14話・STUPID COMMOTION
―――side空志
まぁ、結果から言うとボク等はどうにか助かった。
理由としてはサリナさんが爆破予告を止めたってことで、この騒ぎも隠す必要がなくなったってだけなんだけど。
サリナさんはいろいろと他の先生から文句を言われたらしいけど、だからこういうことに慣れているボク等を呼んだとかなんとかいって話を適当にごまかして、残りをカルネル先生に丸投げして逃げたみたいだった。
・・・・・・何と言うかカルネル先生、強く生きてください。
「そう言うことで、今回はお咎めなしとしますと先生達からの連絡です。ただし、適度な罰を受けてもらいます。わかりましたか?」
「「「はい・・・」」」
バリバリのキャリアウーマンな椿さんに先生からの連絡を聞いていた。
ちなみにボク等・・・というか1年DクラスとSクラスの人間は何故か闘技場で正座させられていた。
・・・・・・いや、理由はわかるけどね?
1年で劣等性のクラスと一緒に優等生のクラスが怒られて正座している姿はなかなかにシュールだった。
というか、普通に何事かといろいろな人達がボク等を見てくる。
「・・・・・・では、体罰として残り三時間ほど正座をしていてください」
「「「・・・」」」
体罰がしょぼい。
最初はそう思っていた。ただし、既に一時間ほど経っている。今回の体罰内容は下校時間まで正座をし続ける。
現代っ子なボク等は既に足がヤバいことになっていた。もう、ほんの少し体を動かすだけで足に痺れがくる。
「何で、ワイもやねん・・・」
「ご主人様、反省してください」
「お前が一番反省せなあかんやろうが!?」
「もう一枚追加です」
「もうやめてぇ~!?」
・・・隣に比べれば遥かにマシだ。
何故かここに来て、更には侵入までしているカバネさんとカレンさん。何故かカバネさんが反省という名の、江戸時代の拷問を受けていた。正座した膝の上に石でできた板を乗せるアレだ。今のことろ、ボク等はあれを心の支えにして今まで耐えてきている。あんな拷問を受けなくてよかったと。
「ではレイ先生、お願いします」
「はいはい」
そう言うと、椿さんはどこかへ早足で行こうとする。
危ないですよ、そんな早足で行ったら・・・。
「あふん!?」
・・・貴女なら絶対にこけますから。
「・・・死ぬ、かとお、思った」
「はい。確かにあれは少し大変でしたね」
「・・・」
ボク等はあの正座の拷問から帰ってきた。ここは一時的に間借りしている男子寮の一室。ボクとリュウ、そしてシュウは三人で同じ部屋をあてがわれている。
いまだに足に変な感触が残っているボクに対して、シュウはいつものような爽やかなこう青年な笑みを浮かべている。
「・・・全然辛そうじゃないね、リュウと違って」
「まぁ、わたしは慣れていますから」
何故かそこで遠い目をするシュウ。・・・そっとしておこう。
リュウはと言えば、もう何もしゃべる気が起きないとでも言うかのようにベッドに頭からダイブしている。
「マジ、だりぃ」
「リュウはまだましだよ。ボクなんかレオがふざけて膝の上に乗ってくるんだから・・・」
その当のレオは既にボクが使っているベッドで丸くなっている。
・・・このぐうたらライオンめ。
「とりあえず、もうこんな時間ですし、体を洗いに行かないといけませんね」
時間を見れば、確かに結構遅めの時間だ。
一応、夕飯は既に済ませてある。後はお風呂に入ってベッドにダイブすればそれで今日が終了する。
「そうだね。リュウ、どうする?」
「・・・先に行って来い」
一応リュウにお風呂に行くか聞いてみたけど、返答は予想通りのもの。ボクとシュウは手早く洗面器具を用意して、この寮の大浴場に向かった。
そして部屋を出れば、ちょうど隣の部屋にいるハル君とシャオ君に遭遇。
「二人とも、今から?」
「あ、はい」
「ソラさん達もですか?」
二人がそう言いながら視線をさまよわせている。
「・・・あぁ、リュウは後でってさ」
「そうなんですか?」
ハル君がキョトンとした表情でそう言う。
「・・・リュウさん、風呂が嫌いなんですか?」
何故かシャオ君がそんなことを言った。
ボクは不思議に思いながらシャオ君に聞く。
「何でそう思うの?」
「・・・俺達、たぶん一度もリュウさんとだけは入ったことないです」
ちなみに間学園のお風呂は、少し遠いけど寮のモノを使わせてもらっている。中はよく漫画とかで見る銭湯を小さくしたような感じ。そこで体洗って、湯船につかって適当な話をシュウ達としている。
そう言われれば、確かにリュウはあまり一緒に入った記憶がない。
「・・・でも、リュウは普通に綺麗好きだしな」
リュウは『めんどくせぇ』とか言いつつ、自分の部屋をよくきれいにしている。それに夏でも汗をかなりかいた時は『風呂にでも行きてぇ』とか言ってたし。
「・・・リュウはあぁ見えて竜だからさ、実は肌に鱗があるとかじゃない?それでみんなに気を使っているとか?」
とりあえずありそうなことを適当に言ってみる。
「・・・確かにありえそうですね」
なんかボクが行った冗談にシュウが喰いついてしまった。
そんなことを話していると大浴場に到着。ここはお金がかかっているのか、中も外もかなり豪華な造りになっている。最初はこんな所使ってもいいのか戦々恐々としていたのを思い出す。
そして中に入ると、そこには見なれた顔があちこちにいた。
大半がSとDの1年生。たぶん、みんなもボク等と同じような考えで動いていたんだろう。
そこで合流したカザハ達とまた適当なことを話して体を洗い、湯船につかっている。
「にしても、あれはねぇよ」
「・・・正座のこと?」
あれとは具体的になんだろうと思いつつ、カザハに聞きなおしてみる。
「違う、隣でやってた拷問のことだ」
「「「・・・」」」
何故かボク等の間に沈黙が舞い降りた。
そんな空気を払おうとでも思ったのか、レクトが明るい声を出して話を変える。
「そういやさー、今日来たあのメイドさんと二重人格のイタイ男の人はミタニーの知り合いかー?」
「カレンさん、カリンさんとカバネさんですか?」
即座に反応したのがハル君。
地味にカバネさんが可哀想だと思った。まぁ、事実だからしょうがないけど。
「・・・すみません、人数が一人多いですよ、平地弟殿?」
忍がそう指摘する。
「・・・あれ?カレンさんと、カリンさんにカバネさん。・・・ソラ先輩、それでいいんですよね?」
「ハル君、この頃君の常識の尺度がおかしくなってるんだ」
「そうです。ソラさんのせいでですけど」
「シャオ、本人の目の前でそれは失礼ですよ?」
シャオ君とシュウ、二人とも失礼だった。
話してもいいのかダメなのか・・・。
「ワイはな、死霊術師しとんねん」
「あの、何でいるんですか?」
ナチュラルに会話に入ってきたカバネさんを見てボクは突っ込んだ。
そしてカバネさんはいかに自分がどれだけカレンさんから理不尽な仕打ちを受けているのか語りだす。
ただ、何故かそれが惚気にしか聞こえない。
「というか、カリンさんはもしかしてまだカバネさんに憑いていたりするんですか?」
「それは大丈夫や。隙あらばワイと一緒に男風呂に突撃するようなヤツやけどな」
どこが大丈夫なのかよくわからない。
正直な話、こんな所で幽霊とはいえ異性に見られるのは無理だ。
「カリンが男湯に入れへんように死霊術使っといた」
なるほど、それなら安心だ・・・。
「と言うわけで、今から女湯覗きに行くわ」
と思ったらこっちもダメだった。
・・・いや、もしかしてカリンさんはこんなカバネさんを止めようとして?
「ちなみに、カリンが憑いてこようとすんのはワイと同じ理由からやでな」
ダメな三人だった。
カバネさんはげへへと小物臭がぷんぷんする笑い方で女湯らしき部分に向かって進んでいく。
「もう、何をバカなことをしているんだろうね・・・」
「おし、俺達も行くぞ」
「「「おー!」」」
何故か小声でカザハ達が話していた。
そして、話し合いが終わったのかこそこそとカバネさんの後を追っていく。
ここに残ったのはレクトとハル君、そしてボクだけだった。
「一番覗きに行きそうなレクトが行かなくて、行かなさそうな忍にシュウ、シャオ君が行くとか・・・」
「オレッチ、リオちゃん一筋だからなー」
そう言いながらケラケラと笑う。
「もしかすると、リオネさんいるかもよ?」
「見たら見たで後が怖いからなー」
「僕も怖いですね。・・・姉さんが」
なるほど。確かに冬香は怖そうだ。冬香なら『氷漬けの刑』とか言いながらコード≪氷地獄≫を使いそうだ。そしてその後はちゃっかりお金を貰う。
と言うか、シュウはシャンちゃんがいるんだからいいじゃんと思う。
「ミタニーはいいのかー?今ならアンジェリカちゃん見れるかもだぜー?」
「・・・」
もしも見ると、ボクの場合はリカにボコボコニされた揚句、ラディエさんに惨殺されるビジョンが鮮明に脳内再生される。
「み、ミタニー!?大丈夫かー!?」
「そ、ソラ先輩!?ど、どうしたんですか!?」
「・・・うん、ボクは頼まれても、死んでもみない。・・・うん」
そうこうしていると、何故かいきなり魔法が炸裂し始めた。
急なことに驚いて音のした方を見ると、そこには屍を気付きつつある少年達のムサイ絵があった。
そしてどうも、女子からの反撃を受けたようだ。と言うか、いつの間にかここにいる生徒がSかDの人で、しかも全員女子風呂に突撃しようとしていた。・・・この人達、本当に懲りないね。
『ご主人様、わたしと言うものがありながら・・・』
『待て、カレン。話せばわか・・・』
『≪豪雷神ノ飛来鎚≫!!』
『―――!?』
とりあえず、カバネさんが散ったのはわかった。運よく眼が覚めたら自分の彼女のご機嫌取りを頑張ってください。そう思いながら合掌しておいた。
「ハル君、念のために結界お願い。ボクは魔術符ないからさ」
「わかりました」
そう言うとハル君は素早く魔法陣を展開して、結界を張る。
まぁこれで一安心。
「あ、ついでにお湯の温度も少し上げてよ」
「あ、はい」
「おぉー。春樹君の魔法は便利だなー」
『何でソラがいないの!?』
『落ち着きなさい。だからってアンタが男湯に突撃しようとしてどうするのよ?』
『み、見ないで~!?』
『へ、へへ、変質者です!?せ、精霊さん、助けてください!?』
『シュウとシャオは、こっちに来る出すぅ!!』
『た、助け!?』
『シャン、落ち着け!?』
『問答無用ですぅ!』
『・・・タマ、ポチ、このバカ達をお願い』
『おい、それって明らかにクマ・・・!?』
『み、見ないで下さる!?レクトにもみ、見せたことがないのですのよ!?』
「にぎやかだなー」
「そうだね」
「あの、そろそろ上がりません?のぼせてきました」
確かに、ハル君の言うとおり少しのぼせてきた感じがする。
ボク達三人はとりあえずお風呂からあがり、風呂場を後にした。
―――side隆介
「ふぅ、さっさと入って寝るかな」
オレは遅めの時間に風呂に入ろうと、ここの大浴場にやってきた。
ここはかなり大きいからな。こういう時ぐらいゆっくりと一人で入りたいな。そんなことを思いつつ風呂場の扉を開ける。
「・・・」
「「「・・・」」」
扉を開ければ、そこには死屍累々とした男子生徒達の姿。
俺は何も言わずにすぐに閉めた。
なるほど、さっき来たスズのパニクったメールはこれか。俺は、一瞬であろうとスズの裸を見たであろうこいつ等を惨殺すべきかどうか真剣に悩んだ。
ちなみに後日、SとDの一部の男子の連中は女子にこき使われていた。
作 「というわけで『バカ騒ぎ』でした」
隆 「そうか、お前の仕業だな」
作 「たまにはこういうベタな展開も必要かと?まぁ、あまり面白くなかったね」
隆 「そうか、遺言はそれだけだな?」
作 「・・・・・・ドウイウコトナノー?」
隆 「スズの仇!」
作 「ごぱぁ!?」
隆 「つーわけで次回予告だ。次回からはついに学園祭開始だ。次回も頼む」