4話・GROWTH
―――side空志
「いや、まさかこうなるとは」
ボク等は闘技場の一番前の席に陣取ってロイとリュウの『決闘』を観戦しようとしていた。
ロイが若干スズに惹かれていたようなことはわかってはいたけど、ココに来てこんなことをするような大胆なやつだとは思わなかった。
「・・・なぁ、大丈夫なのか、ロイは?」
「たぶん」
「だが、俺の記憶ではアイツはお前と同じレベルの魔法展開速度を持っていたと思うが?」
聞き覚えのある声に振り向くと、そこにはSクラスの代表のジグと、副代表のグランがいた。
「二人とも久しぶりだね」
「あぁ。そうだな」
言葉少なめにそういうとボクの隣に腰を下ろす。
たぶん、この二人はかなりの勉教熱心だ。リュウの魔法を見て自分のものにでもしようとしているんだろう。
しかも、グランに関しては『影』の上位属性の『闇』。かなりいい刺激になることは間違いない。
「確かに『闇』の魔法でお前さん並の魔法を放たれたら、いくらロイの代表でも無理ですぜ?」
「・・・いや、ロイもボクと一度やったことがあるし、ボクの時以上に警戒してるとは思うよ。それに、リュウの戦闘は大体だけどグランの戦法に似てる」
「・・・あれか?影から移動して相手に不意打ちを与える?」
「そう。だから、それぐらいロイにも予想できるから、まずそれはきかない」
そういうと、ちょうどリュウがロイに≪影抜け≫を使って奇襲を仕掛ける。
だが、いつも以上に警戒をしているロイにはそれも防がれる。
ボクは更に言葉を続ける。
「それに、リュウは魔法剣はたぶん使わない」
「魔法剣?」
「リュウが剣と一緒に使う魔法展開法。アレは詠唱がメンドイって理由でリュウが独自に開発したらしい」
そういうと、周りにいた人間がげんなりとした表情になる。
確かに、面倒くさいって理由であんなふざけた魔法を使ってきたらたまったもんじゃないね。
「そして、極めつけにリュウは双剣使い。今回は一本しか出してないから、ロイにあわせたつもりなんだと思う」
「・・・それは、相手を舐めているんじゃないのか?」
「それはありえない」
カザハの疑問にボクは即答する。
「何でそんな事がわかるんだよ?」
「ロイは、かなり強い。それもボク等に限りなく近いところのレベルで。そんな相手ならリュウはむしろ自分に魔法剣を使わせてみろぐらいのことを言う。それに・・・」
「それに?」
「リュウとボクは、魔王と勇者の孫だよ?」
―――side隆介
「お前の魔法、ずいぶん面白いな」
「三谷レベルのヤツに褒めてもらえるとは、な!」
オレに向かっていくつもの土でできた腕が襲い掛かる。
それらの手には全て剣が握られており、それが容赦なくオレに振るわれる。
オレはそれを紙一重でかわしつつも頭の中ではどう攻めるか考えている。
いくらオレでも、コレだけの数を捌ききれる自身は無い。
・・・でも、お袋なら余裕なんだろうけどな。
「しゃぁねぇか」
オレはもう一つの剣を抜き、攻撃を受け止める。
「とりあえず、第一段階完了だな!」
「そうだな。オレに魔法剣を使わせるの、楽しみにしてるぜ・・・!」
オレは次々に襲い掛かってくる腕たちを防ぎ、魔法で対抗する。
オレが得意なことは拘束だ。
闇から鎖を召喚してそれを相手にぶつけて動きを止める。
そして闇の強力な攻撃で屠る。
それが基本的な攻撃スタイルだ。
そこを更に攻撃的にしたのが『魔法剣』。こいつの拘束魔法は魔法剣≪影縫い≫だけだ。
まぁ、後は詠唱のほうで十分だって理由もあるけどな。
それに恐らくだが、この魔法のある程度の弱点にも見当がついた。
オレは襲い掛かる腕を無視し、一気に相手に詰め寄る。
「・・ばれたか!」
「やっぱ、そうなのかよ!」
この魔法、確か≪大地の剣の断罪≫は、まず最初にオレを拘束してその剣で攻撃しようとしてきた。
まぁ、オレにかかれば影に移動して何とでもなるけどな。
そこからはその腕それぞれがオレを捕まえようと、あるいは剣で攻撃しようとする。確かに威力は尋常じゃない。だが、その分自分を巻き込む可能性があるならそう簡単に使えないと踏んだんだが・・・。
「お前は、剣を持っているから近接系魔法使いだと勘違いされやすいっつーわけか?」
「それは、間違いだな!」
相手はそういうとオレの二刀流に一本の剣で難なく対応してくる。
なるほど、確かに剣の腕はオレよりもよさそうだ。
ただ、自分のリーチを広げるために魔法でそれを補ってるってコトか?
「それに、俺はあれから更に自分の魔法を磨いた!」
すると、ロイから魔力があふれる。
また魔法を使おうとしているんだろう。
オレはそれを察知し、魔法を使わせまいと攻撃を仕掛ける。
だが、オレの剣がそこで止められた。
「―――≪大地の腕≫!」
地面から出てきた腕にオレの剣が受け止められる。
そして、ロイは更にオレへと追撃を加えようとする。
オレはすぐに≪影抜け≫で一旦離脱した。
「・・・さっきと同じじゃねぇか」
「それは、どうかな?」
ロイは何故か不適な笑みを浮かべる。
そしてロイは二つの金属を精製し、剣の形にする。おそらく、それをあの土の腕に持たせるんだろうと思いつつオレは剣を構える。
「これなら、どうだ!」
ロイがそういうと、地面から腕がどんどん生えてくる。
コレは・・・。
「冬香の劣化無敵艦隊じゃねぇかよ」
だが、冬香の無敵艦隊よりもはるかに数が多い。
コレはさすがにさばききれねぇ。
コレは威力じゃなくて数に重点をおいた魔法なんだろう。
なら、こっちも魔法を使うまで・・・!
「―――≪闇の刃≫!」
無詠唱で下級の魔法を放つ。
無数の黒い刃がオレの影からいくつも放たれ、ロイへと殺到する。
ロイが腕の操作に気をとられているうちに・・・。
「―――絶対的な闇の力をもって彼の者を裁け。
≪断罪の闇≫!」
オレの影の周りから闇の鎖が召喚され、ロイに向かって放たれる。
この魔法は鎖で相手の動きを止め、そこへ闇の刃での追撃を加える魔法。
アイツが最初に使ってきた魔法に似ている。
だが、おそらく簡単に防がれるだろう。
アイツとオレの魔法はよく似たタイプだ。だから、オレは更に魔法を準備する。
「―――闇よ、万物を縛る縛鎖となりてここに顕現せよ。
≪鎖の闇輪舞≫」
予想通りにオレの魔法を回避したロイ。
だが、今度はロイの周囲のいたるところの影から鎖が呼び出される。
その鎖はロイに纏わりつき、ロイを完全に拘束した。
「・・・一丁あがり。一つ言っとくけどな、それをくらったらソラのヤツでも簡単には抜け出せないぞ?」
「なら、こいつを解けばお前の本気を見せてくれるってわけだな・・・?」
「・・・そういうことだな」
まぁ、コレを解けたら及第点だろう。
そう思っていると、唐突にヤツの拘束が解ける。その様子は、まるで内側から破られたかのようだ。
オレは一瞬、自分の目の前で起こったことがわからなかった。
一体、ロイのヤツは何をした?
「驚いている暇あるのか!?」
そういうと、ヤツはすぐさま魔法を構築。
速い・・・!
すると、ロイの前の地面に大きな魔法陣が現れる。
これは、まさか・・・?
「―――ここに顕現しろ、≪巨人召喚の陣≫!」
魔法陣から魔力があふれる。
マジかよ、こいつあの馬鹿の真似事しやがった・・・!
それは徐々に姿を現す。
まず、頭らしき部分、そして腕、胴、足・・・。それは、まるであの巨人のような大きさの土くれの巨人。だが、次の瞬間には巨人の表面が光沢を帯びだす。現れたのは、金属でできた巨人。
全貌が明らかになるにつれて、オレは確信した。
古代魔法≪属性造形術≫。おそらくはそれをベースにした魔法。
よく、拳法は動物などの動きを元に造られていると言う。それは、魔法も同じだ。
まず、魔法は動物や自然現象を模した物が多い。
何故そうなったか、それは簡単だ。ただ単にイメージがしやすいから。
だから、ジジイから聞いた話だと、本当にはるか昔は一人ひとり極端に魔法が違い、自分のイメージが持ちやすいようなものになっていた。だから、できるヤツとできないヤツの極端な差があった。
だが、今は違う。今は魔法の汎用化を重点的にしており、全員が使え、全員が同じレベルの魔法と言うものになっている。
だから、今では魔法が使えて当たり前と言う風潮で、属性の良し悪しがその人の強さになっている。
だが、中にはほとんど聞いたこともないマイナーな属性で頂点に上り詰めるやつもいる。そういうヤツが昔の、つまりは古代魔法の系統を真似していることが多い。
「・・・こりゃ、相当面白いことになってきたな」
「あぁ。アイツに負けてから、アイツに勝つために俺は魔法陣のことを調べた。そしたら面白い魔法があったんでね。参考にさせてもらった」
「・・・お前、絶対将来は行くところまでいけるな」
「それは、うれしいな」
「じゃぁ、オレも約束どおり、本気でやってやる・・・!」
魔法剣≪黒刃≫。オレの剣に黒い魔力の刃が展開される。
「それが、お前の本気か?」
「あぁ。ただの、魔装系じゃねぇぞ?これは、魔法剣って名前がついてんだからな!」
魔法剣≪斬黒≫。オレが右の剣を適当に素振りする。
その先から黒い剣撃が放たれ、闘技場の壁を切り裂く。
「・・・なるほど。剣と一体になった魔法か。魔装は付与魔術の一種だから、魔法を使おうとしても詠唱は必ず要る」
「理解が早くて助かるな。魔法剣≪鞭刃≫」
「やれ!」
オレは剣を振るう。
剣についた魔力の刃が伸び、巨人の足を斬ろうとする。
だが、まったく利かない。
相手はそのでかい拳をオレに向かって思い切り落としてくる。
「魔法剣≪影討ち≫」
オレは影から影に移動。
出てきたのは相手の後にできた影。
「それはもう、わかってる!」
今度は上から足が降ってくる。
こいつ、速い!
「魔法剣≪闇十字≫!」
だが、あっけなく弾かれる。
まぁ、それは予想済みだ。
オレの攻撃でそれたところをすり抜け、前に立つ。
「―――生成、大地よその力をもって形と成せ!」
土系の属性の特殊技能でもある≪練成≫。
それを使ってロイはすぐさま馬鹿みたいにでかい剣と盾を創造。
巨人はそれを掴み、両手にそれぞれを装備。
「切り刻め!」
巨人はわかったとでも言うように大きな咆哮を上げ、オレに怒涛の攻撃を放つ。
その巨体に似合わない俊敏な動きでオレに攻撃を与える。
オレも正直なところ、避けるので精一杯だ。
「・・・やるしかねぇか」
まぁ、ソラもやったって言ってたから大丈夫だろう。
それに、使っちゃダメだって法律もない。
大丈夫だ。問題ない。
オレは≪影抜け≫で一旦退避。
相手と大きく距離をとる。そして、双剣を鞘に仕舞った。
「・・・どうした?」
「・・・オレの、取って置きを見せてやる」
双剣へと魔力をどんどん送る。
・・・さすがだ、あのおっさんの弟子なだけはある。
まぁ、本人に言えば否定するだろうけどな。だが、こいつのおかげで全力で撃っても耐えられるだろう。
オレが使おうとしてるのは奥義に近いもの。つまり、真言。
「魔法剣≪断龍漆黒剣≫!」
一本の剣を鞘から抜き撃つ。
放たれるのは、まるで龍の如き漆黒の一撃。
生きているかのようにうごめき、その顎を剥き、相手を噛み殺さんとばかりに巨人へと向かう。
「迎え撃て!」
そして、巨人は真正面からそれを迎え撃つ。
漆黒の龍と金属の巨人の一騎打ち。
一瞬の拮抗、そしてオレの漆黒の龍が相手の剣をへし折り、巨人の上半身を消し飛ばす。
自分の体を維持できなくなり、体が崩れ落ちる。
「・・・さて、どうする?」
「・・・俺の、負けだな」
すると、さっきまで聞こえなかった客の声が聞こえ、歓声が上がる。
つか、やれやれだな。こんなヤツがここにいんのかよ。
「と言うか、お前たちは全員真言が使えるのか?」
「安心しろ。オレとソラ、そしてスズだけだ」
「・・・そんだけいりゃ上等じゃ?」
ソラは実は微妙に違うかもだけどなと言おうと思ったがやめておいた。
いろいろと説明が面倒だし。
「だけどな、一つだけ言っとくぞ。あれ、おそらくは真言より強いぞ?」
「・・・いや、意味がわかんないぞ?」
「世の中にはな、真言より強い魔法を使うアホみたいなジジイがいんだよ」
そう、ジジイがな。
どうすればあんな事を思いつくのかオレは知りたい。
「でも、お前の真言には負けたぞ?」
「オレの真言に勝てたらそりゃ人間じゃねぇな。『闇』の特徴は一つ、侵食」
相手に侵食すること凶悪な攻撃力を生み出し、相手の魔力に干渉して拘束する。これが闇の基本。
「だから、あの魔法はその侵食力を極端に高めた一撃」
「・・・要するに、俺の魔法に干渉して、浸食。そこから分解みたいなことをしたのか?」
「あぁ。ああいう魔法の特性はその再生力。それを侵食で無効化させてもらった」
まぁ、オレの魔力を流し込んで無理矢理に魔法構築にエラーを起こさせただけだけどな。
そうすりゃ、どんな魔法でも破綻する。
「・・・あの、二人だけは無理だけどな」
そう、あの気楽そうにこっちを見てる馬鹿二人は絶対に関係なくオレの魔法を無効化する。
「そうか・・・・・・だが、俺は諦めない!」
いきなりロイがオレに向かってビシッと指を突きつける。
「絶対、坂崎さんは渡さない!」
「・・・あぁ~・・・オレは、どう返せばいい?」
「絶対に、いつか勝ってやるからな!」
そういうと、ロイは何故かオレに宣戦布告をしてどっかに行った。
・・・取り残された感がオレの今の気持ちの大半を占めているんだけどな、どうすればいい?
作 「と言うわけで、『成長』をお送りしました」
隆 「・・・なぁ、オレは何でこんなことをやってんだ?」
作 「それは、僕のノリとか気分とかその他諸々で」
隆 「・・・しばくぞ」
作 「と言うわけで次回!」
隆 「この野郎っ!」
作 「まさかのあの人が登場!?」
隆 「・・・あの伏線かどうかも怪しいあいつだな」
作 「残念なことに、この作品は僕の初めての作品なので、伏線はヘタクソです」
隆 「自分で言ったらおしまいだろ!?」
作 「そんな作者の作品ですが、次回もよろしく!」