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DARK・MAGIC ~闇夜の奇術師達~  作者: 夜猫
1章 ≪異世界との遭遇≫
15/170

15話・TRUTH

―――sideリカ

 アレからどれくらいの時間が過ぎたんだろう?


 「・・・ハァ、ハァ」


 度重なる攻撃をするのにと、避けるのに体力をもっていかれ、アタシは徐々に動きが悪くなっていった。

 魔法系の攻撃はアリアさんという変なエルフの人に貰った服のおかげで致命傷にはいたっていない。

 だけど、状況が最悪なのには変わりがない。


 「そこです!」


 「っ!」


 しかも、隠れても何故かすぐに見つかる。

 アタシの種族ははっきり言えばこういう隠れるとかこそこそすることにかなり慣れている。そうでもしないと栄養補給もできないから。だから普通なら気づかれるなんてことはあり得ない。

 なら、どうして・・・?


 「考えても、しょうがない」


 「シッ!」


 鋭い呼気と共に突きが放たれる。

 アタシはそれを転がるようにして回避。そして鎌を一振りする。そこから斬撃が一つ放たれ、長身の男子をけん制する。けど相手はそんなの関係なしに距離を詰めてきた。


 「私の師匠の教えは、攻撃は最大の防御です」


 「っく!」


 避けても、次々に拳が、足がアタシに向かって放たれる。

 徒手空拳のレベルが高すぎる・・・!今のアタシじゃ、避けるので精一杯。それに、問題はこれだけじゃない。


 「邪魔よ!」


 その言葉と共に氷の槍が次々に放たれる。

 アタシの身体能力で避けるのは簡単。だけど、その攻撃の軌道がアタシの進む方向に的確に攻撃してくる。

 なんなの、この二人?


 「そこ!」


 「ッ!?」


 そしてついにアタシに致命的な魔法を受けてしまった。空気が凍え、音を立てて氷が生み出される。そしてその生み出された氷にアタシの足が巻き込まれてしまた。

 この程度の氷、いつもなら問題なく強引に引き剥がせる。

 だけど・・・。


 「やっと、みたいね」


 「・・・」


 今のアタシには、睨みつけることが精一杯。

 既に体力もゼロに近く、魔力も同じ。少なくとも、颯太さんを吹き飛ばすぐらいの攻撃何んて到底放つことはできない。


 「んじゃ、せめて苦しまずにしてあげるわ」


 そう言うと、眼鏡の少女がその手を上空に向ける。

 すると空気が凍てつき、巨大な氷の剣が生み出された。


 「まぁ、首をスパッとすれば大丈夫でしょ」


 「・・・私は、ここで遠慮しておきます」


 長身の男子がそう言うと、アタシ達に背を向けてどこかに行こうとする。それについては眼鏡の少女も何も言わず、アタシにその目を向ける。

 そして―――。




 「≪鎌鼬カマイタチ≫」




 いきなり、氷の剣が壊れた。

 氷の欠片がアタシ達の周りに降り注ぎ、幻想的な輝きを放つ。


 「お前、書き置きの書き方、間違ってたぞ」


 「そうだよ~。ちゃんと、行き先も書かなきゃダメなんだよ~!」


 「みゃ」


 アタシの後ろから、そう言いながら人影が歩いてきた。


 「なん、で?」


 「ボク等、友達見捨てるほど薄情じゃないからね」


 そこには、アタシの友人達がいた。




―――side空志

 「いきなり、氷の剣で切り刻まれそうな場面でびっくりしたね」


 「だな。いくらなんでもピンチ過ぎるだろうが」


 「リカちゃん!怪我を見せて!」


 とりあえず、スズがリカと自分の周りに魔法を無効化する壁を展開。これで、魔法攻撃はこの二人には効かない。その代わり、物理攻撃は届くけど。


 「何で、ここに・・・?」


 「何、トチ狂ったこと言ってんだよ」


 「わたし達、お友達だもんね~」


 「まぁ、というわけでいじめっ子撃退作戦だ」


 ボクはそう言いながら銃口を相手に向け、リュウも剣を抜く。


 「どうする?数は一応そっちの二倍。それに、お前等も知っての通り、オレは魔物で種族はドラゴン


 リュウは遠まわしに勝てねぇからさっさとどっか行けと言う。

 けど、そこで眼鏡の女子が不敵な笑みを浮かべる。


 「けど、アンタみたいな子竜を倒しても自慢にもなんないわよ」


 「そうかよ。警告はしたからな」


 そう言うと、リュウは眼鏡の女子に肉薄。

 剣に黒い闇の魔力が纏わりつき、それで切りつけようとする。そこで横やりが入った。長身の男子だ。

 相手は徒手空拳にもかかわらず、その身一つでリュウと対峙。そして鋭い突きを放つ。それに対してリュウはとっさにバックステップを踏んで回避した。


 「女性に手を上げるのは、どうかと思いますよ?」


 「そうか、残念だな。オレは仲間の為ならそんなの関係なくぶん殴る性質タチだからな」


 そうはいってるけど、相手はなんだ?

 ドラゴンの身体能力は人間の姿になると、魔力の関係で若干上昇するらしい。リュウに言わせれば、本の少しだけ常に≪身体強化フィジカル・ブースト≫しているらしい。

 もちろん、ただの人間のボクはそんなリュウの全力になんてついていくことはできない。それにもかかわらず相手はその動きに当たり前のようについていけている。


 「魔法なんか、使っている形跡がないのに・・・!」


 「あなた、なぜそれを?」


 しかも、ボクがポロリと漏らした言葉を耳ざとく聞きつけられてしまった。それに対して長身の男子は少しだけ驚いた表情を見せるけど、すぐに表情を引き締めてリュウの相手に戻る。だけど、驚いているのは眼鏡の少女のほうも同じだった。


 「アンタ、なんでそれがわかったの・・・!?」


 「・・・え?普通は、わからないの?」


 「「「・・・」」」


 なぜか敵も味方も関係なしに呆れれた。


 「魔力にしろ、魔法にしろ、目に見えたら誰も苦労はするか!」

 リュウがそう指摘してくれた。

 じゃ、この光は何?というか、他の人にはこれが見えていないっぽい。けど、同じ風を使える優子さんもこの光が見えている気配はなかった。そうじゃなかったら、ボクが時々出していた疑問の声にこたえてくれるはずだ。


 「ソラ君!」


 スズの声で前を向くと、そこには眼鏡の少女が攻撃を仕掛けてきていた。

 ボクがいるのは結界の範囲外。魔法に当たれば、超痛い。


 「ごはぁ!?」


 案の定、いろいろと間に合わなくて超痛い目に遭った。

 アリアさんの服のおかげでいくらか軽減されててこの痛みだと、普通に当たれば死ねる。その事実に半ばぞっとしつつも今度こそちゃんと構える。


 「なんで、アレをくらって死なないワケ?」


 「ボクの属性、そこの女の子と同じくらいにレアで特殊なんだよね」


 とりあえずはったりを張っておく。

 いや、嘘は言っていない。ただ、事実をほんの少ししか話していないだけだ。


 「アンタの言葉、なんか信用できないのよね」


 「何を言うんだか。ボク程正直な人はいないって思うね」


 「そう。でもアンタのそれ、本当に数法術なの?」


 「・・・」


 「おかしいと思ったのよね。デバイスを両手に持たないくせに、二兆の拳銃をぶら下げてるなんて。一回、それのどっちかがデバイスかとも思ったけど、違和感があるわ」

 「ボクからしてみれば、そっちのほうが変な違和感があるね」


 そう、なんか変な力を眼鏡の少女のほうから感じる。なんとなくでしかないけど、優子さんはその勘というか、感じることを大切にしろって言ってたし。


 「まぁ、そんなことはこうしてみればわかるわね」


 すると、少女の指が素早く機械をいじる。

 ボクはすぐさま魔法を使うために魔道書を取り出す。そしてぱっと開けたページを確認して魔力を流す。


 「≪雷迅ライジン≫!」


 魔道書から黄色い魔法陣が浮かび上がり、そこから雷の弾丸が放たれる。光のような速さで相手を貫こうとする一筋の光。だけどそれをすでに読んでいたのか、眼鏡の少女が過剰な反撃をもって迎え撃ってきた。


 「ちょ!?」


 膨大な数の氷の槍が放たれる。

 一に対して数えきれない攻撃で返してくるとか鬼だ。しかも、ボクの手札には防御系の魔法が一つもない。いや、一応≪風鎧フウガイ≫が相手の攻撃をそらすタイプの魔法だけど、ああいった大質量の氷をそらせるとは思えない。

 試して串刺しになってデッドエンドとかボクの人生に悔いがありすぎる。

 だから攻撃を真正面から受け止めるという選択肢はあり得ない。全力で避けるの一択だ。


 「死ぬ!当たった死ぬ!」


 「ちょこまかと・・・!」


 まさか、ここにきて優子さんのスパルタ訓練が役に立つとは思わなかった。

 優子さんの太刀筋よりはるかに遅い一撃を紙一重でよけ、ちまちまとした攻撃を相手に繰り出す。


 「そんなんじゃ、わたしにかすり傷一つ付けられないわよ!」

 確かにこれじゃぁ、焼け石に水だ。

 こっちは魔法陣一つにつき魔法をひとつ。相手はなんかよくわからない魔法で弾幕張ってくる。


 「ちっ!おまえ、人間か?」


 「そちらこそ、人間ですか?」

 リュウのほうは長髪の男子相手にかなり苦戦しているみたいだった。というか、優子さんほどではないとはいえ、かなりのスピードで動いている。


 「まだまだいくわよ!」

 注意がそれていたところを狙われ、氷の槍が空から降ってきた。

 ボクはそれをみて避けるのは不可能と判断。なら・・・!


 「魔法陣展開!」


 展開したのは緑の魔法陣。それにボクはありったけの魔力を込め、放つ。


 「≪鎌鼬カマイタチ≫!」


 魔法陣の特徴として、込めた魔力に比例して威力が上昇する。つまり、下級魔法と侮っていると痛い目に遭う。

 ボクの魔法陣から巨大な風の刃が放たれる。それは無数に放たれた氷の槍を蹴散らして、ボクの身を守り切った。


 「やっぱり、それは数法術じゃないわね」

 「・・・」


 まぁ、バレちゃうけど。


 「それなら、これはどうかしら?」


 またも機械をいじる。

 すると、今度は眼鏡の少女の足元が音を立てて凍り始め、それがボクに迫ってきている。これは避けるとかそらすとか、そういう状況を越えてしまっている・・・!


 「リュウ!一旦下がって!」


 「わかった!」


 ボクはリュウと一緒に一旦スズのところにまで下がる。そしてリュウが魔法を発動。


 「≪闇の浸食ダーク・イロージョン≫!」


 「≪相殺の壁アンチ・ウォール≫!」


 リュウが使った闇の壁の外側に魔法を無効化する壁が張り巡らされる。これで、物理と魔法の攻撃はあらかた防ぐことができる。


 「っち!厄介なことをしてくれたわね」


 「・・・これでは、私の力でも突破は不可能ですね」


 とりあえずは、大丈夫らしい。


 「リカ、大丈夫?」


 「・・・何、で?」


 呆然としたような感じでリカがそう言う。

 まぁ、颯太さん達の推測が正しいならそう思うことも仕方がないのかもしれない。とりあえず、ボクはそれを知った上でここに来たと言ってみることに。


 「何で来ちゃったの!?」


 リカが突然大きな声で叫び出した。

 一時的に情緒不安定になっている。たぶん、自分の秘密を知られたくないからだろう。リュウが落ち着くように言おうと口を開けると、そこでさらに横槍が入ってきた。


 「そうよ、アンタ達自分が何を助けようとしているか自覚してんの?」


 「言わないで!!」


 リカが、まるで悲鳴のような叫びを上げた。

 そして声の主である、眼鏡の少女に飛びかかろうとした。ボクはとっさにその腕を掴む。


 「離して!」


 「落ち着け!」


 「リカちゃん!」


 ボク等はなんとかしてリカをなだめようとするけど、パニックに陥ったリカにはボク等の言葉が全く届かなかった。暴れ出そうとするリカを、リュウが何とか押さえつけているけど、正直もつ気がしない。


 「そいつの正体は・・・」


 「黙れぇ!!」


 もう、ダメだ。こうなったら・・・。


 「リカの特徴、まずは夜行性の魔物っぽい」


 ボクがそう言った途端に、リカが自分の体をびくりと振るわせる。たぶん、恐怖の感情からの行動だと思う。そしてそれはリュウとスズにも分かっているだろうと思う。


 「おい、ソラ!」


 「ソラ君!」


 「わかってる。大丈夫」


 二人は颯太さんの話を聞いてる。それに、この状況からボクが一体何を言おうとしているのかなんて、火を見るよりも明らかだ。

 ボクはそのまま言葉を並べる。


 「そして、リカは何故か自分の正体を言わない。これは自分があまりにメジャーすぎる存在だからだ」


 「やめて・・・」


 リカの悲壮な声が聞こえるが、ボクはそれを無視して言う。


 「それに、いつまでたっても治らない不調。ここからは、もしかするとボク等とは違う栄養俸給の方法、あるいは栄養源が必要なんじゃないかって推測ができる」


 「アンタ、そこまでわかってて・・・!」


 「いや、ここまでしかわからなかった」


 眼鏡の少女の言葉にボクは否定の言葉を言う。

 そう、ボクはここまで・・・・しかわからなかった。


 「大体、ここにきて数日のボクがわかるわけがない。だけど、ここにいるヤンキーのお父さんが説明してくれたんだ」


 「誰がヤンキーだよ」


 リュウの言葉はスルー。いちいち突っ込むほど時間がない。


 「圧倒的なパワーを持って、更には人型。そして夜行性で異様に自分の気配を隠す術に長けている。その人はこっそりとリカを観察していたらしい」


 ボクがそうリカに言うと、当の本人はこの世の終わりのような表情をしていた。




 「そして、ボク等は聞いたんだ。彼女の正体が吸血鬼ヴァンパイアだってことを」




 だけどこれを言わなきゃ、今のボク等四人・・は前に進めない。


作 「というわけで『真実』をお送りしました!」

颯 「いえ、まさかこんな所に吸血鬼ヴァンパイアがいるとは思いませんでした」

作 「ちなみにさ、僕は吸血鬼って聞くと『銀髪にツインテ』みたいなイメージがあります。某ヴァンパイアマスターさん的なかんじで」

颯 「偏見にも程があります」

作 「さて、暴かれた真実。一体どうなる?」

颯 「次回もよろしくお願いします」

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