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DARK・MAGIC ~闇夜の奇術師達~  作者: 夜猫
7章 ≪魔法学園文化祭編≫
151/170

15話・CULTURE FESTIVAL

―――side空志

 まぁ、昨日の懲りない男子達の自爆の翌日。

 何故かリオネさんはレクトに対しての挙動がいろいろとおかしかった。


 「れ、レクト。きき、昨日のことだけど・・・」


 「どうしたー?誰か男子にでも見られたかー?とりあえずそいつを教えてくれ。風穴空けに行くからなー」


 レクトはそう言いながらにこやかな笑みで大砲タイプの魔法銃を取り出す。


 「ち、違いますわ!あ、貴方は見たのかと言うことですわ!」


 「オレッチ?オレッチはリオちゃん一筋だからなー。ミタニー達と途中で帰ったぞー」


 「そ、そうですか」


 そこでリオネさんは残念そうな、それでいて安心したような複雑な表情を浮かべる。

 とりあえず、一つだけ言いたいことがある。


 「リカ、いい加減に離れて」


 「・・・無理。リオネはいいなぁー」


 「まぁ、ボク等彼女がいない人からしたらリア充爆ぜろだけどね」


 あの二人の近くにいる人達も既にお腹いっぱいですって顔になっている。

 そこでパンパンとカザハが手を叩いて、みんなの注目を集める。


 「よし、みんな!」


 「・・・何、覗き魔」


 「・・・すみませんでした」


 「まぁ、グダグダ言ってもしょうがないわ。みんな、今日はがんばりましょう!」


 「「「おう!」」」


 自業自得だけど、若干へこんでいるカザハを置いてけぼりにして杏奈さんが気合を入れる。そしてその言葉にクラスの全員が答えると同時に校内放送が流れる。


 『・・・只今より、学園祭を開始する。・・・・・・・・・・・・・・・眠い』


 『ディアちゃん!?まだ放送してるよ~!?』


 ぶちっ・・・。


 「「「・・・」」」


 なんか、いろいろとしまらない開始宣言と同時に学園祭が始まった。


 「・・・とにかく、午前は今から一時間後。各自準備して!」


 「「「はーい」」」


 そして各々が準備を始めた。

 そうこうしているうちにリュウも到着し、演劇のリハーサルを軽くする。気がつけば時間は既に十分を切っていて、教室の外からはがやがやと喧噪が聞こえてきた。

 どうも、お客さんもそれなりに来ているらしい。


 「各自、持ち場につけ!」


 その言葉で慌ただしく持ち場につく。

 そして、演劇が始まった。






 「お疲れ~。とりあえず、第一回は成功ってとこか?」


 演劇はまず成功だったと思う。

 マイナーな属性の魔法を使った舞台演出にお客さんは驚いてくれ、やっている側としても結構嬉しくなってきただろうと思える。

 ボクとリュウが魔法での戦闘を演じた時は何故かリュウの方が応援されると言う悲しい状況になったりしたけどね。

 一応主役は自分なのに・・・。


 「・・・アタシがソラの魅力を知ってるからそれでいいの」


 そう恥ずかしいことを言いながらリカがボクの所に来る。


 「リカ、そう言う言葉は時と場合と相手を考えて言わなきゃ」


 「・・・その上での言葉なのに」


 何故かリカが不貞腐れてしまった。そんなリカを女子たちが慰めている。

 とりあえずボクはカザハに向き直る。


 「次はいつだっけ?」


 「午前中は連続で二回だから、三十分後か?」


 「そうね。その後は数人が留守番して午後まで自由時間になってる」


 劇は午前に二回、午後に三回の予定になっている。

 そんなに長いものじゃないけど、やり続けていると自分達が楽しむ時間がなくなるからってことでこういう感じに少なめになってる。


 「・・・っと、そうしてる間に時間だ。もういっちょやるぞ」


 そう言うと、また劇が始まった。




―――sideリカ

 今、アタシは劇をしている。

 まずは出だし、セリフを言おうと口を開けた時、アタシは見たくないものを見つけてしまった。


 「シルヴィエ、アンジェリカだぞ!お~い、パパはここだぞ~!!」


 「・・・」


 何で、ここにいるの?

 客席の一つ、そこにはここにいるはずのないアタシのパパとママがいた。パパはアタシに向かって手を振り、ママは明らかにパパと距離を取ろうと身をひいている。

 と言うかおかしい。吸血鬼ヴァンパイアは基本的に人間だらけな場所にこんなところには来るはずがないのに・・・!?

 と言うか、劇の内容から考えると・・・大変!?ううん、大丈夫。いくらパパでも、劇と現実の区別ぐらいはつくはず。

 ・・・・・・何でだろう、自分で言ってて涙が出てきた。

 とりあえず、次はいろいろな国の王子様達に結婚を申し込まれるけど、私には想い人がいるって断るところだ。




―――side空志

 「リカ、どうしたの?顔色悪いよ?」


 「大丈夫・・・・・・たぶん」


 ものすごく不安な言葉を返された。

 でも、ここで急に劇を終わらせることもできない。ここは悪いけどリカには我慢してもらおう。

 とりあえず、次はボクとリュウの見せ場。決闘のシーンだ。

 既にリュウは反対側でスタンバってる。

 舞台が一度暗転する。そして光がついたと同時にボクとリュウが出る。


 「よくぞ、逃げなかったな」


 リュウのセリフだ。

 完全に口調がワルになっている。もう、完璧な悪役だ。普段より三割増しでかっこよく見えるとは某天然少女の言葉。


 「私は、逃げるわけにはいかない」


 「貴様のような下賤なものが騎士を名乗るなど、あってはならないことだ・・・!」


 「しかし、私は姫を守る騎士でありたいのです」


 「ならば・・・・・・我は貴様を倒し、姫を貰い受けよう!」


 「ですが、私も負けるわけにはいかないのです!」


 そして、ボクとリュウが魔法と剣を交えて戦う。

 次々に放たれる魔法に観客は息をのみ、じっとこの決闘を見る。

 よし、いい感じだ。ボク等は激闘を演じ、徐々に勢いを、テンポを上げていく。どんどん激しくなる戦い、そしてボクとリュウは同時に舞台の両端で動きを止める。


 「・・・埒が明かない。次の一撃で決める」


 そう言うと、リュウは剣を構える。

 ボクはリュウと同じように剣を構えて言う。


 「いいでしょう。次の一撃、この私の全てをかけましょう!」


 ボクがそう言った瞬間、辺りを静寂が包む。

 そして、ボク等は同時に相手に向かって走り、交差する。互いに背中合わせになって立ちつくす。


 「・・・っく」


 そう言いながら膝をついたのはリュウ。まぁ、演技なんだけど。ボクは何もしていない。そしてリュウがセリフを続ける。


 「貴様、何故とどめを刺さない・・・!」


 「私は騎士です。騎士とは、守るもののことです。まして、同じ騎士である貴方を殺したくなかった」


 「・・・・・・そう、か。我も舐められたものだ」


 そう言うと、リュウはお腹のあたりを押さえて退場。

 入れ替わりにリカが入ってくる。


 「大丈夫でしたか!?」


 「はい。姫よ、私は勝つことができました。これで、陛下も認めてくださるでしょ・・・」


 「「認めんぞぉ!!」」


 ・・・おかしい。さっき声が二重に聞こえた気がする。

 ここはボクのセリフの途中で王様役の人が乱入するように登場。そしてたくさんの兵をさし向けて娘もろともボクを屠ろうとするシーンのはずだ。

 と言うか、王様役のクラスメイトが視線をある一点で固定してぽかんとしている。

 何事かとそっちを見てみると・・・。


 「認めん、認めんぞぉ!!」


 そう言いながら金髪に赤い目の美系な男の人が舞台に登場。


 「ら、ラディエ、さん!?」


 リカの父親のラディエさんだった。

 ラディエさんの飛んできた方向を見れば、そこには頭をペコペコと下げているシルヴィエさんの姿が見えた。どうも、ラディエさんが例の如く暴走してしまったらしい。

 ・・・しょうがない。


 「陛下、約束と違います!」


 「何が約束だ!?我は、認めん。愛娘を貴様のような小僧にやってたまるか!!」


 「・・・」


 口調が古めかしいため、普通に演技しているようにしか見えない。観客を見ても、まだボク等が劇をしていると勘違いしてくれていた。

 たぶん、ラディエさんの次の行動パターンなら・・・。


 「今ここで、貴様を血祭りに上げてくれる・・・『魔喰いキャスト・イーター』!!」


 予想通り、ラディエさんは魔道宝具『魔喰い(キャスト・イーター)』を出してきた。ありとあらゆる魔法を無効化できる魔鎌。でも、ボクにはこれがある。こっそりと右手に『魔法妨害ジャミング』の文字スペルを書き込む。これで下準備は完了。


 「―――魔に属す力に命ずる。

     力よ、集いて形となせ!

     ≪真月シンゲツ≫!」


 ボクの右手のひらに魔法陣が展開され、刀を生成する。正直、劇の雰囲気に合わないけどこの親バカを止めるにはこれしかない。

 ついでにリカに小声でお願いをする。


 「・・・わかった」


 「・・・よし」


 これで、既にラディエさんは王手詰みチェックメイトだ。

 ボクは言葉を重ねる。


 「ならば、陛下を倒してでも私達は添い遂げます!」


 「そ、そそ、添い遂げ・・・!?」


 「あ、あう・・・うぅ」


 ラディエさんが怒るのはわかる。けど、何でリカまで顔を真っ赤にして怒っているんだろう?

 ボクは先手必勝とばかりにラディエさんに肉薄。ボクのスピードに驚愕する。けど、さすがは吸血鬼ヴァンパイア。すぐにボクの強化されたスピードについてきて、鎌と刀でのつばぜり合いを演じる。


 「っ、さすがですね」


 「貴様、いつの間にそんな魔法を・・・。だが、娘はやらん!貴様はここで死ぬ、負ける!」


 「いや、既に負けているのは貴方です」


 ボクはリカに目配せをする。

 そしてリカは小さくうなずくと、観客には聞き取れない声でぼそっと呟く。


 「パパなんて、大っ嫌い」


 「ごはぁ!?」


 娘大好きなラディエさんの弱点。それはリカに嫌われること。心に致命的な一撃クリティカル・ヒットを受けたラディエさんの力が緩む。その隙をボクは逃さない。


 「術式≪断月ダンゲツ≫!!」


 刀を振るう。すると、刀の斬撃が魔力を帯び、白銀の光が斬撃となって飛んでいく。それをラディエさんは正面から受け、意識を刈り取られる。

 ・・・よし、親バカは滅した。


 「姫、これで邪魔ものはいません」


 「はい」


 そう言ってボク等は互いに近づき、抱きしめ会う。


 「もう二度と、離しません」


 「私もです」


 そしてボク等の周りが徐々に暗くなっていき、ボクとリカはそれに合わせてキスをするフリをして、劇が終了した。






 「もう、本当にすみません。このバカ亭主が・・・あなた、何か言うことは?」


 「・・・すまん」


 「もっとちゃんと謝ってください」


 「ぐふぅ!?」


 ラディエさんはお腹にシルヴィエさんの一撃を受け、本日二度目の気絶をした。

 ここは舞台裏だ。と言うか劇が終わってすぐにシルヴィエさんを呼びに行った。そうしないとラディエさんが起きた後がものすごく大変だからね。


 「・・・なぁ、ソラ。聞きたいことがある」


 カザハが神妙な顔でボクに尋ねる。


 「何?」


 「アンジェリカさんの両親ってことは・・・」


 「あぁ、もちろん二人とも吸血鬼ヴァンパイアだよ」


 「あら?そちらの学生さんはリカのことを知っているのかしら?」


 「まぁ・・・」


 「あらそうなの?リカ・・・じゃなくてアンジェリカ・シェルスの母、シルヴィエ・シェルスです」


 「こ、こちらこそ」


 杏奈さんが恐る恐ると言った感じで挨拶をすると、それに続いて他のみんなも挨拶をする。


 「・・・ところで、リカはどこまでいったのかしら?」


 「・・・何が?」


 「何がって、ソラ君と・・・」


 「わー!?きゃぁー!?」


 何かを言おうとしたシルヴィエさんをリカが遮る。

 それをシルヴィエさんは楽しそうに見つめ、あらあら、この子ったらと言いながらリカと話している。


 「・・・何ていうか、普通だなー」


 「そうですわね」


 「・・・二人とも、どうしちゃったの~?」


 不可思議な反応をするレクトとリオネさんにスズが尋ねる。


 「いえ、吸血鬼ですから。もっとこう、孤高の存在と言うのでしょうか?」


 「そうそうー。そこの気絶している人みたいな高慢な感じをイメージしてたんだよなー」


 「もう、この人のせいで吸血鬼ヴァンパイアのイメージは悪くなる一方ですね」


 そう言いながらラディエさんに再びドスっと不穏な音を響かせながら殴る。

 こんな白い髪の綺麗な人が暴力的なことをするもんだからみんなドン引きだ。

 けど、このパンチはラディエさんの目覚まし代わりになってしまったようだ。


 「うぅ・・・。シルヴィエ、いい加減にアンジェリカをリカと言うのをやめろ」


 「あら、いいじゃないですか。それに聞きました?この子ったら、初めてソラ君達に出会った時に声が小さすぎて『リカ』の部分しか聞き取れなかったんですって」


 「ふん、そんなことは知っている!流石アンジェリカ、何をしても愛らしい!しかし我が気に食わんのは、そこの小僧も『リカ』と呼んでおることだ!」


 ビシッとかっこつけてボクを指さす。

 ただ、話の内容はただの親バカな発言が百パーセント配合されている。みんなも自分の中のイメージの吸血鬼像がどんどん崩れて行ってるのがわかる。


 「ソラが『リカ』って呼ばないのなら、誰にも呼ばせない。もちろんパパにも」


 「む、むぅ・・・」


 なんかボクもこんなバカな会話している親子が吸血だなんて本当に信じられなくなってきた。


 「とにかく、パパはもうこういうことやめて!恥ずかしいの!」


 「し、しかしな、お前によからぬ虫が・・・」


 「ソラがいるからいいの!」


 「既についておる・・・!」


 なんか、ラディエさんがボクに向けて殺気を放ってくる。

 そこをリカが鎌を取り出して視覚からもわかるよう、ラディエさんに対して明確な殺気を放つ。


 「・・・シルヴィエさん、お願いですから止めてください」


 「そうね。・・・ソラ君がリカを貰ってくれるなら解決するんじゃないかしら?」


 「ママ!?」


 「シルヴィエ!?」


 何だろう、このどんどんボクが逃げられなくなっていく感じ。ボクはいつも罠にはめる側の人間のはずなのに、ボクが抜けることのできない罠の館にでも全速力で突っ走ってるみたいだ。


 「シルヴィエ、おま、お前は何を言う!?」


 「あら、私はソラ君ならリカを任せられると思っているわよ?」


 「認めん、認めんぞ!」


 「はいはい、わかりましたから。皆さんの邪魔にならないよう、この学園祭を楽しみましょうね」


 そう言うとシルヴィエさんは強引にラディエさんを引っ張って学園祭の喧噪の中を進んでいった。


 「・・・何ていうか、魔物にもいろいろいるんだね」


 「うん。そうだね」


 「確かにな。幼女好きロリコンな魔王がいるくらいだからな」


 「「「・・・」」」


 リュウの言葉にみんなは絶句している。

 まぁ、魔王はほとんど変人の集まりだからしょうがない。龍造さんとライネルさんはかなりまともな部類の魔王だ。


 「そう言えば、ものすごく言いたかったことがるんだよね」


 「なんだ?」


 カザハ達に向かってボクは言う。


 「・・・こんなザル警備で大丈夫なのかな?」


 「「「・・・」」」


 まぁ、大丈夫なんだよね。

 ・・・・・・・・・・・・・・・たぶん。



作 「というわけで『文化祭』をお送りしました!」

リ 「うぅ・・・恥ずかしい」

作 「普段から恥ずかしいことをしているのに何をいまさら(笑)」

リ 「パパは無理。生理的に受け付けない」


ラ 「ごはぁ!?」

* 「い、いきなり誰かが血を吐いたぞー!?」


作 「まぁ、いい感じに天国へ旅立ちそうな吸血鬼パパは放置して次回!」

リ 「・・・もう、いい加減にしてほしい」

作 「そんなわけでいろいろな所にレッツゴーだ。懐かしいあの人も出るかもね!?」

リ 「次回もよろしくお願い」

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