14話・ONLY ALONE
―――side空志
「・・・これが、僕と優子の推測だ」
「「「・・・」」」
「・・・みゃぁ」
ボク等は今、一旦リュウの家に戻ってきている。
そこで優子さんと颯太さんからリカの正体――あくまで推測、を聞いた。
「・・・けど、リカは関係ないですよね?」
「だな。オレも行く」
「わたしもがんばるよ~」
「分かってるの?リカちゃんはね・・・」
「分からないですよ。・・・たぶん。まぁ、分かったのはリカも、それに魔物だって、普通の人間と変わらない。それだけです」
「もし、お前にそれがわかんねぇっつってたら、オレはお前を殴り殺していたな」
「え?リュウ君、それはダメだよ~!?」
「・・・いや、冗談だから」
「冗談でもメッ!だよ~!」
「あ、あぁ・・・すまん」
リュウがスズを相手にたじたじになっているのを無視して、優子さん達に向き直る。
「確かに優子さん達が言うんだから危険な魔物なんでしょう。けど、それ以前に、リカはボク等の友達で・・・・・・大切な仲間の一人です」
「みゃ」
そういうと、既に準備を済ませていたボクはログさんやアリアさんから借りたウェストポーチを装備。そこには救急セットと魔導書が入っている。そしてリュウもログさんところから借りてきた剣を腰につけ、ボクの後に続く。
「あ、待って~!」
スズも大きめのリュックを背負い、ボク等の後についてきた。
・・・あ、そうだ。
「優子さん達は、一応ここで待っててください。リカが、帰ってくるかもしれませんから」
そういうと、何故か優子さん達はため息をつく。
そしてどこからともなく例の刀を。
・・・え?まさか力づくで止められる?
「アナタ、お願い」
「わかったよ。気をつけて」
颯太さんが優子さんに微笑むと、優子さんはボク等に顔を向ける。
「私も行きます。念のため隆介達の反対側を探すから、ちゃんとリカちゃんを見つけたら連絡するわ」
そういうと優子さんの周りで一陣の風が吹き、その姿が消えた。
その光景に少し顔がニヤけてきたけど、表情を引き締めてボクも二人と、レオに顔を向けた。
「じゃぁ、ボク等も行こう」
そう言って、ボク等は魔窟の外へと飛び出した。
「つか、こんなに早く現実になんのかよ」
魔窟から外に出てすぐ、リュウが突然にそんなことを言いだした。
「リュウ、どういうこと?」
「あぁ?あいつ、言ってただろ?自分のせいで迷惑かけるみたいなこと」
確かに言ってた。
「アレか。自分は、世界の敵だからどうとかいうやつ」
「・・・世界の、敵か」
「どういうことなんだろうね~?」
「・・・お前、話し聞いてたか?」
「うん?うん!ばっちこいだよ~」
・・・そうスズは言うけど、ボクは不安だ。
リカの種族はよくわからないけど、ヤバいらしい。まぁボク等の世界でも有名、というか知らない人はいないと言っても過言ではない知名度のヤツだ。
「リカちゃんは、リカちゃんだよ~って、ことだよね!」
「・・・うん、まぁ、あってる」
まぁ、間違ってはいない。
ボク等もそうやって優子さん達に啖呵きって、ここまで来たんだし。
「で、どこに向かってるんだ?」
リュウがいきなりそんなことを言いだした。
・・・え?
「リュウ、何か考えがあってここに来たんじゃ?」
「・・・何がだ?」
「湖?」
「・・・いや、特に何も?」
色々と雲行きの怪しいことに不安を感じつつ、ボクはスズにも話を振ってみる。
「ほぇ?」
ダメだった。
いや、こういうときはとにかく前に進め。どうせ、手がかりなんかほとんどない。前に進めば、少なくともリカがいないことはわかる。
うん、何事も前向きに行こう。
そしてボク等はリュウの先導で湖に到着。そこで、あり得ない光景を見た。
「何、これ・・・」
スズが呆然とした声を出す。けど、無理もない。
今ここは、数日前に来た風景とはずいぶん様変わりしていた。湖が凍ったままなのはそのままだけど、所々に氷の槍がつき出ていたり、地形が明らかに変な風にへこんでいたり、何かに切り裂かれたような跡もある。
「これ、何があったの・・・!?」
スズのいつもののんびりとした口調が切迫したものに変わる。リュウも真剣な表情で周りの魔法を調べ始めた。そういうボク自身も、冷静さを保つことで精一杯だ。
「・・・おかしいぞ」
そんなことをリュウが言った。
「何が?」
「これ、よく見ろ」
リュウがさした所。そこには氷の槍が突き刺さっていたり、クレーターができたりしていた。
そしてリュウはさらに指を動かす。そこには氷の壁があり、何かで切り裂かれたような跡があった。
「・・・確かに、変だね」
「・・・何が?」
「・・・みゃ?」
よくわかっていないスズとレオに説明。
まず、おかしい部分その一。攻撃方法の向き。まず、判明している攻撃方法が・・・。
眼鏡の少女、氷の魔法ともしかすると『土』系統の魔法。そしてリカ、殴る。
うん。これだけだよね?リカが颯太さんに攻撃していた時も普通に殴っていたし。けど、ココにある攻撃の跡を見るといろいろとおかしい。
まず、眼鏡の少女の氷魔法が放たれているのはわかる。けど、そこの周囲に更にあるクレーターがおかしい。だって、普通に地面に拳がめり込んだような跡がある。そしてそれは何故か土の上だけだ。普通に考えて、リカが殴ったとかだけど、自分に殴りかかる意味が分からない。
そして対して切り裂かれた方。氷の壁はおそらく相手の防御に使った魔法。けど、それが何で切り裂かれる?普通に考えればリカの攻撃をガードした。だけど、リカは武器を、それも剣のように切るタイプの物は持っていない。というか、その身一つで魔窟に来たようなものだ。不自然。だけど、リカは魔法を使ってないし、ボク等もそれを見ていない。だから、それは魔法によるものだとすれば、ある程度の説明がつく。
けど、そこでもう一つ問題発生。攻撃種類が一つ多い。
たぶん、こういうことになる。
眼鏡の少女、氷魔法。
リカ、斬撃攻撃。
三人目、殴打系の攻撃。
「おぉ~!・・・じゃぁ、三人目の人がいるんだね!」
「たぶん」
「しかもこれを見た限りじゃ・・・」
増援。それも敵の。明らかに氷の魔法と一緒の敵を狙っている。そうじゃなきゃ、こんな攻撃痕は残らない。
「最悪だ。早く、リカを探さないと・・・!」
「けどなぁ、あたりはめちゃくちゃで何が何だかわからないぞ?」
リュウがそういいながら周りを示す。
リュウの言う通り、既に周りには攻撃の痕跡だらけでぐちゃぐちゃだ。あちこちにそれらしい跡があって、どっちに向かったのかよくわからない。
「時間はかなりたっている。寄り道なんかしてる暇はないぞ」
「・・・」
そうだ。寄り道なんか、している暇なんてこれっぽっちもない。
「・・・・・・?」
どうしようもないと思ったその時、ボクの目が何かをとらえた。
―――sideリカ
~数時間前~
「大人しく、殺されてくれるわよね?」
「・・・嫌だ」
そう言ってアタシは魔法を使って、一振りの大きな鎌を生み出す。アタシの種族が使える特殊な固有魔法。種族によっては人間達も使うごく普通の魔法以外に、詠唱を必要とせずに使える特殊な魔法を持っていたりする時がある。アタシが使えるこの魔法もそう。
アタシが魔法を使ったのに驚いて、敵の眼鏡の少女も何かの機械を取り出す。アレは・・・。
「っち。まさか、アンタやったの?」
「・・・なぜ、こんな所に?」
どうも、長身の少年の方は聞かされていなかったのか、その表情を真剣なものに変える。たぶん、自分が何を相手にしているのかわかってしまったからだと思う。
「してないし、そんなの関係ないでしょ?」
アタシは自分の身長ほどの大きさの鎌を構えて、いつでも動きだせるようにしておく。もしも怪しい動きがあれば、すぐに動けるように。
「・・・本気でやる。怪我したくなかったら・・・ううん。死にたくなかったら、帰って」
自分の中にある、ほんの少ししかない魔力を鎌に集める。そしてそれを思い切り振る。すると、そこから斬撃の衝撃波が一つだけ放たれ、二人に向けて奔る。
けど長身の男子は素早い動きで避け、眼鏡の女子が瞬時に氷の壁を生み出して攻撃を防御する。
やっぱり、魔力が足りない・・・!全然威力が出ないし、規模も小さすぎる。やっぱり、ここはパワーに任せて攻撃するしかない。
アタシはまずは魔法主体の眼鏡の女子を狙う。今一番怖いのはあの氷の弾幕攻撃。それを最初に潰す!
「させませんよ!」
すると、長身の男子がアタシの前に飛び出してくる。アタシの前に出てくるなんて・・・。
「弱ってるからって、舐めすぎ!」
鎌を振るい、その人間離れした力を相手に向けて全力で放つ。鎌を掬いあげるようにして切り上げる。
すると相手はアタシの攻撃をギリギリで躱す。そしてそのまま拳を突き出してきた。アタシは体をひねって、相手の攻撃に合わせてカウンターを放つ。鎌の柄で思い切り殴りつけようとしたけど、相手はそれを察知して後ろに跳んだ。
「思ったよりも、技術的な動きができるんですね。貴方達は、自分達の力によるゴリ押ししかしないと聞いていましたが?」
「そうね。むしろそいつはかなりの魔法も使うわ。簡単に言うと変なのよ」
「・・・」
この二人、強い・・・
眼鏡の方の女子は分かっていたけど、この長身の男子もアタシのスピードに普通についてきている。本当に、マズい!
「・・・けど、アタシは負けられないの!」
まだ、アタシはあの三人と一緒にいたい。たとえ許されないとしても。
「まだ・・・まだアタシは、戦える!」
固有魔法をもう一つ発動する。そしてそのまま鎌を思い切り相手に投げつける。
二人はもちろんそれを回避、あるいは防御した。鎌は氷の壁に弾かれ、あらぬ方向へと飛んで行ってしまった。
「アンタ、バカ?」
アタシの攻撃にせせら笑う眼鏡の女子。確かに、魔力がほとんどないことに分かりないアタシが魔法を使っても意味がない。けど、これはそれを覆せる。
「いけません!」
油断した眼鏡の少女を長身の男子が突き飛ばす。
それに対して眼鏡の女子は文句を言おうとしたけど、その頭上をアタシの大鎌が通過していく。
「また変な魔法を・・・!」
「油断してはいけません。相手も相当に本気ですよ」
「言われなくてもわかってるわよ!」
口喧嘩をしているそのさなかにアタシは再び仕掛ける。
鎌がくるくると回りながらその軌道を変え、再び二人に襲いかかる。
「鎌を操作してるってわけね。なら、こうすれば問題ないわ!」
そう言いながら眼鏡の少女が端末を操作する。すると、地面から大きな腕が生えてきて、それが少女の目の前まで迫っていた鎌を掴む。
「動かなきゃ、ただの鎌よ!」
「・・・≪終演≫」
アタシがぼそりとつぶやくと、鎌が突然黒い光を放つ。その光は広がって、次の瞬間には消えうせた。そしてそれと一緒に光に包まれた部分がごっそりと削られている。
「・・・」
「さ、流石にアレはまずかったですね」
「・・・」
けど、相手もしぶとい。
アタシは再度鎌を生み出した。
「アレは、マズいわね」
「投げさせなければ大丈夫です」
そう言うと、長髪の男子がアタシに急接近。アタシは必死に鎌の柄の部分で相手の拳を受け止め、その拳を軸に鎌を相手の頭上から斬りつける。
「こっちの相手も頼むわよ」
すると今度は氷の槍が飛んできた。
あっちもこっちも・・・!
「はぁ!」
とにかく、今はやるしかない!
作 「というわけで『一人だけで』をお送りします!」
ログ 「・・・あの嬢ちゃんも、面倒なことするな」
作 「初登場、ログさんです。まぁ、この人は完全オリジナル。あえて言うなら王道なかんじで」
ロ 「・・・個性がないじゃねぇか」
作 「さぁ、次回!」
ロ 「お前、ちょっとそこに直れ」
作 「さてさて、どうなるリカちゃん!?というわけで次回もよろ、そしてあでゅー!」
ロ 「それは、既に読んでいる!」
作 「何!?落とし穴だと!?」
ロ 「さぁ、ゆっくり話を・・・」
作 「作者の力!『作者は、穴を人間とは思えない跳躍力で回避した』ひゃっほい!」
ロ 「てめ!?」