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DARK・MAGIC ~闇夜の奇術師達~  作者: 夜猫
7章 ≪魔法学園文化祭編≫
143/170

7話・SPECIAL SKILL

―――side空志

 「・・・マジで、どうしよう?」


 「・・・確かに、そこまで考えていなかった」


 保健室での事件(笑)の翌日、つまりは準備期間三日目。ボクが教室に入って耳にした第一声が代表二人のため息とも愚痴ともとれるこの言葉だった。

 一緒に入ってきたリカにスズ、四条さんといぶかしげな顔を向けつつも一応聞いてみる。


 「それが、ミスコンで出場者は何か特技をしなきゃいけないらしいの」


 ミスコンという言葉で四条さんが泣きそうな顔になる。

 既に洗脳的なものからはとけている四条さんは今にもミスコンをやめたいらしい。

 ただ残念なことに、四条さんの(前髪に)隠れた魅力で既に後戻りができない状況。それでしぶしぶながらも出るだけならと許可が出た。

 でも、現実は厳しかった。

 目立つこと自体が苦手な四条さんに大勢の目の前で何か特技を披露しろって言われても・・・。


 「・・・あ、ああ、あの、わ、わたしには、こ、交信ぐらい、しか・・・・・・」


 「・・・・・・さすがに、それしちゃうと、ねぇ」


 「まぁ、な・・・」


 四条さんがそうですよね、と言いながら落ち込む。すると、レオが四条さんに元気出せよとでも言うかのようにボクのフードから前足を出してぺしぺしと頭を叩く。

 四条さんはものすごく珍しい『精霊魔法』の使い手。正確には精霊と交信できる体質の持ち主。


 「精霊魔法は、精霊と言う意思を持ったマナが精霊魔導師を媒介に発動する魔法だからのぅ。一部のアホどもは嫉妬してそれをぶつけてくるから始末に負えん」


 「・・・あの、いきなり何ででてくるんですか?」


 ここにいる誰かがいきなり古臭い言葉遣いに目覚めたわけじゃない。

 見た目は二十代で金髪、『ボン、キュ、ボンなばでーじゃぞ』と自称する月の神霊、ルーミアさんがいきなり登場した。

 ・・・確かに、自己主張の激しい体つきをしているとは思う。


 「決まっておろうが。わらわとて、単独で魔法は使える。しかし、ぶっちゃけた話、精霊魔導師に使ってもらった方が楽でのぅ」


 「建前はわかりました。本音は?」


 「わらわも祭りを楽しみたい」


 どこまで行ってもフリーダムな神霊さんだった。

 いきなり神霊が出現しては適当なことを話していく光景は既に見慣れているのか、誰も驚いていない。むしろ、今さっき廊下から『あ、ルーミアさんお久ー』とか言われてた。良くも悪くも、かなりなじんでいるっぽかった。


 「でも、ルーミアさんが言うのも事実なんだよな・・・」


 「うぅ、すみません・・・」


 「四条さんが悪いわけじゃないの。悪いのは世論」


 「話のスケールがおっきいね~」


 でも、確かにダメだ。別に力を持ってるのが悪いことじゃない。ただ、その力を持ってることをバカにするやつがいるのがダメなんだ。正直な話、四条さんが図太い性格なら、いろいろとよかった。

 でも、現実は・・・・・・。


 「や、やっぱり、わたしには、む、無理ですよぉ~」


 ものすごく気弱な女子だ。

 そんな大勢の目の前で罵られた日には絶対に人は信じないとか、人間不信に走る。それに、もしも友人として付き合ってるボク等にまでその矛先が向けば、ものすごく気にすることが容易にうかがえる。


 「っふ、汝らは甘いのぅ」


 ただ、そこで不敵に鼻で笑ったのがルーミアさん。

 さすが、神霊というか、伊達に数百年どころか数千年生きてるわけじゃないのかと、期待を込めた目でボク等が見る。


 「汝らは、例えば自分が、力こそ至上とする世界でものすごく攻撃力が低く、逆に速さだけなら人よりも若干優れていたならば、どうする?」


 「・・・人生を諦める」


 「とりあえず、来世に賭ける」


 「わたしはね~、ものすごくがんばるよ~!」


 「・・・ソラがいればそんな壁ぐらい越えて見せる」


 「にゃ」


 レオはライオンに変身すればいいんじゃない?

 それができるの、君だけだから。

 しかも、最初の代表二人は既にいろいろとダメだった。もう、人生を投げ出していた。

 後者の二人に関してはどう突っ込むべきか・・・。


 「・・・たぶん、ルーミアさんが言いたいのは、こういうことでしょう?どんなに弱くても、ある部分を突き詰めて、その部分で一番になれば周りは認めてくれるはずだって」


 「うむ。そこで・・・」


 ルーミアさんは言ったん言葉を切り、ためるとびしっと四条さんを指さす。


 「精霊魔法も突き詰めてしまえば良い」


 「具体的には?」


 「神霊と契約する」


 「ハードル高い!?」


 「何、神霊はここにいるではないか。簡単じゃ」


 「いや、アンタがフリーなのはみんなにバレてるけど?」


 「・・・奏よ、がんばるのじゃ」


 「そ、そこはウソでも契約してくれるって言ってください!」


 「だって、わらわ契約とかしなくても問題ないし」


 まぁ、精霊のくせに魔法が使えるって言うふざけたスペックの持ち主だからね。

 確かティーナの話ではいくら神霊でも、契約しないと普通はできないはずなんですけどとか言いながらルーミアさんを見てた気がする。

 ついでに、ステラとか言う星の神霊さんもお前嫌いとか言いながらルーミアさんに喰ってかかって言ってた。


 「・・・じゃ、どうするの?」


 「そ、そんな、わ、わたしに特技、なんて・・・」


 まぁ、いきなり特技は何?って言われても困ることはよくわかる。


 「こういうのは、どっちかって言うと、四条さんをそれなりに知ってる人から第三者の意見を聞いた方がいいと思うんだけどね」


 「それなりに知ってるって、どの程度だよ?」


 「・・・例えば、授業を一緒に受けてるとか?友達とか・・・?」


 一応ボク等がそれに当たる気がしないでもないけど、どうしても思いつかない。

 つまり、ボク等より四条さんと過ごす時間の長い人は・・・。


 「・・・ほぇ?」


 「「「・・・ダメだ」」」


 心の底からそう思った。

 全員の視線が向かった先はスズ。かなり似通った方向ベクトルならと思ったけど、この子のような超ド天然の意見が参考になるかどうかものすごく怪しい。


 「一応聞くけどさ、四条さんのすごいところは?」


 「奏ちゃんのすごいところ~?」


 そこでスズは腕を組んで考えてみる。

 そして何かをひらめく。


 「精霊さんとおしゃべりできる!」


 「うん、よくわかった。ありがとう」


 聞くだけ無駄だった。

 というか、話を聞いていたのかな?いや、聞いてはいたんだけど、やっぱりそこに行くよね・・・。

 でも、スズはそんなボク等の反応がお気に召さなかったみたいだ。


 「むぅ~。じゃぁ、冬香ちゃんに聞いてみようよ~!」


 「・・・冬香に?」


 何で冬香ってボクは考えた。

 その疑問に答えるようにリカがぼそりとつぶやくように言う。


 「・・・冬香と奏は同じクラス」


 あぁ、なるほど。

 確かに、冬香は四条さんと同じクラスだ。まぁ、ボク等よりいろいろと思い当たることがあるかも知れない。

 とりあえず、ボク等は冬香に会いに行ってみることにした。






 「で、ここがAクラス?」


 「は、はい」


 何故か四条さんはものすごく緊張している。

 何を緊張しているのかよくわからないけど、とりあえず入ってみる。

 中では何かの作業中らしく、生徒がせわしなく動いている。そこで近くにいた男子生徒が扉の前に突っ立ていたボク等を見ていぶかしげな目をする。


 「・・・お前ら、何だ?」


 ・・・いきなり、哲学的な質問っぽいものをされた。


 「難しいね~。これがテツガク、ってやつかな~?」


 「なんか、珍しくスズと同じ考えが頭に浮かんだ」


 「・・・Sクラスよりも難しいことを考えているの?」


 「わ、わたしも初めて知りました」


 「違ぇよ!?お前らみたいなやつが何でここに来てんのかって聞いてんだよ!?」


 ・・・よく、意味がわからない。


 「ねぇ、なんかボク等、悪いことした?」


 「ソラは常に正しい」


 「・・・リカちゃんの中で、ソラ君はチョウジゲンテキな存在になってるよ~!?」


 「な、なんだかすごそうです!?」


 「あのさ、意味わかってる?主に三人とも」


 「だから、何でお前らみたいな格下がここにいるのかって、聞いてんだよ!」


 「・・・なるほど、そういうこと」


 もちろん二重の意味で。

 まず、ここはS程に今だ下のクラスを見下す傾向にあると。だから、ここに黒(Dクラス)の紋章をひっつけたボク等は空気読めよと言外に言われているわけだ。

 そして二つ目に、どうもボク等のことをよく知らないみたいだ。


 「ここに留学してきた、平地冬香さんを呼んでくれない?」


 「なんだ、野次馬か?誰がDのやつ等の面倒なんか・・・」


 「あ、冬香」


 「ん?あ、本当だ~。冬香ちゃ~ん!」


 目の前の男子は完全にスルーされた。

 そして冬香がこっち歩いてくる。


 「どうしたの、アンタ達?」


 「いや、いろいろなことがあって、四条さんがミスコンに出ることはオッケーなんだけどさ・・・」


 「お、オッケーじゃ、な、ないです・・・」


 「でも、特技がどうしようってなってさー」


 「・・・確かにこの子は、ねぇ」


 「で、なんか得意なこととか思い当たらない?」


 「そうね・・・」


 冬香が考え出す。

 たぶん、今頃は学校での風景が頭の中で再生されているはずなんだろうと思う。


 「って、俺を無視するな!」


 「・・・まだいたの?」


 リカの痛烈な一言。

 それによって、目の前の生徒は口をパクパクさせて言葉を失ってしまう。


 「ねぇ冬香。何でこんなに殺気立ってるの?しかもボク等に対して」


 「え?・・・あぁ、どうも、ここは一部の生徒がいまだにクラスがどうとか言ってるらしいわね」


 自分は全く興味がないと言いたげに、冬香は必死に四条さんの得意そうなことを脳内検索中。それにも関らずこっちの話にも返してくれる当たり、賢いのかなぁと思う。


 「でも、アンタが言っての本当なわけ?アンタが元Sの代表をぶちのめしたからある程度は平和になったらしいけど?」


 冬香の何気ない一言で周りがざわつきだす。


 「ぶちのめした?Dが、Sを?」


 「それが、可能なヤツって・・・!」


 「そういや、噂であの生徒が戻ってきてるって・・・」


 ・・・あぁ、ここにも悪評が轟いているわけですね。

 ボクはげんなりしつつも答える。


 「いや、どうもSだけらしいね。今さっきわかった」


 「どうせなら、もっとえげつないの使えば良かったんじゃないの?」


 「さすがに上位の動物形は下手したら死んじゃうって。・・・・・・てかさ、思いつかないの?」


 「ちょっと待って、考えてる」


 冬香は地味に泣きそうな顔をしている四条さんを見て焦っている。

 周りからは死ぬって!?とかいう声が聞こえる気がするけど気のせいだ。やっぱあいつは悪魔で、噂は本当なんだなって声もなかった。


 「いい加減、ソラの悪口を言うなら・・・・・・狩る」


 唐突にリカがしゃべったかと思えば、大鎌を取り出して牽制しだす。

 いきなりの猟奇殺人予告に周りの生徒もドン引きしてしまい、一歩後ずさる。


 「ちょ!?それじゃ、本当にボクが当人だってバレる!?」


 「もう、その一言でバレてるわよ」


 そして平然としているボク等には明らかに変なまなざしが来ている。

 まぁ、ここから出た後、冬香は大変なことになるだろうということが簡単にわかる。


 「・・・あ、一つだけあった」


 「そ、そんなに考えても一つなんですね・・・」


 「・・・精霊魔法の比重が大きいのよ。それはアンタだけの才能だからね」


 「そ、そうですか?」


 冬香はまるで洗脳でもするかのように四条さんの顔を覗き込んで言う。

 まぁ、単純でよかった。


 「で、奏ちゃんの得意なことって~?」


 「ん?あぁ、あれ見て思い出したんだけどね」


 そう言って冬香が指さす方には、ギターっぽいものや、見たこともないような特殊な楽器を運んでいる生徒。


 「まぁ、アンタ達二人は見るの初めてだと思うけど、あれは楽器よ」


 「「へぇ~」」


 「・・・奏、ロックバンド的なことができるの?」


 「む、無理ですよぉ~!?できないです!?したことないです!?」


 「いや、音楽の時間に歌うのがうまかった気がしたのよ」


 何故か冬香の記憶がアバウトだった。


 「・・・何で、気がするの?」


 「・・・何て言うの?イメージが合わないというか・・・まぁ、やらせてみればわかるんじゃない?」


 その言葉で全員の目が四条さんに向く。


 「え?・・・・・・そ、その・・・あの・・・」


 「とりあえず何でもいいから歌ってみてよ」


 「こ、ここで、ですか?」


 「「「・・・」」」


 恥ずかしがる四条さんの言葉に、ボク等は無言の肯定で示す。

 四条さんはなおもうなりながらも、しばらくすると意を決したような雰囲気になる。

 そして、軽く息を吸い込み・・・。


 ・・・―――――。


 歌う。小さくだけど。

 綺麗な声で、静かな旋律が流れる。

 ボクはこんな歌は聞いたことがないけど、独特のメロディーだ。まるで、聖歌のようにも聞こえる。

 そして、光が・・・・・・!


 「・・・っ!?四条さん、ストップ!」


 「ひゃ、ひゃい!?」


 「ソラ君!?いきなり、ど、どうしたの~!?」


 「そうよ、せっかく特技が見つかったのに・・・」


 「ソラ?」


 講義の声を無視し、四条さんに詰め寄る。


 「さっき、精霊が活性化したけど?」


 「は、はい?あの、これ、精霊さんが、好きな歌なんです。お、お母さんに教えてもらって・・・」


 四条さんの話を聞きながらも≪月詠ツクヨミ≫を起動する。

 さっきよりも魔力がはっきりと見えるようになる。そして、四条さんの周りにいる光の球を見てみると、やっぱり精霊魔法を使うとき並みに活性化している。

 下手をすれば、四条さんが精霊魔導師だとバレていたかもしれない。

 それに・・・。


 「四条さん、無意識に魔力使ってる」


 「え?」


 「魔力を使って歌ったってこと?本当に?それなら今度からそうするわ」


 「別に、魔力使って歌えば上手になるわけじゃないよ?」


 冬香の見え透いた考えにとりあえず言っておく。

 すると、冬香は結構本気でうなだれた。どうも、冬香は音楽が苦手なようだった。


 「じゃぁ、奏ちゃんが歌上手なのも、精霊さん達に歌ってあげたから~?」


 「上手、でしたか?よ、よく頼まれていたので・・・」


 「うん、すごかったよ~!」


 「・・・とりあえず、その歌以外なら大丈夫かな?」


 まぁ、冬香が音楽の時間に歌とか歌う時に異常な魔力を感じたり、精霊魔法が唐突に発動していないみたいだし、普通の一般的な歌を歌う分には問題ないんだろう。


 「まぁ、これで任務完了。じゃ、教室に戻ってて」


 ボクはそう言ってAクラスの教室から出ていく。


 「ソラ君は~?」


 「ボクはお仕事。ついさっき変な魔力を感じた」


 「え?え?じゃ、じゃぁ、わたし達も行った方が・・・?」


 「う~ん、とりあえず、リカも来て」


 「わかった」


 そう言いながらリカと歩く。


 「・・・本当は?」


 「精霊魔法と歌の関係性について調べる。もしも、歌に反応して精霊が活性化して、精霊魔法が発動すればマズい。しかも、今は文化祭期間中。さっきみたいな楽器持って練習している人がいる。まぁ、三日前からもしてるはずだし、大丈夫だとは思うけど。・・・それに、いい機会だし」


 「いい機会?」


 「他にも調べたいことがある」


 とりあえず、サリナさんに聞くか?

 いや、図書館にでも向かうか。



作 「というわけで『特技』をお送りしました」

奏 「・・・わたし、そんなに地味なんでしょうか?」

作 「・・・・・・・・・・・・・・・さぁ、次回予告!」

奏 「そ、そんなぁ!?」

作 「四条さんの特技を無事発見できたけどまだ問題はありそう!?」

奏 「・・・」

作 「そんなわけで調べに行こう!・・・次回もよろしくお願いします」

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