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DARK・MAGIC ~闇夜の奇術師達~  作者: 夜猫
7章 ≪魔法学園文化祭編≫
165/170

29話・MARCH

―――side奏

 「す、すごいです・・・!」


 流石は、最終兵器『リオちゃん』と呼ばれていただけはあります!

 リオネさんはその人形達の強さ、火力からDクラスの皆さんからそう呼ばれていました。さらに、レクトさんはどういうわけか流星騎士メテオ・ナイトを強奪して自分達の人形に加えてしまったみたいです。

 本当にすごいのがどっちなのか分からなくなってきます。

 


 『奏』

 『奏』

 『大変』

 『強い獣』

 『白い獣』

 『黒い光』

 『攻撃』


 精霊さん達が教えてくれると同時に、また精霊陣がきしみ始めます。

 周りの精霊さん達も怯え始めています。


 「お願いです、頑張ってください!」


 『頑張る』

 『頑張る』

 『けど怖い』

 『力でない』

 『力いる』


 「ど、どうすれば・・・」


 わたしにはいい考えが浮かびません。

 精霊さん達は力が足りないみたいです。それなら、他の所から精霊さん達を呼ぶという方法が一番いいのですが、ここら辺にいる精霊さん達はすでにわたしの為に頑張ってくれています。


 「どど、どうやって精霊さん達を呼べばいいんですか!?」


 何故か、そんな変な質問を精霊さん達にしてしまいました。


 『・・・何?』

 『呼ぶ?』

 『呼ばれる?』


 精霊さん達も困惑したというか、どうして呼ばれるの?と言った質問をむしろ聞き返してきます。


 「あ、あの、どういうときが、一番わたしの所に来たいですか?」


 なんて抽象的なんだろうと思いつつも聞いてみます。

 すると、精霊さん達は一斉に声をそろえて言いました。


 『『『お歌』』』


 ・・・歌?

 ・・・・・・そう言えば、師匠が言うにはわたしが歌を歌うと、精霊さん達が活性化すると言うか、元気になるそうです。

 あの時に歌ったのは・・・。




―――side樹

 結界がもちそうにありません。

 四条さんも精霊達を応援しますが、気合いではどうにもならないのが現状。

 すると、さっきまで精霊と語っていた四条さんが沈黙します。どうしたのか聞こうと四条さんの方を見たとき、それは起こりました。


 「―――」


 四条さんの口から不思議な旋律が流れます。

 小さいながらも心地の良い声が聞こえ、さっきまでヒステリックだった客も静かになります。

 聞いたことのない言語には不思議な力があるのか、四条さんの周りにマナが渦巻くのを感じます。それに、注意して魔力を感じ取ると、歌には魔力が込められていることがわかります。


 「まさか、詠唱の一種なのですか?」


 「―――」


 四条さんは答えませんが、私の中に眠る精霊の血がそうだと告げます。

 おそらくこれ自体が詠唱で、一つの魔法。四条さんが歌い続けるにつれ、どんどん魔力が高まって行き、先ほどまで軋みをあげていた結界からは何の音もしなくなります。それどころか、結界が安定し、より強固なものへとなって行きました。


 「―――」


 四条さんはなおも歌い続けます、そしてさらに変化が。上空に何かしらの魔法陣が現れ始め、そこから光の奔流があふれてきました。

 それは魔獣はおろか私達をも巻き込みますが、不思議なことに私達は何ともありません。しかし、魔獣はこれが辛いのか、断末魔の叫びをあげます。気付くと光は収まり、周りには魔獣達の遺体がありました。


 「・・・何が、あったのですか?」


 『精霊と人間の間に生まれたお前がわからないの?』


 聞きなれない女性の声。高圧的な物言いで言われました。

 周りを見渡すと、四条さんの目の前に小さな人影がありました。

 どうやら少女のようで、背中には半透明の翅が二つ。まるで童話に出てくる妖精のようです。


 「よ、妖精、ですか?」


 『・・・お前が歌を?』


 四条さんの言葉を無視し、妖精は尋ねます。

 四条さんは挙動不振になりながらもがくがくと首を縦に振ります。


 『誰が、歌を歌っているのかと思えば・・・、こんな人間の娘?』


 「あ、あぅ・・・す、すみません」


 『まぁ、いいわ。私は『音』の神霊』


 まさかの神霊、ですか。

 私達はあまりの事態に呆然とする以外にありません。


 『そこそこ、よかったわ。また暇なときに来てあげるわ。周りの虫唾が走る物体はアレは歌の駄賃よ』


 そう言うと、来た時と同じ唐突さで消えました。

 ・・・一体、何をしに来たのでしょうか?

 私の疑問を察したのか、四条さんが答えてくれました。


 「あ、あの、精霊さん達は基本的に、気分屋さんが多い、です。で、ですから、普通なら、さ、さっきの神霊さんのような精霊さんが、多いはずです」


 なるほど。

 ですが、言われてみれば『月』の神霊であるルーミアさんもそこはかとなくそんな感じがしますね。むしろ、あんな風に突然やってきて意味もなく何かをしていくことの方が多いんですね。


 「・・・ですが、神霊も基本的に精霊魔法は・・・?」


 先ほどの魔法陣、おそらくあれは神霊がやったことでしょう。

 ですが、神霊でも魔法が使えると言うのはただの誤解とルーミアさん自身がそう言っていました。


 「そ、それは・・・よくわからないです」


 「・・・とにかく、闘技場からは一掃できたということでいいんですね」


 私がそう言うと、闘技場の外から魔獣の咆哮が聞こえます。

 それと同時に結界に何かがぶつかる音が聞こえますが、先ほどと違い、結界は何事もなかったかのように軋みもしません。


 「これで、一安心です。私は念のために颯太さんの手伝いをしてきます」


 「ちょっといい?」


 私が颯太さんの手伝いをしようとしたとき、一人の女子生徒に尋ねられます。


 「ふ、副代表さん?どど、どうしたんですか?」


 副代表、つまりはDクラスの方でしょうか?その方が表情を曇らせ、私達に尋ねてきました。


 「アスカが、見当たらないの」


 「アスカさんが、ですか?先ほどまで一緒に・・・?」


 「ついさっき、『これこそ私の出番!』とか言って飛び出したの」


 ・・・意味がわかりません。

 すると、四条さんがぴくっと反応します。


 「あ、アスカさんは闘技場内にいます。たぶん、こっちです」


 ひとまず、私達は四条さんについて行きます。

 四条さんは精霊と対話しているのか、空中を見ながら歩いて行きます。そして、観客席の方へ進んでいきます。

 すると、アリーナに背を向けて狙撃銃スナイパー・ライフルを準備している少女がいました。


 「アスカ!何してるの!」


 「ん?おぉ、杏奈いいところに。観測手お願い」


 そう言うとアスカさんは自分の狙撃銃を構え、詠唱を始めます。


 「―――これは、一発の弾丸。

     全てを見通し、狙う。

     この弾丸に射抜けぬものはなし。

     ≪魔弾の射手ホークアイ・ショット≫」


 すると魔法が発動し、アスカさんの周りから膨大な魔力があふれてきます。

 ですが、この感じは・・・。


 「まさか、真言ですか?」


 「そーそー。あの魔法陣騒ぎのときに使えるようになったの。ちなみに、学園の生徒で唯一、真言使える生徒になっちゃったぜ!」


 「・・・でも、目の前は壁ですよ?」


 そう、何故かアスカさんは目の前に壁があるにも関わらず狙撃銃を構えていました。

 すると、アスカさんは何故か不敵な笑みを浮かべて言い返します。


 「ふっふっふ。この私の真言、≪魔弾の射手ホークアイ・ショット≫はこうすることができるんだよ」


 アスカさんがそう言った瞬間、アスカさんの目の前の空間がゆがみます。

 その先に見えたのは、今だ魔獣でひしめく闘技場外の様子が見えました。どういうことかと思い、その歪んだ所に触れると、何の抵抗もなく入って行きました。

 それを見たアスカさんは銃に魔力を込めます。そしてやたらと目立つ白い魔獣に向かって銃口を向け、引き金を引きます。すると、白い魔獣は頭を吹き飛ばされました。


 「イエース!ナイスヘッドショット!まさに奇襲だね」


 アスカさんの言う通り、奇襲されて魔獣達は混乱しているだけです。

 すると今度はゆがんだ空間が光り始め、さっきとは違う場所が映し出されます。


 「おー。こっちの位置が知られないようにランダムで変わるのかな?なんか法則がありそうだけど、今はわかんないからしょうがないや。てか、観測手いらなかった」


 杏奈さんにペロッと舌を出すアスカさん。

 杏奈さんはそんなアスカさんを呆れた表情で見ます。


 「まぁそんなわけで、白い魔獣がなんか四条ちゃんの結界壊しかけたみたいだから、そいつらをできるだけ潰す」


 そう言うと、アスカさんは銃を構えなおし、魔力を込めます。


 「反撃開始~」


 その言葉と同時に、一方的な攻撃が始まりました。

 ・・・一応皆さんに伝えておきましょう。




―――side春樹

 「さっきから、うっとうしいのよ!」


 姉さんがそう言う。僕もそう思う。

 白い魔獣に統率された魔獣達は陣形を組んだり、奇襲をかけたりして襲いかかってきます。今、こうして何とか守り切れているのは優子さんのおかげと言える状況。


 「けど、結界が安定しているっぽいから、黒い咆哮覇は避けて大丈夫だと思うよ」


 どういうわけか、結界がより強固になって張られている。

 誰かが魔力を多く流したのか。普通はそんなことをすれば魔力が切れて何もできなくなると思うんだけどな?


 「ですが、本当にヤバくないですか?」


 確かにいくら結界が強固なったとはいえ、何回も攻撃されれば壊れる可能性はある。


 「もう!白い魔獣なんか消えちゃえばいいですぅ!」


 シャンさんがそう言った瞬間、一体の白い魔獣の頭が消えた。

 一瞬の静寂、そして魔獣は背中から力なく倒れた。あれ?もしかしなくても、やっつけられた?

 それと同時に姉さんが誰かとピアスで会話し始めます。


 「・・・マジで?何よ、その怖い魔法」


 「姉さん?」


 とりあえず姉さんに聞いてみる。


 「どうも、ソラの知り合いが狙撃したらしいわ」


 「・・・どこから!?」


 と言うか、音が全くしないところをみると、たぶん魔銃の狙撃銃だ。あれは扱いが異常に難しくて、そこまでの威力が出ない。ただの魔法でさえ跳ね返すあの魔獣には絶対効かないと言っても過言ではないはず!

 それに、ここから狙撃できる場所なんて・・・。


 「どうも、真言らしいわ。だから、常識を求めるのは間違ってるわ」


 「それならしょうがないですぅ」


 「じゃぁ、頑張るようにお願いしましょう」


 シャンさんとシャオさんはそう言って構えなおします。

 確かに、真言ではしょうがないです。真言はその属性の本質とその人自身の本質が合わさって初めて使える、その人だけの最強魔法。普段では考えられない現象が多々起こるのでいちいち気にしていられない。

 まぁ、皆さんに言わせればソラ先輩が既に非常識の塊だと言っていますけど。でも、僕から言わせれば皆さんも十二分に非常識です。

 そして僕達がそんな風にして敵をどんどん倒していると、他の方向からも魔法が飛んできます。もはや僕達を巻き込む勢いで上空から隕石が降ってきます。

 それで大方の魔獣が殲滅できましたけど・・・。


 「一応聞くが、大丈夫か?」


 「ディアちゃん、≪降り注ぐ隕石めてお・すとらいく≫の方が危ないから!?」


 確か、生徒会の人達。

 その会長さんが一人で『風』『火』『地』の属性を使う混合魔法ミックス、≪降り注ぐ隕石メテオ・ストライク≫を使ったらしい。

 ・・・非常識だ。


 「まぁ、大丈夫なようだな」


 そう言ってきたのは、大剣を持った男の人。自分の周りに青い炎を纏わせている。けど、何故かものすごい冷気しか漂ってこない。


 「はっ!『魔氷狼フェンリル』ともあろうお方が苦戦か?」


 「うっさいわよ、そこのチンピラ!」


 「どっちがいっぱい倒せるか競争だね!」


 姉さんの方にも拳一つで敵を殴り飛ばす、荒々しい戦い方をしている男の人がいる。その人と一緒に小さな子供もいて、その子までもが両手にナイフを持って戦っている。


 「そっちも、ツーマンセルかい?僕達の方が美しく、強い。そうだよね、ジュリア!」


 「すみません!悪気はあるかもなんですけど、後で謝らせますから!」


 「「・・・」」


 なんか、やたらとキザな男の人と、どこか影のある女の人のカップルらしき人達がシャンさんとシャオさんの近くで戦っていた。

 でもカップル達の言う通り、キザな人が前に出て攻撃を自分に引き付け、女の人が後ろから、鞭による攻撃での支援には隙がない。


 「まぁ、こんなものだろう。私は疲れた、後は頑張れ」


 「も~。ディアちゃんもう少しがんばろーよー」


 そう言いつつもさっきとは段違いのスピードで魔獣が駆逐されていく。

 すごい。そう思った時だった。リュウさんの咆哮が聞こえた。忘れていた。いまだにリュウさんがドラゴンになって暴れまわっているのを。

 今はまだ学園の外にいるけど、いつここに攻撃が飛んでくるのかわからない。

 そして事態はまた変わった。僕がリュウさんらしきドラゴンを見ていると、その頭上に何か光が見えた。

 ≪身体強化フィジカル・ブースト≫の力で上昇した僕の目が捉えたものは・・・。


 「ソラ、先輩?」


 ソラ先輩らしき影は拳を振りかぶり、そのままリュウさんの頭に拳を叩きつける。すると、拳にまとった光が砲弾のように放たれ、リュウさんの頭を地面に叩きつけた。それと同時に周囲をものすごい地震が襲う。


 「「「・・・」」」


 あまりの光景に一瞬だけ空気が固まった。


 「・・・竜殴りドラゴン・キラー


 誰がそうつぶやいたのかは定かじゃない。




―――side空志

 「この、バカ野郎!」


 ボクは何をしても止まらないリュウに嫌気がさしてきた。

 あれからボクとリカ、そしてスズはリュウを止めようと声をかける。ただ、リュウは我を忘れて何もないところに、地面に攻撃を仕掛けまくった。

 上空にいるボク等は何ともないけど、正直な話学園に少しずつ近づいて行って危ない。これ以上はリュウが人を傷つけてしまう。しょうがない、殴ってでも止めると言った手前、有言実行しよう。


 「・・・しょうがない、スズ。先に謝っとくよ!」


 「え?何で~!?」


 レオに乗ったスズとリカの疑問には答えず、ボクは再び『サルでもわかる魔導書』を取り出す。そして、フェイクに使ったアレを呼び出す。

 魔法陣が発動して、ボクの体に光がまとわりつく。その光を右腕に集中させる。右腕が発行し始め、そこから膨大な魔力が放たれる。

 そしてボードを仕舞う。ボクは空中に投げだされ、リュウの頭頂部あたりに落ちていく。そしてこの魔法にデフォルトで使われている≪韋駄天イダテン≫の空中歩行の機能を使って、思い切り空中を蹴る。


 「いい加減に、頭冷やせ!」


 ボクは弾丸の如くリュウの頭に突撃。そして腰を入れた拳の一撃をリュウの頭に加える。強化された拳がリュウの硬い鱗の表面を思い切り殴り、さらには右腕から放たれた光がリュウの頭を地面に叩きつける。

 轟音と土煙りが舞う。そして局地的な地震も起きる。脳を揺らされたからか、リュウは痛みに悲鳴の叫び声をあげ、そこから頭を動かそうとしない。

 そして当のボクは・・・。


 「もう、限界・・・」


 あの魔法、魔力の消費が半端じゃない。それに複雑な魔法を組んであるから精神的にも疲労がたまる。そして一番の理由が・・・。


 「怪我、開いた・・・」


 どうも、この魔法は舞さんに言われた『うさぎ跳びでフルマラソン』に匹敵するらしい。何もできずに、自由落下に身を任せるしかない。

 すると、唐突にボクは浮遊感を感じた。


 「ソラ!無茶しすぎ!」


 「け、怪我あいちゃってるよ~!?」


 どうも、レオがボクを咥えてくれているらしい。

 いや、今はそれよりも重要なことが。


 「スズ、ボクもう無理っぽい。だから、スズがリュウを叩き起しに行って」


 「え?でも・・・」


 「大丈夫。スズにはレオがついてるし、ボクにはリカが付いてくれる。そうだよね?」


 「うん。・・・けど、気をつけてね、スズ」


 「・・・うん」


 レオが高度を落とし、リカが飛び降りる。そしてレオは薄情にもそのままボクをぽいと放り捨ててスズをリュウの前にまで連れて行った。


 「後は、頑張って・・・」


 ボクは、リカに抱きとめられると同時に意識をなくした。




―――side隆介

 ―――殺す。


 ―――悲しい。


 ―――死ね。


 ―――消えろ。


 そんな言葉がくるくると頭の中で回る。

 何でそんなことをしなくちゃダメなんだ?と頭の中で疑問を聞くと、これが答えだと言わんばかりに、少女の虚ろな顔が映し出される。

 あぁ、そうだった。あいつが奪った。だから殺さないと。許すなんかもってのほか。生きたままオレの黒い炎で焼き殺す。


 ―――足りない。


 ―――どこだ?


 ―――さみしい。


 その時、声が聞こえた気がした。


 ―――うるさい。


 ―――今は忙しい。


 ―――後で何でもしてやるから。


 ―――まずは殺させろ。


 ―――あの女を。


 ―――狂ってる人間を。


 だが、声は羽虫のように纏わりついてくる。

 ぐるぐるとオレの周りを飛び続ける。


 ―――もう、伊吹ブレス使うか?


 そう思った時、頭上で膨大な魔力を感じた。

 だが、オレは何もしない。龍種たるオレが生半可な魔法で傷つくはずがない。それに、この鱗もオレをさまざまなものから守ってくれる。

 そう思っていた。


 「―――!」


 声が聞こえた気がした。

 すると、頭の頭頂部あたりにものすごい衝撃がやってくる。オレは思わず悲鳴を上げそうになる。それを我慢したが、結果として意味はなかった。衝撃は小さくなるどころか、どんどん膨れ上がり、重くなる。オレはその重みに耐えきれず、頭を地面に叩きつけられた。それと同時に口から痛みに叫び声が出る。


 ―――誰がやった?


 ―――あいつか?


 ―――あいつって誰だ?


 脳裏に、オレと同じ年くらいの人間の少年が現れる。

 何か、無茶苦茶なことを言われていた気がする。


 「―――!」


 また、声が聞こえる。

 それは、聞こえるはずのない声だった。だって、お前は・・・死んだんだから。

 生きながら、屍になると言う残酷な死。オレに、その笑顔を向けることもなくなったはずだ。うまい飯も、作ってくれない。だが、声は聞こえる。

 すると、顔の一部に温かい熱を感じた。


 「―――リュウ君!」


 「・・・・・・ス、ズ・・・?」




―――side鈴音

 一生懸命走った。

 わたしはレオ君から飛び降りると、リュウ君に駆け寄った。今もソラ君に殴られたところが痛いのか、呻くような鳴き声を上げている。


 「リュウ君!リュウ君!わたしだよ!鈴音だよ!」


 何回もリュウ君にそう訴える。けど、リュウ君の目はわたしを見てくれない。

 何回も叫んだ。声の限り、声が枯れても、何回もリュウ君の名前を、そしてわたしの名前を言い続けた。


 「リュウ君!」


 リュウ君に声が届かない。

 そんな時、リュウ君の体がピクリと動いた。丸太のように太い腕に力が入るのがわかった。

 わたしはこの瞬間に立ちあがっちゃうと、リュウ君がどこかに行っちゃうような気がした。

 だから、その顔にがむしゃらに飛びついた。


 「リュウ君!」


 のどがカラカラで声も枯れている。けど、わたしは叫んだ。心の底から。

 すると、リュウ君の動きが止まった。リュウ君の目は、わたしを見ていた。


 「・・・・・・ス、ズ・・・?」


 リュウ君がわたしの名前を呼んでくれた。

 それだけのことなのに、涙が出てきた。


 「・・・よかった、リュウ君、よかった・・・・・・」


 リュウ君の姿が徐々に小さくなっていく。

 気づけば、わたしは人間の体のリュウ君に抱きしめられていた。


 「本当に、お前なのか・・・?」


 「うん・・・。リカちゃんが、助けてくれたの」


 「・・・そうか、そうなのか」


 わたし達は、涙を流しながらお互いの名前を呼び合って、強く抱きしめあった。


作 「というわけで、『快進撃』をお送りしました!」

カザハ 「・・・全員、強すぎ」

作 「まぁ、しょうがないね!」

カ 「・・・」

作 「これで隆介君も元に戻ったということでめでたしめでたし」

カ 「あぁ、本当にそうだ・・・」

作 「とでもいうと思ったか!?」

カ 「はぁ!?」

作 「次回、ついに学園爆破!?次回もよろしく!」

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