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DARK・MAGIC ~闇夜の奇術師達~  作者: 夜猫
7章 ≪魔法学園文化祭編≫
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5話・STUDENT COUNCIL

―――side空志

 「・・・なるほど、あれがあの時ボクにぶっ放そうとしてヤツか」


 ボクはリュウが使った魔法剣の真言を見てそう思った。


 「おい、それ以外に何かいうことはないのか?」


 「・・・?」


 むしろ何かあるの?

 よくわからなくて首をひねっていると、ジグはもういいとため息をつきながら額を押さえる。


 「・・・確かに、ロイもろいだが、お前のところの間ってヤツもそうだな・・・」


 まぁ、ドラゴンだし?とカザハにはアイコンタクトをしておく。

 今のところ、ボク等のことを知っているのはカザハ達Dクラスの仲のいいメンバーだけ。


 「でも、えげつないね。闇の侵食を最大限に生かした魔法か」


 ―――術式の解析完了。

 ―――記録・・・完了。


 「ソラ?どうしたの?大丈夫?」


 「・・・うん。大丈夫」


 ボクがぼうっとしていたからか、リカが心配そうに声をかけてくる。

 つい最近、よくこうなる。

 何故か魔法を見ると勝手に解析され、勝手に記録している。

 ・・・一体、自分に何が起こっているんだろう?

 ルーミアさんに聞いてはみた。

 でも、問題ない。むしろよし。で会話が終了。

 ボク等には専属家庭教師のような三魔源素スリーシンボルの神霊。でも、ルーミアさんは放任主義過ぎる。いい加減、力のことの一つや二つぐらい教えて欲しい。こっちはわからないコトだらけで困ってるのに・・・。


 「ま、いい息抜きにはなった。さっさと仕事だ仕事」


 「そういえば、ジグ達は何をするの?」


 「・・・喫茶店だ」


 ・・・なんだろう、間にものすごくいろいろな思いが込められていた気がする。


 「・・・行っても、いいよね?」


 「・・・・・・・・・・・・・・・あぁ」


 どうも、行かない方がいいみたいだ。

 苦渋の決断があったようだけど、ここはジグの精神衛生上は行かない方がいいだろう。


 「そうか」


 どこか安心した表情のジグに先に行くことを伝え、ボクはDの教室に戻った。

 戻るついでに有耶無耶になった四条さんのミスコン参加を伝えるために生徒会室なるものに寄っていかなくては。


 「カザハ、生徒会室ってどこ?四条さんを出させるために行かなきゃダメなんでしょ?」


 「は、はいぃ!?し、師匠!?なな、何でわたしなんですか!?」


 「・・・弟子よ、これは修行なんだよ」


 「こんなときだけずるいです!?」


 残念だ。四条さんは騙されなかった。

 コレがスズだったら騙されるのに・・・。


 「そうだよ、奏ちゃん!ソラ君が何の意味もなくこんなことを言うわけが無いよ~」


 スズ、残念なことに何の意味もないんだ。

 ただ単に楽しそうだからやってるだけなんだ。


 「そ、そうなの、ですか?」


 「うん、もちろんそうに決まってるじゃないか!」


 カザハ達がジト目で見て来るけど気にしない。

 しょうがないんだよ。争いに、犠牲は付き物なんだ・・・。


 「ボクも本当は心が苦しいんだ。四条さんがこういうことが苦手なのも知ってる。けど、それじゃダメなんだ!」


 「「「・・・」」」


 みんながボクの勢いに飲まれ、息もつかずにじっと聞く。

 それを確認してボクは言葉を重ねる。


 「四条さんは、もっと自信を持った方がいい」


 「・・・じ、自信、ですか?」


 「そう!」


 そこでガシッと四条さんの肩を掴み、目を覗き込むようにして真摯(そうな)目を向ける。


 「四条さん、君は精霊魔法の使い手だ」


 そういうと、四条さんの顔が曇り、顔をうつむかせてしまう。


 「でも、それだって普通に考えればスゴイものなんだ!」


 「ス、スゴイ、ですか?」


 「うん。それに、それが邪道だとしても、行けるところまで行けば確実に自分のためにもなる」


 ボクは四条さんと精霊に関してある推測を立てている。

 もし、それが成功すればかなりすごいことになる。

 ある意味革命かもしれない。

 それがあるからか、四条さんは徐々にボクの言葉に乗せられてきた。


 「でも、そんなにスゴイ事ができても、四条さんがそんななんじゃ他に精霊魔法が使える人に申し訳ないと思わない?」


 「・・・で、でも・・・」


 「でも、じゃないんだ。謙遜も、行き過ぎればダメなのと同じだ」


 全然違うと思うけどこの際は放置しておく。


 「・・・そ、そうです・・・よね?」


 「そうだ。だから、まずは大勢の人のまでも緊張しない、そこから始めるのにもこのミスコンはちょうどいいと思うんだ」


 四条さんはほんの少しだけ考える仕草をする。

 すると、いつもの気弱そうな表情からは創造できないほど力強い目をボクに向ける。

 ・・・前髪で隠れててほとんどわからないけど。


 「・・・わかりました。わたし、がんばります!」


 そういうと、四条さんはどこかへと走り去って行った。

 スズもその後に続いて『奏ちゃん、待って~』と走っていった。


 「「「・・・」」」


 ・・・みんなが、何か言いたそうな顔でこちらを見ている。

 ここで言う事は一つしかない。







 「・・・いや、あそこまでうまく行くとは思わなかった」






 「「「おい!?」」」


 みんなに盛大に突っ込まれた。


 「まぁ、本当の洗脳はまずその人の自己の否定から入るんだけど・・・」


 「誰も洗脳の仕方なんて聞いてねぇ!?」


 「でも、今回はどっちかって言うと、ただ勢いに乗せて言っただけだから後になってよく考えれば大丈夫。すぐに気づく」


 まぁ、四条さんとスズの天然ツートップには最早洗脳したも同然だから、大丈夫だ、問題ない。

 コレで四条さんは今からいろいろなミスコンの準備を始めているだろう。


 「ボク等はそんな四条さん達のためにミスコンの登録をしに行こう」


 「・・・お前、人間か?」


 失礼な。

 ボクは、ただ少しだけ魔王の教育を受けてるだけの普通の人間だ。






 「で、ミスコンの登録は生徒会室でできるの?」


 「あぁ。しかも、お前たち運がいいぞ」


 「運が、いい?」


 その言葉にこの学校の生徒ではないボク等は首をひねる。


 「どうも、今回は生徒会長が積極的に動いているらしい」


 ボク等はますます意味がわからなくなってくる。

 それを見越してか、レクトから補足の説明が入る。


 「ここの生徒会長はなー、とても面倒くさがりなんだー」


 「・・・それ、生徒会長としてどう?」


 「世界にはいろいろな人がいるんですね」


 冬香とシュウが若干呆れたように言う。

 いや、ボク等のほとんどはかなり呆れている。


 「いや、でもやることはやるし、それに世界で数十人しかいない三属性持ちだ」


 三属性持ち。

 多重属性デュアルの人達の中で、三つもの属性を持っている人達のこと。

 確かに、三つも属性を持ってればこの学園で頂点に立てそうな気がする。

 属性が多い方が魔力が多いらしいし。

 まぁ、とにかく中に入ってみればわかるだろう。

 そしてボクが目の前に生徒会室と書かれたプレートのある部屋をノックしてから扉を空ける。

 すると、中から何か言い争う声が聞こえてきた。


 「会長、何をこそこそ動いているのですか?」


 「・・・ん?いつもみたいに≪隠密シエスタ≫を使っていただけだ」


 「いえ、ですから・・・」


 「噂をすれば・・・か。客だ」


 客と言う言葉にボク等に気づいた忍が振り返る。

 彼にしては珍しく、結構感情を表に出して言い合っていたようだった。

 いや、それよりも驚いたことがある・・・。


 「・・・ディア、さん?」


 「久しぶりだな」


 やたらとおとこらしい口調で話す女子、しかも『七つの罪セプテム・ペッカータ』に所属する『怠惰』のディアさん。


 「まさか、お前達がココの短期留学生だったことがあるとはな・・・」


 相も変わらず、眠そうな目でボク等を見る。

 すると、またも扉の方が騒がしくなる。それと同時に扉が勢いよく開かれる。


 「おっはー!ディアちゃーん!びっくりだよ~!もう本当にびっくりだよ~!あのね、あのね・・・あり?」


 「お~?ソラ君たちだ~!?」


 「あ、あの、どういう、ことですか?」


 扉から入ってきたのはスズと四条さん。そして、『暴食』のライニー。趣味が食べ歩き、性格的なベクトル方向もスズとほぼ同じと言ある意味では驚異的な人物。


 「・・・いつも言うが、私の方が年上だぞ?」


 「でも、ディアちゃんはディアちゃんだよね?」


 きょとんとした表情でさも当たり前のように言う。

 既に諦めているのか、ディアさんはため息をつくと、またボク等に向き直る。


 「・・・察しはついてると思うが、生徒会長のディアナリア・ロウスだ。そっちの大食い娘は書記のライニー・ガラ」


 「おっひさー!」


 「・・・お前等、会長と知り合いだったのか?」


 「うん、まぁ・・・」


 と言うか、カザハ達と同じように裏の事情まで知ってる数少ない人だ。


 「と言うか、ココの生徒だったら会ったときにわからなかったんですか?」


 「・・・だって、寝てたし」


 ・・・こういう人だった。

 そこで、さっきのカザハの話とあわせて考えてみる。おそらく、この人は何よりも昼寝が好きなのはわかっている。リュウが常に面倒だとかしか言わなくなった感じだし。だから、当時ボク等に対して何の興味持っていなかったディアさんは・・・。


 『会長、短期留学生が来るそうですよ?』


 『・・・眠い』


 そんなやり取りでボク等は知られることなくココまで来たんだろう。


 「と言うか、いつまで寝てるつもりなんですか?」


 「・・・できるだけたくさん」


 ダメ人間だった。

 確かに、魔法の技量はありえないぐらいにスゴイ。

 それも自分ひとりで混合魔法ミックスを使えるぐらいに。

 混合魔法ミックスは多人数での魔法行使を目的とした特殊な魔法。魔力的な問題からも二人以上じゃないとできないはずのものらしい。それをこの人は三つ持ってるからと言う理由で行使して、しかも普通に格闘も強いと言うふざけている人だ。


 「ディアちゃんはお寝坊さんだな~」


 「・・・大食い娘に言われたくない」


 そして、こっちのライニーはと言うと、属性は『変換』とかそんな感じのもの。自分で食べたものを魔力に変換することができる。おそらく、それ以外に力があると思う。

 ・・・いや、そうであると信じたい。


 「そういえば、ディアちゃんのクラスに行ったら、いろいろくれたよ~」


 そう言いつつ試作品っぽい食べ物の数々をどこからともなく取り出してくる。

 ・・・どうも、ボクの予想は外れたみたいだった。


 「・・・まぁいい。で、何の用だ?」


 「そうだった。Dクラスのミスコン参加者の登録。そこにいる四条奏で」


 「あ、あの、師匠、ついさっき気づいたことがあったんですけど・・・?」


 「大丈夫だ、君ならできる!自分の可能性を信じるんだ!」


 「・・・は、はい?」


 危ない。プチ洗脳が解けかけていた。

 以外に効かないもんだね。

 ボクはそう言うわけで四条さんの洗脳が解けないうちに登録した。


 「おっけー。コレで全クラスのミスコン出場者がけってー!」


 どうも、カザハ達のクラスが最後だったみたいだ。


 「・・・と言うか、よく堂々と来られるな」


 「別にやましいことは何もしてませんよ?」


 「・・・まぁ、そうだけどな」


 そう言いながらディアさんはちらりとカザハ達を見る。

 その意味することを察してボクは言って置く。


 「彼等はボク等の事情を知ってる数少ない人間です」


 「・・・珍しい人間もいたものだ」


 アンタが言うかと心の中で突っ込んでおく。

 でも少しだけ気になることがある。


 「他の生徒会役員がいないような気がするんですけど?」


 「いや、コレで全員だぞ?」


 「・・・全員とは?」


 「私と、ライニー。・・・うん、コレで全員だ」


 ・・・展開が読めた。

 たぶん、他の生徒会役員を決めるのが面倒になったんだろう。

 一応確認してみると、ライニーはすっと目をそらした。


 「・・・そんなに見つめないでよ~」


 ボケることも忘れなかった。

 でも、そのボケ方はボクにとっては致命的だ。


 「ソラ、他の女子を何でそんなに見つめるの?」


 「・・・あの、鎌をどけていただけないでしょうか?」


 いつものように鎌を首に突きつけられる。コレでリカが鎌を引けば、ボクのバッドエンドは確定だ。


 「まぁ、いい。そのうちこっちから行こうと思っていたからな」


 「はい?」


 唐突にディアさんがそう言う。

 意味を図りかねて、口から変な声が出てくる。


 「何、簡単なことだ。もしも、万が一、お前達のことがバレても何とかしてやる。それだけだ」


 「・・・何ですか、それ?」


 「不吉なことを言わないで欲しいわね」


 ボク等はその言葉を聞いて仏頂面になる。

 明らかにフラグ以外の何者でもない。


 「今回は、『爆破』の脅迫状が届いた。それを知らないお前達じゃないだろう?」


 「まぁ、確かにそうですけど・・・」


 「万が一と言う可能性がある。お前達が全力を出さなければ行けない場合は出せ。まぁ、こちらもそれなりには対処するが」


 ディアさんはそういうと、一つ欠伸をする。


 「あぁ、眠い。・・・久しぶりに長くしゃべった。そういうわけだ。文化祭を楽しみつつ、適当にがんばれ」


 そういうと、ディアさんは机に突っ伏す。

 すると、規則正しい寝息が聞こえてきた。

 それを見たライニーがさも当たり前のように毛布を取ってくると、ディアさんにかける。


 「じゃ、みんな楽しんでってね~!」


 その言葉に見送られるようにしてボク等は生徒会室を出て行った。




―――sideディア

 「会長、寝たフリをしても無駄です」


 「・・・なんだ、バレていたのか」


 そう言いながら私は風紀委員に所属する異例のDクラス生徒、影崎忍に顔を向ける。

 と言っても、面倒くさいから机から顔は上げない。腕の隙間からこっそりと見るという方が正しいかもしれない。


 「三谷殿に何をさせるつもりですか?しかも、他の方達のことも根掘り葉掘り・・・」


 「・・・説明メンドイ」


 「あー、もう!ディアちゃん!ヒトが話しているときは寝ちゃダメだよ~!」


 ライニーがうるさい。

 でも、言ってることも最もな部分がほんの少しだけある気がするので、寝るのだけはやめる。


 「・・・もしも、あの脅迫が本当だとして、止められるのがあいつらしか思い浮かばない」


 「え~?ディアちゃんががんばればいいんだよ!それに、わたしもいるよ?」


 横でブイブイと言いながらピースするライニーを見て、かなり不安になってくる。こいつの力は下手をすればいろいろなバランスが崩れかねない。

 影崎のほうもそう思ったのか、苦い顔をする。


 「ですが、ただの悪戯の可能性の方がはるかに高いですよ?」


 「・・・まぁ、そうだな」


 それならそれでいい。

 だが、どうもあの連中はトラブルに巻き込まれやすいらしい。

 ココも、前にあいつらがいたときにちょうど盗みに入られたりと怪しい部分がある。


 「どっちにしろ、理事長からやつのハンデ等はこちらで決めろと言われている。この文化祭を面白くするために利用するぐらいはいいだろう・・・」


 「・・・貴女、会長の偽者ですか?」


 「失礼な・・・。本物だ・・・たぶん」


 「影崎君、大丈夫だよ!ディアちゃんは、本当はガンバリ者だから!」


 「黙れ。・・・・・・じゃ、本当に寝る。書類は任せた」


 私はそう言って、今度こそ寝た。

 遠のく意識の中で、誰かがわめいていた気がするが気のせいだろう。



作 「というわけで『生徒会』をお送りしました」

ディア 「・・・眠い」

作 「今回は初登場のディアさんです」

デ 「・・・・・・眠い」

作 「たぶん、キャラ的には作者の怠惰な部分が顕現した感じです」

デ 「・・・ZZZ」

作 「このように。というわけで次回!」

デ 「私は寝ている」

作 「あんたむしろ出ないから。とりあえず文化祭の準備期間ライフを楽しもうぜ的な内容です。次回もよろしく!」


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