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DARK・MAGIC ~闇夜の奇術師達~  作者: 夜猫
7章 ≪魔法学園文化祭編≫
152/170

16話・WALKING

―――side空志

 まさかのラディエさん襲撃事件の後。ボク等は午後の部まで自由時間を貰った。

 とりあえず、ボクとリュウ、リカ、スズは一緒に行動している。


 「すごいね、あちこちで面白い魔法が使われてるね」


 近くを見れば魔法を使った将棋だとか、楽器だとか、そう言うものでいっぱいだ。なんだか、あまりに斬新と言うか、新鮮すぎてきょろきょろしすぎて目を回しそうだ。


 「ねぇねぇ、リュウ君あれ何~?・・・こっちは~?・・・あれは~?」


 「おい、お前らはしゃぎ過ぎだ。少しは自重しろよ」


 「うふふ」


 リュウとリカは子供のようにきょろきょろするボク等を呆れつつも、微笑ましいとでもいいたげに見てくる。

 でも、しょうがないじゃん。ボクとスズに関しては魔法関係にかかわったのはほんの半年前なんだし。とにかく、そんなこんなで探索開始。

 まずは近くの教室を見て回ってみようってことで、シュウ達のいるCクラスに来た。


 「あ、皆さん来てくれたんですか?」


 「演劇、面白かったですぅ!」


 Cクラスの教室前には化け狐っぽい恰好をした双子の姉妹が・・・。


 「俺は、男です」


 「わかってるよ、うん」


 シャオ君からのプレッシャーがすさまじかったので、ボクはそれ以上何も考えないことにした。


 「確か、お前達の所は肝試しだったか?」


 「はいですぅ」


 「俺達は客引きの最中です」


 確かにこんな可愛い双子姉妹がいれば・・・。


 「だから、男です」


 「わかってるよ~。シャオ君は女の子の恰好でも可愛いよね~」


 スズの言葉でシャオ君は撃沈した。

 まぁ、とりあえずシャンちゃんと話すか。


 「シュウは中で幽霊役?」


 「はいですぅ。中でこんにゃくを持って待機しているですぅ」


 魔法が使えるのに脅かし方はずいぶんと普通だった。

 もっと、すごい魔法で演出してるのかともったのに・・・。


 「ところでソラさん、入ってみませんかですぅ!」


 「!?」


 シャンちゃんの言葉に一番反応したのはもちろんリカ。既にボクの服の袖を掴んでぶるぶると震えている。


 「じゃぁリュウ君、わたし達も行こ~!」


 「・・・入ってもあんまり怖がりそうにないけどな」


 そう言いながらリュウとスズはすたすたと中に入っていく。


 「とりあえず、リカさんもソラさんも勢いで行っちゃうですぅ!」


 「ほほほほ、ほん、本当に、い、逝っちゃうよぉ!?」


 もう、吸血鬼なはずの少女がビビっていると言うこの状況はいつもながらどうしたのもかと思う。

 まぁ、リカみたいな性格の人ならお化けやしきしている人間にとっちゃ嬉しい対象以外の何物でもないしね。


 「じゃ、ドーンと行くですぅ!」


 そして、ボクとリカは無理やりにお化け屋敷の中に放り込まれた。

 中は既にうす暗く、足元が辛うじて見える程度の光しかない。結構本格的に作りこまれているみたいだ。

 そう感心していると、リカは今にも泣き出しそうな顔でついてきた。


 「・・・・・・大丈夫?」


 「無理無理無理無理・・・」


 以下無限ループ。いろいろとダメだった。

 ここで立ち止まっていても何も意味がないから無理やり先に進む。そして一歩踏み出すと、そこで『うぼぁ~』と言う何とも言い難い怨念っぽい声が聞こえた。


 「いやぁぁぁぁああああああ!?」


 「落ち着いて!?死ぬ、ベアハグで死ぬ!?」


 さすがにリカのベアハグ第二回目で死ぬのだけは勘弁してもらいたい。

 と言うか、最後まで行けるのかな?いや、むしろ出口につく前にボクが逝きそうだ。






 「あ、お帰りなさいですぅ」


 「どうでしたか?」


 やっとの思いで出口に出ると、双子が出迎えてくれた。


 「・・・うん、リカが怖かった」


 「・・・ごめんさない」


 こんなボク等の雰囲気から全てを察したのか、双子達は生温かい目でボク等を見た。

 そこでボクは近くにリュウとスズがいないことに気づく。


 「リュウとスズは?」


 「お二人が遅いので、先に行くと言っていました」


 「ちなみに、スズさんは幽霊役の人みんなに挨拶してくれたですぅ」


 ・・・うん、予想を裏切らないね。

 まぁ、何はともあれここからはリカと二人での行動か。


 「じゃ、とりあえずボクも行くよ」


 「はいですぅ」


 「よければまた来てください」


 「・・・それだけは無いかな」


 ボクは自分の命が惜しい。




―――side隆介

 「ねぇねぇ、リュウ君。リカちゃん達を置いてきてもよかったの~?」


 「いや、むしろそのほうがいいだろ?どうせリカはソラと二人っきりの方がいいだろうしな」


 「そっか~。それもそうだね~」


 そう言いながらスズは鼻歌交じりにオレの隣を歩く。

 ・・・・・・まぁ、オレも少し嬉しいのは内緒だ。


 「ねぇねぇ、リュウ君達のクラスはもう大丈夫なのかな~?」


 「あぁ、下手なことをしてなけりゃな。オリジナルで何かを作ろうとすれば、ついでに屍を一緒に作っていたが」


 「あ、あはは~・・・」


 スズはオレの返答にものすごく曖昧な笑みを向けてくる。

 そして心配になってきたのか、すぐにSクラスの所に行くように廊下を歩きだした。


 「あ、リュウさんにスズさん!」


 そうやってこっちに駆け寄ってきたのは春樹だった。

 春樹は所々に包帯を巻いている格好。たぶんミイラ男かなんかのつもりなんだろう。

 他にも狼男っぽい恰好をしたやつから、メデューサの恰好をしたやつまでいろいろなヤツがいる。


 「で、大丈夫なのか?」


 「はい?何がですか?」


 春樹はよくわかっていないのか、首をかしげる。

 どうも、春樹は例の騒ぎのことを知らないみたいだ。するとオレは肩を誰かに叩かれる。振り返ると、そこにはシーツを被ったようなお化けの恰好をしたやつがいた。


 「・・・誰だ?」


 「俺だ、ジグだ」


 「あぁ、わかった。つか、そんな恰好で仕事ができんのか?」


 「・・・」


 オレがそう言うと、ジグは無言でシーツ越しに両手を上げる。

 すると、いきなりさまざまな料理が宙に浮き始める。オレはその光景に驚きつつもなるほどと納得する。


 「・・・なるほどな、重力操作系の魔法で運んでるのか」


 「そうなんですよ。ですから、むしろ誰よりも働いているんですよ!」


 春樹が少し興奮したように言う。

 まぁ、確かにこれだけ精密なコントロールができるのは素直に驚ける。


 「他にも、グランさんは影から影に移動して素早く運んでいたりしますよ」


 なるほど、一人ひとりが適度に自分の得意な魔法でいろいろなことをしているみたいだ。


 「でも、何でリュウ君が知らないの~?」


 「・・・・・・オレは一応いろいろ働いてたんだけどな」


 それこそ、オレは一応こいつ等のリーダーなわけで、ジジイとここの学園長との連絡パイプ役になど裏方仕事が忙しかった。


 「あの、代表。ちょっといいですか?」


 突然、一人の生徒がオレ達の会話に入ってきた。

 ジグは何だと一言だけ言って続きを促す。


 「あの、ちょっと面倒なお客様が・・・」


 そう言ってあるテーブルの一つをさす。

 オレ達がそこを見ると・・・。


 「へい、カノジョ。ちょっとこの私と付き合うことを前提に結婚してみない?」


 「あ、あの、順番が違いますけど?」


 「そんなのは些細な問題だよ!」


 「・・・あの、わたしは女ですけど?」


 「うん。どんとこい、わたしの胸に!」


 「助けてください!変態がいます!」


 「失礼な、わたしは変態じゃなくてまお――」


 「死ねぇぇぇぇええええええ!!」


 「ぎゃぁぁぁぁああああああ!?」


 「りゅ、リュウくーん!?」


 「お、落ち着いてください。リュウさん!?」


 「離せ、今オレはこいつを殺さなきゃいけない!!」


 「・・・知り合いか?」


 「違わないけど違う!」


 「ま、待って、リュウちゃん!?わたしだよ!?舞お姉ちゃんだよ~!?」


 そう、オレが思わず殺しかけた見た目は人間、ただしその実態は変態ロリコン魔王。七海舞だった。


 「何でお前がいるんだよ!?」


 「もちろん、龍造ちゃんに聞いたからに決まってるじゃん」


 オレはあのクソジジイと心の中で罵る。

 実は舞のヤツは、見た目こそ女子高生な感じだが、年齢的にはジジイと同じぐらいだ。そのせいか魔王の中では一番お互いのことをよく知っているらしい。


 「あんのジジイ・・・」


 「でも、舞さんも久しぶりですね~」


 「おう、鈴音ちゃんもお久ー」


 舞はそう言いながらスズを抱きしめ、ぐりぐりと撫でまわす。

 スズはどうしようといった表情で舞にされるがままになっている。

 とりあえず、オレはスズの手を引っ張ってこっちに持ってくる。


 「とにかく、こんな所で犯罪まがいの行為に走るな」


 「ぷぷー。何言っちゃてんの。そこはもっとかっこよく『オレのスズに手を出すな』とかそんな感じのこと言わなきゃ」


 わざわざオレの声を真似てそう言う。

 そしてセリフのせいでスズの顔が真っ赤だ。


 「ひゅーひゅー。二人とも赤くなっちゃって」


 ・・・どうも、オレも同じらしい。

 つか、いい加減精神衛生上いろいろとまずくなりそうなので舞には退場をお願いしよう。

 オレは『双牙』を取り出し、一つを舞の影に突き刺す。


 「魔法剣≪影縫い≫」


 「・・・あれ?動けない?」


 「・・・あ、シャニアさん・・・」


 「とう!」


 舞は器用にも注文した紅茶を使ってオレが取り出したケータイを弾き飛ばした。

 ・・・やっぱ、魔王は伊達じゃないか。


 「あぁ、お客様。魔法はお控えお願いできますか?」


 ジグは冷静に舞を注意。

 もっとやれ。そしたらオレがこいつを葬る。


 「この店員さんが私にSMプレイをしてきます!」


 「誰がするか、このアホ!」


 「だって現在進行形で縛られてるしぃ?」


 いまどきのウザい女子高生的なノリでそう言う。

 ・・・中身は千年生きてるババアのくせに。


 「もう、小さい頃は『将来は舞お姉ちゃんと結婚するー』って言うぐらい可愛かったのに。あ、ついでにリュウ君も範囲内だから!」


 「それ以上言うと、マジで絞め殺す」


 なぜか両腕を広げてカモーンとでも言いたそうな舞に対し、オレは早口で詠唱を済ませ、これはマジだと伝える。

 何が楽しくてここでオレの黒歴史を・・・!


 「ねぇねぇ鈴音ちゃん。昔のかわいーリュウちゃん知りたくない?」


 「あ、てめ!?」


 「知りたいです!」


 そう言うとスズはさっと舞の隣に座り、更にオレの剣を抜く。そして話を聞き始める。


 「えっとねー。じゃ、まずはリュウちゃんが・・・」


 「死ね、マジで死ね!」


 「ハル君、ジグ君、リュウ君を止めて!」


 スズのいつなくものすごく真剣なまなざしに、ジグと春樹は思わず従う。

 つまりはオレを拘束した。

 ジグは重力系の魔法でオレを地面に磔にし、ハルは地面を操作してオレの腕を足を地面に固定。しかも周りに火を生み出して影ができないようにする徹底ぶりだ。


 「離せ!オレは、オレは・・・!?」


 「まずねー。ごにょごにょ・・・」


 「・・・」


 もう、いろいろと話し始めた。

 オレは無駄だと知りつつも体を動かし、逃げだそうとした。




―――side冬香

 「・・・何してんの、あいつら?」


 ふと、何を思ったのかなんとなく近くの教室の中を見てみた。

 するとそこには、ハルとシーツのお化けに何かされているリュウと、確か舞とか言う魔王と話し込んでいるスズがいた。


 「とーねぇ。どーしたの?」


 「ん?何でもないわ」


 わたしは今、院長先生が連れてきたチビ達と一緒に学園祭を回っている。せっかくだからハルも一緒に連れて行こうと思ってきてみればこれだ。

 ちなみに院長先生は自分一人だけどこかに行った。

 とにかく、これは純粋なチビ達に見せるものじゃない。


 「じゃ、次はどこに行こっか?」


 元気に手を上げて自己主張するチビ達に微笑みつつわたしはその場を離れた。


作 「というわけで『散策』をお送りしました!」

舞 「やぁやぁ、お久しぶり!」

作 「出たな一番残念な魔王!」

舞 「一番残念なの!?」

作 「地味に魔王様は全然出てないからね」

舞 「ショック!じゃ、もっと出そうぜべいべー」

作 「というわけで次回!」

舞 「スルーされた!?」

作 「まだまだ散策します。次回もよろしく!」

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