し、隙あらば右手でボクの魔導書を取り返そうと突き出す。

 でも、そのどれもが届かない。


 「動きが直線的ですので、先を読みやすいです」


 そうつぶやいたかと思うと、シュウがリカの再三の突きに対してカウンター。リカのお腹に掌底をかます。

 リカはその攻撃を受け、勢いも殺せずに吹き飛ばされる。


 「リカ!?」


 「大、丈夫・・・!」


 リカはそれでも立ちあがった。


 「吸血呪ヴァンパイア・スペル血の舞踏ブラッディ・ダンス≫!」


 リカはあろうことか、ついさっきまで自分が持っていた鎌をシュウに向けて思い切り投げた。

 そして案の定、シュウはその鎌を簡単に弾き返した。ただ、何故か武器を持たないリカに攻撃をしようとしてこない。ボクがいぶかしんでいると、その答えはすぐに出てきた。

 さっきあらぬ方向へと飛ばされたはずの大鎌は再びシュウへと襲いかかる。

 追尾ホーミング。たぶん、さっきの吸血呪ヴァンパイア・スペルはそう言う魔法なんだろう。シュウが大鎌への対処のためにリカへの注意が逸れた。その瞬間、リカがシュウの懐に潜り込み、がむしゃらにパンチを繰り出す。


 「そんな力任せの攻撃では、意味がありません!」


 シュウはその宣言通りリカの攻撃をいなし、逆に仕掛ける。


 「≪終演フィナーレ≫」


 リカがぼそりと言うと、大鎌から漆黒の光があふれだす。

 それを見たシュウはわき目も振らずにリカから距離をとる。黒い光の球体がなくなると、さっきまでそこに存在していた木々が消失した。


 「・・・貴女の武器はなくなりました。これで、終わりチェックメイトです」


 「いいや、チェスの盤面はよく見た方がいい。≪天雷アマイカズチ≫」


 シュウが気づくけど、既に遅い。

 ボクはさっきからとある魔法の発動準備をしていた。その魔法は中級の中位魔法で、しかも広範囲殲滅型。巨大な魔法陣がシュウを中心に展開され、そこから紫電の奔流が迸る。あまりの光に閉じていた目まで焼かれそうになる。

 そして静かになると、そこには過剰な魔法でダメージを受け、痙攣しているシュウの姿があった。


 「ポーンは、敵陣地の奥に行くと成り上がることがプロモーションできる。と言うわけで、王手詰みチェックメイトだね」


 「・・・ソラ、目が痛い」


 「みゃぁ」


 ボクのフードから出たレオは、何故か前足でシュウにペシペシとかわいらしい追撃を仕掛けていた。


作 「と言うわけで『薬剤師VS奇術師』をお送りします!」

空 「薬剤師、怖すぎる・・・」

作 「ちなみにシュウ君はテ○ルズのレジェ○ディアを見たからです」

空 「・・・あれ?あのゲームにそんなキャラいたっけ?」

作 「いや、ひねくれた作者がただの格闘士じゃおおしろくないから、くっつきそうにない『回復』の要素を詰めてみました」

空 「・・・ダメだこいつ」

作 「でも、そのあとで似たような主人公が出てきたもんね!」

空 「責任者出てこい!」

作 「と言うわけで次回、やっとバトル終了・・・」

空 「いやぁ、ここまで長かっ・・・」

作 「とでも思ったか!?」

空 「おい!?」

作 「次回もよろしく!」

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