21話・BURST
―――side空志
まぁ、あれからいろいろあった。
何故かリカが発狂しながらボクに飛びついてきたりとか、リュウ達に泣いて感謝されたりとか。一体何があったのか気になるけど、みんなは口を開かない。
まぁ、そんなわけでボク等はもう一度演劇をして、次の試合の時間ぎりぎりのボクは闘技場に向かって走っている。
みんなは後からボクの試合を見に来るって言ってたし、頑張らないと。
そしてボクはまたも時間がないために騎士の恰好のまま、闘技場の中に飛び込むようにして中に入って行った。
―――side隆介
「おし、片付けも済んだ。行くか」
「そうだね~」
「行く」
オレは二人の女子、スズとリカに声をかけた。四条はミスコンの準備だとかで衣裳係にもみくちゃにされているらしい。そこでオレ達三人でソラの試合を見に行くことにした。
「まぁ、あいつなら楽勝だろうけどな」
「でも、ソラ君はハンデを付けているって言ってたよ~?」
「大丈夫、ソラは最強だから」
オレ達はそんなとりとめのない話をしながら闘技場のアリーナ席に向かう。そこで運よく三人分のあいている席を見つけ、そこに座った。
ソラが急いで行った割に、あいつの試合はオレ達が席に着くと同時に始った。
まず、ライニーとかいうやつのハイテンションな紹介がされる。そしてバカなことを言えばディアとかいう生徒会長の痛烈な一言が入る。
「ソラ君の相手は三年の人だって~」
「ソラなら楽勝」
「・・・リカのソラに対する自信はどっから出てくるんだよ」
だが、リカの言うことも事実だ。オレ達はすでにここの一般学生では話にならないレベルで強い。まぁ、それ以上の相手と訓練してんだから当たり前だよな。
そんなことを思っていると試合が始まる。ソラは魔法陣の制限がされているようで、魔法一回につき、一個の魔法陣しか使えないみたいだ。
だが、ソラは≪風火車輪≫を使って高速戦闘を行い、相手の死角から魔法銃の弾丸を浴びせる。
相手はソラのスピードついて行くのがやっとのようだ。しかも、得物が剣と近接武器。あれじゃリーチの差で負けている。今は≪身体強化≫と服のおかげで何とかダメージを凌いでいるってところだな。
「・・・持って、あと数発か」
そして、試合はオレの予想通りになった。
―――side空志
ボクは疲労が見えてきた相手に一気に背後へ詰め寄り、銃口を後頭部に押しつけた。
「ボクの勝ちでいいですか?」
「・・・まいった」
ボクはその言葉を聞くと銃をホルスターに仕舞う。
ボクの出番はこれで終了だ。後は適当に文化祭を見て回るかなと考えていると、何故かライニーさんの驚きの声が聞こえた。
何事かと思って周りを見ると、そこには見覚えのあるメイド・・・。
「勝負です、三谷様」
「カレンさんは何でいきなり出てくるの!?」
まぁ、こんな突拍子もないことするのはボクの知り合いには一人しかいないわけで・・・。
しかも、カバネさんまでもが好戦的な笑みを浮かべてカレンさんの隣に立っている。
・・・・・・おかしい、カバネさんはまだまともな人のはず。
「リンちゃん登場!さぁ空志クン、八つ裂きにしてあげよう!」
ものすごく納得できた。
今のカバネさんは主導権をカリンさんにとられているみたいだった。
「というか、いきなりなんですか!?暇なんですか!?」
「はい、その通りです」
開き直ったよ、この人!?
「ここの近くを通りかかれば、三谷様が楽しそうなことをしているではありませんか。ずるいです。私も混ぜてください」
「何その、暴論!?」
「司会者様、私は三谷空志様の師匠です」
「ウソつけ!?」
「そういうわけですので、弟子の成長具合が見たいので許可をお願いします」
ボクの言葉をガン無視してライニーさん達の座る席に向かって言う。しかも内容は真っ赤な嘘だ。
まぁ、こんなめちゃくちゃなお願いなんてすぐに却下されるに決まってる。
『えぇと・・・・・・時間によゆーがあるみたいなので許可します!』
決まってなかったみたいだった。
「しないで!?お願いだから!というか、生ける屍相手にどうやって勝敗決めるの!?」
だって、相手は痛覚無視できるし、自分で修復しちゃうし、なんでもありだよ?
「大丈夫です。そのためのご主人様です。ご主人様が戦闘不能になれば私も戦闘不能とみなしてかまいません」
「いぇーい★」
「フェアなように見えてフェアじゃない!?」
だって、今のカバネさんはカリンさんが憑いている。つまりは近接戦闘にかけてはシュウに匹敵するレベルの技能を持つ。そんな人相手にどう立ち回るの!?
そんなことを考えていると、ボクの近くに一つの影が舞い降りる。
「では、私がお手伝いします」
「・・・ティーナ?」
ボクがリカと言いかけたところにやってきたのは『星』の属性を持つティーナだった。
こういうとき、いつもリカが一番にボクの横に来るのにと思いながら周りを見る。そしてリカを見つけると、そこには何故かおろおろとしているリカの姿があった。
「リカ様は幽霊が相手では怖いようですね」
「・・・」
いや、見知った相手だろうと突っ込みたいところだけど、リカだからしょうがないという結論でまとめる。
「私も、貴女とは手合わせをしたいと思っていました」
「私もです。ソラ君の師匠という方はどれだけ強いのか気になります」
「いや、それはウソですから」
ティーナさんが嘘なんですか!?と驚く声を無視して考える。
考えてみればおかしい。何でこのタイミングでこの二人がまた対峙するの?しかも、タイミングも示し合わせたかのように一緒。
「・・・まさか、アンタら二人グル?」
「行きますよ!」
「ハイ!」
ボクの言葉をスルーして戦いだす。
ティーナさんは無詠唱で中級の魔法を放ち、カレンさんは魔法陣を無数に展開して迎え撃つ。
その光景に観客の人たちは驚きの声をあげている。
「よそ見しちゃいけないゾ」
「ッ!?」
カバネさんの体でボクに肉薄するカリンさん。ボクはとっさに≪風火車輪≫で高速移動。どうにかしてカリンさんの攻撃をよける。
「こんなの、ハンデとか無理だ・・・!」
「むしろ、本気で来ないと負けるかもよ?でも、本気でもこのリンちゃんには勝てないけどね!」
そう言うと、カリンさんは大きすぎる大剣を取り出す。
「幻想武器『ミラージュ』、銘は『断頭凶刃剣』」
「なんですか、その物騒な銘!?」
「効果はいたって簡単、力を上昇させることと、使っていると気分がハイになってくる。カバネとお姉ちゃんは『狂人化』って呼んでるよ★」
「ものすごくいらない情報!?いや、いらなくはないけど・・・」
「行くよ、ヒャッハー!」
「もう、ダメだこの人!?」
―――side隆介
「なんだか、賑やかになってきたね~」
「いや、いろいろとダメだろう」
「ど、どうしよう・・・」
リカは相手がカレンなせいか、いつものようにソラのところへ行こうとしない。まぁ、こいつは幽霊がダメだからな。それにあいつらがいるときは決してソラから離れようとしなかったしな。今はソラが近くにいないからか、いつもより気弱になっている。
・・・今度から、こいつの暴走を止めるときは幽霊を使おう。
「まぁ、無意味にハイレベルな戦いになったな」
「そうだね~。リュウ君はどうするの~?」
「オレ?・・・『星』の力が気になるしな、少しここで見てく」
「わかったよ~。じゃぁ、わたしは何か飲み物買ってくるね~」
「おう」
そして、オレは目の前で繰り広げられる超人的な戦闘を見続けた。
―――side空志
ヤバい、本当にヤバい。だって・・・。
「あはははは!どんどん行くよ!むしろ逝かせちゃうよ!?」
「た、助け・・・!」
もう、普通に怖かった。
狂ったように笑いながらボクに冗談みたいな大きさの剣を振ってくるんだよ?
「ソラ君、チェンジです!」
「は、はい!?」
いきなりティーナさんがカリンさんの前に躍り出る。
そして魔力を練って体外に出す。それは光の剣のようになり、真正面から受け止める。これって、まさか・・・?
「具現化ですね。本来、具現化とは超高密度の魔力を体外に排出して固定。そこに『斬』、『打』などの概念を付与して戦うための近接魔法です。ところで三谷様、≪鳳雷弾≫!」
魔法の解説をしてくれたと思ったら突然魔法を放ってきた。
ボクはとっさに魔法陣を展開する。
「≪月守≫!」
カレンさんの雷の砲弾を弾き、ボクは攻撃を重ねる。
「≪雷閃疾空砲≫!」
魔法陣を銃に展開し、それを≪散≫のモードで放つ。
いくつもの雷を内包する風の弾丸がカレンさんに向かって放たれる。普通なら人に向かって使わない魔法。これは殺傷能力が高く、魔物相手にしか使えない。
ボクの魔法を正面から受けたカレンさんは思い切り吹き飛び、闘技場の壁に派手にぶつかる。それにもかかわらず、何事もなかったかのように立ち上がる。
「流石は三谷様です。カリン!」
「えぇ~。もっと遊びたい~」
「問答無用です」
そう言うと、カレンさんがさっと指を振る。すると、さっきまでカリンさんの手元にあった剣がひとりでに動いて、カレンさんの手の中にすっぽりと収まる。そして、剣はネギへとその姿を変貌させた。
「カリンはスコップでお願いします」
「むぅ~。しょうがないな~」
すると、カリンさんは今までカバネさんが背負っていたスコップを両手で握り、剣と同じように構える。
「どっからでも来いやー!」
「≪流星の強襲≫!!」
「あ、ごめ、さっきのなし・・・!?」
「三谷様、余裕ですか?」
「いや、全然。むしろ状況についていけない。て言うか、これって本気でいいんだよね?」
「もちろんです。ティーナ様と暇つぶしに三谷様の試合に乱入してお互いの魔法を研究しあいましょうという話ですが構いません」
「やっぱグルかい!?」
「参ります!」
カレンさんがネギを掲げる。そのシュールな光景に観客の人も微妙な表情を浮かべる。けど、これはまずい。ボクはいつものようにいくつかの投擲用ナイフを取り出し、地面に投げる。
「≪月界≫!」
ボクの周りに結界が張られる。それと同時にボクの上空に大きな魔法陣が展開される。
「≪雷神之審判≫!」
その言葉と同時にネギが振り下ろされる。そして魔法陣からは極太の雷の柱が落ちてくる。目を焼く光に、耳をつんざく轟音。それが収まると、ボクの周りには大きなクレーターができていた。
「やはり、あの程度では無理でしたか」
「まぁ、ね。≪八岐雷大蛇≫!」
ボクの足元に大きな魔法陣が展開され、そこから雷で構成された八つの首を持つ、大きな大蛇が現れる。そこへボクは魔法を重ねる。
「≪水霊亀≫!」
今度はボクの足元に水で構成された大きな亀が現れ、ボクのそばでじっとしている。
これで準備は整った。
「行け!」
ボクの言葉で雷の大蛇がカレンさんに紫電の牙を剥く。
八つの頭が次々にカレンさんへとかみつく。でも、カレンさんはそれにもかかわらずボクに魔法を放つ。
「―――奔れ、雷。
≪放電≫!」
カレンさんの足元に魔法陣が展開される。すると、カレンさんを中心にして雷が放射状に放たれる。そのせいでボクの生み出した大蛇が弾き飛ばされ、再生不可能なまでに散らされてしまった。
「―――迅雷の弾丸。
≪鳳雷弾≫!」
そして、カレンさんは≪放電≫を使用したまま別の魔法陣、≪鳳雷弾≫を使ってくる。
追加魔術。カレンさん達、橘流が使う特殊な技術。発動中の魔法陣に別の魔法陣を使えるようにするという劣化同時並行処理詠唱だ。これの利点は、魔法陣展開のほんのわずかの隙さえもなくすことができるというもの。魔力がある限り、間を置かずに魔法を放つとかイジメだ。ボクは魔法陣を一時的に固定することで似たようなことをしているけど、一瞬だけ魔法陣の展開に時間がとられる。
「けど、それじゃボクは倒せないよ!」
カレンさんが放った雷の弾丸は水の亀が生み出した水で全て防御される。防御特化の魔法は伊達じゃない。
ボクはさらに銃を放つ。今も銃に魔法陣を展開したままだから、銃からは雷を内包する風の弾丸がいくつも放たれる。
状況は、たぶんカレンさんの方が劣勢。ティーナがカリンさんを何とかしてくれれば勝てる。
「そうですね。ですが、これならどうでしょうか?」
そう言うと、カレンさんのネギの周りにいくつもの魔法陣が展開される。
そして、ボクの目は異常な魔力の高まりを感じ取る。これ、もしかしなくても・・・!
「≪豪雷神之飛来槌≫!」
カレンさんが魔法を発動する。すると、ネギの周りの魔法陣が激しいスパークを放ち始め、雷が大きな槌の形を取り始める。
そして、それをいつかのように肩に担ぐようにして構える。
「まさか、さっきから追加魔術で・・・」
「その通りです。では、これを冥土のお土産にどうぞ。・・・・・・冥土だけに!」
そのくだりはもういい。そう言おうと思ったけどできなかった。
この魔法はカレンさんの使う真言クラスの魔法だ。しかも、魔法妨害を軽く突破することが可能なもの。下手な防御をしても突破される・・・!
そんな風に分析している間にもそれは迫ってきた。カレンさんは肩に担いだ雷の大槌を思い切り地面にたたきつける。すると地面からいくつもの雷の柱が登り、それがボク等に殺到してくる。
てか、これは知らない・・・!だって、ボク等があの祓魔術師とやりあったときは、雷の大槌をフルスイングして雷のレーザーを発射して、それが全部相手を追尾するっていうふざけたやつだったのに!?
「やはり、こう驚いてくれないとダメですね」
「何、ドッキリが成功したみたいに喜んでるの!?死ぬよ!?こんなの食らえば死ぬよ!?」
「大丈夫です」
カレンさんは慈愛に満ちた笑みをボクに向ける。
「ご主人様が、ちゃんと三谷様を成仏させます」
「人任せかい!?」
しかも、死ぬことが前提だった。
―――術式の解析開始・・・完了。
―――記録より、術式の構築を開始。
・・・またか。
作 「というわけで『乱入』をお送りしました!」
リ 「以外に早かった」
作 「なんか筆が進みました!そして、例のごとくこれで全部の種まき完了」
リ 「種?」
作 「下手くそな伏線張りが終わったってこと。・・・あ、まだ少し残ってた」
リ 「・・・」
作 「まぁ、そんなわけで次回!無意味に強いメイドさん相手にどうする?」
リ 「ソラなら余裕で勝てる」
作 「新魔法も登場かもよ!次回もよろしく!」