24話・POWERED BEAST
―――side鈴音
―――ここはどこ?
―――とても暗い・・・。
―――こんな所にいたくない。
―――この『闇』は怖い。
―――でも、怖くない『闇』なんてあるのかな?
―――暗いのは、怖いよ・・・。
―――side冬香
「もう!あの三人はどこに行ったのよ!?」
わたしとハルは学園内の怪しいところを再び探している。
しかも学園祭が始まってしまい、この人ごみの中を動いて捜索するのはひどく効率が悪い。それに、あの四条の精霊魔法とソラの魔法探知が利かないほど相手は巧妙に隠れている。こうも人が多くちゃ本当にどうしようもない。
しかも、さっき四条がDクラスの女子らしき二人に連れ去られているのも見つけた。下手に騒ぎ立てるわけにもいかないから、影からこっそりと聞いてみると、どうも精霊魔法の欠点がここにきて発生したらしいわね。
精霊魔法は加護を与える精霊達の気分で著しく効果が変動する。しかも、今回は精霊達は歌を聴きたいと駄々をこねて、四条の言うことをきかなくなったらしい。
「でも、ソラ先輩達はどこに?」
「さぁね。けど、四条から聞いた『開かない扉』ってやつが気になるわね」
しかも、どういうわけか精霊達には触れることができないらしいわね。けど、それがついさっき開けられた形跡があるみたいね。
「なんにしても、理事長さんの所に行って聞く必要があるね」
「そうね」
わたしはハルの言葉に頷く。
そして理事長室の扉を乱暴にたたくと、返事も待たずに中に飛び込む。
「どうしたの?何かわかった?」
ここの理事長は、わたし達の態度に眉ひとつ動かさずに対応する。
「『開かない扉』って言うのはなんですか?」
ハルが言った言葉に少しだけ考える仕草をとる。
そして思い当たるものがあったのか、すぐに答えてくれた。
「立ち入り禁止の所にあるかも。けど、あの一帯はいろいろな研究者が調べたけど、魔法が無効化されて、以上に固い壁以外に何もないわよ?・・・不自然に壁の装飾が施されているところはあるんだけど、それのことかしら?あれは『開かずの間』なんて呼ばれてるんだけど?」
「たぶんそこね」
「ついさっき、四条さんの精霊によると、ソラ先輩がその『扉』を開けた可能性があります」
「むしろ、絶対に開けてるわ」
「・・・」
理事長は何か言いたそうな眼を向けてくるけど、それは後でソラにぶつけておいてくれるかしら?
「とにかく、その場所を教えてもらえる?」
「いいわ」
理事長からその場所を聞き出すと、わたしとハルは走り出した。
「でも、この状況。似てるわね」
「似てる?何に?」
ハルが知らないのも無理はないわね。
あの時はわたし達六人と、四条が巻き込まれた事件。『月の精霊殿』なるところに迷い込んだソラ達を助けるために、龍造さん、ライネルさんと一緒に神殿内部に進んだ。あの時は確か、学園の中に神殿の一部が崩れて中に侵入できるところがあって、そこから入った。
でも最深部に行くのに、いろいろと道に迷ったわね。
そしてソラ達を助けるのにピアスで連絡を取ろうとしたら、何故か通じない。
後々聞いてみると、『月の精霊殿』では一部の魔法が制限されるみたいだったわね。
それをハルに簡単に教える。
「なるほど、そんなことが・・・」
「・・・着いたわよ!」
言われた場所の扉は半開きになって放置されていた。
文化祭期間中は戸締り徹底しているはず。ならこれは、ついさっき誰かが開けた可能性が高い。
わたし達は何のためらいもなく中に入る。すると、目の前にぽっかりと丸い穴をあけた壁があった。こんな所に穴があいているのはおかしい。絶対にこれが例の『扉』ね。
「姉さん、どうするの?中に入る?」
「待ちなさい、まずはシュウ達に連絡よ」
そして、わたしはピアスでシュウを呼び出す。
そしてその時だった。突然、地面が揺れる。一瞬だけ地震かと思うけど、それはすぐに覆された。何の前触れもなく扉から何かが飛び出してきたかと思えば、それは外の空気に触れたことがうれしいかのように、雄叫びを上げる。
「魔獣!?」
「何でこんな所にいんのよ!?」
―――side樹
私達は何のアテもなく探していました。
「シャン、スズさんの気配はまだ分かりませんか?」
「頑張ってるですぅ・・・」
「シュウ、ソラさん達でも無理なんだ。いくらシャンでも無理かもしれない」
確かにその通りです。
シャンは『気』を扱うためにか、他人の気配に対してものすごく敏感です。そしてどういうわけか、師匠のしごきのおかげで他人の気配を追えるようになってしまっています。私とシャオではできない芸当です。
「でも、さっきからソラさんチームと連絡が取れていないのが気になるですぅ」
「確かに、俺も気になる」
「そういえば、先ほどから四条さんとも連絡がとれませんね」
まさか、ソラさん達と四条さんに何かが?
そんなことを思っていると、闘技場方面から歓声が上がります。
私は半ば条件反射のような感じでそちらの方を見れば、闘技場の上空には投影魔法による映像が映し出され、四条さんの姿が見つかりました。
「・・・何を、しているのでしょう?」
「ミスコン?」
「ミスコンですぅ」
いえ、それは見れば分かります。
私が聞きたいのは、なぜミスコンに出ているのでしょうかということです。そういう風に訂正しようとしたとき、地面が揺れました。
「・・・地震じゃ、ないですぅ!」
「シャン、どういうことですか?」
「地下・・・!」
シャオがそうつぶやいたその時、私のピアスに連絡が入ります。誰かわかりませんがとりあえず出ましょう。
「シュウです」
『シュウ!?こっちは冬香よ!ヤバいことになったわ!』
『姉さん!』
『っく、コード≪槍衾≫!』
平地姉弟の切羽詰まった声とともに、獣の雄叫び、魔法の発動が確認できます。
一体、何が・・・!?
「シュウ、シャオ!あっちから、変な気配がするですぅ!」
「変な気配ってなんだよ・・・」
シャオがそうつぶやくと、近くから獣の雄叫びが再び聞こえます。
『シュウ、魔獣よ!』
「魔獣ですか!?こんな所に!?」
『しかも前のやつみたいに、異常な強さよ!』
では、まさか聞こえてきた方向とは・・・!
「大変です。シャオ、シャン、私たちは闘技場近くの『月の精霊殿』の侵入口に急ぎましょう!」
「それ、なんですぅ?」
「今はその暇はない。シュウについて行こう!」
走り出した私にシャオはシャンを引っ張りながらも付いてきます。
早くしないと、被害が出ます。
―――side春樹
「姉さん!」
「大丈夫よ!」
僕達は、急に現れた魔獣を対処しています。
「でも、魔獣ってこんなに強いんだね。≪炎華≫!」
僕は魔法陣を展開して炎を生成、それを魔獣にぶつける。
それでも、相手は全然ひるまない。獣は本能的に火を怖がるはずなのに・・・。
「魔獣に常識は通用しないわ!てか、どんだけ出てくんのよ!?」
扉からは、どんどん魔獣が出てくる。
これじゃ、ジリ貧だ。
「姉さん、扉を封鎖しなきゃ!」
「さっきからコード≪氷地獄≫使ってるわよ!けど、あの扉の周りだけ魔法が効かないのよ!」
姉さんの数法術、コード≪氷地獄≫は周りを銀世界に変え、自分の戦いやすいフィールドにする魔法。それをうまく使えば、あの扉ぐらい分厚い氷でふたをすることができるはず。
「なら壊すしかないの?」
本当はこんなことはしたくない。それにここはソラ先輩たちが入って行った可能性もある。仲間を見捨てて出口をふさごうとしているのと同じだ。
そんな
「大丈夫よ。あのバカなら、むしろ壊さなきゃ怒ってるわよ!」
・・・それもそうだ。あの人は自分よりも他の人の安全を優先する。
「わかった。やろう、≪風華≫!」
「コード≪槍衾≫!」
僕の魔法陣からは風の刃が、姉さんの数方陣からは氷の槍が放たれる。
それらは狙い違わずに扉に当たる・・・・・・ように見えた。扉に魔法が触れた途端、何の前触れもなく魔法が消滅した。
それに続くように、『扉』からけたたましい音が鳴り響く。
『明確ナ攻撃意思ヲ持ツ魔法ヲ感知。緊急まにゅあるヲ起動』
そんな合成音声のようなものが発せられたかと思うと、突然穴が消えた。そこにはさっきまでなかった、装飾の施された壁が道を塞いでいた。
これだけならまだよかった。続いて魔法陣が展開されて、そこから人影が現れる。ただし、よくよく見ればそれは石でできた細身の人形。騎士の甲冑のようなデザイン。両手には剣がついていて、足の脛にも刃がついている。そして、足のくるぶし部分には車輪のようなものがあった。
『流星騎士、周囲ノ敵ヲ殲滅シマス』
合成音声がそう言うと、流星騎士と呼ばれたゴーレムが構える。
それに魔獣たちはその巨大で、強靭な腕を振り下ろす。
すると、流星騎士は両手を素早くふるう。それだけで魔獣の腕が切断され、魔獣達は苦悶のうなり声をあげる。流星騎士はさらにダメ押しと言わんばかりに両手の剣と、両足についている刃を使って、魔獣達を切り刻み始める。
そして、ものの数分で魔獣達を殲滅してしまった。
「す、すごい」
思わず、僕の口からそんな言葉が漏れる。
すると、流星騎士は顔に当たる部分を僕達に向けてくる。
・・・・・・なぜだろう、ものすごく嫌な予感が。
「ハル、逃げるわよ!」
「やっぱり!?」
まぁ、扉に攻撃したのは僕達だからしょうがない。
「けど、逃げたら他の人に被害が・・・!」
「大丈夫よ、攻撃さえしなかったら!コード≪魔氷狼≫!」
姉さんが数法術を発動する。
姉さんの周りにいくつもの数方陣が浮かんだかともうと、そこから大きな氷の狼がいくつも現れる。
姉さんと僕はその中の一頭にまたがって全速力で逃げ出し、残りが攻撃に回った。
けど、向こうのくるぶしの車輪がギュルギュルと地面を擦る音を立てて回転し始め、高速で移動し始める。そしてその俊敏さで氷の狼たちが次々に撃破されていった。
「何よ、これ!?」
「とにかく、僕らじゃ相性が悪い!シュウさん達に連絡するよ!」
僕は再びシュウさん達に連絡を取った。
―――side樹
『助けてください!変なのに追いかけられています!』
ピアスでの連絡が来たと思えば、突然そんなことを言われました。
「なんですか?冬香さんでも対応できない魔獣ですか?」
『魔獣よりも性質が悪いです。≪風華≫!』
その言葉と同時に、窓ガラスが割れる音が聞こえます。
おそらく、かなり近くにいるんでしょう。
「わかりました。こちらに誘導できますか?冬香さんに闘技場近くにある、『月の精霊殿』入り口に来るようお願いしてください」
『わかりました!』
そう言うと、連絡が消えました。
「シャオ、シャン、お二人がピンチのようです。ここを任せてもいいですか?」
「問題ない!」
「おっけーですぅ!」
ここは先ほど春樹さんに説明したように、『月の精霊殿』の入り口。というよりも、偶然地崩れなどで見つかった通路の一部なのですが。ここからも魔獣が嫌というほどに湧いて出てきます。ここはすぐに冬香さんの氷の数法術で入り口を塞いでしまった方がいいでしょう。
そのためにも、お二人を迎えに行きましょう!
「では、任せます!」
一応念のために『強化薬』を飲んでおきます。
これは私が父と母から教わったもので、樹族にしか作れない魔法薬の一種だそうです。これを服用し、全身の魔力を巡らせることで、普段は≪身体強化≫の魔法さえ使うことのかなわない私達でも、擬似的に似たような効果を得ることができます。
そして私は全身の魔力を巡らせると、音のした方向へ全速力でかけぬけます。しばらく走ると、一部の窓ガラスが割れて、その中から氷の狼にまたがった冬香さんと、春樹さんが飛び出してきました。
「大丈夫でしたか!?」
「えぇ!」
「けど、僕らじゃ相性が悪いです!」
そして壊れた窓のあたりの壁にいきなり切りこみが入ったかともうと、その部分の壁がこちら側に倒れ、そこからやや変わった形の人形が現れます。
私はお二人の壁になるように立ち、構えます。
「・・・なんですか、あれは?」
「全自動で動いているようです。たぶん、ゴーレムの一種かと」
ゴーレムというのは失われた魔法の一種で、大昔の人々は土人形に特殊な魔法を吹き込み、それを動かしたようです。しかし、今現代のこの世界では魔法のほかに機械技術も発展しているため、わざわざ土人形を作り、特殊な魔法を使うよりも機械で本体を作り、そこへ魔法回路を設ける方が簡単に作れ、しかも魔力の消費がはるかに少ないので、この技術はほぼ使われません。
その代わりゴーレムは土からできているためか、周囲の土を使う自己修復の機能が付与されていることが多いです。確かに、今の時代の『機甲魔導人形』では、たとえ自己修復の魔法が組み込まれていてそれを行うのも、人形を動かすのも魔法回路なので、回路がやられただけで自己修復はおろか、すぐに動かなくなってしまいます。
「いやに性能が高いですね。しかも、普通の巨人のように大きなゴーレムではなく、このような細身なものは始めてみます」
「はい。けど、心核を破壊しようにも動きが素早すぎて魔法を当てられません」
「・・・なんですか、それは?」
「知りませんか?ゴーレムを動かすのに使う、心臓のようなものです。確か、理論は・・・」
「そんなことより、あいつをさっさと片付けないと・・・!」
冬香さんが春樹さんの言葉を遮ったその瞬間、ゴーレムは私には目もくれずお二人を狙います。
ですが・・・!
「今の私は、強いですよ!」
相手の懐に潜り込み、足を刈り取ります。相手はバランスを崩し、前のめりに倒れようとするところを私は追撃をかけ、胴を思い切り蹴り上げて相手を空中に吹き飛ばします。
「いくら素早くても、これなら関係はないはずです!」
「ナイス!コード≪槍衾≫!」
「≪風華≫!」
背後のお二人が魔法を放ってくれます。
仕留めたと思ったその時、ゴーレムの腕から何かが射出されます。それは近くの地面に突き刺さり、何かの巻き取り音が聞こえます。
すると、ゴーレムの体が空中にいるにも関わらず動き、地面に降り立ちます。結果として魔法は回避されてしまいました。
「何よ、あの機能!?」
「手の剣を射出して、そこに繋がれたワイヤーで自分を移動させたみたい」
「面倒ですね。こういう時にこそ、ソラさんの奇策がほしいところです」
「シュウ、もう一回やんなさい!」
冬香さんが数法術の準備を始めます。
私は再度ゴーレムに肉薄し、さっき同様の方法で空中に蹴り上げようとします。しかし、相手は軽くジャンプをして回避をしたかともうと、今度は私に攻撃を仕掛けてきました。
「シュウさん、そのゴーレム学習しています!」
「そのようですね、援護をお願いします!」
両腕の剣を、そして足を、体全部を使って攻撃してきます。
非常に私の戦闘と酷似して、両手の剣は篭手で防げますが足はどうしようもなりません。いくら『強化薬』を飲んでいても、さすがに斬られてしまえばそれまでです。
相手はそれをわかっているのか、両手の剣で攻撃することで私の両腕の動きを防戦一方に戦闘をさせ、そして脛の刃で蹴りつけると同時に斬り裂こうとしています。
「それなら、これはどうですか!」
相手が両腕を突き出した瞬間、私は首を横にずらし、最低限の動きで避けます。顔の横を通り過ぎた腕をつかみ、脛の刃に気を付けながら背負い投げ。これなら・・・!
「氷漬けになりなさい!」
冬香さんと春樹さんが攻撃を仕掛けてくれます。しかし、先ほどと同じようにして攻撃を回避します。
「僕だって!」
そして若干遅れての春樹さんの魔法が放たれましたが、今度はもう片方の剣を射出し、別の方向へと避けます。
「たとえ、片手をつぶしてもあれじゃ意味がないわね」
「・・・」
「残念ですが、私の攻撃ではゴーレムに決定打を与えられません。それこそ、連絡の取れない三人ならばまだまだ行けるのでしょうが・・・」
今度は相手も自分から襲って来ません。
それは、私がさまざまな方法で戦うからでしょう。ここで相手の様子を見てから、私達を倒そうとしているのでしょう。
「・・・シュウさん、お願いがあります」
唐突に春樹さんがそんなことを言い始めました。
私は視線をゴーレムに固定したまま春樹さんの言葉を聞きます。
「もう一度だけ、ゴーレムを空中にお願いします」
「何言ってんのよ。ハルも見たでしょう?あいつが空中にいるときに魔法を当てようにも、あのワイヤーで避けられるわよ」
「大丈夫、次で決める。姉さんは≪氷地獄≫の準備をして。僕が合図したらすぐに発動して。≪炎華≫!」
そう言うと、春樹さんはすぐに右手に魔法陣を展開します。
そこから放たれたのは火の球。春樹さんの先制攻撃は難なくよけられ、ゴーレムは攻撃してきた春樹さんを狙います。
私はその間に割り込み、右拳の突きでカウンターを仕掛けます。学習して、ある程度の私の戦闘パターンを読んでいたゴーレムは、私のカウンターに対してカウンターを放って来ます。
ですが、それぐらいは私も読んでいます!
私はカウンターとして放たれたゴーレムの蹴りを左の篭手で何とか防ぎ、今度は足を両手で素早くつかみます。技が効かないのなら、力技に頼るまでです。
私は両腕に力を込め、そのまま掬いあげるようにして空中に放り投げます。
「魔法陣多重展開、≪炎華≫!」
春樹さんは赤色の魔法陣をいくつも展開すると、そこからいくつもの炎の球を相手にぶつけようとします。ですが、いくら物量に頼った作戦でも・・・。
案の定、ゴーレムは右手の剣を射出して回避行動を取ろうとしています。それにもかかわらず、春樹さんは遅れての魔法を放ちますが、それも左手の剣を使われて回避されてしまいます。そして、ゴーレムが地面に降り立とうとしたその瞬間でした。
「姉さん、今!≪氷華≫!」
「コード≪氷地獄≫!」
お二人の魔法が発動します。
冬香さんは敵の体を凍らせ、春樹さんがゴーレムの足回りを凍結させました。回避されると思っていた私は、驚きの念を禁じえません。冬香さんも成功するとは思っていなかったのか、目を見開いていました。
「何で?」
「簡単だよ。あのゴーレムは剣を射出した後、必ずワイヤーを巻き戻してから攻撃してた。まぁ、これは普通でしょ?でも、そのときだけは動いが止まっていたから、僕と姉さんがそのすきに相手の全身を氷漬けにすれば、何とかできるかなって思ったんだ」
それを聞いて、私と冬香さんは唖然としてしまいました。
私達のできることを完全に把握し、その能力を最大限に活かす。
「・・・やはり、ダメでしたね。春樹さんがどんどん悪い方向に向かっています」
「そうね・・・これはマズいわ」
「・・・え?」
春樹さんは私達に言われたことが意外だったのか、キョトンとした表情で私達を見てきます。
「やっぱ、ソラと同じ魔法陣ってのがダメだと思うわ」
「・・・そうですね。魔法陣を使う方達は全員変人ですし」
私の脳裏に、ソラさんに龍造さん、そしてカレンさんが浮かび上がります。あ、一応カバネさんもそうでしたか?
「ちょ!?今はそれどころじゃ・・・!?」
するとその時でした、突然何かの破砕音が響いたかと思えば、悲鳴が上がります。
「まさか、一般人に被害が!?」
「急ごう!」
春樹さんと冬香さんが駆け出したを見て、私はその前を走ります。後衛の方に前を任せていては、師匠に半殺しにされてしまいます。
ですが、この学園でいったい何が起きているのでしょう?
作 「というわけで、『強化魔獣』をお送りしました!」
龍 「わしがおらん間に大変なことになっとるぞ!?」
作 「大丈夫です。あんたもこの騒ぎに巻き込まれる予定だから」
龍 「わしは別の要件で来るはずじゃったんじゃが?」
作 「予定?何それ?おいしいの?」
龍 「お主、もはやダメじゃな」
作 「まぁ、次回!あの子が本気を出す!?次回もよろしく!」