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DARK・MAGIC ~闇夜の奇術師達~  作者: 夜猫
7章 ≪魔法学園文化祭編≫
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19話・GLUTTONY GIRL

―――side空志

 冬香のところの子供たちと文化祭をめぐったその翌日、つまりは文化祭二日目。ボクの前にいきなり生徒会メンバーの一人、ライニーさんがやってきた。

 急ぎの用みたいで、ボクは騎士の恰好のまま対応した。


 「何か、用ですか?」


 「お一人様、ごあんなーい!」


 ライニーさんそう言った瞬間、突然現れた生徒達にボクは拉致された。

 あまりに唐突過ぎて何が起きてるのかわからない。周りにいて休憩に入ろうとしていたクラスメイト達もただ呆然とするだけだ。その場にいたリカとリュウまでもがあっけにとられ、レオはおなかを出して寝ている。

 ・・・おい、レオ。相棒パートナーのピンチだぞ?

 でもおかしい。ボクの眼が何の反応も示さなかったのに。

 いや、よく見ればボクの体を拘束しているのは何の変哲もないただのロープだ。


 「・・・わざわざ、ボクを捕まえるために?」


 「もちろんだ」


 多数の見知らぬ生徒達に担がれてやってきたところには何故かディアさんがいた。

 相変わらず眠そうな目でボクを見ている。その目をボクを担いできた生徒達に向けると、それだけでボクは解放された。


 「あの、いきなりなんですか?」


 「・・・お前、忘れてるな」


 何のことだろう?

 残念なことに、ボクはディアさんと何かを約束した覚えはない。


 「デートか何かの約束しましたっけ?」


 「わかった。後で吸血鬼ヴァンパイア娘に言っておこう」


 「ごめんなさい、調子に乗りました!」


 ボケた瞬間に死亡フラグにつながりそうになった。

 いつも思うけど、ボクの人生ってなんだか死亡フラグが多すぎる気がする。


 「とりあえず、今回は意外にも参加者が多かった。そういうわけで出てくる奴らは全員強いぞ」


 「強い?何がですか?」


 「むろん、魔法が」


 「・・・」


 なぜだろう、ものすごく嫌な予感がしてきた。

 というか今周りを見て思ったんだけど、ここってまさか・・・?


 「今回お前に課すハンデは魔法陣の使用制限だ。中級中位以上の魔法は使うな、真言もだ。魔法陣を多数一気に展開するのもなし。後、お前の飼い猫もダメだ。まぁ、今は吸血鬼ヴァンパイア娘と一緒にいるだろうがな」


 「寝てたはずなのにやけに知ってますね!?」


 「決闘の記録と、前の大会のことを参考にした」


 「・・・」


 本当に、何でこんなにも『怠惰』なのにここまでできるんだろうと思う。なんかこれは詐欺だ。

 て言うか、すっかり忘れてた。何故かボクが無理やりに決闘大会的なものに強制参加させられてたの。そう思っていると、ディアさんは何を思ったのか言葉を付け加える。


 「安心しろ、武器は許してやる」


 「要するに、身体強化系も使えないボクは何故か接近戦を演じろってことですか!?」


 無茶を通り越して無謀すぎる。

 基本的に魔法でのバトルは身体強化が基本。そうしないと相手の魔法をよけれないからね。ちなみにそれがダメな人は大体、自分がすぐに展開できる防御魔法を一つ以上持ってるって智也さんから聞いたことがある。


 「ディーアちゃーん!準備完了だよ~!」


 どこからともなくやってきたライニーさんがディアさんにそう報告し、ディアさんはうなずく。そしてボクから視線を外しながらも言葉を続ける。


 「お前は開会式をしてから、第三試合に出ろ。まぁ、どうせ最初の方はすぐに決着がつくからな。控室で待ってた方がいいぞ」


 それだけ言うと会場に向かっていく。

 ・・・なんていうか、もう逃げられないなとしか考える以外になかった。






 『れでぃーす、えんど、じぇんとるめーん。がーるず、あんど、ぼーいず。えぇと・・・おじーちゃん、あんど、おばーちゃーん!それから、それから・・・』


 『もういいからさっさと始めろ』


 『わかったよ、ディアちゃん!というわけでエレオノール学園の『マジックバトル大会』の開催でーす!いぇい!どんどんぱふぱふ~!』


 いや、このイベントの正式名称は『無差別魔法決闘大会』だった気がする。しかも観客のほうを見ても首をひねってる人が多いし。

 まぁ、このイベントの内容はいたって簡単。この学校のシステムの『決闘』、それを大会形式で行う。普段と違う点があるとすれば、それは全学年合同だってことぐらいかな?普段はほかの学年に戦いを挑む理由とかないし、実力が違いすぎるから学園でもそれを認めていない。まぁ、当たり前っちゃ当たり前だけどね。

 というか、いつも通りしまらない始り方だね・・・・・・。



 『じゃ、そーゆーわけで、さっそく一回戦を始めて行くよ~!』


 いつの間にかこのイベントの開会式的なものが終了していた。

 とりあえず、ある程度は本気を出さないとサリナさんからいろいろと恐ろしいことをされそうだからおとなしく従っておこう。そう思いながら控室に・・・。

 控室はぶっちゃけた話、ただの倉庫だった。ここの闘技場は決闘以外にも魔法実技や体育なんかの時にも使われるため、そのための備品がものすごく多い。そのせいか倉庫も無意味なまでに広い。その倉庫を片づけて、備品を横にどければかなりのスペースを確保できる。実際に、パイプ椅子がいくつか中に運び込まれていて、そこに座っている人が多かった。


 「ん?三谷か?」


 聞き覚えのある声に振り向けば、そこにはジグがいた。


 「あれ?ジグも出てるの?」


 「あぁ。お前もか?」


 「まぁね。ちょっといろいろと理事長さんに脅迫されて・・・」


 「そうか。にしても、やっぱり一年は少ないな」


 何故か脅迫の部分を華麗にスルーした。

 確かにジグの言うとおり一年が少ない。というかここら辺にいるのがボクとジグだけだ。


 「・・・やっぱり、上級生はそれだけ強いってことか」


 「あぁ」


 ジグはいつものように言葉少なめにうなずく。その声は冷静だけど、かすかに緊張が伝わってくる気がする。


 「大丈夫だって。ジグは重力操作系なんだからさ、行ける。むしろ相手が逝くね」


 「お前が言うか」


 そう言いながらジグは苦笑する。そしてボクにありがとうと一言言うと、ライニーさんの賑やかな声が聞こえる。


 「・・・どうも、終わったみたいだ」


 「そうなの?・・・一応ディアさんから聞いてはいたんだけど、本当に早いね」


 「そうだな。にしても、お前はその格好で出るのか?」


 どういうこと?と聞こうとしたら思い出した。

 ボクはDクラスの教室でライニーさん達に拉致された。そしてそのままの格好だ。要するに、ボクは演劇の騎士の恰好のまま。対してジグや周りにいる人たちは学校指定の、それも教室間戦争クラス・ウォーの時に着る戦闘服。これは某天災エルフのお姉さんが作った服で、ある程度の魔法を防御してくれる。


 「・・・そうか、何か視線を感じると思ったらこのせいか」


 確かに、みんなフル装備なのに一人だけ騎士っぽい恰好の生徒がいたら目立つよね。


 「でも、貰ってないんだよね」


 「・・・それでもお前は大丈夫だろうけどな」


 ジグは聞き捨てならないことをつぶやくと、俺は次だから行くと言って会場に向かった。

 ちくしょう。後でDクラスの衣裳係がウケに走りすぎた衣裳を無理やり着せてやる。ついでに写メもする。

 そんな風に考えながらもジグの決闘が見えるところに行く。決闘大会は学園祭の一日目に自分以外はみんな敵バトルロワイアルの方法で選抜したみたいで、ダイジェストでどんな風にして選手が生き残ったのかを投影ヴィジョンの魔法で軽く紹介している。まぁ、ジグに関しては自分以外に≪グラビ≫を使って一人勝ちしたらいい。


 『と。言うわけで試合開始!』


 その言葉と同時に相手が走る。腕に炎をまっとっているから、たぶん魔装系が得意なんだろうと思う。

 魔装は一般的な近接魔法で、自分の体の一部、あるいは武器に魔法を待機状態で展開。その状態で相手を殴るとかのモーションを行って発動させると、近距離で魔法が発動して相手にダメージを与えることができるって言うもの。だから使ったらいちいち魔装しなきゃいけない。でも、初級の魔法でも結構な威力を出せるのが売りみたいだ。


 「≪重力の檻グラビ・プリズン≫」


 「・・・あれ?」


 ただジグは数少ない空間系の属性持ち、しかも重力操作系。今回は相手の周囲に重力操作して軽くしたんだと思う。相手は走っていると急に地面から足が浮いて、しかも空中で止まる。手足をバタバタと動かすけどどうしようもない。

 そこへジグはすっと学校から借りた剣の切っ先を突き付ける。


 「降参、していただけますか?」


 まぁ、何もできない以上はギブアップ以外にすることはない。

 これでジグも次にコマを進めた。

 ・・・って、もう次はボクじゃん。本当にこの格好は何とかならないのかな?そう思って真剣に考えるけど、何も思い浮かばない。

 すると、外からボクが呼ばれる声がする。・・・しょうがない、行くしかない。明らかに羞恥プレイでしかないけど。

 嫌な感情丸出しな表情で出ていく。それと同時に周りからは困惑した空気が。まぁ、昨日の予選に出ていない人が出てきたら驚くよね。


 『彼は時間がなく、急きょ来てもらったためにクラスの出し物の恰好のままだ』


 あ、そっちですか。


 『軽く紹介する。三谷空志、Dクラスの短期留学生。以前にもここに来たことがある・・・らしい』


 らしいって何?

 てか、さっきまでライニーさんがやってた気がするのに何でディアさんの声なんだろう?


 『・・・・・・で、対する相手は一年Bクラスの大食い娘ことライニー・ガラ。生徒会の書記だ』


 「・・・は?」


 思わずボクは変な声を出してしまった。

 すると、その言葉と同時に何かの効果音とともにライニーさんが飛び出てくる。

 何故かカウボーイならぬカウガール的な恰好で。


 「いぇい!よろしくね~!」


 「何で!?何でアンタがここに出てるの!?」


 「ふっふっふ、一年の隠れた天才とは私のことだ!」


 「知らないし、聞いてないよ!?それにその格好も何!?」


 「いや、三谷君に負けちゃダメだと思って?」


 「ミスコンにでも出てきてください!」


 明らかに勝負の方法を間違っている。

 というか、同じ学年だったんですね。はじめて知りました。


 『・・・そんなわけで、試合開始。・・・疲れた』


 って、いつの間にか始ったし!?


 「いっくよ~!」


 ライニーさんは前のように大砲のような魔銃、魔砲を取り出して脇の下に抱えるようにして持つ。そして何のためらいもなく乱射し始める。


 「ッ、≪月守ツキモリ≫!」


 ボクは左手を前にかざして、魔法陣を展開。その魔法陣が盾になってライニーさんの放つ魔法弾の雨から身を守る。


 「≪追≫!」


 ライニーさんが一言つぶやきながら大砲をあらぬ方向へと打ちまくる。あさっての方向へと放たれた魔法の弾丸は、あり得ない軌道を描いてボクに襲いかかってくる。

 普段ならボクはもう一つ魔法陣を展開して身を守る。けど今回はダメだって言われているからそれもできない。

 ・・・なら!


 「≪風火車輪フウカシャリン≫!」


 ボクの足首あたりに帯状の魔法陣が展開される。

 そこから思い切り前にダッシュ。突然異常なスピードを見せたボクに観客の人たちは少しだけどよめく。そこでボクはライニーさんに攻撃のすきを与えないように取り出した魔法銃で撃ちまくる。

 でも、相手も≪身体強化フィジカル・ブースト≫を使ってボクの攻撃を回避をして、ボクから大きく距離をとる。

 そこで一旦ボク等の間から魔法の応酬が止まる。


 「むぅ・・・。魔法陣は一個しか使えないから大丈夫だと思ったのにな~」


 「いや、普通に危なかったです」


 相手が魔砲なら尚更。一撃貰えば普通にヤバい。それだけで致命的なダメージを受ける。

 でも、ボクにとっては相性がいいかもしれない。

 こっちは高速戦闘に切り替えて、回転式弾倉リヴォルバーの魔法銃『ナイト』の≪散≫で攻撃してれば勝てる。しかも相手には魔砲を使いすぎればすぐに魔力が切れるって言う弱点もある。

 とりあえずボクはナイトの回転式弾倉をカチカチと回し、魔法弾の性質を≪散≫に変更。これでいちいち≪散≫って言いながら魔法銃のスキルを使わなくても済む。

 ただ、相手も考えたことは同じだったみたいだ。


 「やっぱ、これじゃ無理があるね~」


 そう言うと大砲を消す。というか紋章エンブレムの最新機能、ポケットを使ったんだと思う。ここの学園では魔窟ネストの技術がふんだんに使われているし。

 そして代わりに二丁の拳銃を取り出した。


 「これで完璧だね!」


 そう言いながらカウボーイハットを右手の銃で軽く上げる。

 ・・・まぁ、何が言いたいのかはわかった気がする。確かに西部劇のガンマンみたいな格好だ。


 「じゃ、≪散≫!おまけに≪追≫!」


 向こうは両手の拳銃から銃を撃ち始める。ただし、その魔法弾の性質が散る、つまりは一回引き金を引くだけで銃口から無数の魔法の弾丸が放たれ、さらには追尾してくるという鬼畜仕様になってきた。


 「これは、流石にまずいかな・・・」


作 「というわけで『大食い娘』をお送りしました!」

ライニー 「いぇい!なんだか初めまして!?」

作 「初めまして。神様こと夜猫です」

ラ 「嘘!?て言うか神様、なんか訳が間違ってない?」

作 「完璧です。決して『暴食の少女』なんてかっこいいサブタイじゃない」

ラ 「えぇ~」

作 「まぁ、そんなわけで次回!」

ラ 「わたしの実力がついに明らかになるよ~!追い詰められちゃったぜ!」

作 「まぁ、そんなわけでどうなる主人公!?次回もよろしく!」


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