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DARK・MAGIC ~闇夜の奇術師達~  作者: 夜猫
7章 ≪魔法学園文化祭編≫
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25話・SPIRIT MAGIC

―――sideディア

 「会長!」


 ことは突然だった。

 私は連日のイベントの司会進行でつかれていたために、生徒会室で机に突っ伏して惰眠を貪っていた。だが、そこを風紀委員のやつらに叩き起されてしまった。

 ・・・切り刻んで、潰して、消し炭にしてやろうかと本気で思った。


 「・・・何だ?」


 「留学生が細身のゴーレムのようなものに追いかけられているようです!」


 「それと、学内の神殿入り口から魔獣が!そちらも留学生の双子と、男子生徒が何とか押しとどめているようです!」


 ・・・ふむ。事態が深刻そうだ。とりあえず、行くところができた。

 私は立ち上がり、歩きだす。


 「会長、どこに行くんですか!?」


 「理事長室だ。サリナ理事長に聞くことがある。お前達は観客の避難をしろ。何、防災訓練と同じ要領だ。全員を闘技場に集め、結界系の魔法が得意なもの全員でやれ。それと、魔獣との応戦は緊急事態を除き許可しない」


 私はそれだけを言うと、魔法を発動する。

 風の魔法、≪風の旅人トラベラー≫。一度行ったところであればどこにでも行ける、上級の上位魔法。昼寝をする場所を探すために覚えた。

 私の周りを風が渦巻き、次の瞬間には目の前にはサリナ理事長がいた。


 「理事長、緊急事態なので失礼は後で詫びます」


 「構わないわ。緊急事態って何?」


 突然現れた私に何の反応も示さずに、続きを促す。それに従って私は言葉をつづけた。


 「魔獣、ゴーレムの出現です。どうも、神殿に関係があるようです」


 魔獣は神殿内部から出てきたので当たり前。ゴーレムは上級生しか知らないが、神殿内部に出てくるセキュリティシステムの一つだ。


 「・・・藪をつついて蛇どころか、魔獣を出したわけだ、あの子達は」


 「爆破の件に関係が?」


 「えぇ。あの子達の仲間、『リバース』の属性を持つ女の子が攫われたわ。何でかわからないけど、神殿、『月の精霊殿』に向かったみたいね」


 『月の精霊殿』、私は聞いたことがないが、つい最近になってよくあらわれるようになった『ルーミア』とかいう神霊が関係あるのか?


 「とりあえず、闘技場に避難をするように風紀委員に頼みました。先生方にも連絡をお願いします。後、私はこれから書記のライニーと単独で行動させてもらいますので」


 「・・・構わないわ」


 それを聞いて、私はすぐに魔法を発動する。

 一応、三属性トリプル持ちだが、魔力が持つのか不安になってくる。だが、今はそんなことも言ってられない。私はケータイを取り出すと、あのバカと連絡を取る。


 『なんだ!?お前から連絡とは珍しい!』


 「黙れバカ。仕事だ、内容は学園内の魔獣、ゴーレムの駆逐。及び民間人の保護だ」


 『・・・ほう、さっきのあれはそういうことか。わかった、やってやろう』


 「あぁ、頼んだぞ、ヴァルス」


 『呼び捨てにするなと言っているだろうに・・・』


 それならば、もう少し大人な所を見せてほしいな。




―――side奏

 どどど、どうしましょう!?わたしは今、闘技場横のミスコン出場者控室にいます。

 問題なのは精霊さん達が私のお話を聞いてくれないということで、そのおかげで私は魔法を使えないです!しかも師匠から借りているピアスも、『衣裳に合わない!』と言われて外されてしまいました・・・。

 というか、何でこんなにフリフリな服なんでしょう?・・・肌もこんなに出てますし、前髪をヘアピンであげられて、恥ずかしすぎます。死んでしまいます!


 「・・・杏奈」


 「わかってる、けど、今は何も言わないで」


 「四条さん、お似合いですよ」


 アスカさん、副代表さん、リオネさんがそう言ってお世辞を言ってくれます。


 「で、ですが、私、よくガリガリ過ぎと言われますし・・・それで、ご飯をいっぱい食べてもダメなんです・・・」


 そう言うと、みなさんが何故か私の体を上から下まで眺めます。


 「・・・一瞬だけ、四条ちゃんに殺意がわいた」


 「・・・今度から、クマ五郎(ネコ)達にご飯あげる」


 「べ、別に太ったわけではないのですよ?ただ、少し食べ過ぎてしまっただけで・・・」


 何故か皆さんの挙動が怪しくなります。

 ・・・・・・どうかしたのでしょうか?

 そんなことを考えていると、校内放送が流れだしました。


 『只今、学園内にて魔獣が出現。来場者の方は、学園生徒の指示に従い、闘技場へと避難してください。繰り返します・・・』


 「ほぇ~。珍しいね。まぁ、近くに森もあし、しょうがないよね」


 「それに、先生方がすぐに解決してくださいますわ」


 「それに、会長が所属している傭兵ギルドの人もいるみたいだから」


 確かにその通りです。

 魔獣はそれほど珍しい存在ではありません。マナの停滞が引き起こされ、呪力が発生すると、割と簡単に生まれてしまいます。低級なものに限りますけど。

 でも、今のわたしには、いやな予感しか感じ取れません。もしかして、師匠達に何かあったのではないかと・・・。


 「・・・四条さん、どうかしたの?」


 副代表さんが心配そうにわたしを見つめてきます。

 わたしは大丈夫ですと言いながらも、どうしてもさっきの考えが脳裏をよぎって不安になってきます。


 「・・・そう言えば、三谷さん達の姿が朝から見えませんわね」


 「そいえばそだね」


 「もしかして・・・」


 みなさんがわたしにその目を向けます。

 ・・・ど、どうしましょう!?どうやって、ごまかしましょう!?

 ですが、わたしはこれを考える必要がなくなりました。闘技場からの悲鳴を聞くという形で。

 わたし達は一瞬だけ顔を見合わせると、すぐに外に出て行きます。そこには、地面から凶暴なうなり声をあげながら顔を突き出している魔獣の姿。

 どうも、この下も神殿内部のどこかに繋がっていたみたいです。


 「な、なんだよ、この魔獣!?魔法が効いてない!?」


 「集中攻撃だ!土系が使えるやつは、地面を埋める魔法を展開しとけ!」


 学園内の生徒さん達が中心に何とかして魔獣を倒そうとしています。けど、それは・・・。


 「どういうこと?異常に強い魔獣って・・・」


 「まさか、あの時の!?」


 「私達も加勢に参りましょう!四条さんはここにいてください。・・・ここは人が多すぎます」


 そう言うと、みなさんは控室を飛び出して行きました。

 ・・・幸いにも、この控室には既に人がいません。たぶん、先ほどの悲鳴につられて外に向かったのでしょう。ですが、いつ戻ってくるのかわかりません。私はピアスを耳に付けて、精霊さん達に語りかけます。


 「何が、起きているのか教えてください!」


 『黒い獣』

 『神殿から』

 『お月さまの神殿』

 『いっぱい出てきた』

 『黒い獣』


 どうも、神殿の中に魔獣がたくさんいるようです。


 『眼鏡の人』

 『小さな人』

 『薬の人』

 『戦う』

 『黒い獣』

 『石の人形』


 たぶん、平地さん御姉弟とリーさんが一緒に戦っているみたいです。

 それなら安心できます。


 「師匠達は!?」


 『怖い』

 『ダメ』

 『死んじゃう』

 『黒い』

 『怖い』

 『いやだ』

 『真っ黒な力』


 「ど、どういうことですか!?」


 突然に師匠達の情報を伝えることに拒否しだした精霊さん達。でも、どういうことなんでしょう?それに、『真っ黒な力』とは、精霊さん達が言う『呪力』のことです。何で急に呪力のことを?しかも怖いだなんて・・・。

 すると、また一つの光の球が騒ぎ始めました。


 『危ない』

 『黒い獣』

 『力』

 『黒い力』

 『放つ』


 わけがわからず、内容を尋ねようとしたとき、背筋が凍るような獣の咆哮が聞こえました。

 これは知っています。

 これは・・・!

 爆発音が響き、それと同時に悲鳴も聞こえます。

 わたしが急いで外に出ると、かろうじて空に黒い光線のようなものが消えていくのが見えました。

 レオ君とは違う、『黒い咆哮覇』。驚異的な威力を秘めた、攻撃魔法。


 「な、なんだよアレ!?」


 「ヤバい、逃げろ・・・!」


 その言葉に生徒さんも、お客さんも悲鳴を上げて、我先にと出口に向かいます。副代表さん達は、何とかしてこのパニックを収めようとしていますが、誰も聞いてくれません。

 ど、どうすれば・・・。

 その時、小さな男の子が多くの人の波にとられて転倒してしまいました。そこで泣き始めますが、近くの大人の人達も、生徒さん達も気づきません。ただ、魔獣だけがその存在に気づき、その口を子供に向けます。


 「四条ちゃん!?」


 「何をするおつもりですか!?」


 アスカさんと、リオネさんが焦ったような声が聞こえる気がします。

 わたしは人の波にもまれながらも、何とかしてかき分け、そこにたどり着きます。魔獣の方を見れば、そこにはまるでモグラ叩きのゲームのように上半身だけを穴から出した、少しだけ間抜けな姿が目に写ります。

 ですが、その口には黒い塊が生成されています。

 たとえ避けても周りの人たちに当たってしまいます。けど、避けないとこの子にも、わたしにも当たってしまいます。

 師匠、わたしはどうすればいいんですか・・・!?

 師匠なら、どうしていますか?師匠なら、いつも・・・。


 「・・・そうでした」


 考えるまでもありませんでした。

 師匠なら、こう言ってくれます。


 「『精霊魔法は、すごい』んですよ。

 ―――我、汝と共にあり!

    基は吹き荒れる暴風の風。

    我が意に応え、風の加護をもたらせ。

    汝、名をシルフ!」


 わたしがそう言うと、精霊さん達の一部が強く光り始めます。

 風の精霊さん達はまるでわたしに次は何をすればいいのかせかすように周りで踊ります。


 「≪風の刃≫!」


 わたしがそう言って魔獣を指さすと、精霊さん達はわかったとでも言うようにさらに強く光り始めます。そして精霊さん達が風のマナを操作し、わたしにその力を流し込みます。精霊さん達がこの魔法はどんなもので、どういった効果なのかを教えてくれます。

 そしてわたしが敵を倒してと念じると、魔法は放たれ、風の刃が魔獣を切り裂きます。前回同様に精霊魔法が弱点なのか、一撃で倒されました。

 その体は穴の中に押し戻され、それと同時に獣の悲鳴のような鳴き声が聞こえます。たぶん、後続の魔獣がいたんでしょう。

 わたしは急いで穴に向かうと、精霊さん達に語りかけます。


 「お願いです、この穴を閉じてください!」


 『閉じる?』

 『危ない?』

 『黒い獣』

 『出てこなくなる』

 『閉じる』


 そう言うと、土の精霊さん達が先ほどと同じようにわたしにマナを送り込みます。すると、地面の土がうごめき、そのまま地面の穴を埋めてくれます。


 「これで、一安心です」


 「全然、安心できない!」


 大きな声に驚いて後ろを振り向くと、そこには副代表さんがいました。

 副代表さんはものすごく怖い顔でわたしに詰め寄ってきます。


 「四条さん!何で、使ったの!」


 「あ、あの、そそ、その・・・」


 「・・・っうぅ・・・ままぁ・・・」


 わたしの腕の中には、先ほどの男の子がいます。


 「ふ、副代表さんのせいで、泣いちゃいました!」


 「違うでしょ!確かにその子の為かもだけど、自分の首を絞めてどうするの!?わたし達に頼むとか、いろいろと方法はあったでしょう!?」


 ・・・これを言うと、もっと怒られそうなんですけど、言うしかないですよね?


 「あ、あの・・・勝手に、その・・・体が・・・・・・動いちゃいました」


 「・・・・・・はぁ、良くも悪くも、向こうの人たちに毒されているのね」


 副代表さんがため息を吐くと、そんなことを言ってきました。ですが、何故か表情はうれしそうです。・・・・・・何ででしょう?

 ですが、その余裕もすぐに終わりました。今度は、空から魔獣が降ってきました。


 「け、結界はどうなっているんですか!?」


 「まだ、避難が終わってないから、無理みたいね」


 そう言ってくれたのはアスカさんです。

 愛用の狙撃銃を片手に魔獣をけん制します。


 「この銃じゃ、けん制にしかなんない」


 「わたくしも、予備の人形では無理ですわ」


 リオネさんもマネキンのような人形をいくつか操って魔獣を撃退しようとしていますが、どうにも倒し切れていないようです。


 「残念だけど、四条さんの精霊魔法が頼りってことね」


 「まぁ、もう使っちゃったし、パァ~っと行こうよ!」


 ・・・アスカさんの言うとおりな気もします。

 どうせなら、全力を出しましょう。バレちゃいましたし。


 「で、では・・・。精霊さん達、整列してくださ~い!」


 「え?精霊魔法ってそう使うのですか?」


 違います。これは、師匠と考えた魔法です。

 精霊さん達は意思のあるマナ。魔法的媒介にはこれほど最適なものはないらしく、師匠が、龍造先生と一緒に考えてくれました。

 精霊さん達は何かのゲーム的な感覚なのか、四方に散らばってくれます。そして精霊さん達で繋がりパスを作り、全体にマナが行き渡るようにします。するとラインが意味を持ち、魔法が構築プログラムされます。

 出来上がったのは、マナをドーム状にした結界。師匠達はこれをこう命名していました。


 「精霊陣≪守護結界≫です」


 「ちょっと!?結界張ってもいいの!?」


 「だ、大丈夫です。精霊さん達に魔獣以外は通すようにお願いしました。ですから・・・」


 「なるほど、中にいるのを倒せばそれでいいわけだね」


 アスカさんがにやりと笑います。

 周囲には、数体の魔獣。しかも、前回同様なら呪力で強化された魔獣です。ですが、不思議なことに、わたしも負ける気がしません。


 「でも、前がいませんわよ?」


 「だ、大丈夫です。

 ―――我、汝と共にあり。

    基は強く、繊細なる剣。

    我が意に応え、剣の加護をもたらせ。

    汝、名をゾルディアス!」


 この精霊さん達は特殊な精霊さん達で、わたしに剣の知識と戦い方を教えてくれます。そして、わたしの手には精霊さん達の手で造られたマナの剣が握られています。


 「わ、わたしが前、で、できます」


 「・・・そこはかとなく心配ですが、お願いしますわ」


 「というか、この方が四条ちゃんの援護すればいいから、むしろ楽だけどね~」


 「無茶だけはしないで」


 「だ、大丈夫です。それは、師匠の専売特許ですから!」


 「・・・それはそれで三谷君が心配」


 そして、わたし達は互いに動き始めました。




―――side空志

 ボク等は今、ものすごくマズい状況の中にいた。

 周りには培養槽のようなものがあって魔獣が、それも呪力によって強化されているだろう凶暴なものがその中に浮かんでいる。

 そして、目の前にいるのはボク等が初めて出会った強襲派アサルトの魔王だ。

 ・・・スキンヘッドの魔王?残念ながらボクにはアホっぽさを醸し出す二つ名の偉丈夫な魔王なんて知らない。


 「ふむ。今までのお前の行動パターンから、すぐにアレはただの囮だと気づくと思ったんだけどな。思っていたよりも頭は回らないようだな」


 「何その、ボク等について知らないことはないですよ見たいな発言?」


 「ストーカー?・・・ソラ、やってもいいよね?」


 何故かリカがすぐにでもブラックリカ様になりそうだ。

 下手に攻撃して怒りを買えば、何が起こるのかわからない。ボクはそんなリカをなだめつつどうしようか策を考える。


 「まぁな。俺はお前に興味がある」


 「・・・どうせなら、もっと可愛い女の子に言われたいね」


 「・・・ねぇ、ソラ。アタシはソラに興味ある」


 「・・・リカさん、とりあえず静かにしてくれない?」


 今はジョークに付き合う余裕がない。

 何故かフェイクはため息をひとつつくと、再度ボク等に視線を向ける。


 「でも、何でボクなの?ボクなんか、ちょっと力があるだけの少年Aにすぎないよ?それこそ、同じ『月』ならルーミアさんの方が強いし、神霊だよ」


 「汝、さりげなく我を売ったな?」


 「いいじゃないですか、結婚相手にあぁ言うのはどうですか?」


 「わらわにそんなものは必要ない。その上に好みのタイプではない」


 「奇遇だな、俺もだ。・・・・・・で、何かいい策は思いついたか?」


 「「・・・」」


 ボクとルーミアさんは思わず押し黙る。さっきから培養槽を見ているけど、スズの姿は見えない。

 ・・・・・・こことは違うところにいるのか?それなら、やっぱり奥に?

 それなら、この魔王を倒して奥に進むか、見捨てるの二つしか選択肢が残らない。

 けど、残念なことにボク等が選ぶ答えはすでに決まっている。


 「・・・みんな、先に行って。ボクができるだけ足止めする」


 「おい、お前、自分が何言ってるのかわかってるのか!?魔王ってのは、他の魔物とは比べ物にならないぐらい強い。これは誇張でも何でもない、下手したら死ぬぞ!?」


 リュウがボクにまくしたてるようにして言う。

 けど、これしか思い浮かばないんだよなぁ・・・。


 「まず、相手は何故かボクに御執心。雰囲気からしてボクを殺す気はあんまりないと思う。それに、ボクだって魔王の強さは知ってるつもりだよ。だから、今からすることは当初の目的の『スズ奪還』、これに尽きる。ボク以外で奥に攻め入って、可及的速やかにスズを奪取した後、それをボクに知らせて。そうすれば、ボクもここでフェイクの相手をする必要はなくなる。ラッキーなことに今日は龍造さん達も来る。後は本職の魔王に任せよう」


 「・・・わかった」


 「・・・」


 リュウは何とか理解してくれるけど、リカはボクの言葉が聞こえないかのようにフェイクをじっと睨みつける。


 「リカ、お願い。今この瞬間にも、スズの命が危ないんだ。だから・・・」


 「・・・っ、わかっ、た」


 リカは納得していないようだったけど、無理やりに自分に言い聞かせるようにして言った。

 ボクはフードの中にいるレオを地面に下ろすと、レオに大きくなるように言う。

 レオは短く鳴くと、その体を光に包む。次の瞬間、そこに現れたのは真っ白な翼の生えた獅子。『飛翔獅子スカイ・レオン』と呼ばれる幻獣の姿だった。


 「みんなはボクに合わせて、レオ!」


 ボクがレオに声をかけると、レオは意味を理解して行動に移す。レオは狭い通路に自分の大きな翼を広げ、全速力でフェイクに突っ込む。

 それに対して、フェイクはさっと手を振る。すると、炎の塊が生成され、それがレオ目掛けて放たれる。

 大きなレオの体にはその攻撃は確実に当たってしまう。


 「レオ!」


 ボクが再び声をかける。すると、レオの体が再び光に包まれる。フェイクが何かの攻撃かと自分に防御の魔法を展開するのを確認した。

 そして、レオの体を包む光がはじけたかと思うと、そこに現れたのは子猫状態のレオ。レオはそのままフェイクの横を通って奥に進み、レオの影隠れたボク等もフェイクをしり目に奥の通路に向かう。


 「っく、フェイントか!」


 「バーカ!子猫に出し抜かれた魔王さん!」


 ボクは奥の通路の前に立ち、道を塞ぐようにして立つ。

 でも、フェイクは何故かそれを見て笑みを浮かべる。


 「俺が興味あるのはお前だ、むしろお前が逃げていればいいものを」


 「逃げるよ。仲間を助けた後にね」


 「ふむ、わらわ抜きで楽しそうな話を進めるでない。気がきかん男はモテんぞ」


 「・・・何、ナチュラルに会話に加わっているんですか?」


 何故かルーミアさんがいた。

 というか言いましたよね?最大戦力を持ってスズを助けるって。


 「連絡が必要であろうが。汝等のピアスは使えん。それなら、わらわが精霊達に命令して情報を集める他にない」


 ・・・確かに。すっかりピアスのことを忘れていた。

 ここはどういうわけか、ピアスの通信魔法を妨害する。だから、連絡手段としての精霊はかなり有効。逃げるにも、この人がいないと精霊の言葉がわからないし。


 「・・・お世話になります」


 「わかればよい。というわけで汝のストーカー退治とするか」


 ルーミアさんが手をフェイクに向けたのを見てボクも銃を抜き、その銃口をフェイクに向ける。

 それでも眉ひとつ動かさない相手。でも、何故かため息をつくと独り言をつぶやくようにして言う。


 「・・・こちらも、一応仕事なのでな。こうさせてもらう」


 フェイクは指をパチンと鳴らす。

 すると、今まで沈黙を保っていた周囲がにわかに騒がしくなる。培養槽の機械が動き出したようだった。それと同時に培養槽のガラスを叩く音が聞こえ始める。

 もしかしなくても、魔獣達が起きた。しかも敵意を隠そうともせずにボク等を睨みつける。そして何体もの魔獣達がガラスを突き破って出てくる。


 「・・・さっきのやつらをやれ。それとこいつらの仲間もだ」


 フェイクがそう命令すると、魔獣達は雄叫びをあげ、あちこちに疾走し始める。


 「な、待て!!」


 ボクとルーミアさんは急いで魔獣を追おうとする、けど、そこに魔法を撃ちこまれて出鼻をくじかれる。


 「お前等の役目は俺の足止めだろう?さっさと始めろ」


 「このっ・・・!」


 「わらわ達も面倒なことになったな。まぁ、強化されておるとはいえ大丈夫ぢゃ。上には汝の知り合いの手練れがおるであろう?」


 今は、信じるしかない。


 「けど、ボク等もできるのなら奥に向かいましょう。岩石守護騎士ガーディアンで魔獣を駆逐できるかもしれません」


 「ならば、目的変更か。あの小僧の隙を見つけて逃げる」


 ボクはうなずくと、魔法陣を展開する。

 今は、ボクの持てる力の最大限を使うしかない。


作 「お、終わらない・・・。『精霊魔法』をお送りしました!」

冬 「まさかの四条の出番ね」

作 「イエス!そして、思った以上に話が長くなるこの状況」

冬 「考えなしにやるからね」

作 「考えはある!ただ、文才がないだけなんだ!」

冬 「余計にダメじゃない」

作 「というわけで次回、あの力の真実が?というわけで次回もよろしく!」

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